Listen to my song, again. 作:いつのせキノン
※「憑依」→厳密には憑依ではないため、作者本人も迷ってるところ。客観的に見れば憑依と見ることもできるので付けてる。
※「ガールズラブ」→主に393あたりで引っ掛かりそうだったので。
記憶を引き継いだ2周目の響が、悩みながらも歌を紡ぐ物語
ここ最近は頭痛が酷い。
ほぼ毎日、同じ時間、決まって頭全体を締め付けられるような痛みがする。
流石に病気なんじゃないかとお父さんやお母さんも心配になり病院で診てもらったけれど脳に異常はなし。血液もサラサラで血管の病気などもなく、むしろなぜ頭痛が頻繁に起こるのかわからないほど。
疲労や寝不足かもしれない、と一応言われたけれど、寝不足はないだろう。だって毎日10時くらいには寝ちゃうし。
疲労……はどうなんだろう。人並みに運動はしてるし、疲れやすい体質でもない。
とまぁ色々とあったけど、結局のところわからずじまいのまま過ごしてる。
痛み止めの薬を毎日飲むようになったのと、
すごいなー、とは思うけど、お金かかるんだろうなー、と子供心ながらにそんなことを考えた。お父さんとお母さんには無理しなくてもいいよ、と伝えたけれど、響のためだから、と2人は笑ってくれた。ありがとう、とわたしは言った。
◆
明くる日のこと。
わたしと
なんと、今日は人生初のライブ!! しかも今をときめく日本の歌姫たち、ツヴァイウィングのライブだ。
特に音楽界に興味がないわたしでもツヴァイウィングはよく知ってる。まさに国民的なシンガーたちだ。そのライブに行けるなんて、多分今後の人生ではもう経験できないだろう。天羽奏さんと風鳴翼さんのユニットはそれ程までに大人気なんだ。もうここにいるのが奇跡ってくらい。
隣の
不意に、また、ズキリと頭痛がした。
変だ。今日はまだいつもの時間じゃないのに……。
「――響? もしかして、また頭痛?」
心配そうに
「ホントに? 無理しちゃダメだからね? 具合悪くなったらすぐに言ってね、我慢しちゃダメだからね」
念を押すように顔を近付けてくる
事実、もう頭痛はない。気のせいみたいに、綺麗さっぱり。
それを読み取ってくれたのか、
全く、こんな時に限ってやってくれるな、とわたしはアリーナの方を仰ぎ見た。
なんで、そっちを見たのかは本当にわからなかった。
けれど、なんとなく。アリーナを見上げる光景に、変なデジャヴを感じていた。ここに来るのは、初めてのはずなんだけどね。
あれから会場に入ってからも時折頭痛がしたけど、努めて顔に出さないようにした。そうしないと
ライブ前、トイレで隙を見付けて即効性の頭痛薬を飲んでおく。
段々と、頭痛の頻度が狭まってきてる。そんな気がした。心なしから痛みも増してきているような……。
いやいやいや、気のせい気のせい。良い時に限って変な方向に思考が回っちゃってるだけ、思い込みだ。
へいき、へっちゃら。
このくらい、ライブで盛り上がれば終わる頃には忘れてるはずだ。
顔を洗って気合を入れ直して、自分の席へ戻った。
ライブが始まった。
それはもう、見事、素晴らしい、エクセレント!!
ああ、これがライブなんだと感動した。何度も襲ってくる頭痛すら気にならなくなるほどに、ツヴァイウィングのライブは心を動かされた。一目惚れ、みたいなものかもしれない。
ツヴァイウィング。2人で一対の翼を成すユニット。力強いサウンドと歌声が、わたしを魅了する。
テレビでしか聴いたことはなかった歌だけど、
すごい、すごい、すごい!!
「すごいね、
思わず、わたしは隣で一緒にサイリウムを振っていた
良かった、
――――痛い。
もう二度と来れないかもしれないツヴァイウィングのライブ。
――――頭が、痛い。
一番の親友と来れたというのは、何よりもわたしの宝物だ。
――――嗚呼、この後は、確か……。
大切にしよう。そうだ、後でグッズを買って、一緒に記念撮影もしないと!!
――――ノイズ、が。
ああでも、次の曲もあるんだ。それにプログラムもまだまだ序盤、終わった後のことは終わってから考えればいいんだ。
――――逃げないと。
「――――響? ねぇ、響、大丈夫!?」
「あ…………え?」
ハッと
今は1曲目が終わったところ。ツヴァイウィングの2人がオープニングトークを始めようとしているところ……。
「響、すごく顔色が悪いよ。頭、痛いんだよね?」
顔に、出てたのだろうか。
痛い。頭が、ものすごく痛い。
何も考えたくない。
手すりに捕まってるから平気だけど、あまりに痛くてロクに動けそうになかった。
「すぐに、医務室に――――っ!?」
その時だった。
轟音と共に足元が揺れて、2人揃って手すりに掴まった。
――――嗚呼、やっぱりそうだ!!
頭が痛い。
耳をつんざく悲鳴が聞こえる。
爆発音。コンクリートや鉄筋が崩れる音。泣き叫ぶ人の声。怒号。悲鳴。
「っ、
「だ、大丈夫、大丈夫……」
ぐらぐらと視界が揺れてる。これは、めまい?
「逃げよう、響!! 私が支えるから……!!」
――――ノイズが来る!!
眼下、アリーナの中、1階席。
地面を突き破って奴らが出てくる。
認定特異災害、ノイズだ。
「ノイズ!? なんで、こんなに……っ!?」
逃げ惑う観客たちに、ノイズが襲い掛かる光景が見える。
人が、炭素となって、死んでゆく。
――――助けなきゃ……ッ!!
助ける? どうやって? 触れもしないのに?
――――できる!!
無理だ。頭が痛い。今にも倒れそうなくらい。
――――わたしには、歌がある!!
足元が覚束ない。立ってるのがやっとだ。
痛い。痛い。痛い。
頭が、痛い。
【――――Croitzal ronzell Gungnir zizzl――――】
――――その声をわたしは久しぶりに聴いた。
ふと、わたしは視線を上げた。
そこには、眩しい背中があった。
――――ガングニールのシンフォギア装者、天羽奏。
天羽奏。ツヴァイウィングの、1人。
なんで? 彼女は、何を?
――――翼さんも、戦ってるッ!!
歌が、聴こえる。
天羽奏も、風鳴翼も、ノイズと戦っている。
あれは、なに?
…………あれは、
――――そう、シンフォギア。
なぜ? わたしは知らない。けど、知っている。
頭が痛い。
流れ込んでくる。
知識。経験。記憶。
頭の奥の、そのまた奥の、ずっとずっと奥の方。
天羽奏、風鳴翼、二課、ノイズ、聖遺物、ネフシュタンの鎧、ソロモンの杖、デュランダル、フィーネ、カ・ディンギル、雪音クリス、ルナ・アタック、
――――シンフォギア。
「ぐぁあッ!?」
その呻き声に、現実に引き戻される。
奏さんが、ノイズに弾かれて吹き飛ばされる。
シンフォギアがボロボロになっている。あちこちにヒビが入っていて、手にするガングニールも崩壊寸前。
じゃあ、どうする?
「おい、早く逃げろ!! ここはあたしが――!!」
ノイズが来る。奏さんがガングニールで応戦。波状攻撃が来る。
嗚呼、それじゃあダメだ。それでは、防げない。
バキッ、と。ガングニールが欠ける。破片が吹き飛ぶ。
「しまッ――――!?」
ズッ、と。胸が、赤く、染まる。
「ぁ――――」
「――――響ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッッ!!!!」
ガングニール……聖遺物……。
全部、わかる。
わたしの胸に、ガングニールの破片が、突き刺さった。
頭痛は、もうしなかった。
――――立たなくちゃ……。
そうだ、立て。立つんだよ、立花響。
「くそっ――!!」
奏さんが、泣きそうな顔で駆け寄って、わたしを抱き起こしてくれる。
――――あったかいなぁ。
ああ、あったかい。とても、とても。
全然、寒くなんてないんだ。
死に掛けていたわたしに声をかけてくれた、奏さんの言葉。
「生きることを、諦めんなッ!!」
「……生きる、ことを……諦め、ない……」
嗚呼、確かに、奏さんだ。
そして、奏さんだから、わかる。
わたしは、嫌なほど、知っている。
前方にはノイズの大群。既に逃げ道はない。
ノイズを蹴散らす他に手はなくて。
そのためには、歌うしかない。
奏さんが、命をかけて……。
「――――こうなったら……、」
「…………ダメ、ですよ、奏さん……絶唱、は……」
「ッ!?」
奏さんは、歌う気だ。絶唱を使う気だ。
あの時みたいに。全力で、迷わず。他人だったあの時のわたしを、助けた時のように。
「絶唱、使ったら……死ん、じゃい、ます……それは、ダメ……つばさ、さん、泣い……ちゃう、から……」
――――今なら、まだ間に合う!!
ああ、そうだ。まだ、間に合う。
なぜなら、
わたしの胸には、
「ガン、グ……ニール……力を、貸して……ッ!!」
わたしに力を!!
皆を助け出す力を!!
悲劇を吹き飛ばす、強い力を!!
【――――Balwisyall Nescell gungnir tron――――】
「待っててください。わたしが、皆を、助けてみせます」