ロクでなし魔術講師と虚ろな魔術少女   作:猫の翼

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今回はエピローグ的な会なので、文字数が少なめです。ご了承下さい。
次回から二巻の内容になります。主人公らしく、レナを目立たせたいと思います。


第八話

 人間とは、何を以てしては人間とされるのか。

 人間と人形の違いは何なのだろうか。

 それが生きていれば人間なのだろうか?

 それが生きていなければ人形なのだろうか?

 心の有無だろうか?

 では、心がない命令に忠実な生きたヒトガタは果たしてどちらか。

 では、心がある自らの意思で動く生きていないヒトガタは果たしてどちらか。

 人形か、はたまた人間か。

 何を以てそれを定めるのか。その答えはどこにあるのか。

 少女は、心がない命令に忠実な生きたヒトガタだった。今は、心がない自らの意思で動く生きたヒトガタだ。

 自分で考え、答えを出し、自分で動く。けれど、意思はあれど心はない。感じられるのは表面上、相手が浮かべる表情のみ。隠された真意はわからない。

 それでも少女は前に進むしかない。まわりは進んでいく。自らの役割とするべきことを少女なりに考えて進むしかない。

 時間は待ってくれない。

 

 ……そう、時間は待ってくれないのだ。誰の目にも等しく、同じだけ進む時計の針。それは冷酷な宣告であり、見るたびに現実を突きつけられる。チクタクと秒針が進む音。それはまるで悪魔の嗤い声のようで。心のわからぬ私を嗤っているのか、それとも──

 

 

 

**********************

 

 

 

 目が覚めれば、いつもの天井が見えた。体を起こそうとして、鋭い痛みに息を呑む。

 

「目が覚めたか」

 

 ベッドの横に置かれた椅子、そこにセリカが座っていた。

 

「セリカさん……?」

 

「まだ傷が塞がってない。無理に動こうとするな」

 

 傷。そうだった、学院を襲ったテロリスト、天の知恵研究会と戦って……

 

「危篤状態で見つかったんだ、暫くは安静にな」

 

 あの後、システィーナが危篤状態の私を発見したらしい。【ライフ・アプ】をひたすらに私にかけ続けて、システィーナ自身もマナ欠乏症になってしまった。その後、私は病院に搬送されセリカさんが引き取ったとのことだ。

 

「それにしても……力を使ったな……」

 

「ごめんなさい……」

 

「いや、責めているわけではないんだ。そうしなければならなかったのはわかっている。むしろ、力を使わせなければならない状況にさせてしまった私が謝る方だ」

 

「そんな……! セリカさんが謝ることなんてなにも……」

 

 事件の全容はわからない。けれど、あの状況ではいくらセリカでもどうしようもあるまい。学校の転院陣も破壊されていたのは間違いないのだから。

 

「病院での検査の結果、見るか?」

 

 どこからともなく、セリカが一枚の紙を取り出す。

 

「大丈夫、だったんですか……?」

 

 その言葉の意味を瞬時に理解したセリカは大丈夫だ、と続ける。

 

「お前の状態を知ってる医者が診た。秘密はバレてないさ」

 

 差し出された紙を受け取り、見る。

 

「……はぁ」

 

 予想通りの結果に、ため息をつく。そこに書かれた数字の通り、悪化しているのは間違いない。

 

「……前回は確か一ヶ月ぐらい前でしたよね?」

 

「ああ。今までよりも格段に悪化してる。一回でここまで進むと考えると……」

 

 その先を濁すセリカ。なんともセリカらしくない。

 

「……わかってます。でも、私は大丈夫ですよ、セリカさん」

 

 悲しませまいと笑って見せる。

 

「大丈夫です。まだ、時間はあるんですから」

 

 そう言って時計を見る。針は無情に、冷酷に進んでいく。

 そうだ、まだ時間はある。皆と過ごすのに充分な時間が。私という物語が終わるのは、まだ先だ。

 




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