英雄王で異世界へ 作:ギル
今回は後半に全裸描写(女とは言ってない)があります。
苦手な方はお気を付けください。
騒動の予感
ヘレナに呼ばれ、ギルドに向かうとヘレナからランクを上げることが出来たと言われた。
「いや、苦労したが何とか本部を認めされることが出来た。これを受け取ってくれ。Aランクの証だ」
「これで準備は整った、明日の早朝エデンを発つ。世話になったなヘレナ」
「……いや構わないさ。君にはこの都市を救ってもらったんだからな……」
ヘレナが寂しそうな顔をしながらそう言った。もし俺たちと別れることを寂しがってくれたなら、嬉しいことはない。
「……では、我は行くぞ」
「ああ……、明日は予定があってな、見送りが出来そうにない。だからここで言っておこう。ありがとう、また……会おう」
「無論だ、帝国での用が済んだらエデンへ寄ろう」
俺はギルドを後にした。明日の出発に備えて準備はしていた、後は明日になるのを待つだけだ。
夜が明けて、俺たちは北門の前にいた。
「王様、楽しみだね!」
「帝国ではやることがある。余り遊ぶ時間はないと思うが……」
「王様と一緒ならどんなことでも楽しいよ!」
「そうか? ならばよい」
イブと話していると、衛兵が門を開ける時間になったと言いに来た。
「では行くぞ。ポラリス帝国へ!」
「うん!」
◇◇
ミーティア王国の王宮は、いつもより慌ただしかった。その理由を語るには時間をギルガメッシュがエデンに着いた時まで遡る。
いつも通りの王宮。しかし、王の部屋から男の声が突如響き渡る。
「ならん!!」
「しかし、お父様!このままでは、この国は……」
「だからこそ、代わりとなる者を探しておるのだ!」
「本当にいるのですか? 居たとして、いつ見つかるのですか?今は一刻を争う状況なんですよ」
「……一人いたのだ。」
「一人いたからと言って、もう一人いるとは限らないでしょう。いるかどうかも分からない者を探すより、為すべき事があるでしょう」
「……。」
「お父様!」
「……分かった。認めよう、レイシア、お前が勇者を召喚するのだ」
「! ありがとうございます。必ずやこの大役果たして見せます。お父様いえ、国王陛下」
レイシアは部屋を出ると、外で待機していた女騎士に声をかける。長い廊下を歩きながら、二人は話す。
「終わったわ。行きましょう、セシリア」
「はッ、陛下との話し合いはうまく行ったようですね、姫」
「……よく分かったわね」
「姫は感情が顔によくでます」
「お兄様も同じような事を言っていたわ、私はそんなつもりは無いのだけれど。……そんな事より明日勇者様をお呼びします。貴方にも付き添いをお願いしたいのです」
「畏まりました。ですが、姫自ら召喚しなくてはならないとは……」
「いいのです。そもそも国の問題を別の世界の人に解決してもらうのですから、この程度は当然ではないですか?」
「それは確かにそうですが……」
「もう結論の出た話をいまさら言っても仕方ないですよ。私は明日勇者様をお呼びします」
「畏まりました、姫」
そして、勇者召喚当日。アリシア聖堂に眩い光と共に一人の少女が召喚された。
「初めまして、勇者様。私はミーティア王国の第一王女レイシアと申します。勇者様、世界をお救い下さい」
◇◇
日が沈み動物たちも寝静まる時間。森の中に水面に月や星々が浮かぶ湖がある。そこに一人の女が息を切らしながらやってきた。平時なら目を奪われたであろう景色にも目を向けずじっと森のほうを見る。やがて、森の中から複数の男たちが現れた。
「もう逃げ場はないですよ。大人しくしてくれればこちらとしても手荒な真似は致しません。共に城に戻りましょう……姫」
「断る! 父を操り国を崩壊させる者たちの下に誰が戻るものか!……オスマン、貴様騎士を謳いながら主君に剣を向けるとは、恥を知れ!」
「勘違いをしているようですね。私は一度たりとも主君に剣など向けておりません。なぜなら、あなた方を主君と思ったことは一度もありませんから」
「オスマン!」
「戯れはここまでとしましょう。後ろが湖ではこれまでの様に逃げられませんよ。……やれ」
オスマンと呼ばれる男が部下の男たちに命令を出し、男たちは腰の剣を抜き女を囲み、徐々に範囲を狭め女を追い詰める。
姫と呼ばれた女は腰の剣に手を置きながら、少しずつ後ろに下がり足が湖に着いた時――剣を抜き湖に刺しながら呟いた。
「
剣が赤く光ったと同時に当たりは蒸気に包まれ視界が悪くなった。蒸気の中からは男の悲鳴が聞こえてきた。
蒸気が消えると姫の姿はどこにもなかった。
◇◇
「はぁ、はぁ……逃げ切れたか。……父上、必ずや助けて見せます」
湖から離れた場所にあった岩に背を預け、震えた体を抱きしめながら息を整えていると……
「なかなかの余興であった。特にその剣……魔剣の類か? なんにせよコレクターの血が騒ぐ」
女は岩から離れ、声がした岩の上を見る。
「!?」
「ん? どうした女、まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」
「お、おまお前、何故服を着ていない!」
「……ああ、これか。あれを見ろ」
全裸の男が示した場所を見ると、そこには湯気を出す水があった。
「風呂か?」
「そうだ。風呂に入り旅の疲れを癒した後、岩の上で涼んでいた。そこに貴様が近づいてきたのだ」
「な、なるほど? 全裸の理由は分かった。……いつまで全裸でいるつもりだ。早く服を着ろ」
「なんだ、頬を赤らめて照れているのか?」
「てっ照れてなどいない!」
「照れるのも無理はない。我が裸身はこの世で最高水準のダイヤに勝る。それが生娘なら尚の事だろうよ。」
男の言う通り、その裸身は一種の芸術のようだった。体の筋肉は付き過ぎず、かといって少なすぎない程よい肉付きと完璧と言って言い尽くせない程の完成度を誇るその美貌とが合わさり、見るものを人体の黄金比はこれなのだと思わせるほどその裸身は美しかった。
「……照れていないと言っている! いいから早く服を着ろ」
「そうは言うが先ほどからずっと我を見つめているではないか。頬を赤らめて照れていないのなら、我が裸身に興奮でもしたか?」
「誰のせいでこうなってると思ってる!」
「さあな、我のせいではないのは確かだ」
「お前のせいだ!」
「ふははは! 貴様には道化の才があるな。どうだ、我の道化とならんか?」
「ふざけるな! お前の道化などだれがなるか!」
「震えは止まったな」
「え……!」
女は男の言葉を聞き、先ほどまで震えていた自分の手を見ると震えは止まっていた。まさか、私の気を紛らわす為にわざと怒らせたのか。と女は思った。この事を確かめるかどうか、服を着ている途中の男を見ながら迷っていたら、少女の声が聞こえた。
「王様? どこですか~」
「イブか、どうした?」
「目が覚めたら王様が居なくて……そこにいるお姉さんはだれ?」
「我の道化だ」
「だから違うといって……」
女は喋るのをやめてくしゃみをした。
「お姉さんびしょ濡れだよ。どうしたの?」
「……少し湖で泳いでいたんだ」
「こんな時間に? ……それよりこのままだと風邪ひいちゃうよ」
女が話し難そうな顔をすると少女はそれを察したのか話を変えた。
「そうだな、道化が風邪とは面倒だ。風呂に入り、体を温めるがよい」
「いや、だから道化じゃないと……」
「……お姉さんが今どういう状況下は分からないけど、大丈夫。王様がきっと何とかしてくれるから。だから今は体を休めたほうがいいよ」
少女は微笑みながらそう言った。
「……分かった」
「王様、お姉さんが着れる服持ってる?」
「当然だ。我が蔵に不可能はない」
「それじゃ、わたしたちあっち行ってるからゆっくり温まってね」
男はどこからか出した服を置いて、男は少女と一緒に拠点に戻っていった。