一年後、ガーライヒが対魔帝運用部の研究所へと移った。研究が一段落したためである。またミスリル計画の第二次発掘も終盤を迎え、初期研究も始まっていた。
「ようこそ、対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部ルーンポリス統合研究所へ。私が所長のアーキメディスだ」
「ルーンポリス魔導高等学術研究所から来ました、ガーライヒ・ルズゥです。これからよろしくお願いします」
ガーライヒはいま、所長室にいた。神聖ミリシアル帝国のこういった研究機関では、所長からセキュリティ認証用の共鳴石(魔石の一種。特定の魔力波動を放つため、重要施設などに使用される。また階級も表す)を初めに渡されるのだ。
「君の共鳴石だ。レベル8までの入室が可能だ」
「レベル8ですか?私にそこまでの情報をあたえてもよいのですか?」
レベル8は、課長クラスか、専任研究員である。責任者として予算会議への出席や研究方針の独自決定を行うことができる。
「フム...。26年前、ルーンポリスにて誕生。8歳の時にルーンポリス初等学校へと入学、飛び級し16歳で卒業、高等学校へと進学した後、首席で卒業、ルーンポリス魔導高等学術研究所へ。現在配偶者はおらず独り暮らしだが実家には両親と祖母がおり、妹は寮暮らし。簡単なことはわかっているんだ。今さらリスクを考えても仕方がない」
「よく調べたものですね」
共鳴石を受け取り、ポケットにいれる。
「我々だって適当に選んでいる訳じゃない。怪しげな連中や他国との繋がりのある学者は排除している」
アーキメディスは深く椅子に座り直す。引き出しを開けて書類を取り出すと、ガーライヒに手渡す。
「この書類にサインをしてきてくれ、一週間後までに頼む」
「何ですかこの書類?」
「研究費や設備許可証なんかの書類だ。それと誓約書だな」
「誓約書ですか」
「外に漏らさないとかそういうことだ。取り敢えず今やることは終わりだな。君の研究室に案内させるから後ろにいる女性についていってくれ」
アーキメディス所長の指差す方を見ると、研究服を着た若い女性が立っていた。
「私の娘だ。君と同じミスリル計画に参加している」
「はじめまして、リヴァ・アーキメディスです。本日から研究員兼秘書としてミスリル計画に参加します。よろしくお願いいたします」
「は、はぁ...。こちらこそよろしくお願いします」
「では研究室に案内してくれ」
「わかりました」
研究室は、二階の一番奥だという。それまでに複数のセキュリティロックを通過する必要があるという。
「そういえばリヴァさんは何で研究員に?」
「昔から、父を見ていたので自然に。専攻は金属の魔力伝導です」
「魔力伝導か...。結構研究されてる分野だけど、どんな研究をしていたんだい?」
「金属の精錬温度による魔力伝導の変化が主です。特にやっていたのはミスリルですね」
この娘もミスリルを研究していたのか。これは頼もしい。今度互いの研究分野についてじっくり話したいな。
その後研究室について、説明を少し受けたあと夕方になってきたため、今日は解散した。
何も言わないで....