魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe-   作:フォールティア

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「……『彼』が拠点から離れたようです」

 

「いかがしますか?」

 

「お父様」

 

「ああ……」

 

お父様。そう呼ばれて、腐肉と鉄の玉座に座るマクスウェルは微睡みから目を覚ます。

眼前には愛する娘たち……家族が居た。

黒い長髪、整った顔立ち……姿形こそ一様に同じだが、マクスウェルは自らがつけた緻密な差違で個々を認識している。

 

「迎えに行ってあげなさい。出来れば生きたまま」

 

「五体の欠損は」

 

「構わないよ。生きていれば幾らでも治せるからね。……とはいえ手負いの虎だ。くれぐれも、気を付けて」

 

常人が見ればおぞましいと思うだろうそれを、マクスウェルは慈愛を以て接している。

そして『娘たち』とされたそれらは甘んじてその寵愛を受け止めている。

まるでそうするしか出来ないように。

 

「わかりました」

 

「では50人程で」

 

「確保に向かいます」

 

「──いってらっしゃい、我が娘たちよ」

 

「行って参ります」

 

一礼し、娘たちが去っていく。

その背中を眺めながらマクスウェルは一人呟く。

 

「さて……君の力を見せてくれ。蛇の尾を持つ虎よ」

 

 

 

 

 

 

 

──熱い。

 

「………………ァ」

 

瞼を開く。どうやら意識を失っていたらしい。

 

「ここは……」

 

辺りを見ると鬱蒼とした木々しか見えず、見上げても日の光は微かにしか差し込んでいない。

森の中、か……。土地勘もないのに森に入るとは、意識が朦朧としていたとは言えあまり宜しくない。

 

「身体は……動くな」

 

相変わらずあの声と奇妙な衝動はあるが、今のところ問題はない。

むしろこれからが問題だ。

 

「どうするか……」

 

このまま戻っても、この衝動がまた強くなる可能性が高い。

意識こそ保っているが、これも何時まで持つかわからない以上、迂闊に戻るべきではないだろう。

今でさえ、何でもいいから"殺したい"のだから。

 

「ッ!」

 

頬を殴って意識を戻す。

油断するとこれだ。やはり戻るのは無しだ。

となると後は──。

 

「進むしか、ないか」

 

奴の……マクスウェルの本拠地を探しだして、殺す。

それだけを考えよう。シンプルで悪くない。

 

「……よし」

 

ヴィーザルを握り直し、一歩踏み出

 

「見つけました」

 

パスッ、と。

その脚が撃ち抜かれた。

 

「ッ──」

 

たまらず脚が止まる。

ジワリ、とバリアジャケットに血が滲み出す。

撃たれた方向に銀鎖を飛ばすが、当たった感触がない。

 

「チッ」

 

近くの木に背中を押し付け、ヴィーザルを正面に立てながら杖代わりにする。

何処だ、何処から撃たれた……?

そもそも殺気も何も感じなかった。ヴィーザルも感知していなかったということは超遠距離からの狙撃か、或いは──。

 

「こちらです」

 

「な──」

 

衝撃。

景色が遠退く。

自分が蹴られた、と理解したのは木を何本かへし折って地面に叩き付けられた後だった。

 

「ッ、カ……」

 

反応できなかった。

どうやら思った以上に消耗していたらしい。それに加えて相手のこの強さ。

 

「ハ──悪い冗談だな、クソッタレ」

 

あらぬ方向に曲がった左腕はもう使い物にならない。

右足は撃ち抜かれ、思うように動かない。

満身創痍ってヤツか?

 

「お父様から、貴方を連れて来るよう命令を受けました。抵抗は無意味です。投降してください」

 

半分赤く染まった視界で俺を蹴り飛ばした奴を見る。

黒い長髪、端整な顔立ち、黒い鎧のようなボディスーツ。間違いない、コイツらは報告にあった──。

 

「テメェらが『姉妹達(シスターズ)』ってヤツか」

 

「姉妹達?いいえ、その名は仮初め」

 

なんだ?声が増えて……

 

「私達にはお父様から付けられた名があります」

 

「新しきヒト」

 

「新しき家族」

 

「生死の概念を超えた霊長」

 

『ラーム・ラハム』

 

五十の声が名乗る。それが至上と言うように。

 

「さあ、クレン・フォールティア。私達と来て下さい」

 

「私達なら、その渇きを癒すことが出来ます」

 

ラーム・ラハム達が手を差し出してくる。

現状の力の差は明らかで、こっちは文字通りのズタボロ。

良すぎるタイミングでこの状況。癪だが、マクスウェルの手の上だったってことか。

 

「──わかった。投降してやるよ」

 

両手……は上がらないから右手だけ上げて無抵抗の意思を示す。

おまけにヴィーザルを待機状態にした所で連中もそれを認めた。

 

「投降、確認しました」

 

「こちらに。ご案内します」

 

「ああ」

 

漸く血の止まった脚を引きずりながら歩き出す。

 

──熱い。

 

奇妙な衝動を、連れたまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クレンの反応は!?」

 

「魔力感知反応無し、生体反応もまだ感知できません!」

 

「あのバカ、一体どこ行きやがった……!」

 

怒号混じりの喧騒の中、ヴィータは苛立たしげに壁を殴った。

クレンがラボから去ってすぐ、彼の反応が消失したことに気づいた観測班のアルトからの報告がはやての頭を抱えさせた。

流石にあんなやり取りのあと直ぐに消えるとは思っていなかったのだろう。

当然ブリーフィングルームはざわめきだし、観測所にはひっきり無しに人が出入りしている。

 

「いやぁ、すんげぇことになってんなぁ」

 

そんな様子を観測所でぼんやりと眺めながらヴァイスはぼやく。

 

「何呑気なこと言ってんだ」

 

「そう言われましてもね。そんなに騒ぐことかなぁ、と」

 

「はぁ?」

 

ヴァイスの発言にヴィータは思わず聞き返した。

 

「騒ぐことかな、ってお前……」

 

「いやまぁ、軍規的にはマズイでしょうけども。なんつーか、アイツが仲間外れにされたから逆ギレして~ってのが考えらんないんですよ」

 

そんなヤワなタマじゃないっしょ?とヴァイスは肩を竦める。

それに、と付け加え、

 

「これは勘なんですが……アイツ、絶対派手に何かかましますよ」

 

自信満々にそう言って笑った。

何だかんだ男同士、それなりにつるんだ仲故の発言にヴィータは納得したような、したくないような微妙な表情になった。

そんな会話をしているとアルトが慌てたように声を張り上げた。

 

「ヴィーザルのデバイス反応、ありました!!」

 

「何だと?」

 

落ち着かない様子で待機していたスバル達を諌めていたシグナムが観測所に入ってくる。

 

「場所はどこだ?」

 

「信号から逆探知……出ます」

 

アルトがキーボードを叩き、モニターにエルトリアの惑星儀が現れ、光点が示された。

が。

 

「……おい、アルト。これ間違いないのか?」

 

その場所を見てヴィータが確かめるように問い掛ける。

念のためと、アルトが再度逆探知を行うが、光点の場所は変わらない。

 

「…………」

 

流石のシグナムもその結果に閉口し、静かにモニターを見るしかなかった。

アルトはこれが確実なモノと判断して、ブリーフィングルームに居るはやてに通信を繋いだ。

 

「こちら観測所……八神総隊長、聞こえますか」

 

「聞こえとる。見つかったんか?」

 

「はい……」

 

一度言葉を切って、アルトはモニターを見上げる。

 

 

 

「クレン・フォールティア。彼は今…………赫海の中心に居ます」

 

 

 

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