魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe-   作:フォールティア

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「────圧倒的敗北や」

 

ラボに出来た臨時のブリーフィングルームの机に座した八神が一言発した。

改めて突き付けられた現実に戦闘に参加した面々は一様に肩を落とす。

 

結局あの後、深追い等はせず、簡単な周辺環境の調査をしてから急ぎ足でランチに揺られて帰って来た。

時間はとっくに夜になってしまっていた。

 

「幸い、人的被害こそ無かったけれど……」

 

「あのまま戦っていたら確実に全滅だった」

 

高町の言葉をハラオウンが継ぐ。

これも事実だ。ムシュマッヘのあの火力と言い、マクスウェルと言い。

ムシュマッヘは俺ならまだしもマクスウェルはもはや次元が違う。

戦いにすらならないだろう……2秒持てば良い方だ。

話し合う八神達から視線をずらしてナカジマ達を見れば、表情こそまともそうに取り繕っていたが、身体が震えていた。

 

「おい、大丈夫かお前ら」

 

「う、うん、大丈夫だょよ?」

 

「大丈夫じゃないな」

 

ょよ?ってなんだ。どうやって発音してんだ……。

ナカジマの素頓狂な反応に困惑していると、ランスターが話し掛けてきた。

 

「アンタはどうなのよ。派手に吹き飛ばされてたけど」

 

「あぁ、まあ……あばら骨何本かへし折れたがもう治ってる」

 

「……どうなってんのよその身体」

 

「俺が知りてぇ」

 

いや本当に。

今までも傷の治りは早かったが、これはちょっとばかりおかしい。

聖遺物の影響、と言われればそうなんだろうが。

それに、マクスウェルの言っていた『残量』と言うのが気になる。

残量と言う以上、何かを消費しているのだろうが……それが何なのか、皆目見当もつかない。

それにしても……帰って来てからなんだか身体が重いような……。

 

「え……クレンさん!?」

 

「あ?どうしたエリオ」

 

「どうしたって……目から血が!」

 

「血?」

 

慌てた様子のエリオに言われ、目尻に軽く指を触れる。

……確かに血だ。通りで少し視界が赤くなっ──

 

 

「─────────」

 

「クレンさん!?」

 

「ちょっとクレン!?クレン!!」

 

──不意に、意識が断絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音が、聞こえる。

 

肉が裂ける音。

骨が砕ける音。

 

悲鳴と慟哭はやがて狂気に変わり。

血と脂と肉が川を作る。

 

その中で。

 

「……そうだ。命とは即ち混沌である」

 

ただ一つ、声が聞こえた。

 

「故にこそ。命は何よりも強き力と成り得る」

 

疲弊しながらも厳かに。

苦悶しながらも清廉に。

 

「奪え。奪い返せ。奪還せよ。命は命によってしか抗えぬ」

 

「奪った者から奪え。──総ての因果に応報を」

 

それは果たして呪い(祝福)のように。

 

──声が、遠くなる。

 

 

 

「─────それでも■■は、貴方を命を掛けてお慕いしております」

 

 

 

世界切り替わる刹那、聞いたことの無い誰かの声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「結論から言うと。このままだと遠からず彼は死ぬわ」

 

翌朝、ランチ2号車。その車内に作られた医務室で、シャマルは集まった面々にそう告げた。

どよめき出す声の中で、はやてが続きを促す。

 

「……精密検査の結果、外見だけ見れば確かに彼は至って健康。脳に異常があるわけでもない。ただ──摩耗しているの」

 

「摩耗、ですか?」

 

「そうなのアミタちゃん。摩耗……そうとしか言いようがないの。異常なまでの肉体再生能力。それがあるのに彼の肉体は衰えていっているの。こんなの、以前の診察では無かったのに」

 

「原因は……聖遺物、か」

 

「可能性は高いわ」

 

「……厄介やな」

 

はやての一言にシャマルも首肯する。

原因に当たりはついているが、それが本人と同化、しかも剥離方法も不明となると為す術がない。

 

「それと、これを見て」

 

「これは?」

 

シャマルが空間投影した画像にキャロルが首を傾げる。

しかし、なのはそれが何なのか一目で理解した。

 

「リンカーコア……」

 

「そう、今の彼のリンカーコアの状態よ。何か気付かない?なのはちゃん」

 

問われて、なのはは画像に映るパラメーターを隅々まで確認する。

そして、あることに気付く。

 

「……リンカーコアが、魔力を消費していない?」

 

「正解」

 

それは魔導士としてあり得ない事だった。

魔導──魔法を使う上でリンカーコアの魔力消費は切っても切れない関係だ。

あれだけの戦闘を行ってその様子が一切ないはまず有り得ない。

消費なしで魔法を行使するとはつまり、何も使わないで薪に火を点けろと言っているようなものだ。

それが不可能な事など分かりきった事実だ。

 

「そう。有り得ないの、この状態が。魔導士として矛盾している。なら彼は何を代償に魔法を──魔法に似た"ナニか"を行使していたのか」

 

ここから先はまだ調査中よ。そう続けてシャマルは話を締めくくった。

 

「今後の戦闘参加は、無理やな」

 

「ええ……原因と対処法が解らない以上、出すべきでは無いわね」

 

「そうやね……」

 

現状、六課最大の戦力はクレンだ。

彼を主軸としたからこそ先程の作戦は成立したようなもの。

それが出来ない以上、今後のリスクはより大きなモノとなる。

ならば、とはやては考える。

彼と並び立つには至らずとも、戦力の強化は必須だろう。

このままでは駄目だと、この場に居る全員が理解している。

諦観は無い。やれる事はまだある筈だ。立ち止まるな、動け。

 

「シャマルは引き続き調査を。シャーリーは回収した聖遺物の調査。何が関係あるか解らんから相互で情報を共有するように」

 

「「了解」」

 

「スターズ及びライトニングは今後の戦闘に向けてアミタさん達と連携が出来るよう訓練を……アミタさん、お願い出来ますか?」

 

「任せてください、手伝えることならなんでもします!!」

 

「宜しくお願いします……ヴァイス陸曹達は周辺の観測、調査を頼むわ。必要ならドローンありったけ使っても構へん」

 

「了解であります」

 

矢継ぎ早に指示を出し終えた所でパン、と手を鳴らす。

それだけで場の空気がガラリと変わる。

静から動へと。

 

 

 

「さぁ、動くで!」

 

 

 

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