魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe-   作:フォールティア

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ランスターとの模擬戦から一夜明け、俺はいつも通り朝練に参加していた。

 

「ん?ナカジマとランスターはどうしたんだ?」

 

シミュレーターに来てみれば居るはずの二人が居ない。

見れば高町も居ないじゃないか。

何かあったのかとヴィータに視線を投げると、気まずそうに頭を搔いた。

 

「あー……なんつーか、その、本局で保管してた聖遺物がな?二人の部屋から出てきた」

 

「……………Huh?」

 

朝からクソでかい溜息が出た。

冗談にしちゃ笑いにくいことこの上ない。

ギンガを見てみろ、表情固まったまんま後ろに宇宙見えてんぞ。

 

「残念ながら冗談でも嘘でも無い。三人とシャーリーは昨日の晩から本局に聖遺物の返却と事情説明に行っている」

 

今にも眉間を揉みそうな顔でシグナムがヴィータの後を継いで言った。

 

「こちらも本局も大事にはしたくないとの事で、内密に処理することになっている。この事は口外厳禁だ、いいな?」

 

「「「は、はい!」」」

 

そりゃまあ、本局は管理責任の瑕疵を表沙汰には出来ないし、六課も公開陳述会を前に要らぬ火種を抱えたくはないだろうし、内々で終わらせるのが一番ではあるか。

『地上』のレジアス?だったかに嗅ぎつけられたら面倒なのもあるだろう。

 

「そう言う訳で三人は今日は一日居ないから、訓練は残ったお前らだけになる。何時もより時間掛けられる分、みっちり行くぞ!」

 

「「「はい!!」」」

 

ヴィータの言葉に、気合の入った三人の声が朝空に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝練も終わり、午前の仕事を済ませ、昼食を摂り、現在午後の16時。

早めの午後練が無事終了して一風呂浴びた後、俺は浴場近くの休憩所で、エリオとキャロに挟まれていた。

フリードは何故か俺の頭の上で寝ている。

 

「ここの動きなんですけど、被弾を抑えるにはどうすれば良かったんでしょうか?」

 

「私も、ブーストを掛けるべきか一瞬悩んでしまって」

 

「これはだな……」

 

投影モニターに流れる今日の模擬戦を見ながらの反省会だ。

ゆったりとソファに並んで座りながらこうするのが俺達三人と一匹の最近のルーティンになっている。

俺としてはハラオウンやシグナムに聞いた方が早いと思うんだが、シグナム曰く、

 

「私達は模擬戦や訓練内でそう言った話は済ませてしまっているし、私達とは異なる視点での解説もエリオ達の良い刺激になるだろう。すまないが付き合ってやってくれ」

 

……らしい。

シグナムに体良く使われてる気がしなくもないが、エリオ達はそれを望んでいるようだし、こうして付き合っている。

 

「このタイミングじゃプロテクションを展開しても中途半端な発動で簡単に割られるだろうな。退くのもダメだ」

 

「それじゃあ後は」

 

「そう、前だ。ストラーダの加速で相手の懐に一気に飛び込む。そうすりゃ技の起点を潰すことも可能だし、そのまますれ違って離脱も出来るだろ?」

 

エリオは映像から目を離さず、今どき珍しい紙の手帳にメモを取っていた。

なんでも、ハラオウンが入隊の時にプレゼントしてくれた物らしく、以来こうして模擬戦での反省点などを書き留めているらしい。

実際、エリオはメモした事を次の訓練では必ず実践しモノにしている。

子供ながらの吸収力の高さ故だろうか、成長の早さで言えば部隊随一だろう。

 

「ブーストのタイミングはもう少し早くても良かったかもな。その後のフリードの火球での支援はナイスフォローだ。エリオが立て直せる時間を稼ぐ良い一手だった」

 

キャロはポジションが最後衛のフルバックだからか、ランスターと同様に戦況を見る目が良い。

まだ粗はあるが地上のランスター、空中のキャロの二人で成り立つ戦況分析には最近の模擬戦で何度も苦戦させられた。

正直、完全に前線型の俺の意見を聞いても仕方ないと思うが……。

 

「…………(ニコニコ)」

 

……なんか嬉しそうなので、まあ、良しとしよう。

一通り反省点を洗い出した所で、俺は二人にずっと気になっていた事を聞いてみることにした。

 

「そういや、二人はどうして六課に入ろうと思ったんだ?」

 

二人の過去は以前向こうから話してくれて知っている。

片やクローンとして非人道的実験に利用され、片や竜の力を危険視されて放逐と。

この幼さに降りかかるには酷な災難をその身に受けてきた。

それを引き取って保護したのがハラオウンだ。

そう、あくまで保護だ。二人は別に戦闘に出る必要は無かったし、養護施設で暮らす道もあった筈だ。

それでも尚、こうして戦う道を選んだのか。

俺は気になっていた。

 

「恩返し、だと思います」

 

きっぱりと、キャロが言った。

 

「恩返し?」

 

「私を……私を救ってくれたフェイトさんに、少しでも恩返しがしたい。私を守ってくれた分、今度は私が守りたいって、そう思ったんです」

 

「僕も同じ気持ちです。まあ、まだまだフェイトさんには及ばないんですけど。それでも、少しでもこの恩を返したくて六課に入ったんです」

 

「…………そうか」

 

待ってくれ、眩しすぎて直視できねぇ。

もう純真無垢過ぎてなんで俺こんなとこに居るんだとか思っちまったよ……。

あんだけの過去を経てこんな言葉が出るとか、二人ともスゲェな。

 

「これもハラオウンの影響か?」

 

「クレンさん?」

 

「……お前らは立派だよ、ホントに」

 

本心からそう思う。

恩返しの為に、実力主義の管理局に入ってここまで来たのだから。

その齢でそれ程の覚悟を持って臨んで来たのだから。

 

「ハラオウンに感謝だな。お前達みたいな良いヤツ(・・・・)らに会わせてくれたんだから」

 

「キュ〜……?」

 

と、フリードがどうやら起きたようだ。

時計を見ればもう17時になっていた。丁度食堂が開く頃だ。

……正確な腹時計だな、全く。

 

「よし、飯食いに行くか。今日の日替わりはなんだっけか」

 

「確かトマトスパゲッティじゃ……」

 

「げ、マジか」

 

ソファから立ち上がり、二人と一匹を連れて休憩所を出ると、

 

「…………なにやってんだ、八神、ハラオウン」

 

六課を牽引する隊長陣二人が揃って廊下で顔を抑えてしゃがんでいた。

 

「いや、ちょっとね」

 

「あれや、エモや。エモさに目を焼かれたんよ」

 

「ちょっと何言ってるか分からない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無限書庫。それは時空管理局の管理する世界のほぼ全ての書籍、データが集積する、いわば『世界の記憶を納めた場所』。

自ら淡く光を発する曲線的なモニュメントを中心に、無機質な本棚がさながら塔の如く聳え立つ。

かのアレクサンドリア図書館をも超える蔵書が本棚の中、静かにその背表紙を晒していた。

 

そんな無重力の書庫の中を漂いながら、司書長 ユーノ・スクライアは静かに呟いた。

 

「…………どういう、ことだ?」

 

首元で縛ったブロンドベージュの髪を遊ばせたまま、ユーノは驚愕とも、怒りとも取れる声音で尚も呟く。

 

なのは達の十年来の知己である彼は、以前よりクレンが見た夢──滅びる王国について調べていた。

聖遺物の手掛かりになるかもしれないとはやてに頼まれ、ユーノは伝えられた情報を頼りに近年から過去へと遡りながら歴史書の一つ一つを読み進めていった。

 

積み上げた本が優にニ百を越えた所で手が止まり、今に至る。

ユーノが読んでいた本にはかつてベルカと呼ばれた多次元世界における国の勃興、そして何時、どのように滅んだのかが記されていた。

 

時は諸王時代。その時代の始まりにまで遡る。

ある国が滅ぼされた。

その国の名は『ゼーゲブレヒト』。

当時のベルカの国家間情勢を紐解くに、比較的小規模な国家だったと言えるだろう。

丘陵地帯に囲まれた穏やかな国だったようだ。

それがある日突然、一晩で滅んだ。

唐突に、何の前触れも無く。

前後の歴史を見ても、この国に宣戦布告が行われた事も、周辺国家が軍事行動を取った様子も無い。

むしろゼーゲブレヒトが唐突に消えたことで周辺国家に緊張が走り、後の動乱期に繋がっている。

 

では、一体何がこの国を滅ぼしたのか。

本にはこう書かれていた。

 

『満つる月の晩 深紺蒼眼の邪竜 天より来たれり 数多死を振り撒きて 大地を血に沈め 死血を啜る 後に無限の欲望来たりて 死せる御魂は邪竜の御饌となる』

 

邪竜。そして……無限の欲望。

そのワードは、ユーノを揺らがせるには十分に過ぎた。

彼……さらに言えばなのは達にとって無限の欲望とは即ち『ジェイル・スカリエッティ』に他ならない。

それが何故、こんな遠い過去に記されている?

 

「まさか……本当に?」

 

荒唐無稽な考えが頭を過る。

『──ジェイル・スカリエッティが、数百年前から生きていた』、という仮説が。

普段なら一笑に付しただろう。考えることすらしなかった筈だ。

だが今は違う。実例を知ってしまっている。

クレン・フォールティア、そしてフィル・マクスウェル。

聖遺物遣いが持つ、魂の吸収による不死性。

……不可能では、無いのだろう。

 

「…………」

 

そしてもう一つ。ユーノが注目したもの。

 

深紺蒼眼の邪竜。

 

多くの書物を読んできたユーノですら、これは知識に無かった。

だが不思議とこのワードを見るだけで、背筋が凍るような感覚が走る気がした。

頭を振って悪寒を誤魔化して、眼鏡をかけ直すと端末からレポート画面を開いた。

 

(はやて、今回の事件はもしかすると……予想よりもマズいかもしれない)

 

仄暗い書庫に、電子キーボードを叩く音だけが響いていた。

 

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