魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe-   作:フォールティア

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「……その予言は、本当なのか?」

 

「読んだままを言っただけさ」

 

暫くの沈黙の後、絞り出されたクロノ提督の言葉に俺も頭を抱えたくなる衝動を抑えて答えた。

 

「前半部分……古き結晶はレリック、無限の欲望は同じ二つ名を持つスカリエッティ。中間は分からないけど、中つ法の塔は地上本部、法の船は恐らく本局の事、だよね」

 

動揺から立ち返ったハラオウンが言った解釈を、八神が首肯した。

 

「うん。この予言をそう解釈すると、結果として地上本部の壊滅。そして最終的に管理局システムの崩壊が示唆されてるんよ」

 

「あくまでよく当たる占い程度。だからと言って無視も出来ない内容……実際にスカリエッティが表に出て来た以上、対策を取らないわけにもいかなかったんだね」

 

「ええ、そうです」

 

高町の言に創始者の三人は頷いた。

予言に対抗する、現状の最高戦力を終結した精鋭部隊。

それが機動六課が生まれた本当の理由。

 

「問題は、クレンが解読した後半部分だな……意味の読み解け無い部分が多いが、一つだけ解る部分がある」

 

「『数多の海は虚無へ沈む』、ですね」

 

数多の海、それは前半の一節『数多の海を渡る法の船』から見て、恐らく管理世界……いや、全ての世界の事だろう。

虚無は虚数空間、或いはそれですら無い何か。

何にせよ碌でもない結末になるのは確かだろう。

 

「死血を啜りし竜に『回帰』、か。ここに来て新しいワードが出るとはな」

 

「あとで無限書庫に調べて貰うようにせんとなぁ」

 

無限書庫……確か、管理世界の殆どの書籍やデータが集められた場所、だったか。

 

「教会でも調べてみます」

 

「この件は三提督にも上げておこう……さて、分からない事は追々として。先の一件と今後についてだ」

 

クロノ提督がそう言って紅茶を飲み込んだことで、この話題は締めくくられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会議は回りに回り、終わった頃には夕方になっていた。

開かれたカーテンからは茜色が射し込んでいる。

八神達を見れば、まだ何やら話し込んでいた。

うわすっげぇ悪人顔、提督引いてんぞ八神。

 

「あの、クレンさん……でよかったかしら」

 

旧交の邪魔をするのも悪い気がするので離れた所で壁に寄りかかっていると、グラシア……だったかが話しかけて来た。

 

「呼び捨てで構わね……ないです」

 

「ふふ、なら私も砕けた話し方で構わないわ、クレン」

 

「んぐ……」

 

あー、畜生、やりにくい!!

なんだ、シスターってのはどいつもこいつもこんなんなのか!?

 

「OK、わかったグラシア」

 

「名字呼びが気になるけど、まあ良いでしょう」

 

「はぁ……で、どうしたよ。向こうは良いのか?」

 

「ええ。それよりも気になることがあって」

 

「古代ベルカ語か」

 

グラシアが俺の目を真っ直ぐに見てくる。

彼女の話じゃ古代ベルカ語は読み解くのが難解なモノという扱いだ。

文章ともなればさらに難易度が跳ね上がる。

そんな文章の未解読の部分を何故即座に読めたのかが気になるらしい。

と言っても。

 

「俺にもわからん。何でか読めた」

 

「本当に?」

 

「こんな事で嘘ついてどうすんだよ」

 

猜疑の眼差しに肩を竦める。

俺自身、これまでの人生で古代ベルカ語なんて見たことが無かった。

なのに読めた、理解出来た。

その言語を最初から知っていた(・・・・・・・・・・・・・・)ように。

これも、俺の魂に関わる事なのだろうか。

俺の答えに納得しないまでも呑み込んだのか、グラシアが肩の力を抜いた。

 

「わかったわ。ごめんなさい、気になってしまって」

 

「いや、気にしないでくれ」

 

……そう言えば騎士って言うくらいだし、グラシアなら何か知ってるかもしれない。

 

「なあ、一つ聞きたいんだが、良いか?」

 

「何かしら?」

 

夕日が山陰に沈む中、俺はグラシアに問う。

 

「シスター……クラウディア・イェルザレムって名前を知らないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になり、管理局に帰って来た俺は話があると言う八神達と別れ、一足先にヴィヴィオが保護されている部屋へ向かった。

 

「よおエリオ、キャロ」

 

「あ、クレンさん!」

 

「おかえりなさい!」

 

部屋に入ると窓際のソファで横並びに座った三人が顔を上げた。

どうやらあのあと付きっ切りで面倒を見ていたようだ。

 

「シッターは?」

 

「今は夕飯を片付けに」

 

「そうか」

 

テーブルの上には絵本が何冊も置かれ、ヴィヴィオの周りには何体ものぬいぐるみがさながら彼女を守るように鎮座していた。

ヴィヴィオに視線を移すと、がっつり目が合った。

 

「…………」

 

え、なんだ?どういう感情なんだこの顔は……。

ぱっと見では無表情。だが何か言いたげな雰囲気も感じる。

躊躇ってるのか……?

 

「どうした、ヴィヴィオ」

 

膝を折り、目線の高さを合わせて聞いてみる。

隔離街で子供を保護していた時は何時もこうしていた。

暫くそのまま静観していると、おずおずとヴィヴィオが口を開いた。

 

「お……」

 

「お?」

 

「おじ……うぅ……」

 

「……?」

 

 

 

「おじいちゃん!!」

 

 

そう言って抱きついてくるヴィヴィオ。

……………………………って。

 

「─────────────────は?」

 

「「えっ」」

 

「「えぇぇぇぇ!!!???」」

 

何時から居た高町&ハラオウンよ。

いや今はそんなことはどうでもいい、重要じゃない。

というかそれどころじゃない。

え、何、おじいちゃん?おじさんならまぁ二千歩譲ってまだ分かる。分かりたくないけどそうしよう。

言うに事欠いておじいちゃんて……えぇ…………。

何故か抱きついたままぐずり始めたヴィヴィオを抱きかかえながら天を仰ぐ。

 

「おじいちゃん……おじいちゃんて……」

 

「クレンさんて、19歳……ですよね?」

 

「頼むキャロ、そこで疑問符を出さないでくれ。なんか自信無くなってきた」

 

あっれおかしいな、俺まだ若い筈だよな?

まあ確かに詳しい年齢は分からんが、シャマルの検査で肉体的には19歳って事になってる。

 

「えっと……クレン君。どういうこと?」

 

「お れ が き き た い」

 

高町の問いに俺はそうとしか返せない。

俺の人生においてヴィヴィオみたいな子供は関わった事が無いし見たこともない。

そもそもおじいちゃんと呼ばれる家族関係を持っていない。

というか年齢的にどう考えても有り得ない。

 

「えっ、とだな、ヴィヴィオ。俺はヴィヴィオのおじいちゃんでは無「おじいちゃん!!」……せめて最後まで言わせてくれよ」

 

聖王教会、管理局の医療機関曰く、ヴィヴィオは記憶喪失或いは記憶がそもそも無い。

なのに俺をおじいちゃんと呼んでいる。

 

「クレン君の何かが、ヴィヴィオの記憶を刺激したのかな……」

 

「っと……どうするよ」

 

高町とハラオウンに気付いたヴィヴィオが今度は高町に抱きつきに行くのを見送ってハラオウンに聞く。

理由はわからないが、こうなった以上一度シャマルあたりに診てもらうべきだとは思うが……。

 

「今はやめておこう。まだ来たばかりで不安だろうし、あまり環境を変えるのは良くないかもだから。報告は私から上げておくよ」

 

「……了解した」

 

ハラオウンの言う事も一理ある。

そう納得し、エリオとキャロを連れ部屋を出ようとすると。

 

「おじいちゃんいっちゃやだ……」

 

と、ヴィヴィオに裾を掴まれた。

 

「だから俺はおじいちゃんじゃ──」

 

流石に一言言っておこう、俺の名誉の為にも──

 

「…………」

 

「もうおじいちゃんで良いか……」

 

──名誉とか最初から無いから捨てた。

 

「「クレンさん!?」」

 

仕方ねぇだろ、この目は裏切れねぇって。

だが一つだけ気になることがある。

これだけは確かめなきゃならない事が。

 

「なぁ、お前ら」

 

「何?クレン君」

 

「──俺って、臭うか?」

 

「え、気にするの……そこ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、宜しかったのですか本当に」

 

「構わないさウーノ。記憶が想起されるなら計画を前倒しにすれば良し、そうでないなら計画通りに。何も変わらないさ、結果はね」

 

暗い洞窟の中、ウーノと呼んだ紫髪の女性の問いにスカリエッティはキーボードを打つ指を止めずに淡々と答えた。

空間投影されたモニターには幾百幾千幾万もの文字の羅列が幾何学模様を構築している。

 

「彼の血族──諸王時代最後の血統。そして今に至る時代の始祖にして王。どれほど肉体から記憶を消しても、魂に刻まれた記憶は消せはしない」

 

さながら曲を奏でる様な打鍵は止まる事無く、尚も加速していく。

 

「全く、回帰の蛇とやらも皮肉な真似をしてくれる。こちらが一族のクローンから魂の励起をしていると言うのに、あっさりと『本物』を出してくるとはね」

 

だからこそ、『神』なのだろう。

だからこそ、彼は己の渇望が不可能で可能(・・・・・・)だと確信する。

この渇望が渇望足り得ると、魂から確信している。

 

「だが、おかげで『門』の完成が間近だ。あとは……」

 

指が止まり、スカリエッティが顔を上げる。

その視線の先には、幾つものレリックと呼ばれる真紅の結晶が宙に鎮座していた。

 

「もうすぐ、もうすぐだ……」

 

恍惚とそれを眺めスカリエッティは嘯く。

 

 

 

「私は神を────造る(・・)

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