魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe-   作:フォールティア

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/9 Der Beginn des Krieges

 

『艦隊戦用意!!全砲門開け!!』

 

『魔導士部隊、殲滅魔法装填!!』

 

空を埋め尽くすガジェットドローンの群れが現れた直後、最後方の旗艦《クラウディア改》から全体通信での指示が飛ばされる。

即座に次元航行艦が新たにシャーリーら技術班が取り付けた艦砲を起動し、その砲口を雲霞の如きガジェットドローンへと向けた。

 

「来やがったな……はやて」

 

「分かっとる、出し惜しみは無しや」

 

隣に立つはやては杖……シュベルトクロイツの先端に魔法陣を展開しながらにやりと笑った。

新たに装備したフォートレスⅡの魔法補助機能が起動し、スライドした装甲の隙間から白銀の魔力光が溢れ出す。

それはさながら雪が空へと昇るような、幻想的な光景だった。

 

「クレン、分かっとるな?」

 

「ああ、殲滅魔法と艦砲射撃発射と同時に突撃だろ?問題ねぇさ」

 

ヴィーザルを肩に担ぎ直して周りを見渡すと、桜色と黄色の魔力光が遠くに見えた。

高町とハラオウンのモノだな、アレは。

はやてと言い、相変わらず化け物じみた魔力量だ。

 

「響け。終焉の笛」

 

収束した魔力が詠唱により魔法陣へと装填される。

目標は数十km先、ガジェットドローンの群れ。

一瞬の静寂。

そして──

 

『エインヘリヤル、撃てぇ!!』

 

『スターライト・ブレイカー!!』

 

『プラズマザンバー・ブレイカー!!』

 

「ラグナロク・ブレイカー!!」

 

極光が、放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラナガン上空に無数の光条が放たれる中、1台のバイクが幹線道路を疾走していた。

 

「うひゃあ、すっごい光景!」

 

「こらスバル!ちゃんと捕まっときなさいよ!」

 

後ろではしゃぐスバルを叱り、バイクを運転しながらティアナは備え付けのディスプレイから地図を開き、戦況を確認する。

開戦から五分が経過。艦砲射撃と隊長達の殲滅魔法による初撃が功を奏し、ガジェットドローンの数をある程度減らす事が出来た。

だが、あれだけの攻撃で『ある程度』である。

クラウディア改からの観測情報でガジェットの数が数十万と聞いた時は耳を疑ったが、あの様子を見ればいやでも実感する。

今からあれらと戦闘機人を相手取ると言うのだから、多少辟易となるのは仕方ないと自分に言い聞かせる。

 

現在ティアナ達はクラナガンの西から幹線道路に乗り、海岸線へと向かっている。

ガジェットドローンは既に沿岸部から市街地に到達し、先行したクレン、はやて、なのは、フェイト、及びヴィータとシグナムがガジェットドローンと交戦している。

後方からの援護射撃もあり、消耗も無く前線に合流出来る筈だが……。

 

「どうにもきな臭い」

 

「?どうかしたのティア」

 

「おかしいと思わない?今上がってる交戦報告に戦闘機人ってワードが一つも無いってこと」

 

そう。戦闘機人が前線に出ていないのだ。

幾ら数が多くとも所詮はガジェットドローン。遅かれ早かれ突破されるのは確実だ。

そうなれば後は聖王のゆりかごへの突入……つまり本丸へ攻め込まれる事になる。

だと言うのに今だ戦場には戦闘機人のせの字も無い。

 

(戦力の温存?いや、そんな物にもう意味が無い)

 

此方も向こうも総力戦の体だ。

初動で出鼻を挫けなければ多少リカバリー出来たとしても待っているのは敗北だろう。

第一、主戦力を出さないなんて、そんな愚をスカリエッティが犯すとも思えない。

だとするならば、考えられるのは──。

 

「ティアナ?」

 

唐突にバイクを止めたティアナにスバルが声を掛けるが、それには答えず地図を改めて睨む。

これまでの戦闘機人との戦闘記録、クラナガン襲撃の報告全てを思い出して、ティアナは舌打ちした。

 

「スバル、どうやら私らの戦場は此処みたいよ」

 

「え?」

 

バイクを降りたティアナにつられ、幹線道路に立ったスバルが首を傾げるのと同時に全体通信から怒号のような声が響いた。

 

『戦闘機人が東、西地区に出現!!繰り返す、戦闘機人が東、西地区に出現!!スターズ、ライトニング分隊、警戒せよ!』

 

「狙いは──」

 

同時、ティアナはクロスミラージュを引き抜き、見もせずに撃ち放つ。

無詠唱の多弾殻弾頭(ヴァリアブルバレット)が強い衝撃音と共に弾かれ、無人となったビルの一階層を爆発と共に破壊する。

 

「───私達よ」

 

煙を吐く銃口の先を見て、ティアナは眼光鋭く睨みつける。

そこには

 

「久し振りッスね、機動六課」

 

「ウェンディ、挨拶は不要です」

 

「さっさと終わらせよう」

 

「…………タイプゼロ」

 

四機の戦闘機人が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同刻 クラナガン西区

 

フリードの背に乗り、ティアナらと同じく前線へと向かっていたエリオとキャロは上空に展開された巨大な魔法陣を見上げていた。

 

「あれは……転送用の陣!?」

 

「にしても大き過ぎる……一体何が」

 

出てくるんだと言いかけたその時、魔法陣から人影が勢い良く吐き出される。

何かを抱えるように落ちてくるそれを視認すると、二人は即座にフリードに指示して飛翔する。

人影がビルの屋上に叩きつけられる寸前、ギリギリのタイミングでエリオがフリードの背から跳躍し、何とか受け止める事に成功する。

 

「エリオ君、大丈夫!?」

 

「僕は大丈夫!にしても一体誰、が……」

 

半ば人影の下敷きになりながらエリオは身体を起こし、落ちてきた人物を見て絶句する。

見る影もない程ボロボロになっているが、見間違える筈もない。

 

「ぅ、ぐ……!」

 

「…………」

 

エリオが受け止めた人物、それは……ゼスト・グランガイツと、ルーテシア・アルピーノだった。

 

「ど、どうして貴方が」

 

「っ……君は、機動六、課の」

 

苦悶に顔を歪めていたゼストが、エリオの声に目を開くと次いで腕に抱えたルーテシアを慌てた様子で観察する。

ルーテシアは満身創痍のゼストとは逆に傷こそ無いが気絶しているのか、落ち着いた呼吸のまま目を閉じていた。

無事な事を確認して漸く安堵の息を吐いて、ゼストはエリオの上から退くと頭を下げた。

 

「すまない、助かった」

 

「い、いえ気にしないでください」

 

「そうだぜダンナ、礼なんていいって!」

 

「あ、アギトちゃん」

 

「ちゃん付けすんなチビピンク!」

 

「ち、ちびぴんく……」

 

ゼストの胸元から現れたアギトからの一言にキャロが轟沈するが、そのフォローを呑み込んでエリオは訊ねた。

 

「ゼストさん、あれは」

 

「スカリエッティの置き土産……いや、ヤツなら贈り物とでもほざくか」

 

ゼストがそう吐き捨てると同時、魔法陣に否、西区全体が震えだす。

地震でも、まして空気の揺れでもない。

これは、世界というテクスチャが軋み、悲鳴を上げているのだ。

 

「俺は、ルーテシアとその母、メガーヌを救おうとした」

 

ゼストが語る中、魔法陣から『泥』が滴り落ちる。

汚濁と腐臭が大地を濡らし、爛れを撒き散らす。

 

「ルーテシアはどうにか連れ出せたが……メガーヌは」

 

次いで現れた巨大な手が魔法陣をこじ開けるように侵襲する。

もはや死に体と呼べるその外観からは有り得ない、力に満ちた動作で魔法陣の裂け目からソレは姿を顕し、二機の戦闘機人を伴い地上へ降り立つ。

 

ソレは、竜だった。

ソレは、死んでいる。

ソレは、生きている。

ソレは、朽ちている。

ソレは、満ちている。

ソレは、人だった。

 

絶えず生まれ、絶えず死に、絶えず新生し、絶えず腐っている。

クラナガンのビルを超える巨体は腐肉と新たな臓物のような翼を開き、悍ましい産声/断末魔を吠え立てる。

不自然なまでに揃った歯と、歪に伸びた四肢、皮膚を突き破った骨が血を流す尾。

鱗すら無い、肌色の人のような外皮。

生命の侮辱、その極致が如きなれの果て。

それを指差してゼストは言う。

 

「あの中に、メガーヌが居る」

 

言葉に籠もった意志を、エリオは確かに聞いた。

彼女を救いたいと。そう願う声を。

状況は不明、戦力差も不明、実力差など考えるまでもない。

しかし、それでも。今日此処に至るまで戦い抜いたエリオ・モンディアルという戦士に、後退の二字は無かった。

 

「キャロ、フリード」

 

「大丈夫、援護とルーテシアちゃんは任せて!」

 

「きゅー!!」

 

エリオの呼びかけに、理由を問うまでもなくキャロとフリードは戦闘態勢を整えていた。

思わず、口角が上がる。

──そうとも。かつての自分達と同じだ。

絶望の淵にあって手を差し伸べられた、かつての自分達。

あの時してもらった事を、今度は自分達がするのだ。

憧れ追いかける、あの『雷光』のように──!

 

「ゼストさん、行けますか!」

 

真っ直ぐな眼差しがゼストに向けられる。

まだ戦えるかと、手を差し伸べるように。

なんて眩しい、若き稲妻だろうか。

 

「──アギト」

 

「解ってるって。アタシはダンナに何処までも付き合うさ」

 

共に歩んできた炎精の呆れと喜び混じりの笑顔を見て、ゼストは小さく笑った。

そして、槍型のデバイスを握り締め、エリオと並び立つ。

 

「付いてこれるか、エリオ」

 

「そっちこそ、ちゃんと付いてきてくださいね」

 

「フ──では」

 

軽口を叩き合って、同時に切っ先を定める。

狙うは竜。その一点。

 

「エリオ・モンディアル」

 

「ゼスト・グランガイツ」

 

 

「「推して参るッ!!」」

 

二つの閃光が、竜へと飛翔した。

 

 

 

 

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