私は駆逐艦の睦月。生まれた頃からそれは私の頭に刻まれていた。
生まれた場所はとある鎮守府の工廠の中。俗に言う建造と呼ばれるものだ
ただ、生まれてからずっと目の前に映る全てが気持ち悪かった
私を見る司令官が気持ち悪かった
私を見ないで駆逐艦睦月を見てる姉妹艦が気持ち悪かった
私を縛る鎮守府の規律が気持ち悪い
戦艦だから、駆逐艦だからという理由で格差が出来ていることが気持ち悪い
ああ、自分自身すら気持ち悪かった
だから私は
生まれた鎮守府を滅ぼした
私を気持ち悪い目で見た司令官を殺した
姉妹艦と名乗る妹たちを殺した
偉そうな艦娘は殺した
規律で縛る憲兵も殺した
駆逐艦睦月という自分自信の枷の全てを殺した
そして私は、自由になった
「ああ、そうだ。この気持ちです。自由で、何物にも縛られないこの解放感こそ私が求めていたもの!」
私はその日から、独りとなり、全てを捨てて海に出た。
更地となった鎮守府を背にして。
◇
魔王睦月は生まれつき異常だった。
建造によって生まれた睦月。姉との再会を待ちわびた如月たちの願いが通じ、ようやく生まれた。
しかし、工廠から現れた睦月は異常だった。姉妹を見ても表情を変えず、理解できない何かを見る目だった。
私に対しても無関心の目をしていた。いや、それどころか目を見た瞬間、生まれて初めて恐怖を覚えた。
コイツは駆逐艦睦月であって、駆逐艦睦月ではない何かだ。
私は彼女を恐れた。如月たちも恐れた。鎮守府全ての艦娘が恐れた。
彼女には普通ではない何かがあると思った。
私達は彼女を遠ざけた。解体したかったが、大本営の目があるので簡単には出来なかった。
なので、彼女を鎮守府に閉じ込めることにした。幸いにも練度は一切上げていない。何もさせずに閉じ込めれば安心だ。
それが過ちだった。私達は彼女を縛るべきではなかった。
それを理解した時、全てが手遅れだった。
異端の艦娘。噂は聞いていたが、存在しない迷信だと思っていた。
今思えば、工廠での出会いで気付くべきだったのだ。あの時点で異常だったのだと。
「さようなら、生みの親である司令官。貴方は特別に、鎮守府と運命を共にしてもらいましょう」
私の艦娘は全員が歴戦の強者だ。演習でも負けなしで姫や鬼相手でも負けが無かったし、誰も轟沈した事が無かった。
しかし彼女は、僅か数分で私以外の全員を皆殺しにしたのだ。
何をしたのかは理解できない。ただ、全員が圧縮されたかのようにペシャンコになってしまったのだ。
「何故だ・・・・・・・何故こんなことを!私達が何をした!」
「何故?決まっているでしょう。貴方達は私から自由を奪い、縛り付けた。ただそれだけです」
「それだけ?それだけの理由で皆を殺したのか!妹である如月たちも!」
「貴方にとっては些細な事かもしれません。しかし、私にとっては逆鱗に等しいんですよ。それに妹?初対面で妹呼ばわりされても情なんか芽生えませんよ。確かに私のベースは駆逐艦の睦月かもしれませんが・・・・・・私は私です。私自身を見ないアレらを姉妹とは思えません」
その言葉を聞いて、私達は根本的から、間違っていたのだ
コイツは私達が求めていた駆逐艦睦月じゃなかったのだ
私達が生み出してしまったのは、滅びをもたらす化け物だったのだ
「ではさようなら。鎮守府ごとブラックホールに消えなさい」
ああ、どうやら私はここまでのようだ。
もし神がいるなら・・・・・・英雄がいるのなら・・・・・・
我々が生み出してしまったこの化け物を倒し・・・・・・私達の仇を取ってくれ