魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe-   作:フォールティア

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/13 Tag des Herbstes-1-

 

PM 16:30 時空管理局本局 観測室

 

「システムに異常発生!!観測システムに侵入されてます!」

 

静寂を切り裂くような声が観測室に響くと同時、緊急事態を告げる警告灯が赤く輝いた。

堰を切ったように騒がしく人員が対処に動きだす。

 

「クラッキングにしても速すぎる……!予備システムを起動しろ!!ダメになった所は切り離せ!」

 

壁に数百はあろう管理世界を観測するモニターが、次々とその画面を赤く染めていく。

 

「ウイルスまで侵入してます!感染源は……隔離プログラム!」

 

「何だと!?クソッ、再起動は!?」

 

「再起動もシャットダウンも効きません!」

 

「なら使えなくなったサーバーの主電源を落としてこい!!行け!!」

 

矢継ぎ早に来る報告を捌きながら、責任者である男は忌々しげにモニターを見た。

 

如何に人員不足と言えど、腐っても此処は世に知られし時空管理局、その本丸だ。

当然、情報社会になって久しいこの世界でトップクラスのデータセキュリティを誇っている。

数十万のハッキングを門前払いし、数千万のクラッキングを焼き払い、数億の不正アクセスを触れさせもしなかった、正に鉄壁の城塞。

 

それがこうもあっさりと、薄いヴェールを破るような手軽さで、アクセスを許し、クラッキングされ、ハッキングされ、破壊されている。

 

管理局の人員として、セキュリティ部門、一プログラマとして忸怩たる思いだ。

しかし、そんな思いに浸っていられるほど、男は諦めていなかった。

 

「抗体プログラム作成急げ!通信部門から各所に伝達!!それと本局内の提督に緊急事態だと伝えろ!!システムが生きてる内にやるぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

PM 16:33 時空管理局 作戦指令部

 

「他の管理世界は?」

 

「報告は上がっていません、狙われたのは此処のみのようです」

 

「本丸狙いの一点突破か、やられたな。提督に連絡は?」

 

「通信部門が既に」

 

「よし、地上本部との連絡は?」

 

「未だに繋がりません、緊急連絡チャンネルすら反応が……」

 

観測室の騒動から数分経たず、作戦指令部も事態が急速に進んでいるのを感じていた。

いの一番に管理局の目である観測室が潰された事で、状況把握が依然として進まない中、有線通信で連絡を取り合っているような状況だ。

 

 

「地上とこちらを狙った、同時多発テロだって言うのか!?」

 

「そうとしか考えられん。とにかく今は──」

 

動揺する士官を諌めながら、上官は上を向いて……何かが小さく光ったのが見えた。

 

瞬間。

 

轟────!!

 

観測室は炎に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 地上本部 大会議室

 

 

「──だからこそ、──であるのです」

 

「……つっまんねぇ」

 

昼過ぎに始まった公開陳述会は、時折休憩を挟みながら恙無く進み、今に至る。

別に政治畑でも無ければ、責任ある立場の人間でも無い俺が聞いていても意味が分からない話ばかりだった。

現に今気持ち良さげに壇上で話してるオッサンの話は右から左に頭を通り抜けてる。

 

俺を挟むようにして座る八神とシグナムも、真剣な顔をしては居るが、話半分といった様子だ。

 

(さっさと終わらねえかな……)

 

なんて思いながら、檀の脇で座っているレジアスを眺めて─────『音』を感じた。

 

壁の向こう、地上本部の外。

この感じは知っている。覚えている。

間違いない、これは──聖遺物の砲撃──ッ!

 

「ッ全員、伏せろ!!」

 

叫びながら八神とシグナムを抱き寄せた、次の瞬間。

轟音と共に地上本部が大きく揺れた。

 

立っていられない程の振動に、会議室の人々は次々に床に倒れ込み、悲鳴が響き渡った。

 

 

 

「……収まった、か?」

 

暫くして振動がなくなったのを確かめて、身体を起こす。

埃が舞う中、衝撃で線がイカれたのか、照明がチカチカと明滅していた。

 

「お前ら、無事か?」

 

「クレンのおかげで、なんとかな」

 

「しかし、一体何だったんだ。お前は気付いていたようだが」

 

身体を起こした二人が埃を払いながら聞いてくる。

 

「……聖遺物の砲撃だ。多分だが、ヴィヴィオの回収の時、ヘリを撃ったやつだ」

 

「仕掛けて来た、って事やね」

 

「驚かないんだな」

 

「まあ、来るとは分かっていたからな。まさか砲撃を撃ち込んでくるとは思っていなかったが……しかし、聖遺物を使った割には建物自体が崩壊していないようだが」

 

「威力を抑えたんだろうよ。どういう目的は知らねぇがな」

 

兎に角、状況が状況だ。

今は外に居る高町たちと合流するのが先決だろう。

そう考えて俺達は入り口を見て……固まった。

 

「「「は?」」」

 

めちゃくちゃ重厚な防火壁が入り口を塞いでしまっていた。

 

「これは……地上本部のシステムに侵入されたかも知れんね」

 

「AMF濃度も高くなっているようだな。魔力が上手く練れん。物理的にも侵入された可能性が高い」

 

「つまり……」

 

「「完全に閉じ込められたな(ね)」」

 

「マジかよ」

 

状況は最悪だ。

落ち着いてきていた他の連中も、自分たちが閉じ込められたことに気づき始めてヒステリックになりつつある。

外部との連絡は取れず、魔力は使えず、次の砲撃が何時来るかも分からない。

 

「まあ、俺には関係ないか」

 

「だな」

 

シグナムが首肯する。

そう。この状況、『普通の』魔導師なら確かに詰みの状況だが。

『普通じゃない』俺には何の問題にもなり得ないのだ。

 

「こじ開けられるか試してみるか」

 

「頼むわ」

 

八神に背中を押され、防火壁まで近づくと、其処に群がっていた連中がそそくさと道を開けた。

 

「聖遺物、使い」

 

「どいてろ。そこ、危ねえぞ」

 

「あ、あぁ」

 

俺の言葉に呆気に取られた様子で連中が下がる。

安全な位置まで下がったのを確認して、俺は拳を振りかぶった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM 16:42 地上本部 地下連絡通路

 

 

「っとに、無駄に複雑なのよここ!」

 

非常灯位しか灯りの無い通路にティアナの文句が響く。

当初、地上本部の外縁で警備に当たっていた彼女達分隊員は、敵のハッキングにより地上本部の出入り口を封鎖されたことで締め出される形となってしまった。

同時に複数のガジェットの侵入と所属不明魔導師の接近が通達され、指揮を執っていたヴィータが地上を、ティアナ達が地下から地上本部内部に入り、ガジェットの撃退及び預かっていたなのは達のデバイスを届ける事になった。

 

「なのはさん達と連絡は?」

 

「無理ね……地下(ここ)はまだしも、上のAMF濃度が高すぎて念話も通じない」

 

先行するスバルの問いに、ティアナは苦虫を噛み潰したような顔でそう答えた。

 

「でも、向こうにはクレンさんも居ます」

 

「確かヴィーザルをこっそり持ち込んだとか言ってました」

 

「アイツ……」

 

キャロとエリオの言を聞いて、苦虫を噛み潰したような顔から呆れ顔になる。

陳述会に際して、デバイスの持ち込みは固く禁じられている。

理由は様々だが、要は安全性の確保である。

それに対してクレンは、ヴィーザルの『デバイスでありながら聖遺物の性質を有する』力を逆手に取り、自身の内にヴィーザルをしまって持ち込んだのだ。

当人曰く、

 

「ヴィーザルはデバイスじゃないが?聖遺物で俺の身体の一部だが?……まあバレなきゃ犯罪じゃないだろ」

 

との事。完全に屁理屈である。

 

「まあとりあえず上はクレンに任せて大丈夫よ。なのはさん達も多分、こっちとの合流を目指してるだろうし。キャロは念話と通常通信での呼び掛けを続けて」

 

「はい!」

 

ティアナの指示を受け、キャロのケリュケイオンのコアが淡く輝いた。

 

そのまま暫く地下通路を駆けていると、不意にスバルが立ち止まると、手信号でティアナ達に止まるよう制した。

 

(止まって)

 

(敵?)

 

(多分。数はニ、距離は凡そ二百)

 

(了解)

 

スバルの手信号を読み取り、ティアナがエリオとキャロに指示を出す。

全員がデバイスを構えたと同時、暗い通路の奥から音が聞こえた。

それは聞き馴染みのある音だ。まるでローラースケートのような──

 

「マッハキャリバー!」

 

【protection】

 

スバルが魔法を展開した、次の瞬間、激突の光が通路を照らした。

 

「へぇ?これを耐えるのか。強くなってるってドクターの情報に間違いないみてぇだな」

 

その光の向こうに現れた敵の姿に、スバルは目を見開いた。

 

「戦闘機人!」

 

赤い髪、金の瞳、身体に纏った青いボディスーツ。

そして……

 

「──マッハキャリバー?」

 

ローラースケートとガントレット。スバルと全く同じ武器を使っていた。

障壁魔法に撃ち当てられた正面蹴りが火花を散らしている。

 

「ハァッ!」

 

「っと」

 

回し蹴りを放つが、相手は軽々と避けるとそのまま引き下がった。

 

「スバル!」

 

「おっと、動かないッスよ」

 

援護するべくクロスミラージュを構えたティアナだが、緊張感の無い声がそれを引き止めた。

 

「周りちゃんと見ないと、危ないッスよ?」

 

「な……っ」

 

機雷だ。

魔力で出来た機雷が何時の間にかティアナ達を囲うように展開されていた。

込められた魔力から察するに、触れた四肢を吹き飛ばすには十分だろう。

ティアナはこの状況を抜け出す方法を考えながら、先程から聞こえる声の方を見る。

赤髪の戦闘機人の後方、通路の陰から声の主が現れた。

 

「ノーヴェ〜?当初の目的忘れて無いッスか?」

 

雑に纏めた赤紫の髪、赤髪と同じ青いボディスーツ。

何より目を引くのは、左手に携えられた巨大な楯だ。

 

「捕獲対象四名、全員生かしておかなきゃ駄目ッスよ?」

 

「うっせぇ、わかってるよ」

 

ノーヴェと呼ばれた赤髪の戦闘機人がスバルを見る。

最早睨んでいるとも言えるほど、その眼光は鋭かった。

 

「旧式とは言え、アタシらの『祖』のタイプゼロがこんなんでくたばるかよ」

 

その視線を受けたスバルもまたノーヴェを見つめ返す。

目には未だ闘志の炎が宿っている。

それを見てノーヴェは無表情を止め、牙を見せるように笑った。

 

「ハ、おもしれぇ」

 

「みんな──行くよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM 17:14 機動六課 作戦室

 

「正体不明の魔力接近中!数不明、ランクは──測定不能です!」

 

オペレーターのアルトの悲鳴にも似た報告に、臨時指揮官であるグリフィスは頬を噛んだ。

想定していた中で最も最悪の事態だ。

 

管理局の全システムへの大規模ハッキング。機動六課も当然その被害を受けたものの、シャーリー、マリエルを筆頭とした技術班の特急作業により復旧、観測システムを使って状況把握及び各所への通信呼び掛けを行っていた。

 

そんな中、この報告だ。

陳述会に向かう直前、クレンからヴィヴィオを狙って此処に敵が来るかもしれないと言われていなければ、慌てふためいていたことだろう。

 

「各所シェルターを全て解放!一般職員の避難を急げ!」

 

「不明魔力源、速度が上がっています!」

 

「くっ……シャマル医師とザフィーラ氏に、戦闘準備をするよう伝えてくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 機動六課 駐機場

 

避難警報のサイレンがけたたましく壁に付けられたスピーカーから鳴り響く。

一般職員は避難するよう呼びかけるアルトの声を聞きながら、ヴァイスは横になっていたベンチから身体を起こした。

 

「あーあ、マジで来やがんの」

 

周りの喧騒なんて聞こえていないような呑気さで立つと、床に散らかった工具を片しだす。

 

「一世一代大博打、幼女乗っけて大脱走だってよ」

 

犯罪者みたいですよ(I feel like a criminal)

 

「言うじゃないの」

 

首に掛かったドックタグ──待機形態のストームレイダーの言葉に苦笑する。

 

「ま、実際犯罪者だわな。敵前逃亡、誘拐、違法改造車運転……首飛ぶどころじゃねぇわ」

 

普通にヤバい奴である。

しかし必要な事だと、ヴァイスは理解していた。

最後のレンチを工具箱にしまい、棚に収める。

改めて駐機場内を見回せば、これまで相棒と共に乗ってきた車両、ヘリが静かに鎮座していた。

そんな厳つく角張った車両達の中、一台のスポーツカーが異彩を放っていた。

 

「あんまし乗れてやれてなかったな……」

 

大枚を叩いて買ったは良いものの、バイク共々仕事が忙しくてあまり走りに出ることは無かった。

しかし未練からか、カスタマイズとメンテナンスだけは欠かさずやってきた。

黒地に青いラインの入った車体を一頻り撫でて、ヴァイスは深く、深く息を吐き出した。

 

「最後まで付き合ってくれよ、相棒」

 

無論、何処までも(Of course, everywhere)

 

駐機場のシャッターが開いていく。

覗く夜空には満天の星が瞬いていた。

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