魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe-   作:フォールティア

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/05 Ein neuer Wind

 

翌朝、早朝訓練の為に屋外シミュレーターへとやって来た俺達の前に、見覚えのない人物が二人、高町と共に立っていた。

 

「陸士108部隊より一時出向となりました、ギンガ・ナカジマです」

 

「デバイス技士官、マリエル・アテンザです。よろしくね」

 

ギンガ、とか言う方はナカジマとそっくりの顔立ちだ。双子だろうか。

それより問題は……

 

「気軽に声掛けてね~」

 

マリエルとかいう奴だ。なんてこった、テンションぶち上がってる時のシャーリーと同じ目をしてやがる。

そして目線が俺──というより背中に背負ったヴィーザルに固定されて全く瞬きしてねぇ……。

 

主、何故か寒気がします(Herr, ich bekomme aus irgendeinem Grund Gänsehaut)

 

と、小声でヴィーザル。

いや、うん。デバイス(?)に寒気があんのかとか聞きたいがお前の心労は察するぞ。

大丈夫、何かあっても庇えるはずだ。

 

「クレン君、だったかな?」

 

「あ、ああ……」

 

「あとで、じっくり、デ バ イ ス 見 せ て ね ?」

 

「アッ、ハイ」

 

【…………】

 

ごめんこれ無理。

なんで隔離街のイカレマッドサイエンティスト共より闇深い目ぇしてんのコイツ……え、怖ぁ。

 

「し、紹介も済んだ事だし、朝練行っとくか!!」

 

空気を読んだのか、ヴィータが気持ち大きめの声でそう言った。

そのおかげか視線も漸く俺(ヴィーザル)から離れてくれたようだ。

ヴィータには後で礼を言おう。

 

「で、俺は今日はどうする?」

 

「私と軽い模擬戦かな。その後は──」

 

俺の問いに答えた高町が不意に目線をずらす。

その先にはナカジマとナカジマ姉(そう推測した)がストレッチをしていた。

 

「観戦かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で。模擬戦なんだが。

 

「高町テメェ!どう考えても軽くねぇだろこれ!!」

 

「そっちに合わせてるつもりなんだけど!」

 

群がる魔力弾の雨霰と剣波の応酬、次々ぶっ壊されていく眼下の建造物群。

そう……どっからどうみてもガチバトルである。

軽い模擬戦とは????

 

ルールは昨日と同じ一発被弾でアウトのサドンデス。

高町はリミッターと砲撃魔法禁止、俺はヴィーザルを使うわけにもいかないので量産品の剣型ストレージデバイスの使用とそれによる固有魔法使用不可と、お互いにハンデはある……。

 

あるんだが、却ってそのせいで決着が付かない。

 

「ディバイダーとフォートレス使っちゃダメ?」

 

「殺す気か!?」

 

高速低速変速入り混じる桜色の魔力弾が殺到するのを、銀鎖を振り回すことで軌道を反らし、そのまま銀鎖の蛇頭を差し向けながら同時に突撃する。

 

「けどこのままだと朝練終わりまでかかっちゃうよ」

 

だがそれを安易に許す高町ではない。

後方へ飛び退りながら放たれる弾幕から、さらに迂回する軌道の魔力弾が上下左右から殺到する。

 

「ハッ、だったらそれまでに終わらせてやるよ」

 

正面に30、包囲に15ずつ。

銀鎖を引き戻す?残念だがこれの対処は間に合わない。

なら、やることは一つ。

 

「ッラァ!!」

 

直撃コースのモノを全部ぶった斬る。

それ以外は必要最小限の動作で回避しつつ手首のスナップと空中機動で次々と斬り捨てていく。

我ながら曲芸めいた動きだと自画自賛したくなるな、コイツは……!

 

10、16、23、41……

 

正に波濤と呼ぶに相応しい弾幕を斬り続けながら、銀鎖を手繰る。

幾つか魔力弾にぶつかった感触の後、不意にその感覚が無くなる。

この感じ……狙い通り、弾幕を抜けたか!

 

「なっ……!」

 

高町の驚いた声が聞こえ、薄くなった弾幕から表情も見えた。

驚愕に目を見開いた顔……だった。

 

「相討ち、だね」

 

転じて、苦笑いに変わる。

それと同時、俺が最後の魔力弾に剣を振り下ろそうとした瞬間。

魔力弾が自ら光を強く放った。

まさか、

 

「近接信管──!?」

 

打撃音と爆発音が、シミュレーターの空に響いた。

 

 

模擬戦の結果は相討ち、つまり双方リタイアである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、スバル」

 

「何、ギン姉?」

 

「ここって、何時もあんな(・・・)なの……?」

 

なのはとクレンの模擬戦が終わり、現在ナカジマ姉妹による模擬戦。

 

拳と蹴りの応酬を繰り返しながらもギンガは戸惑いを隠せなかった。

それもその筈、あんな模擬戦は見たことが無いからだ。

苛烈を通り越して最早実戦と大差無い威力のぶつけ合い。だというのに当の本人達はさも準備運動でしたという体でこの模擬戦をモニタリングしている。

ギンガは若干、出向してきた事を後悔したくなってきていた。

 

「流石に何時もじゃない、よっ!」

 

「くっ」

 

「けどなのはさんだけとは珍しいかも」

 

蹴りと蹴りがぶつかり合い、お互いを弾くように距離を取る。

 

「大体は隊長陣四人同時だし」

 

「は?…………は?」

 

訂正、ギンガは出向を後悔した。

一対一であれな光景だと言うのに四対一?それが毎回?

一体どんな罪を犯せばそんな地獄に叩き込まれるというのか。

 

「余所見厳禁!」

 

「甘い!」

 

隙を突いたスバルの拳をプロテクションで防ぎ、ガラ空きの胴へカウンターを叩き込む。

が、これもまたプロテクションで防がれる。

 

(……硬い)

 

以前であれば間違いなく砕いていただろう防御が抜けない。

当っていた攻撃もスレスレで回避される。

間違いなく、スバルは六課に来て急速に成長している。

正直、あんな光景を目の当たりにした後だと素直に喜んでいいのか分からないが、喜ばしいことに変わりはない。

 

「相棒!」

 

「ブリッツキャリバー!」

 

と、妹の成長を頼もしく思いつつ、模擬戦は続く。

全くの同時にウィングロードが展開され、戦いの舞台は空中へと移っていた。

 

 

 

 

 

 

 

ナカジマ姉妹の模擬戦。

結果はナカジマ姉の勝利で終わった。

とはいえ紙一重での敗北、模擬戦の結果としては上々だろう。

 

「反応も防御も良し、攻めの姿勢も悪くなかった」

 

「だが超至近距離でのスピードで一手遅かったな。しかし、動きはよかったぞ」

 

「ありがとうございます!」

 

ヴィータとシグナムの総評を受けて、ナカジマの顔が綻ぶのを横目に、俺は高町とハラオウンに連れられナカジマ姉の所に居た。

 

「改めて紹介するね。彼がクレン・フォールティア君」

 

「よろしく」

 

「私はギンガ・ナカジマ。スバルと混ざっちゃうでしょうし、ギンガで構いませんよ」

 

「ああ、分かった」

 

闊達なナカジマの姉だけあって、物腰は落ち着いたものだ。

戦闘スタイルはゴリゴリのインファイターなのが以外にすら思える。

しかもエルトリアを経てかなりの成長を見せたナカジマを下せる程の実力者と来た。

一時出向とはいえ、ナカジマ達にはいい刺激になるだろう。

 

「…………」

 

そんな事を考えていると、ギンガにじっと見られていた。

 

「どうかしたか?」

 

「ああ、えっと……普通、なんだなって」

 

「普通?」

 

一体どういう意味だ?

 

「失礼な話ですが、隔離街から来たと聞いていて、その……」

 

「あぁ……」

 

六課の皆はもう慣れたものだから忘れていたが、隔離街の人間と聞いて普通の人は良い顔をしない。

重犯罪者達の檻にして楽園。それが一般における隔離街の認識だ。

かつて住んでいた人間として、その認識は間違っていない。

どいつもこいつもロクデナシのヒトゴロシ、マトモな感性の奴なんていやしない。

……一人を除いて。

 

「ごめんなさい、こんな事」

 

「いや、気にしないでくれ。アンタは姉なんだ、妹が居るトコに隔離街出身者なんて心配して当たり前だ」

 

そう、全く持って正しい反応だし、そうするべきだとも思う。

しかし、それをして俺を普通と呼ぶのか。

 

「普通、普通か……」

 

相変わらず渇望は在るし、人を殺した罪は消えないだろうけれど。

俺を普通と、そう足らしめているモノがあると言うのなら。

それはきっと。

 

「コイツらのおかげ、だな」

 

「なにか言った、クレン君?」

 

「いや、なんでも無い。次の模擬戦があるんだろ?行こうぜ」

 

高町の言葉を適当にはぐらかして歩き出す。

普通に見える事、それが少しだけ誇らしく思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。

 

「じゃあ次はギンガも居ることだし、クレン君を抜いた五人対、隊長副隊長四人でやろうか」

 

「ぇ゜」

 

とんでもない事を言い出した高町に、ギンガが宇宙言語を吐き、

 

「え、なにこれ地獄?」

 

と絶望の言葉を漏らしたのは俺の胸の内に仕舞っておく。

 

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