魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe-   作:フォールティア

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「クソっ、キリがねぇ!!」

 

「AMFが濃すぎるな……生半可な魔法は発動すら出来ん」

 

喧しくギチギチと喚くガジェットを十体程纏めて斬り捨てながら誰ともなく吐いた愚痴に、シグナムが背後のガジェットを膾斬りにして返してくる。

 

「こうも囲まれては殲滅魔法も使えん。地道に削るしか無いが……フォールティア、気付いているか?」

 

「あァ、気付くも何も気付かねぇ方がおかしい」

 

後方からの伝達が無いから確証こそ無いが、確信はある。

このガジェット達は間違いなく、

 

「「数が減っていない」」

 

恐らくゆりかごから生産されたのがそのまま供給されているんだろう。

ガジェットは安価かつ生産性が高く、それに加えAMFの存在が厄介極まりない。

その特性上、ガジェットが集まれば集まるほどAMFの濃度は指数関数的に上昇する。十万を超えるガジェットが密集するこの前線ではディバイダー無しでは魔法はおろか魔力を練ることすら難しい。

仮にディバイダーがあったとしても、シグナムの言うように下級魔法ではAMFを抜くことさえ出来なくなっている。

そうなれば当然、こちらの殲滅速度よりあちらの生産速度が勝る。

 

「どうする、聖遺物を使うか?」

 

聖遺物であればAMFなどお構い無しにこの状況を打開出来る。

殲滅とは行かずとも道を開くくらいは出来る筈だ。

 

「いや、その必要は無くなった」

 

そう考えた所で、一度前線から下がり後方と通信していたはやてが合流する。

 

「二人の言う通り、ガジェットはゆりかごで量産、逐次投入されとる。このままじゃジリ貧やね」

 

片手間に光弾を放ち、複数のガジェットに風穴を開けながらはやては続ける。

しれっとえげつねぇなコイツ。

 

「ただまあ、良いニュースもあるで」

 

そう言うとはやては嬉しさを隠すことなく笑顔を浮かべ、展を指差した。

 

「心強い援軍が、来るで!」

 

宣言した、次の瞬間。

 

──黒紫の閃光が、ガジェット達を焼き払った。

 

前方で炸裂した砲撃魔法の奔流が数百体を纏めて薙ぎ払い、爆発が幾つも巻き起こる。

視界全てを埋め尽くしていた鉄の壁の先に、空が見えた。

 

「この魔法……まさか」

 

 

「──全く、毎度毎度、貴様らと会うときは何故こうも危局ばかりなのだ」

 

「らしいと言えば、らしいですが」

 

「まっ、おかげでカッコよく登場できたんだしイイじゃん!」

 

 

視線の先、砲撃魔法の大元である上空から現れたのは、ディアーチェ達、エルトリアの面々だった。

 

「ひっさしぶり!なんだけどホントすごい数ねこれ!?」

 

「正に壁!凄くスゴいですね!!」

 

「語彙力落ちてるわよアミタ……」

 

「あはは……でも実際すごい数だよ」

 

続けざまに放たれた砲撃魔法級の攻撃が次々と上空──AMFの有効範囲外から放たれ、俺達の目の前に密集したガジェットの群れを破壊していく。

微かに見えていた空が今ではハッキリと見える程に、ガジェットの数が俄に減っている。

 

「キリエにアミタ、イリスとユーリまで……ハ、勢揃いかよ」

 

「我が王が皆様の安否に悶々としていたので引っ張り出した次第です」

 

「そうそう!なんかずっと唸ってたもんね!」

 

「だっ……れも心配などしとらんわ!!というかシュテル、貴様、我の扱いが段々と雑になってないか!?」

 

あいも変わらずディアーチェ達は賑やかにワイワイと言い合いながらじゃれ合っている。

ついでとばかりに消し飛ばされるガジェットにさえ目を瞑れば、和やかな風景とも言え……無理だな誤魔化せねぇ。

 

「ええい小鴉!何時まで呆けておるか!サッサっと行かんか!」

 

「ここは私達にお任せください!アナタ達はゆりかごに!」

 

ディアーチェとアミタに発破を掛けられ、俺とはやては視線を合わせ、互いに頷く。

 

「総員に通達!これよりスターズ、ライトニング隊長副隊長及び私とフォールティア嘱託魔導士は聖王のゆりかごに突入します!!皆……ここは任せます!!」

 

『了解!!』

 

はやての言葉に、一切の躊躇なく通信越しに他部隊からの応答が返ってくる。

 

「シグナム、ヴィータ、クレン!道を切り拓いて!私となのはちゃん、フェイトちゃんで援護する!」

 

矢継ぎ早に飛ばされるはやてからの指示に、合流した俺達は即座にフォーメーションを組み上げる。

普段模擬戦で戦ってばかりで、連携の訓練なんざしたことが無いのだが、どういう訳か自然と身体が動く。

突撃の準備が整い、眼前を睨む俺の背後からはやてが吼える。

 

「それじゃあ……行くで!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【漸く繋がった!!皆、聞こえるかい?ユーノ・スクライアだ】

 

ディアーチェ達が作った道を全速力で飛翔していると、後方で分析をしていた筈のスクライア司書長から通信が入る。

 

「ユーノ君?いったいどうしたの?」

 

全員で視線を交わし、代表として高町が返答する。

 

【そのままでいいから聞いて。スカリエッティの目的が分かったんだ──】

 

そう言って司書長は分析から導き出した結果を話し出した。

 

「──つまりなんだ?スカリエッティの野郎はミッドチルダどころか幾つもの世界をぶっ壊して次元震を引き起こして」

 

「次元の壁を破壊することでアルハザードへの道をこじ開け、邪竜とやらを其処へ導こうとしている、と」

 

話を全て聞いて、ヴィータとシグナムが簡潔にまとめる。

 

「アルハザード……母さんが行きたがっていたあの場所に、どうしてスカリエッティは行こうとしているんだろう」

 

ハラオウンは過去の事件を思い出した様子で、眉を顰めながら疑問を口にした。

だが、俺もはやてもその疑問に対する答えをすでに持っている。

 

「「そこに神の座があるから、やろうね(だろうな)」」

 

俺達の答えに、全員が顔を顰めた。

そりゃそうだろう。

つまる所それは、俺達の世界は踏み石に過ぎないと言っているような物だ。

座に至る為の途中経過、行きの駄賃……必要経費でしかないと捉えられている。

この世界に生きている全ての命が、だ。

そんな扱いをされて無感動でいられるほど、俺達は腐っちゃいない。

 

【そう。きっとその為にゆりかごが必要だったんだ。アルハザードへ向かう為の方舟が】

 

【……逆に言ってしまえば、ゆりかごさえ止められればヤツの計画を破算させられると言うことだ】

 

司書長の言葉を引き継いで通信に現れたのはレジアス中将だった。

この三日で急速に老け込んだ顔には、執念めいた決意が浮かんでいる。

 

【司書長ら分析班の解析によってゆりかごへの侵入口が幾つか確認された。君達には内部へと侵入し、ゆりかごの停止を任せたい】

 

話しながら送られてきたゆりかごの外観図に、数カ所の赤い点が浮かび上がる。

これが侵入口だろう。

 

【ゆりかごの完全停止を狙うにあたり、必要なのは三つ。動力炉の破壊、ゆりかごの核である聖王──ヴィヴィオ少女の『奪還』。そして何より、スカリエッティと邪竜の撃破だ。この内、動力炉とヴィヴィオ少女の場所は特定が完了している】

 

ゆりかごの地図上に濃い紫の点が浮かび上がる。それぞれ艦の前方と後方に分かれている。

横でそれを見ながら、ヴィヴィオの名前が出たことで高町の表情が強張る。

俺は中将が態々強調した言葉が気になり、敢えて問い掛けた。

 

「ヴィヴィオを『止めろ(殺せ)』、じゃないんだな。中将」

 

【──当然だ。彼女は聖王の器、ゆりかごの核である以前にただの幼子だ。何よりも、そこに居る高町空尉の娘だ。ならば目指すべきは奪還であり生還。それ以外に無い】

 

毅然とした返答に、高町が唇を噛み締めながら中将に頭を下げた。

 

「悪い、無粋だったな」

 

【いや、気にするな──さて、割り振りを決めるぞ】

 

咳払いを一つ。意識を切り替えた中将がゆりかご完全停止の為の割り振りを読み上げる。

 

【動力炉破壊にはヴィータ副隊長及びシグナム副隊長】

 

「「了解」」

 

【聖王──ヴィヴィオの奪還に高町隊長】

 

「了解……!」

 

【八神総隊長ならびにハラオウン副隊長、フォールティア嘱託魔導士はスカリエッティらの捜索と撃破を】

 

「「「了解!!」」」

 

 

指示に全員が否もなく応え、割り振りが完了する。

その様子を通信越しに見ていた中将が、一息を吐き出すと俺達一人一人の顔を見ながら語る。

 

【ゆりかごの中には前線と遜色ない、強力なAMFを確認されている。恐らくまともに通信出来るのはここまでだろう。こちらは気にするな。君達の時間を全力で稼いでみせる】

 

【クロノ・ハラオウンだ、背中は任せてくれ】

 

【そういう事だ小鴉共、さっさと行ってさっさと終わらせてこい!】

 

【こちらティアナ・ランスター並びにスバル・ナカジマ!!前線に合流します!なのはさん、ヴィータ副隊長、こっちは任せてください!!】

 

【エリオ・モンディアル並びにキャロ・ル・ルシエ!同じく前線に合流します!……フェイトさん、シグナム副隊長、ご武運を!】

 

「皆……」

 

中将の通信に割り込みながら、クロノ提督、ディアーチェをはじめ、ランスターやエリオ、戦線に居る戦士達から次々と声が掛けられる。

 

行ってこいと。勝ってこいと。任せろと。託したと。

 

激励であり、鼓舞であり、発破であり。

 

多くの言葉が、俺達の背中を押した。

 

「はやて」

 

「うん」

 

「お前が大将だ。応えてやれ」

 

そう言って俺達ははやてに通信を託す。

はやては大きく息を吸い込み、

 

「必ず、勝ってきます────共に、勝利を!!」

 

叫んだ。

それはあまりにも短い決意表明。

だが、戦場の誰もがその言葉に魂を昂ぶらせ咆哮を上げる。

 

通信越しに響くそれを、俺達は静かに聞きながら真っ直ぐに突き進む。

側面から襲来するガジェットの群れが幾つもの砲撃魔法に呑み込まれていく。

追いすがらんと突撃してくる後方のガジェットが、直上からの絨毯爆撃に叩き落とされては弾け飛ぶ。

それら全てを視界の後ろへと流し、ただ前だけを見る。

やがて通信にノイズが走り、歓声はぷつりと途絶えた。

 

果たしてガジェットの壁は遂に消え、俺達の前に『ゆりかご』は現れた。

視界全てを埋め尽くす黄金の偉容。

見るものが見ればその歴史的価値を長ったらしく話してくれるだろうが、今の俺達にとってはどうでもいい。

なんであれ、此処が俺達の最後の戦場である事に変わりは無い。

 

「皆、作戦は頭に叩き込んだな?」

 

突入口の前に立ち、はやてが全員の顔を見ながら問う。

まるで、記憶に刻み込むように。

それに気付いたのはどうやら俺だけのようで、何も言わず各々頷いてみせた。

 

「残りの戦闘機人の妨害もあるやろうから、他のメンバーを援護する余裕も無い。それぞれ作戦が成功したら即座に脱出をするように。内部での通信は十中八九不可能や。こっから先はもう、互いを信じるしかない」

 

はやての言葉に、俺達はただ無言で頷く。

そんな俺達の顔をぐるりと見回し、はやては扉へと手を掛ける。

魔法陣が展開し、指向性を持った爆破魔法が構築される。

 

「──勝とう。絶対に」

 

『了解!!』

 

扉が爆ぜ飛び、遂にゆりかごへの入り口が開く。

先の見えぬ暗闇が大口を空けて待っているが、俺達は躊躇なく飛び込んだ。

 

 

 

「さぁ……機動六課、動くで!!」

 

 

 

 

全てを、終わらせるために。

 

 

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