魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe- 作:フォールティア
「コロニーだぁ?」
八神の言に思わず間の抜けた声が出る。
コロニー・フロンティアロック。確か先遣隊が突入した時には既に中は全滅、赫海と同じ様になっていた筈だ。
(赫海と同じ……?)
それはつまりマクスウェルにとっての魂のリソースだ。
元の総人口が分からないからどれほどかは不明だが、戦力を回復されるのは間違いない。
「落下地点は、此処や」
「……だろうな」
野郎、自分が
恐らく、地上の赫海の残量が規定を下回ると落下するよう仕組んでいたんだろう。
リソースの回復もそうだが、何よりもマズいのはその質量だ。
惑星一つ分の総人口の殆どが入植していたコロニーだ。
その大きさは小惑星と変わらない。
そんな大質量がエルトリアに落ちようものなら、どれ程の被害を生むのかは想像に難くない。
八神の生まれ故郷、地球に有るという核兵器。それと比較にならない威力なのは間違いない。
そしてそんな大質量、大火力に俺の創造世界は『耐え切れない』だろう。
なんの変わりの無い、無人のコロニーであるなら少しは耐えられるだろうが、厄介極まりないことにアレは今や赫海の一部。つまり聖遺物の影響を受けた代物だ。
それが大質量を伴って干渉して来るのだから、その侵蝕に防ぐ手立てがない。
更に問題が一つある。それは、
「アレの落下に、八神達は耐えられない」
俺やマクスウェルはまだ魂のリソースを使えば生き残れるだろう。
しかし普通の人間である八神達は確実に死ぬ。
如何にフォートレスが有ろうが、あんな物をぶつけられれば秒も保たずにエネルギー切れだ。
オープンにした通信越しでは、パラディオンがどうにかコロニーを止められないかと慌ただしくしているのが聞こえる。
【アルカンシェルは!】
【ダメです、冷却間に合いません!】
【コロニー、再加速!速すぎる……あと二分で落下軌道に入ります!!】
【聞こえたか、機動六課!ランチを追加で降ろし、緊急転移魔法で回収する。撤退しろ!!】
ロディック艦長の怒号にも似た声がこの場に居る全員に響く。
撤退……それはつまりこの惑星を見捨てるという事。
あれだけのデカさだ、落ちれば向こう数十、或いは数百年は生命が存在しない惑星になるだろう。
……マクスウェルを除いて。
そうなればヤツの一人勝ちだ。その数十年の間で戦力を増強されればこちらは最早打つ手が無い。
ここで撤退するという事は、将来的な俺達の敗北と同義だ。
これだけの事をやった奴が一人勝ち?俺達が敗ける?
「───────は」
冗談じゃない。笑わせるな。
そんな……そんな事。
【何をしている、早く──】
「なぁ、おいロディック艦長よ。あと何秒でコロニーは地上に落ちる?」
創造世界を解き、見上げた空にハッキリと壁の様に視認出来るコロニーを見ながら問う。
【何を】
「何秒だ」
【……六十秒だ】
「そうかい」
それだけ有れば十分だ。
【一体、何をするつもりだ】
おいおい、この状況でそれを聞くか?
答えなんて分かりきってるだろうに。
「決まってんだろ────コロニーを、吹っ飛ばす」
「ハァ?」
開いた口が塞がらない、とは正にこの事だろう。
遠巻きならがもしっかり聞こえたクレンの一言に、はやては唖然を超えて溜息が出た。
コロニーを?吹っ飛ばす?あの超大質量を?
言っている事はシンプルなのに、脳が理解を拒否しようとするのをどうにか堪える。
【─────】
通信越しではロディック艦長も同じ心境なのか、無言で息を漏らしていた。
あまりに荒唐無稽な所業だ。そんな容易く実行出来るなら艦長だって撤退を命じたりしない。
確かにクレンは魔人だ。魔導師など歯牙にも掛けない、文字通り次元の違う存在だ。
あのマクスウェルをここまで追い詰めたのだから、その力に疑う余地は無い。
だが流石に……
「あんなんどうやって吹っ飛ばすんや……」
もう壁を通り越して空そのものの様に近付いて来ているコロニーを見て、そんな言葉が出てしまう。
だがクレンは、それを一笑して答えた。
「バ火力にはバ火力ぶつけんだよ」
簡単だろ?等と付け足して戯けたように肩を竦めて見せた。
そして徐ろに歩きだすと、未だ壊れた様に笑いながら跪くマクスウェルへと近付き──
「おい」
その顔面に蹴りを叩き込んだ。
なんの備えもなくモロに入った蹴りに倒れたマクスウェルの頭を掴み上げ、顔を睨み付ける。
「そんなに会いてぇんなら早めに『みんな』とやらに会わせてやるよ、マクスウェル」
「ハハハ、ハハ────ハ?」
余りの強い衝撃に、マクスウェルの瞳に僅かながら理性の光が戻る。
だが、理性を取り戻すには些か遅きに失したようだ。
…………或いは理性など、取り戻さないほうが良かったのかも知れない。
いよいよ大気による摩擦で赤熱化したコロニーが迫ってきている。
そのコロニーに向かってクレンは、マクスウェルを
「そんじゃあ……行きやがれぇ!!」
投げた。
【「──ハァ!?」】
「よし、行ったな。そんじゃあ──」
ぶん投げたマクスウェルがコロニーへと向かって飛んでいったのを確認して、俺はヴィーザルを構えた。
ボロボロとはいえ、どうせアイツも魔人だ。あの程度じゃ死なない。
だから──
「いくぜ、ヴィーザル」
【
この一撃で殺し切る。
十字剣となったヴィーザルという炉心に魂という火を焚べる。
凝縮されてなお燃え盛る魂が、光となって溢れ出す。
青褪めた焔が剣を覆い、零れ落ちる。
その熱量が地を焼き溶かし、足が埋もれる。
構わず、魂を更に込める。
──これは俺の復讐ではない。
──これは、この星に住まう凡ての復讐だ。
その渇望を、俺という存在全てを使ってヤツに叩き付ける。
大気が揺らぎ、稲妻が弾ける、超局所的天変地異。
その『余力』さえも剣へと込める。
星を思い、人を想い、そして唯一人を憎み、憎悪し、怨讐を誓った魂達の焔が一振りの剣へと収まった。
「──報復の刻は来た」
振り被り、ただ告げる。
耳朶を叩く轟音も、けたたましいマクスウェルの凶笑も意識から抜け落ちる。
コロニーに磔にされたマクスウェルを睨み、俺は
「
剣を振り下ろした。
剣先から光が放たれ、そして
世界から、色が消えた。
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