ロクでなし魔術講師と虚ろな魔術少女   作:猫の翼

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大変長らくお待たせしました……
受験勉強が切羽詰まってて、書く時間が取れず……
そして受験終了したのはいいものの、今度はスマホが壊れてデータが飛ぶわで……機種変したらしたでキーボード違って上手く扱えないとか色々とありましたが、ええ。言い訳ですね。ごめんなさい!

物語を終わらせるつもりはないので、更新続けます。
どうか楽しんでいって下さいませ



第十話

「よーし、それじゃあ種目決めるぞー」

 

翌日の放課後、教室でグレンが教壇に立っている。無論、授業ではない。魔術競技祭の種目決めだ。先日、好きにしろと言っていたくせに、今日になって競技は俺が決めると言い出したのである。

 

「まあ、決めるというか、もう決めてるんだけどな。これを見ろ!」

 

そう言うと、黒板にプリントをばぁんっ! とやけに勢いよく貼り付けた。

 

「先生、見えません」

 

「あ?」

 

グレンが貼り付けたプリントは、小さかった。個人が近くで見る分にはなんの問題もないだろうが、それを黒板に貼り付けても小さすぎる。

 

「……」

 

グレンが無言でプリントを教壇に置く。そして、

 

「よーし、それじゃあ種目決めるぞー」

 

(無かったことにした!?)

 

クラス一同、心の中で同じ突っ込みをした。そんなことは御構いなしと、続けていく。

 

「いいか、俺が指揮を執るからには勝ちに行くぞ? 遊びナシの本気の編成でな」

 

そう言って、今度はプリントを手招きして呼んだルミアに渡した。

 

「悪いが、このプリントを黒板に写してくれ」

 

「はい、わかりました、先生」

 

ルミアが黒板にプリントを写していく中、グレンは再び生徒に真剣な眼差しを向ける。

 

「これは昨日の夜に練りに練った編成だ、これ以上ない最強の、な。いいか? 何度も言うが、遊びはナシだ」

 

そうしている間に、ルミアがプリントの内容を書き終えた。そこに書かれた、競技とその下の出場生徒を見て……生徒達の間にざわめきが広がる。なにせ、クラスの誰一人として欠けていない。競技数の関係上、何人かは複数の競技に参加することになってはいるが、一つも参加しない生徒が居ないのだ。遊びはなしと言いながら、実に非効率的。他クラスは成績上位者のみを使い回すと言うのに、どういう思惑なのか。

 

「さて、何か質問あるか?」

 

グレンがそう言うと、次々に生徒たちが手を挙げる。なぜ自分がその競技に選ばれたのか理解できてないのだろう。

その生徒たちの質問を、グレンはサクサク捌いていく。どれも、一応の筋は通っているようである。

 

「他に質問は……ないな? よし、じゃあこれでいくぞ?」

 

手を挙げる生徒が居ないことを確認すると、グレンがそう宣言する。

 

(くくく……ちと卑怯な編成だが、これなら勝てる可能性がある! ほんとは、白猫とレナを全種目使い回せたら、優勝はほぼ確定なんだろうが、それはさすがに反則だろうしな)

 

内心ほくそ笑むグレン。グレンからすれば、これが全力の編成だ。人数的な問題で使い回しが止む無しなところでは、当然ながらシスティーナとレナのような成績上位者を使い回す。が、それ以外では他の生徒たちで穴を埋めるしかない。全員を使って、とことん効率を優先したのが、この編成だ。

 

「やれやれ……先生、いい加減にしてくださいませんかね?」

 

はぁ、と呆れたようなため息を吐きつつギブイルが立ち上がる。

 

「本当に勝つ気があるんですか? そんなんじゃ、他クラスには対抗できませんよ」

 

「む……?」

 

「遊びナシの編成って、遊びしかないじゃないですか。他の全クラスが成績上位者だけで全種目固めてるんです、毎年の恒例じゃないですか」

 

「…………え?」

 

ギブイルの発言にピシリと硬直するグレン。昨日の夜に考えに考えたこの構成だが、成績上位者だけで固めていいというなら、話は変わってくる。とにかく生意気で生意気だが優秀なシスティーナに、まず間違いなく学年で最優のレナを使えば勝ちはほぼ確定するまであるのだ、とにかく勝つことが目的のグレンとしては願ったり叶ったりである。

 

(全競技で使い回していいんだ、毎年の恒例なんだ? ほーん、ふーん……なるほどねぇ?)

 

優勝で賞金が貰えなければ死活問題のグレンは、一瞬で編成を頭に浮かべる。

 

「うむ……そうだな、そういうことなら……」

 

グレンがギブイルの言葉に首肯し、新たな編成を黒板に書こうとしたその時。

 

「このままで、いいと思う」

 

決して大きくはないが、通る声が教室に響いた。その声の主は……

 

「皆、活躍できるようになってる。グレンさんが考えてくれた構成は、一人一人の得意分野からの応用で対応できるように編成されてる」

 

レナである。今まで、自発的に発言をしたことがなかったレナに、クラス一同は少し驚き声に集中する。

 

「グレンさんは、これが最強の編成だって言った。なら、やることは一つだよ。皆で戦って、皆で勝つ。私は、そうしたい」

 

頭に黒猫が乗っかっているせいでいまいち締まらないが、その発言にクラスメイト達のボルテージは上昇していく。

確かに……とか、そうだよな……とか。普段静かなレナの発言だからこそ、クラスメイトの心を動かしたのかもしれない。

 

「やろうぜ、皆!」

 

誰が言ったか、そんな号令を皮切りに。

やろう、やってみよう、と波のようにクラス中に広がっていく。

 

「……やれやれ、そうかい。まぁ、いい。それがクラスの総意だというなら、好きにすればいいさ」

 

ギブイルは至極あっさりと身を引いて、流れは完全に全員が使われている編成で勝つ方になる。

この流れにグレンはというと。

 

(ちょ、おい、わかってる!? 俺の餓死がかかってるってわかってんのか、コンチクショウーー!?)

 

もう、とにかくパニックであった。だがそれと同時に、レナが自分の想いを発言をしたことへの喜びだか嬉しさだかも胸の内に広がって、なんとも形容し難い顔になっていた。

そんなグレンを尻目に、生徒達は盛り上がっていくのだった。




今回は短めになりました。ブランクもあるので、文書の劣化感が否めない……
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