魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe-   作:フォールティア

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短めです


/35 ti'amtum schrein eindringen

 

「……ここまでが茶番だってのか、テメェ」

 

「茶番も茶番だよ。この程度だと本気で思っていたのかい?」

 

気色の悪い笑みを浮かべてマクスウェルは嗤う。

 

状況は一瞬で最悪に持ち込まれた。

俺達が広げた戦線は波に呑まれ、丘の四方を赫海に囲まれた。

これではランチによる離脱も不可能、空からの離脱なんて悠長なマネなんて出来る筈もない。

 

「赫海を圧縮、遠方から射出することによる大質量攻撃……規模が大きすぎる。もう一発はこない筈よ」

 

「じゃなきゃ困るっての」

 

こんな状況だと言うのに、やけに冷静なランスターがクロスミラージュの銃口を方々に向けながら分析する。

 

「何にせよここからが本番よ。本命が出たんだから、アンタに任せるしか無いわ」

 

「……わかってる」

 

ヴィーザルを構える。

ランスターの言うとおりだ。ここからは俺が行くしかない。

 

「諦めない、か。そうだ、そうでなくちゃいけない。君たちは……君はそうあるべきだ。でなきゃ僕も意味がない」

 

「何をごちゃごちゃと──」

 

「だからこそ、僕は君たちを敵と認めよう。だからこそ──君たちを全力で叩き潰す」

 

空気が、変わった。

飄々としていたマクスウェルの語気が強まると同時、いいようの知れない悪寒が走る。

感じる。理解する。

これから始まるモノは、『波』など歯牙に掛けぬ、隔絶した驚異だと。

 

 

 

[高らかに我らの喜びを告げよ(Laut verkünde unsre Freude)]

 

どくん、と赫海が鼓動する。

 

[悦楽の響きを広げるように(froher Instrumentenschall,)]

 

世界が色を変える。吸い込む大気は重く。視界が歪み出す。

 

[愛しき我が兄弟よ、その心に(jedes Bruders Herz empfinde)この列壁の木霊を受け取るが良い(dieser Mauern Widerhall)]

 

世界と言うテクスチャが塗り潰されていく。

聴こえる悲鳴はさながら世界の断末魔のように。

 

[ここに我らの愛の金の鎖を通して(Denn wir weihen diese Stätte)我らの居場所を献堂するのだから(durch die goldne Bruderkette)]

 

赤く、朱く、緋く、赭く、赫く。

総てが染まっていく。

 

[そして其処にこそ、(und den echten Herzverein)我らの真の絆が産まれるのだから(heut'zu unserm Tempel ein.)]

 

 

[創造(Mi Ha'ash)──]

 

 

[創生万魔 慈母浸殿(ti'amtum schrein eindringen)]

 

 

それは、腐肉の神殿である。

それは、焼鉄の墓場である。

それは、生誕の産湯である。

それは、厄災の神室である。

 

万象一切が赤赫に染まり、中天には黒い太陽が鎮座し、高らかに謳い上げた彼の背後にはおぞましき神殿が顕れていた。

 

 

 

 

「は──」

 

何だ、これは。

視界全てが赫海に埋め尽くされ、世界は変わってしまった。

否が応にも理解する。してしまう。

 

(違いすぎる)

 

力量がどうとか、そんなスケールじゃない。

文字通り、世界が違う。

恐怖が、身体を走る。

 

「ぇ──」

 

傍らで呻き声が上がる。

視界をずらすと、そこには

 

「な、にこれ……脚、が」

 

脚があらぬ方向に曲がったナカジマがいた。

 

「なんで、脚、痛くないの……?ぁ、あ」

 

「スバル!!」

 

悲鳴を上げかけたナカジマを、脇腹がドロリと溶けたランスターが一喝する。

振り返れば、他の奴らも同じだった。

 

キャロは片腕が捻れ、エリオは首が直角に折れ曲がり、シグナムは両腕が地面に延び落ちて、ヴィータは背中がくの字にひしゃげ、高町は顔の片方が溶け、ハラオウンは両足がぐちゃぐちゃに歪み、八神は右半身が関節とは逆方向に曲がっていた。

後方のザフィーラたちも姿が見えにくいが、似たようなものだろう。

 

「やはり、『本物』と『特異点』が居るとこんなものか」

 

それを見て、神殿の上に立つマクスウェルは、まるで予想した実験結果が出て呆れたような顔でそう言った。

 

「本来なら一秒と経たずに僕の家族に出来るのだけど……ままならないモノだね」

 

「テメェ……」

 

「この状況で悲鳴を上げないのは称賛に値するよ。全く度しがたい精神性だ」

 

マクスウェルは乾いた拍手をしながら酷薄に嗤う。

 

「結果は順当。とは言え、残った君たちを同時に相手取るのは少し手間かな」

 

「君『たち』?」

 

「……理由は解りませんが、私達は無事です」

 

隣に来たアミタが銃口をマクスウェルへ向けた。

確かに、コイツら……エルトリア組は姿が変化していない。

 

「特異点……世界が今際の際に定めた最後の楔。厄介だよ本当に。君たちさえ居なければ、目的はもっと早く果たせたのに」

 

「アンタの目的なんでどうでもいいけど、敢えていうなら御愁傷様ね」

 

挑発するように鼻で笑うキリエの身体は、言葉とは裏腹に震えていた。

 

「我らとていつ変質が始まるか解らん。小鴉達のこともある、さっさと終わらせるぞ」

 

「魔力はまだあります」

 

「援護は任せて!」

 

それを補うように上空からディアーチェ達がやってくる。

イリスとユーリも変質した奴らを守護するように立ち上がっていた。

……全くもって奇妙な話だが。

最初に感じた恐怖は、もう消えていた。

その変わりにあるのは──

 

──怒り。

 

この不条理をもたらしたヤツへの怒り。

この状況に陥らせてしまった自分自身への怒り。

この世界への怒り。

そして何よりも──ただマクスウェルという男がムカつく。

 

「ヴィーザル」

 

御随意に(Nach eigenem Ermessen)

 

故に──。

 

「さあ君たちも家族にしてあげよう」

 

「──ぶっ殺す!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────そろそろか」

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