英雄王で異世界へ 作:ギル
ディッセンに連れて行ってくれませんかと言おうとしたが。やはり、英雄王口調がそれを許さず、案内する栄誉を与えるなんて、超上から目線になってしまった。日常会話レベルなら何とか少し上から目線、程度に抑えられたと思うけど、ギルガメッシュがしないような事をしようとすると、口調の補正が強くなるようだ。今回の交渉はなるべくイブに任せよう。
「えっと、つまり僕たちと一緒にエデンに行きたいという事でいいんですよね。」
「うん。どうかな。勿論、無理にとは言わないけど。」
「僕は、ただ雇われただけなので、依頼人に確認を取らないといけないので、少し待ってもらっていいですか。」
「うん。お願いします。」
ディッセンが依頼人に確認しに行った後、イブにここに来る前に言ったことを確認した。
「覚えてるよ。王様が、異世界から召喚された勇者だって事と、ヴィマーナの事を言わなければ良いんだよね。」
「そうだ。その二つを覚えておけばよい。」
ヴィマーナは移動手段として、かなり使い勝手がいい。なるべくその存在は隠しておきたい。イブと話しているとディッセンが駆け寄ってきた。
「お待たせしました。僕の依頼人が、直接会って話がしたいと言ってるんですけど。」
「そうだよね。直接お願いしないと。いいよね、王様。」
「ほう、この我を呼びつけるとは、いいだろう。依頼人とやらの元へ案内するがいい。」
ディッセンの後を付いていき、ディッセンは一台の馬車の前で止まると、ノックをして来たことを知らせると、中から恰幅の良い中年の男が出てきた。
「どうも、初めまして。私はエデンにて、服の仕立てなどをしております。グッチと申します。」
「初めまして。わたしは、イブと言います。実は、グッチさんにお願いがあるんです。」
「ええ、ディッセンから聞いています。エデンへの旅路に同行したいと。」
「そうなんです。どうでしょうか。」
「勿論、大歓迎です。命の恩人のお役に立てるなら喜んで。しかし、もしもの際は、ぜひそのお力をお借りしたく。」
「我が乗る馬車を襲う不届き者の相手はしてやろう。しかし、自らの分はわきまえる事だ、グッチ。」
「分かっております。……お名前をお聞きしてもよろしいでしょか。高貴なお方。」
「良かろう。我が名を知ることを許そう。心して聞くが良い。ギルガメッシュ。それが、我の名だ。」
「畏まりました。それでは、出発の準備が出来たようなので、馬車の中へどうぞ。」
そうして、何とか共にエデンへ向かうことが出来たが、何故、同行しなければならなかったのか。エデンへ行くだけならば、上空をついて行けば良かったが、しかし、重要なことに気が付いた。イブが言うには街などに入るには、身分証のようなものが必要らしいのだ。無論、異世界から来た俺は勿論、イブも国に捕まるまでは奴隷として、捕まった後も軟禁され身分証を知識として知ってはいても、持ってはいないそうだ。まあ、身分証の解決策は考えた。しかし、問題は他にも何か重要なことを知らない可能性がある以上、この人達から出来る限り情報を得ておきたい。
「さて、ギルガメッシュ様はエデンに何か目的があるのですか。」
「わたし達は、エデンに冒険者になるために行くのです。」
「冒険者ですか。ですが、冒険者になるなら、他の所でもできますが、どうして、エデンなのでしょう。」
「グッチ、我が言を忘れたか。分をわきまえろと言ったはずだが。」
「申し訳ありません。ギルガメッシュ様、詮索が過ぎましたな、ご容赦を。」
「次はないぞ。」
俺は、先ほどの盗賊に圧倒的な力を見せつけた。だから、このように、余り探られたくない所は俺が脅し。聞きたい情報はイブが子供なのを利用し、無知であると思わせ聞き出すと予め決めていた。もっとも、イブが無知なのは実際にそうなのだが。グッチらとの関係が悪くなりそうだが、仕方ないと割り切る。こうして、俺たちは、辺境都市エデンの情報を手に入れた。
辺境都市エデンに着くのは明日。その名の通り、王国の辺境に位置している。どうやらヴィマーナで王都から離れるときに、速度を出し過ぎたようだ。エデンと王都は通常は馬車で1か月はかかるそうだ。エデンは魔物が多く住む、魔の森に近く、更に、ダンジョンにも近いと人が住むには向いていないと思うかもしれないが。魔物を狩り、その素材を売り、生活している、冒険者たちには楽園のような所だそうだ。勿論、魔物を狩る力がある冒険者に限られるが。
そして、人が集まれば需要が生まれ、需要が生まれれば供給する人達が集まり、さらに需要が生まれ。そうして、加速度的に冒険者たちが作った集落は、村、街そして、都市へと成長した。その都市は、冒険者たちの楽園、辺境都市エデンと名付けられた。
俺たちが最も知りたかった情報も街には身分証が無ければ入れないが、金銭を担保に都市に入ること自体は出来るという、既に知っている情報だけだったが。話している間に馬車は開けた、場所で止まった。
「ギルガメッシュ様、今日はもう日が暮れます。このあたりで野営をしようと思いますが。いかがでしょうか。」
「構わん。」
グッチが指示を出すと皆が野営の準備を始めた。
「ギルガメッシュ様、野営の準備が終わりました。こちらへどうぞ。」
一応、手伝おうとはしたのだが、ギルガメッシュ様にそのような事はさせられませんとグッチに断られた。少し脅し過ぎたかもしれない。グッチが少し震えている。知りたい情報も知れたし、これからは優しくしよう、英雄王補正で伝わるかどうかは、分からないが。手始めに食事だな。
「グッチ、食事の用意は不要だ。我が用意しよう。」
「ですが、ギルガメッシュ様にそのような事をさせるわけには。」
「良い。貴様らを我が晩餐へ招待しよう。会場が外というのは気になるがな。」
「畏まりました。では、そのように伝えてまいります。」
さて、宝物庫の中のあれなら必ず、グッチ達も満足するだろう。そんなことを考えていたらグッチが他の人達もつれてきた。
「王様、料理なんてできるの?」
「ふん、愚問だな。王たるこの我が料理程度、出来ぬはずは無い。もっとも、今回は我が作る訳では無いのだがな。」
「え、作らないってどういう。」
「ギルガメッシュ様、他の者を連れてまいりましたが、料理はギルガメッシュ様が作られるのではないのですか。」
「そう急くな、貴様らには我が財の一端を見せてやろう。」
俺は、そういいながら、宝物庫の中に手を入れ、ある物を取り出す。
「テーブルと、テーブルクロス? 王様、高価なテーブルやテーブルクロスはいいけど料理が無いと意味ないよ。」
「ふ、我が財を侮るなよ! イブ。我が宝物庫にただのテーブルクロスなど存在しない。これは、魔法のテーブルクロス。食べたい物の名を唱えながら、広げると望むがままの料理が出現する。最高級の品よ。」
テーブルクロスについて説明しながら、だしたテーブルに、料理名を唱えながら、テーブルクロスを広げる。すると、瞬く間に臨んだ料理が出現し、美味しそうな匂いを放ち、食欲を誘う。俺の言葉を訝しんでいた者たちも今では、料理に釘付けだ。
「では、食すがよい。」
俺がそういうと、皆一目散に料理を口に運ぶ。
「王様、凄く美味しい!! わたし、こんな料理食べたことない。」
「うめええ」
「最高!」
「遠慮する事はない、完食せよ!完食せよ!!」
食べた人達は、次々と感想を言った。みんなの口に合ったみたいで良かった。食べ切れない程の量があった、料理をすべて食べた人たちは、俺にお礼を言ってくる。
「ありがとうございます。ギルガメッシュ様、今宵の晩餐決して忘れません。」
「ありがと、王様。また食べさせてね。」
夜が明け、早朝に出発し、俺たちは昼前に、辺境都市エデンへと到着した。