英雄王で異世界へ   作:ギル

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特に何もないので





英雄王、冒険者になる

 辺境都市エデンは都市全体が強固な城壁に囲まれた、城郭都市であった。城壁には東西南北に一つずつ門がある。俺たちが今通ろうとしているのは、南門。エデンは南に王都、北に魔の森。更に、魔の森の先には、ミーティア王国と冷戦状態のポラリス帝国がある。その為、エデンは王国にとって、魔物と帝国への砦のようなものだろう。

 

「では、身分証を提示してください。無い場合は一人、金貨1枚を担保に入ることが出来ますが。」

「わたしと、王様の分で、金貨二枚です。」

「確かに。お名前は。」

「わたしは、イブです。」

「我が名は、ギルガメッシュ。」

「では、どうぞ。お入りください。担保の金貨は身分証と引き換えに半額返却いたしますので。」

 

 さて、何故俺たちがこの世界の金を持っているのかというと。盗賊を掃討する前の野暮用で得たのだ。俺は、盗賊を見つけるのと同時に、盗賊の塒も見つけていた。グッチ達が盗賊と会うまでの間、塒を探索していたのだが英雄王の黄金律のせいか盗賊たちの財宝の隠し場所を見つけてしまい、財宝を得ていたのだ。

 

「なるほど、さまざまな人種がいるのだな。」

「ギルガメッシュ様は他種族がお嫌いですか。」

「いや、随分と我を興じさせる。」

「はあ、私はこれで失礼しますが、ギルガメッシュ様はいかがなされますか。」

「冒険者ギルドに行って、冒険者になるのです。」

「そういえば、確かそのような事をおっしゃってましたね。ギルドの場所は分かりますか。」

「あ! 分からない。どうしよう。」

「あの、もしよろしければ、僕が案内しましょうか。ギルドに依頼達成の報告をしないといけないし。」

 

 エデンの中に入り、グッチとこれからの事を話していると、ギルドの案内をディッセンが申し出た。断る理由もないので、その申し出を受けることにした。

 

「よかろう。思えば、貴様は、この我を案内する栄誉を幾度も得ている。世界広しと言えど、貴様ほど幸運な者もいなかろう。」

「では、私はこれで。服がご入用の際はぜひ、当店へ。精一杯サービスさせて頂きます。」

 

 そういって、グッチは去り。俺たちも、冒険者ギルドに向かうのであった。

 

◇◇

 

 その日、冒険者ギルドエデン支部は特に代わり映えのしない一日だった。しかし、ちょうど昼時、ギルドのスイングドアが押され一人の青年が入ってきた。これはいい、その青年には見覚えがあり恐らく、依頼達成の報告にでも来たのだろう。次に入ってきたのは目を好奇心で輝かせている少女だった。これもまだいい、滅多にないが、子供が好奇心に任せてギルドに入ってくるのはことはある。問題は、最後に入ってきた男だった。その男は金の鎧を纏い、金髪をオールバックにした、赤い目の男は、ギルド内を見渡すと、

 

「ふん、強者(つわもの)が集まる都市と聞いてきてみれば、拍子抜けもいいとこだ。強者どころか、戦士すらいないとは。」

 

 男はいきなり、ギルドにいた者達を見下し始めた。普段ならそんな事をされれば、拳を握って襲い掛かっただろう。或いは、剣を抜く者もいたかもしれない。それほど、男が言った言葉は彼らにとって許しがたいことなのだ。にも拘らず、襲う者はおろか席を立つ者すら現れない。それは、男から発せられる威圧感のようなものが原因だった。動けば殺される、この場にいた全員がそう思った。

 

「己が誇りを傷つけられてそれでもなお、立ち上がる事すらできない貴様らは、犬にも劣る雑種よ。」

 

 そういいながら、男は彼らに対して興味を失ったのか、受付にまっすぐ歩いていき。

 

「冒険者登録をするのはここか。」

「はい、そうです。」

「冒険者登録をする。我とこの小娘だ。」

「王様、酷い。小娘じゃないもん、イブだもん。 」

「畏まりました。」

 

 受付嬢は、おびえながら、登録の準備を始めていく。

 

「それでは、冒険者について説明させていただきます。」

 

 冒険者とは、一般的には冒険者ギルドに所属しているものを指す。冒険者と依頼には力量や難易度に応じてランク付けがなされていて、S、A、B、C、D、Eと下がっていき、登録したばかりの冒険者は基本的にEランクの依頼から始めることになる。冒険者になるには、銀貨5枚と名前と種族が分かれば誰でもなることが出来る。身分証としては最も手軽に入手することが出来るが、身分証としてギルドに所属することを阻止するため、一定期間Eランク・Dランクにいると、権利を剥奪され、二度と冒険者になることは出来ない。厳し過ぎると思うかもしれないが、期間はランクごとに1年。依頼を10回達成すると、Dランクになることが出来、Cランクには、ギルドからの依頼を達成するとなることが出来るが。Cランクになるのは簡単だがその一つ上のBランクになるのは相当難しく、Cランクの実力はピンキリらしい。

 

「依頼を受ける制限はありませんが、高ランクの依頼を無理に受理し命を落とす、或いは、負傷した場合はギルドは、責任を取りかねますので、ご了承ください。」

「また、冒険者が一般人に危害を加えるのは犯罪ですが、冒険者同士の場合は余程の事がない限り、ギルドは介入しませんのでこちらもご了承ください。」

「説明は以上となります、何か質問はございますか。」

「依頼は今からでも受けられるのか。」

「はい。ギルガメッシュ様、イブ様の冒険者登録は完了していますので。」

「では、今ある依頼の中で最もランクの高い依頼を受ける。」

「は、あの、説明を聞いていましたか。命を落としたとしても、ギルドとしては責任を取りかねます。」

「……もう一度だけ言う。最もランクの高い依頼を受ける。三度は言わんぞ。」

「か、畏まりました。それではAランクの魔の森のドラゴン討伐をギルガメッシュ様とイブ様が受けると言うことでよろしいですね。」

「いいだろう。」

 

 そういい男と少女はギルドを去っていった。

 

◇◇

 

 何故俺が、ギルドで冒険者たちを挑発し、いきなり、高難易度の依頼を受けたのかそれは、ディッセンから聞いていた、エデンの冒険者の気質のせいだ。エデンは魔の森が近く、ダンジョンもある。その為、強い冒険者が国中から集まるらしい。その為、エデンの冒険者は弱者を軽んじる風潮が出来ているようだ。だからこそ、最初が肝心、俺たちに関わると不味いと、思わせなくてはならず、先の態度に繋がった。

 

「王様、わたし達が受けた依頼って正確にはどんななの。さっきの説明じゃ、ドラゴン討伐位しか分からなかったけど。」

 

 依頼書によれば魔の森の近くにドラゴンが住み着き、冒険者が魔の森に入ることが出来ないらしい。ドラゴンを見たものによると赤い角を生やした赤いドラゴンだそうだ。俺たちは、赤いドラゴンを討伐、ドラゴンの角をギルドに持って行けば、依頼達成となるわけだ。エデンの北門から出てドラゴンを住み着いたとされる所へ向かっていると、こちらに飛んでくる赤いドラゴンが、イブも見えたらしく。

 

「へー、ドラゴンってあんな感じなんだね。初めて見たよ。」

 

 ドラゴンとは、冒険者であっても出会えば死を覚悟する存在らしい。ドラゴンを見てもデカいトカゲとしか思わない、英雄王の精神に影響されている、俺が言うのもなんだが、イブは怖くないのだろうか。

 

「怖くないよ。だって王様がいるもん。王様ならドラゴンなんてすぐに倒しちゃうんだから。」

「ふははは! そうか。ならば見ているがよい。天駆ける竜が地に落ちる様をな」

 

 イブと話している間にドラゴンはどんどん近づいてくる。俺は波紋を出し、そこから一本の魔剣を射出する。それは、高速でドラゴンの眉間を貫いた。ドラゴンは徐々に高度を落とし、やがて大きな音と共にドラゴンは地に落ちた。

 

「ふん、興ざめな幕切れだ。見よ、この間抜けな死に顔を。最も魔剣グラムが相手では致し方ないか。……戻るぞイブ。」

「うん。」

 

 ドラゴンの死体を宝物庫に入れると、俺たちはエデンへと帰るのであった。帰る道中、理解したこの世界において英雄王の力は強すぎる。だからこそ、慢心をしない事を心に誓った。英雄王だからこそ、ギルガメッシュだからこそ慢心できる。俺はただ力を持っているに過ぎないのだから。

 

 

 

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