魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe-   作:フォールティア

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/02 Vorhersage

 

「臨時査察って……機動六課の?」

 

「うん……」

 

午後、機動六課の総隊長の執務室には、フェイトとはやてが悩み顔で話していた。

 

「地上本部にそういう動きがあるんよ……」

 

「地上本部の査察はかなり厳しいって聞くけど」

 

「うちはただでさえツッコミどころ満載の部隊やしなぁ」

 

「今配置やシフトの変更があったら、かなり致命的だよ」

 

エルトリアの一件で、ただでさえ本局から睨まれていると言うのに、ここに来て追い打ちを掛けるように地上本部の査察……はやてをして、頭を抱えたくなる事態だ。

口八丁手八丁、散々誤魔化し煙に巻きとして来たが、地上本部には効きが悪い。

 

「うぅ〜、どうにか乗り切る手を考えんと」

 

「……これ、査察対策にも関係するんだけど、六課設立の本当の理由、そろそろ聞いても良いかな」

 

機動六課。レリックを初めとしたロストロギア関連の危険任務を専任とする、古代遺物管理部の機動課、つまり実働部隊……というのが設立の理由だ。

確かに現場に専任出来る部隊が必要なのはわかる。しかし他の課でもそれぞれ少数ではあるがそういった隊は保有している。

そうなると、態々新しい課を作る理由も薄い。

元の状態で維持出来ていたのだから。

なのに実際はこうして機動六課は設立され、維持されている。

査察官の資格を持つフェイトから見て、この課の設立理由は疑問に思うには十分だった。

 

「そうやね……まあ、そろそろええタイミングかな。これから聖王教会本部、カリムん所に行くんよ。クロノ君も来る」

 

「クロノも?」

 

「なのはちゃんと一緒に付いてきてくれるかな?そこでまとめて話すから」

 

「うん、わかった……なのは、戻ってるかな」

 

はやての提案を了承して、フェイトはなのはに連絡すべく空間投影されたディスプレイから通信画面を開いた。

 

【う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!゛!゛】

 

途端映し出されたのは幼女の泣き顔と盛大な泣き声、そしてその幼女に服を掴まれたなのはとクレン、それを何とか宥めようとするスバル達だった。

 

【ちょっと待てヴィヴィオ!そこは掴むな引っ張るな!ベルトが外れんだろうが!】

 

【い゛っ゛ち゛ゃ゛や゛だ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!】

 

【いやマジで待て、待ってくれズボンからやべぇ音がしてるから!?露出癖なんざ持ち合わせてねぇよ!?力強えなオイ!!】

 

「な、なのは、これは一体……」

 

画面越しに鼓膜を叩く大絶叫を聞きながらなのはに問うと、苦笑が返ってきた。

 

【あー、あはは、実は……】

 

【あっ】

 

【あっ】

 

「「あっ」」

 

……答えようとしたタイミングでクレンのズボンが遂に天寿を迎えた。

 

 

「……ふ、殺せよ」

 

慌てたはやてとフェイトがなのは達の居る部屋に入ると、真っ白に燃え尽きたクレンが腰にブランケットを巻いた状態で部屋の隅に座っていた。

それをフリードとエリオが神妙な面持ちで慰めている。

件の少女は相変わらずなのはの足に縋り付いたまま、片手には無惨な姿になったズボンが握られていた。

……正にカオスである。

 

「これはひどい」

 

思わず率直な感想が出てしまった。

 

「……六課の誇るエースオブエース、聖遺物使いも、子供の前じゃ形無しやね」

 

気を取り直してなのはに話掛けつつ、姿勢を正したスバル達に休むよう伝えると、フェイトにアイコンタクトを送る。

 

(お願いできる?)

 

(任せて)

 

頷き一つ、フェイトは自然体で少女──ヴィヴィオへと近づいていった。

フェイトにヴィヴィオを任せ、はやてはクレンに歩み寄る。

 

「派手にやられたなぁ」

 

「ああ、八神か……」

 

漸くはやてが居たことに気付いたクレンが憔悴しきった顔を上げた。

さながら戦地帰りの兵士めいた顔に、苦笑することしか出来ない。

 

「まさかパンツまで持ってかれるとはな……エリオのカバーが無かったら終わってたぞ」

 

「クレンさんの『ドラゴン』はなんとか守り通せました」

 

「ああ、マジで良くやってくれた。昼飯のデザートを進呈しよう」

 

「ありがとうございます!」

 

「何やのこの会話……ドラゴン?」

 

男同士の謎の友情に突っ込みつつ、このままだといけないと咳払いをして空気を切り替える。

 

「えーと、クレンは午後空いとる?」

 

「午後は……いや、何も無いな。どうかしたのか?」

 

「私ら今から聖王教会の本部に行くんやけど、一緒に来る?」

 

「それは構わないが……大丈夫か?」

 

クレンの視線の先にはフェイトに宥められ、なんとか落ち着いたヴィヴィオの姿があった。

雛鳥の刷り込みか、或いは別の何かがあったのか、ヴィヴィオはなのはとクレンにべったりだったようだ。

彼女は目覚めて間もなく、直ぐに離れるのは気が咎めるのだろう。

 

「今シッターさん呼んだし、フェイトちゃんのおかげで落ち着いとるから大丈夫や」

 

そこまで言ってから、はやてはクレンに念話を送る。

 

【……シスターのこと、気になるんやろ?】

 

【お見通しかよ……】

 

これには敵わないと肩を竦ませ、クレンは大仰に頷いてみせた。

 

「了解だ、着いていく。エリオ悪い、俺の部屋から替えのズボンとベルト持ってきてくれるか」

 

「わかりました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘリに揺られること数十分。

俺達は山間にある聖王教会本部へと足を踏み入れた。

深緑の屋根と少し色褪せた石造りの建屋は大きく、それでいて威圧感は無く、森と同化するような柔らかな印象を見るものに与える。

隔離街の古木造りとは当然ながら見てくれからして違う。流石本部。

案内人に連れられ長い廊下を何本も歩いた先、少し大きな扉に入ると、金髪の女性が俺達を迎えた。

 

「高町なのは一等空尉であります」

 

「フェイト・T・ハラオウン執務官です」

 

ああ、そう言うのか。

 

「クレン・フォールティア嘱託魔導士d……です」

 

なれない敬語と敬礼をすると、柔和な笑みを浮かべて女が歩み寄ってきた。

 

「はじめまして、聖王教会教会騎士団騎士、カリム・グラシアと申します」

 

そういって静かに一礼する女性、グラシアの所作は何処となく俺の知るシスターに良く似ていた。

グラシアに促され、部屋の奥に進むと、窓際の円卓には既に先客が居た。

 

「ハラオウン提督?」

 

「少し遅かったな、四人とも」

 

書面と通信越しにしか目にしていない提督が座っていた。

その目にはうっすら隈が出来ていた。

まあ十中八九原因はエルトリアで好き勝手に暴れた俺達の火消しだろうな……。

 

「まあ、ちょっとしたハプニングがあって……」

 

「ハプニング?」

 

「「…………」」

 

八神の言に高町とハラオウンがさっと目を逸らした。

俺は天を仰いだ。

頼む、察してくれ。

 

「…………まあ、深くは聞かないでおこう。とりあえず、座ってくれ」

 

ありがとう提督、サンキュー提督。

俺は今、心からアンタを尊敬するよ。

席に着いた所で、少しの談笑の後。

八神は口火を切った。

 

「さて──先々月の一件についてのまとめと、改めて機動六課設立の裏表。それから……今後の話をしよか」

 

カーテンが閉ざされ、部屋が薄暗くなる中、提督が話始める。

 

「まず六課設立の表向きの理由は、ロストロギア、レリックの対策と、独立性の高い、少数精鋭の実験例……知っての通り、六課の後見人は僕と騎士カリム。そして僕とフェイトの母親で上官、リンディ・ハラオウンだ。それからかの三提督も設立を認め、協力を約束してくれている」

 

円卓に投影される画像には、入隊するときにチラ見した老人達が映っていた。

高町達の反応を見るに、有名人だったのか。それもかなり権力のある。

 

「その理由は、私の能力と関係があります」

 

提督の話を継いで騎士グラシアが立ち、持っていた紙の束を紐解くと、淡い光を纏ったそれがひとりでにバラけて宙に浮いた。

 

「私の能力、プロフェーティン・シュリフテン。これは最短で半年、最長で数年先の未来を詩文形式で書き出す、予言書の作成が出来ます」

 

「予言書……?」

 

しれっととんでもねぇ能力だな……。

 

「二つの月の魔力が揃わないと発動出来ませんから、出力出来るのは年に一度だけですが……そこに書かれた文書がこれです」

 

カリムがそう言うと、紙束の一枚がそれぞれ高町、ハラオウン、俺の目の前に躍り出ると、文字を浮かび上がらせた。

これは──。

 

「予言の中身も古代ベルカ語で、解釈によって意味が変わる難解な文章。世界に起こる事件をランダムに書き起こすだけで、的中率はせいぜい割と当たる占い程度──」

 

「『古き結晶と無限の欲望集い交わる地 死せる王の元、聖地よりかの翼が蘇る 死者達が踊り、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち 其れを先駆けに、数多の海を渡る法の船も焼け落ちる』」

 

「え?」

 

「クレン、君はまさか、読めるのか──!?」

 

「あ?ああ、読めるな?」

 

口をついて読んでしまったが、驚かれるようなことか?

 

「これ、まだ続きがあるな」

 

「続き?けど解読では貴方が読んだ所までだった筈……読んでくれるかしら」

 

騎士グラシアに頼まれ、もう一度文章を読み込む。

確か……ここから。

 

『そして法と理が焼け落ちた後、昏き地の底より死血を啜りし竜が現れる 境界は崩れ去り、数多の海は虚無へ沈む 終結の竜は果てへと至り、回帰に牙を剥く』

 

「──だってよ」

 

読み終えて周りを見れば全員一様に顔を蒼くしていた。

ああそりゃそうだ。読んだ俺だって意味に気付く。

これは、この予言の結末は──

 

 

 

 

 

──世界の、終りだ。

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