魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe-   作:フォールティア

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「僕の名はフィル・マクスウェル──君たちの、敵だ」

 

ムシュマッヘの頭上から奴はそう宣言した。

 

首元まで延びた茶髪に整った顔立ち。引き締まった身体には白と濃紺に彩られたバリアジャケットのようなモノを纏っている。

そして何より──狂った目をしている。

 

「本当に君たちは素晴らしい。あらゆる逆境に対抗し、諦めず、折れず。正に英雄のようだよ」

 

「マクスウェル──!!」

 

仰々しく語るマクスウェルに、いつの間にか近くまで来ていたアミタが武器の銃口を突き付ける。

 

「貴方が……貴方が何故ここに居るんです!!」

 

「何故ここに?不思議な事を聞くね。僕は最初からこの星から出ていない(・・・・・・・・・・・・・・)よ」

 

「な……」

 

この星から出ていない?

だが確かコイツは捕まって投獄されて……消えた筈だ。

 

【成る程、納得がいったわ】

 

「八神?」

 

【地球に来ていたのは複製の複製。或いは偶発的な産物、ってことやな】

 

「正解、あの時よりも聡明になったようだね、八神はやて君。……その通り。あの事件においての"僕"が語ったのは全て嘘さ。人しての僕は元よりここにいる僕だけ」

 

「そ、れじゃあ、ユーリが殺したのは」

 

「当然、複製さ。正確には僕と記憶をリンクさせた泥人形が正しい。アレは色々と役立ったよ。お陰でこうして諸々の準備が整ったからね」

 

「……準備だと?」

 

「そうとも、クレン・フォールティア。蛇の尾を持つ虎。僕はね……この星の生命全てが欲しいんだよ」

 

恍惚とした表情で、ヤツはそう宣った。

堂々と、それが当然のように。

それはつまり──。

 

「この星全てを、テメェの海に沈めるってか」

 

「沈める?正確には違うな。ただ僕の家族になって貰うだけだよ」

 

「そうか、わかった」

 

ああ、納得した。理解した。

コイツはもう、『人間』じゃない。

 

「くたばれ──!」

 

一度の踏み込みでヤツの真っ正面に到達し、十字架を頭に振り下ろす。

肉を潰す感覚。血と脳漿が飛散し、蛇の頭に降り注ぐ。

だが、殺したという感覚がない。

現に、

 

「即断即決。いいね、実に良い」

 

コイツは死んでいない。

肉を焼かれ、頭蓋が割られていると言うのに、マクスウェルはまるで意に介さず笑っている。

 

「けれど今の君では殺せないよ、僕は。立っている場所が違うのだから」

 

「何を……言ってやがる」

 

「君は聖遺物を宿し、その力を行使してはいるけれど。今使っているそれはほんの"触り"というだけの事さ。もっと深く、高みに至らないと」

 

トン、と。腹に手を添えられる。

 

(まず────っ!!)

 

ただそれだけの行動で俺の身体は吹き飛ばされ、地面に叩き付けられた。

 

「ッ!?」

 

「クレンさん!!」

 

クソが、あれだけで何本か骨が砕けたぞ……!?

聖遺物の影響で勝手に治りはするが、激痛が視界を明滅させる。

アミタが近寄ってきて身体を起こそうとするのを手で制止する。

血反吐を吐き捨てヤツを睨むが、まるで意に介していない。

 

「ほら、ね?立ち位置を理解したかな、クレン・フォールティア」

 

「……ああ、よくわかったよ」

 

コイツは、あのスカリエッティと同じだ。

生物としての位層が違う。『人間』では勝ち得ない存在だ。

再生した顔を一撫でして、マクスウェルが笑った。

 

「いいね。勤勉は美徳だよ。……それに免じて今回は君たちを見逃そうじゃないか」

 

「……は?」

 

アミタが信じられないものを見るような目でマクスウェルを見る。

奇遇だな、俺も同じだ。

それを察したのか、マクスウェルは微笑みを絶やさないまま語りだす。

 

「元より今日はただの挨拶のつもりだったしね。君たちの実力も測れた。──何よりも、クレン・フォールティア。君の『残量』もね」

 

「何……?」

 

残量?一体何を言っている?

 

「ヒントを上げよう。……リンカーコア程度(・・)であれだけの火力が出せると思うかい?」

 

【なんやと?】

 

「まあこれは宿題かな。期限はそうだな……三日にしようか。三日後、また会いに来るよ。その時に答えを聞こうじゃないか」

 

まるで教師のように穏やかな口調で語り終えたマクスウェルが手を鳴らす。

それだけで、ムシュマッヘ達が溶けて消えた。

 

「答えを見つけ、そして至ってみせて欲しい。そうすることで僕もまた目標に近付けるからね……期待しているよ」

 

そう言ってマクスウェルもまた、赫海に溶けるようにして消えた。

それと同時に赫海が引いて行く。ヤツが言った、三日間の猶予の為だろうか。

皆が皆、呆然とする中で声が漏れ出た。

 

「…………見逃されたな」

 

掌を握り締める。

辺りを見れば消し飛んだ渓谷と焼け爛れた大地。

くすんだ空気を吸い、吐き出す。

 

生きている。生き残った。だがこれは────敗北だろう。

 

この星に来て初めての戦闘。

俺達はどうしようも無く……敗けた。

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