魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe-   作:フォールティア

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/14 Tag des Herbstes-2-

 

PM 17:16 地上本部地下通路内

 

「勢い込むのは良いッスけど、その機雷は指一本動かせば即ドカン!するッスよ?どうするんスか?」

 

機雷に囲まれたティアナ達に挑発的な笑みを浮かべながら赤紫の戦闘機人は言う。

それに対してティアナは答える事なく、ただ無言で状況の打開策を導き出していた。

 

【スバル】

 

【わかってる。ここじゃ不利なんだよね?】

 

【その通り。それに私達の目的はコイツらと戦う事でも無い。だから、逃げるわよ】

 

【了解……!】

 

【スリーカウントしたら渡しといたヤツを赤髪の戦闘機人に投げて。使い方わかるわよね?】

 

【大丈夫!けど機雷は?】

 

【問題無いわ。指一本動かさない(・・・・・・・・)で対処できるから】

 

 

スバルの心配気な声に力強く答えて、ティアナは笑みを浮かべた。

その顔を見たノーヴェは目を見開いた。

 

「テメェ、何だよ……その目の色は」

 

【スリー】

 

「さあ?カラコンかもね」

 

「ナメてんのか?」

 

【ツー】

 

「ナメてないわよ」

 

「あ?」

 

【ワン】

 

「バカにしてんのよ」

 

【ゼロ】

 

激昂したノーヴェが飛び掛からんとしたその足元へスバルから何かが投げられる。

細長い円筒状の缶だ。

それを見たノーヴェはハッとする。

 

「まさか──」

 

「そ。スタングレネード」

 

ティアナの言に、ノーヴェは反射的に目を閉じた。

 

……が。

 

「……?」

 

音もしなければ瞼の裏すら焼きかねない閃光も感じない。

その事を疑問に思いながら瞼を開き、改めて足元を見て、ノーヴェは吠えた。

 

「あ……のクソアマがあぁぁああ!!」

 

スタングレネードだと思われた缶はその実、そんな物では無く……ただの虫除けスプレーだった。

文字通り、完膚無きまでにバカにした時間稼ぎである。

当然、正面にはすでにスバル達の姿は無い。

 

「ウェンディ!追うぞ!……ウェンディ?」

 

怒りのまま後ろに立つ赤紫の戦闘機人──ウェンディに追跡を促そうとして、その顔が引き攣っていることに気付く。

いつも飄々とした表情の彼女がこうなるとは、一体何を見たのか。

 

「おい、どうしたんだよ」

 

「何なんスか、アイツ……」

 

「あ?」

 

「ティアナ・ランスター……アイツ、私の機雷を『分解』したんすよ」

 

「ハァ?」

 

荒唐無稽過ぎる言葉に、流石のノーヴェも怒りが引っ込んでしまった。

あの機雷はウェンディの言の通り、指一本動かせば即起爆する代物だ。

それを触れもせずに分解した……信管を踏んだまま地雷を解体するような、正に人間離れの所業だ。

一体何をしたのか、二人には分からなかった。

 

「チッ、アイツは想定外だった……タダの魔導師じゃなかった」

 

「追うッスか?」

 

【悪いが、それはキャンセルだ】

 

気乗りしなさ気なウェンディの返事に被るように通信が入る。

 

 

 

【すまんが二人ともこっちに来てくれ。もう一人のタイプゼロと交戦中なんだが…………コイツは、私一人には荷が勝ちすぎる】

 

 

 

 

 

 

 

 

PM 17:20 地上本部 大会議室前通路

 

「……っ!?」

 

「どうした八神」

 

突然驚いたような表情で固まった八神の肩を叩く。

傍らに立つシグナムも何かを感じとったのか、眉を顰めている。

 

「おい、一体何だってんだ」

 

「シャマルとザフィーラとのパスが、急に弱くなった」

 

「んだと……?」

 

パスと言うのが何なのか分からないが、良くない事は確かだろうってのは、八神の顔色を見ればわかる。

二人がそうなるって事は……。

 

「六課にも襲撃を掛けやがったか」

 

予感はしていた。だが、的中はして欲しくなかった事だ。

 

「さっき通信でライトニングが六課に向かうつってたな」

 

高町とハラオウンには会議室から脱出して早々に合流して、二人には地下通路経由でナカジマ達と合流して預けていたデバイスを取りに行くよう伝えていた。

どうやら無事に合流出来たらしい。

 

連中の狙いは恐らくヴィヴィオだろう。

途切れ途切れに届いたグリフィスからの通信では戦闘機人二人とドローンが数十機という、多勢での襲撃のようだった。

……ヴァイスのヤツ、大丈夫だろうな。

 

「シャマル、ザフィーラ……」

 

「主……」

 

思考を切り替える。今は物思いに耽っている場合じゃない。

 

「八神、どうする」

 

通路を見る。

そこには魔導師、非魔導師、怪我人もそうでない者もひしめき合っていた。

全員、会議室から脱出した後に俺が他の階から連れ出してきた奴らだ。

会議室の中にも押し込んである。

道中邪魔だったドローンも粗方片付けてきたから、地下を除けば施設内は安全な筈だ。

とはいえ、念の為に戦力として動ける俺が警護に付いているわけだ。

 

「中のAMFも殆ど無力化した。今なら他の連中も魔法は使える。ドローン位なら戦えんだろ」

 

「……そうだな。お前がデバイスを取ってきてくれたお陰で私も戦える」

 

待機状態のレヴァンティンを握り締めて、シグナムが強く頷く。

 

「……現状、地下はなのはちゃん達が対処しとる。上空ではヴィータが魔導師と交戦中。六課には戦闘機人とドローンが襲撃……フェイトちゃん達が向かってるとは言え、足止めが有るはず」

 

「足止め?有り得んのか」

 

「私なら必ずそうする」

 

動揺から戻ったのか、八神の眼に光が戻る。

 

「……シグナムはヴィータの支援に。クレンは六課に向かって」

 

「お前はどうする」

 

「私は皆を守りながら外のドローンを片付ける。何時までもここに閉じ籠もってられんやろ?」

 

言って、八神はシュベルトクロイツを起動してバリアジャケットを展開する。

それに続くように、俺とシグナムもデバイスを起動する。

 

「機動六課、動くで」

 

「「了解(ヤー)!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM 17:23 地上本部地下通路内 機材搬入路

 

「厄介だな。三人掛かりでこれとは」

 

「言ってる場合かよ、チンク!!」

 

「てゆうかなんで無傷なんスかアイツ!?チンク姉の爆撃喰らった筈ッスよねぇ!?」

 

チンクと呼ばれた、銀髪隻眼の小柄な少女の言葉にノーヴェとウェンディのツッコミが入る。

特にウェンディは悲鳴じみていた。

そんな三人の視線の先には、細く上がる黒煙の中、涼やかに立つギンガ・ナカジマの姿があった。

 

「──チンク、だったかしら。貴女はまだしも後から来た二人は力任せも良いところね。小技が少ないし、動きが直線的。連携だって微妙に噛み合っていないのをチンクが上手く調整してるから出来てるのよ?感謝しなさい」

 

「…………なんで私ら敵から説教されてんスか?」

 

「敵の発言をマトモに受け取ってんじゃねぇよ!!」

 

「あ、ちょノーヴェ!?」

 

ギンガの説教に業を煮やしたノーヴェが爆ぜるような速度で吶喊する。

その速度は先のスバルとの接敵の際のモノよりも数段上の、視認すら難しい程の加速だ。

一切の減速をせず、ノーヴェの拳が振り上がる。

加速を乗せた正拳。防ごうものならその防御ごと骨すら粉々にする、殺人的な威力──

 

「はぁ……」

 

「カ────ァ」

 

──が振るわれる事は無かった。

 

「言った筈よ。動きが直線的だ、って」

 

元居たチンク達の位置まで吹き飛ばされたノーヴェに、ギンガが冷たく言い放つ。

 

「……なんスか。今の」

 

「ただの掌底だな。腹に綺麗に入ったぞ」

 

「え」

 

あっさりとしたチンクの答えに、ウェンディの思考が一瞬止まり掛ける。

掌底。ただの掌底。

偽とは言え聖遺物によって常人からかけ離れた身体スペックを持つ戦闘機人たるノーヴェを、ただの掌底で吹き飛ばした。

 

「いや……はぁ?」

 

「……確かに、貴女達の身体に普通の攻撃は通用しない。というかダメージにならない」

 

軽く手を払って構えを解きながらギンガはチンクを見る。

 

「けれど、そんな貴女達でも逆らえていない物がある」

 

「ほう?」

 

「物理法則よ」

 

その一言でこの事態の理屈に気付いたのか、ウェンディの口がヒクついた。

 

「まさか……攻撃じゃなくて、本当にただ掌底を置いた(・・・)だけ?」

 

「成る程、加速で増加したノーヴェ自身の『重さ』を、掌底という壁でノーヴェに返したという事か」

 

自爆。そう形容するのが正しいだろう。

なにせギンガは攻撃行動を何もしていない。ただ拳の射線上を紙一重で避けながら掌底を構えただけ。

それだけでノーヴェはカウンターを喰らう形となり、こうして吹き飛ばされた。

理屈は理解出来る。だが、それだと一つ疑問が生じる。

 

「それだけの衝撃、如何にお前が戦闘機人……祖たるタイプゼロだとしても、ただでは済まん筈だが」

 

ソニックブームが出る程の加速だ。如何に骨格を機械化していようとも何かしらの損傷、不具合があって然るべきだろう。

チンクとて、偽典聖遺物起動状態でなければ、あんなマネは出来ないし、したくない。

なのにギンガは相変わらず無傷のままだ。

骨が砕けるでも、バリアジャケットが破損するでも無い。

荒唐無稽と言う他無いだろう。

 

「貴女達は私やスバルの事、タイプゼロって言うわよね」

 

「ああ、そうだ。戦闘機人、我々の祖だとドクターは言っていた」

 

「──だったら疑問に思わなかった?」

 

空気が変わった。

全身の皮膚が粟立つ感覚に、チンクは投げナイフを構えギンガを睨む。

ウェンディもまた、ギンガから異様な雰囲気を感じ取り武器であるエリアルレイヴの砲口をそちらへ向けた。

 

「貴女達の祖ならば、同じ技術(・・・・)が使われていても不思議じゃないでしょう?」

 

──幼少の頃からおかしな感覚はあった。それがより顕著になったのは、スバルがエルトリアから帰ってきた時から。

身体の調子が良過ぎる。訓練ないし実戦での感覚の冴え。魔法の威力が上がり、魔力のランクも異常なスピードで上がっていた。

スバルも同じようで、悩んだ末にクレンに相談したりもした。

そうこうしていると、シャーリーとマリエルに事の真相を伝えられた。

 

『二人の骨格に聖遺物の反応がある』

 

と。

ああ、成る程と。思いのほかあっさりとギンガはその事実を認められた。

でなければ辻褄が合わないとか、そういった理屈の面ではなく。

心の底……言うなれば『魂』が、認めたのだ。

認めてしまえばあとは早いもの。

肉体と精神のズレを合わせるだけ。たったそれだけで。

 

「なっ」

 

「遅い!」

 

戦闘機人(格上)にだって噛みつける──!

 

 

雷鳴のような轟音と共にウェンディの身体が後方の柱へと叩き付けられる。

その速度は最早弾丸と遜色無く、否。それよりも速かった。

 

「チッ」

 

舌を打ちながらチンクはコートから投げナイフを無数に投擲する。

その数は有に百を超えている。

その全てが触れれば即起爆し、ギンガの肉体を破壊しうる爆弾である。

至近距離での圧倒的な面制圧。

格闘戦特化のギンガに対して即時選択できる最大限の対応がそれだった。

 

だが。

 

「そう来ると予想出来ているなら、問題ない」

 

「何っ!」

 

空を奔るは桔梗紫の光の帯。即ち

 

「ウイングロード」

 

転がり開く着物帯のように広がったそれがぶつかり、投げナイフをギンガに触れさせる事無く起爆する。

吹き上がる煙から目を逸らさず、後退したチンクは更にナイフを投げつける。

 

上下左右。

視界不良。

不規則軌道。

 

数多のターゲットを葬り去ってきた殺害技巧が殺到する。

初撃を防いだとは言え、それを超える二撃の密度には如何なタイプゼロと言えど──

 

「ウイングロード──レールアクション」

 

再び奔るは桔梗紫。

されど輝きはなお強く。

 

直角に敷かれたその上を紫弾が疾駆する。

包囲網の微かな間隙を、疾風が如く。

左拳に湛えるは拳槍。

 

(馬鹿な──っ)

 

油断は無かった。侮りも無かった。見縊ることなど言語道断。

それでも、チンクはこの一撃を回避することが出来なかった。

 

「ヘリッシュ・クレイドル!!!!」

 

閃光が、炸裂した。

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