Fate/Grand Order Cosmos in the ash and blood world   作:ローレンス教区長

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且ノ
※加筆いたしました。
※2023/4/28一部修正


二話

 

汝、子らに秘跡を強いたまえり

 

 

 

聖血による報いあらん

 

 

 

聖血の秘する報いあらん

 

 

 

いざ、人に報いせん

 

 

 

聖血によりて!

 

 

 

血は潔白であり、神聖である

 

 

 

ああ、これは冒涜なるや?

 

 

 

その拝領、汝の御霊に相応にあらず

 

 

 

狂獣は穢れた土地を踏み、やがて越えるだろう

 

 

 

血は潔白であり、神聖である

 

 

 

ああ、これは冒涜なるや?

 

 

 

神秘、忘れ棄て去るは

 

 

 

生命の上位に至るに能わず

 

 

 

如此く宣べ伝えよ

 

 

 

恐れよ

 

 

 

宣べ伝えよ

 

 

 

血の

 

 

 

その毒なるを

 

 

 

猛毒の恐怖を

 

 

 

饗宴は約束された

 

 

 

聖血によって

 

 

 

さあ、衰微の酒を酌み交わそう

 

 

 

ああ、この毒の盃を……

 

 

 

 

 

狩人の手記

 

項、ローレンスの警句より

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

「痛ぇえ………」

 

 鈍痛が頭に響く。

 意識が飛んで、どれくらい経つのかはわからない。俺ーー藤丸立香ーーは鈍痛と倦怠感に苛まれた頭と身体を力任せに起こす。節々に違和感を感じるが、どうやらデカイ外傷はなさそうだ。

 

「ここ……何処だ……?」

 

 辺りを見渡せば、直ぐに浮かぶ疑問。未知の場所というのはよくわかった。しかしながら他に言い表しようのない程に肉眼に映る景色は非常に悪い。

 

「霧、だよな……コレ。ロンドンを思い出す……ってそうだ! マシュ、マシュはっ!」

 

 過去の思い出に浸りかけた俺は大事な後輩の事を思い出す。辺りを見回そうにも、濃霧の所為で自分の足元すら分かりにくい。兎にも角にも、後輩を探すのと並行してこの濃霧を抜けねばならない。焦燥に駆られ僅かだが走行してしまった。

 

「クッソ、見えねぇっーーーおっふ!?」

 

 濃霧の中で闇雲に走るのは非常に危険という事を失念していた俺は、例の如く何かに躓きすっ転ぶ。もし、これが断崖絶壁への路だったらと想像するのはもう少し後になる。俺は躓いた原因である足元を見遣る。視界が悪く定かではないが、これはーー

 

「ーー霊基のケース……?」

 

 自分の成した偉業、人理救済。その結晶と成果を万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチが形にした物。

 それが何故こんな所に転がっているのか、それを考えた瞬間ーー俺の背に嫌な汗が伝うのと顔が青褪めるのを明確に感じた。

 

「……ま、さか……」

 

 何故、俺が外ーーシャドウ・ボーダーの艦内ではなく、霧立ち込める外に居たのか。予想する事は難くない。

 

 

 ーーシャドウ・ボーダーが大破したのだと

 

 

 刹那にその想像を否定する。そうであるなら、自分だけが生き残っているなど都合が良すぎるのだ。サーヴァントであるホームズ、デミであるマシュ、型落ちの器なれど信頼できるダ・ヴィンチがいる。遥かに人間より頑丈である筈の存在が、こんなところで、と。この様な妄想が蔓延り、俺の脳内では、間違いであって欲しい、という一抹の淡い希望が刻まれる。俺はケースを抱え、走り出そうとした。

 

「何処だ……ある筈だ! ーーーーあっ」

 

 走り出し、あって欲しくは無い残骸を探り、深みに消えるすんでのところで気がついたーー通信機を使えばいい、と。

 俺は、すかさず付属の通信機を見遣る。もし生きているならシャドウ・ボーダー或いは後輩の安否を知ることができる筈だ。

 

 

 ーーしかし、現実は甘くない。

 

 

「…………マジかよ」

 

 見遣る。……見遣ったのはいいのだが、割れている。それも綺麗に粉々だ。スマホの画面よろしくに。

 

(……アレか? アレなのか……? さっき転んだ拍子にバッキリ逝っちゃったのか? あああ、もう、耐久性上げといてよ、ダ・ヴィンチちゃんっ……!)

 

 理不尽な八つ当たりも状況が状況であるが故に、憚ることも出来はしないだろう。

 俺は空を見上げる。濃霧が未だ立ち込め、空色すら判別し難いが……これで、吹っ切れた。

 

(よし、行くしかないか。ここで蹲るより動かないと、それに案外皆んな近くに居るかも知れないし)

 

 所謂、一周回って冷静になった、だ。俺は一度深呼吸を取り、礼装を確認する。通信機が使えなくともこっちがあれば、多少なりともやりようはある。ケースを抱え直し、意を決して濃霧の深みへと足を進める。

 

「よっと。壁でもあればやり易いんだけどなあ……」

 

 つい、愚痴っぽく呟いてしまう。濃霧に塗れているが、歩く先々で古びた煉瓦のような物が疎らに転がっている事に気付いた俺は、この濃霧の中に建物ないし建造物があると思い始めていた。もしかしたら、霧がなければ古い遺跡なのかも知れない。俺は仄かに浮かび上がった好奇心とも言える感情と建物があると言う希望に胸を僅かだが躍らせる。

 

(建物があるなら、人ーーもしかしたら皆んなが……とにかく先をーーーっ?)

 

 シャドウ・ボーダーの面々との再会を想像し、歩みを進める最中ーーナニカに触れる。

 

「なんだ?」

 

 もう一度触る。最初に触れた時の感触は壁。俺は念願の建物かと思い咄嗟に踏鞴を踏む。これで建物の壁なら御の字だが、そうは問屋がおろさない。触れた壁が、靄ーー濃霧の壁なのだから。

 

「霧、の壁だな……入れないのかな?」

 

 ペタリペタリと触り感触を確かめる。石壁ならば是非もなく諦め、それを伝い何処へ続いているか探っただろう。しかしながら、今あるのは霧の壁。どうして先に進めないと決めつけられるのか、俺は湧いた好奇心を煽られ触診じみた手つきで触りまくる。

 

 

 ーーそれが、絶望への境界だとは知らずに

 

 

「……むぎぎ、この、開けっての、ああもう、これでも喰ら……っえ!」

 

 押したり引いたり。俺は抉じ開けるべく、数多の手法を試す。されどビクともしない壁に業を煮やした俺は、遂に礼装に備わっている最強魔術『ガンド(確定スタン)』を霧の壁へとぶっ放す。

 すると、壁は煙を巻くかのように消えてゆく。先程のビクともせぬ頑強さが嘘のように思えるかのようだ。

 

「おろ? なんか都合良く開いた……?」

 

 霧の壁が消えると共に周辺の濃霧も消えていく。視界がクリアになり一帯の景色が露わとなる。

 

「廃都っぽい……けど結構しっかりしてるな。というか普通にもう少し行けば建物に行き着いてたのか……でもなんで霧まで消えたんだ? もしや、さっきの結界だったりして……まあ、何とかなるか」

 

 映る景色は廃都そのもの。もう少し進んでいれば建物の壁に行き当たる寸法であったことに軽く嘆息しつつ俺は奥へと邁進する。

 霧の壁については深く考えぬ事にした。良く分からないし、別に大事には至らないだろうと高を括る。

 濃霧が晴れ、視界にある土地のーー全容とはいかないがーー地形がわかり、コレにより多少の推測が可能となった。まず、この未知の土地には人がいる事がわかる。そして建物の作り的にヨーロッパに近いこと。故に人がいた時に英語で話せば意思疎通が可能、というのが考えられる。まあ、その間にカルデアメンバーに会えれば意思疎通の云々は杞憂として消えるのだが。

 

「せめて通信機がお釈迦にならなければなぁ……でも、役に立った事ってあったっけ……?」

 

 ふと、考えて見れば通信機系統がまともに使えた記憶が、あまり無い。だいたい、途中で妨害を食らったり横槍を加えられたりと散々だった気がする。

 

「やっぱり、文句でも言っとこーーー何だ?」

 

 

 ーー不意に、物音がする。例えるならば、そう床を踏む音のような。

 

 

 音の出所、俺からして右側の廃塔。一見すれば、廃ビルとも見えるそれは苔生し宿り木に食まれ、ある種の神秘さと不気味さを醸し出し、何処か近づいてはならぬ雰囲気を匂わせる。

 

「………誰か、居ますか?」

 

 遠目から、だが軽く声をかけてみる。幸い辺りは静まりかえっている、生き物ーーひいては音らしい音など自分の独り言を抜いて特に無いのが現状だ。

 

 

 ーー先程の音を抜いて、だが。

 

 

 聞き間違いならそれでも良い。人が居て自分に警戒しているならそれでも良い。

 

 

 だがーー何だ? この嫌な感覚は。

 

 

 覚えのある嫌な感覚、この数年である意味慣れ親しんだ疎ましいモノ。

 

 

「誰か、居ませんか……?」

 

 

 再度の問い掛け、それは吸い込まれるように消えていく。

 

 

 

 ーーぎしっ

 

 

 

 軋むーー何かが、廃塔を歩いている。

 

 

 

 ーーぎし、ぎしり

 

 

 

 石床が悲鳴を上げ始めるーー人、ではない何かが近づいてくる。

 

 

 

 ーーぎし、べきっ

 

 

 

 何かが、折れた。俺は礼装に魔力を送る。来たる人ならざるであろう者に牽制を敷くため。

 

 

「……っ!」

 

 

 息を飲む。恐怖に全身を飲まれながら。

 

 

 

 始めに見えたのは、そうーー二匹の

 

 

 

 しかし、その犬は俺の既知する犬とはかけ離れている。

 

 

 

 瞳は炯炯と血走り、紅い眼光を迸らせ此方を睨めつけている。

 

 

 

 体躯は餓狼や餓鬼の如く痩せ細っている。肌は爛れ、悍ましく地獄の番犬にすら見紛う。

 

 

 

 正に、腐れ犬である。

 

 

 

 されどーー息を飲んだのは()()だけではない。

 

 

 

 

 

 ーーその獣など歯牙にもかけぬ、異形が現れたからだ。

 

 

 

 

 

 その異形、二匹の狂犬を伴わせ、両の手に只人など優に一閃できる無骨な大鉈を携え、筋骨隆々の体躯と山羊の頭蓋を合わせ持つ。その容姿と相なすようにその荒んだ紅き瞳には理性を写さず、狂気が宿っている。

 

 

 

 ーーその者、指し示す言葉があるのならこう呼ばれるであろう。

 

 

 

 ーー山羊頭のデーモン(犬のデーモンに飼われている山羊さん)と。

 

 

 

「…………」

 

 俺は硬直する。正直言って、こういう化け物系なら第七特異点(古代バビロニア)亜種特異点(セイレム)で見てるから大丈夫なのだが……いきなりのエンカウントに反応出来ず硬直に至ってしまっている。

 百歩譲ってグールとか骸骨ならガンドを否応なしにぶっ放していた。しかし、コイツに打って良いのだろうか、いや、大鉈持ってる時点で打つべきなんだろうけど両隣にいるわんわんおが突っ込んで来てヤバそうなのだ。噛まれたらアウトだろ絶対。

 

(………よし、逃げるか)

 

 化け物のエンカウントによりどうするか考えていた俺は、逃走を決断する。現状、異形どもは俺との距離を縮めたり、何かしらのアクションを起こさず均衡状態を保っている。

 何故、均衡状態を保っているかはハッキリ言って不明だが、今の状況では僥倖だ。

 

「……………」

 

 目前の化け物ーー特に山羊頭は、不気味な程に静かだ。その反面連れだっている狂犬達は、襲い掛かりはせずとも威嚇の唸りと警戒の眼差しを絶えず向けて来る。

 

「ふう………」

 

 軽く息を吐く。これで彼方も多少なりとも動きを見せるだろう。

 

「………………………ダッ!」

 

 人類最速ーー英霊は抜いてーーの陸上選手もびっくりな華麗なる逃げ足。見よ、特異点で鍛え上げた脚線美。これにはあの化け物も面食らって唖然としてるに違いなーー

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

 ーー走り出し見事に逃走、とは行けず。俺はその辺にあったであろう瓦礫の破片に足を取られ、綺麗に頭からすっ転ぶ。

 辺りは転倒した際に起きた激しい摩擦音を残し、なんとも言えぬ寂寥的な痛みを伴う沈黙に支配される。その中で俺の思考は動転を極めていた。

 

(やっば、俺マジで転んだ? 転んじゃったの? 死亡確定じゃね、コレ? てか、何で転ぶの? バカなの?うっかりイシュタル様でもこんなギャグみたいな転び方しないよ? ちくしょう、頭ぶつけて痛てぇし………あああぁぁああ!ヘルプ! マシュ、助けて!この際、胡散臭いパラケルススや教授でも可!)

 

 グルグル、思考がごちゃ混ぜに成り果てショートを引き起こす手前とでも言うのか、その所為で未だ起き上がる事も出来ず俺は地に伏している。

 

 

 ーーそれ故に、気づけた。近づく足音に。

 

 

「ーーーっ!」

 

 全身が強張るのを鮮明に感じ、冷汗が浮かぶ。

 のっそりのっそり、と単調な化け物の足音が聞こえる。人間よりも巨体である化け物は当然、人間を優に越す体重がその足取りの強さを響かせる。

 

(……焦るな、落ち着け、今動いたら即座に殺される。最悪、令呪をリソースにして連弾ガンドで切り抜けようーーー!?)

 

 化け物達の気配により思考がクリアになった今、俺は即席の打開策を見出す。今のところマシュもいない、契約しているサーヴァントも存在しない。ならばこそ出来る案だが、そうも言ってられなくなった。

 二匹の狂犬が俺の傍を品定めするかのように回る。本命の山羊頭より足の速い此奴らが先んじて来るのは自明の理だが、失念していた俺にとって大いに焦燥を浮かばせられる羽目になる。

 

(クッソ……詰み、か……っ)

 

 ーー詰み。

 

 最悪の状況を如実に表すソレは俺の胸中で音を立て侵食する。もし、ここで自棄になり先程の連弾ガンド作戦を強行すればワンチャンと思いたいがそれはあまりにも無謀な博打となる。

 第一条件として、敵との距離が一定無くてはならない。本命の山羊頭が来ていないとは言えサブの狂犬達が目先にいる時点でこの作戦は詰んでいるのだ。

 俺は、唇を引き結び拳を握りしめる。もっと早く、いや、ドジを踏んで転ばなければ如何にかなったやもしれないが………後の祭りだ。

 

 

 遂にーー金属音が響く。

 

 

 山羊頭が犬に追いつき、右の大鉈を掲げる。これにより、完全に退路を絶たれる。

 

 

 ーー令呪でマシュを転移させるか?

 

 

(……却下。そもそも、呼べるならそうしてるし、ボーダー内で、しかも意識不明で転移してきたら餌が二つになるだけだ)

 

 

 ーーならば、礼装に魔力を焚べ先程のガンド強行作戦をするか?

 

 

(これも、アウト。確定スタンだけど殺傷能力は、ほぼゼロだし撃った反撃を食らって死に兼ねない)

 

 

 ーーならば、ならば如何する?

 

 

(如何するって?ーーそんなの、決まってるだろう!)

 

 

「ーーガンドは撃たないって言ったな! あれは嘘だよ、チクショウ!」

 

 

 部の悪い賭けがなんだ。そんなもん幾らでもやってきたーーこのカルデアに来てから何度くたばりかけたかもう覚えてない程にな!

 

 

 ーー冬木(火炎と死霊)

 

 

 ーーオルレアン(竜種の巣窟)

 

 

 ーーセプテム(皇帝達の狂気)

 

 

 ーーオケアノス(大英雄からの逃走)

 

 

 ーーロンドン(魔術王との遭遇)

 

 

 ーーイ・プルーリバス・ウナム(狂王の暴虐)

 

 

 ーーキャメロット(女神と神王との戦闘)

 

 

 ーーバビロニア(人類悪の壮絶)

 

 

 ーーソロモン(終局の死闘)

 

 

 ーー亜種特異点や今の現状

 

 

 挙げればキリのない武勇(ピンチ)は俺に諦めないことの大切さを教えた。その悪足掻きが如何出るかは知らない。だが、蹲るよりはずっとマシだ。

 

「まずは一匹ィ!」

 

 這い蹲っている状態から一気に身体を起こし右にいた犬にガンドを見舞わせ、握り締めていた砂利を山羊頭に放る。この時点で博打は成功の域だ。犬の一匹は止め、左側の犬は急な展開について行けず面食らい硬直。本命の山羊頭には上手いこと砂利が視覚を奪った。あとは逃げるだけだ。

 

「あばよ、バケモン!もう、二度と会わないことをいのーーー」

 

 

 

 ーー刹那に聞こえる風切り音

 

 

 

 二の句を告げ終わる前に振るわれるもう一振りの大鉈。この時失念していた二つの要因。一つは言わずもがなもう片方の空いていた大鉈。もう一つは()()()()()()()だ。その二つを入れてないが故にこの誤算は浮き彫りとなり、今襲いかかっている。それもそうだ

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「あ、ーー」

 

 

 

 全身に走るーー死の瞬間

 

 

 

 呆けた声と共に俺の身体はーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴公、少々蛮勇が過ぎるのではないだろうか……しかしその諦めん心は実に良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 山羊頭がーー灼けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少々、遅くなってしまったが……なに、英雄は遅れた頃にやって来るものだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーその騎士、紫紺色と緋色の上級騎士の甲冑を身に纏い、煌びやかな紋章を誇る大楯を背負い、右手に捩くれ劫火を帯びた大剣と左手に太陽の絵を縫い付けた護符(タリスマン)を装う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーー灰に塗れて、尚も燻る内なるに俺は魅了され、その威姿に太陽を拝謁()た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、前置きが長くなったな。いい加減、貴公らも焦れただろう。混沌の火より出でし憐れな悪魔とその追従と……只人よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、貴公、只人であり世界を獣より救った人理のマスターよ。このーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忘れ去られた地獄に、な

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……某所、ある湖にて……

 

 

 

『どうだい、マシュ? 立香君は居そう?』

 

 映像と共に映る可憐な少女の姿。映像の受信者は身に付けていたバイザーを外し、通信機へと目を向ける。

 

「……いえ、バイザーによる周囲探索を行いましたが、周囲に先輩の反応はありません……」

 

『うーん、やっぱりボーダーとは別の場所かなぁ……。それにしてもこの場所は、なんなんだろうね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、見た感じ地底湖なのは確かなんだけど向かっていた彷徨海(ほうこうかい)の付近である北欧にこんな地底湖は無かった筈だ』

 

 この場所に疑問を浮かべる可憐な少女ーーダ・ヴィンチーーは大いに悩む。何故こんな場所に漂着したのか。真っ先に浮かぶ原因は、不気味な幻想種の群れと並行して発生した振動によって座標が狂ってしまったと考えるのが妥当であるのだが、如何せん引っかかる。あの振動の原因は()()()()()()()()()()()()もののそれを口にするのは非常に突拍子のないことだ。

 憶測ばかりでは真実すら逃す危険もある。どちらにせよこうして五体満足でいるのだから儲け物、と考えた方が良いのかもしれない。

 なにせあの幻想種の群れからどの様な経緯で逃れることが出来たのか自分は知り得ていないのだから。

 

『ーーなんにせよ先ずはこの場所の探索だね。ボーダーからの魔力サーチは辺り一帯の魔力濃度が濃すぎて全く以って意味が無くなってしまったからバイザーからの肉眼映像を元に地図を作る訳だけど……行けるかい?』

 

「はい。システム良好、周囲探索を続行、もしくは先輩の身柄を保護を優先します」

 

『オッケー。……君に頼ってばかりというのも戴けないな。ホームズの奴を焚き付けて場所の解明とペーパームーンの更新を急ぐとしようーーなんだ、ホームズ何か分かったのか? ごめんね、一旦切る』

 

「了解。何か進展がありましたら報告します」

 

 電子音が通信の終了を告げ、マシュは軽くため息を吐く。

 

「何処に、いるんですか……先輩」

 

 いつも隣に居た自身の大切なマスターたる藤丸立香。彼が居ないことに弱々しく独白するマシュは握る盾に力を込めてしまう。

 気を失い、目が覚めたボーダー船員達は胡乱げな思考をあの幻想種に襲われた事を思い出し、すぐさま覚醒に成功した。そして次に目の当たりにした光景に息を飲んだ。

 辺り一帯に広がる()()()()()()()()()()()()()()()()()()()そして、ボーダー内の計器がはじき出した()()()()()()()()()()()()()に船員は目をひん剥く羽目になった。

 事態は急を要した。なにせ魔素が濃すぎて通常の人間が外に出られなくなり、サーヴァントの面々とダ・ヴィンチが即席で作った呼吸器を付けたメカニックが、船体の修繕に駆り出されたのだ。未知の場所、濃すぎる魔素、何がいるか分からない恐怖。これらが船員を襲い軽いパニックに陥るところだったが万能の天才を自称するダ・ヴィンチの手腕にて修繕とシステムの再起動は一時間足らずで終了した。

 ここで、安堵、とは行けるはずも無いのが世知辛い世界だ。

 

 

 人類最後のマスターである藤丸立香が姿を消していたのだ。

 

 

 その事実に我を無くしかけたのは言うまでもなくマシュであった。あの緊急事態が発生した際、一緒にいたはずであり、本来ならば姿を消すなどあり得ない事態だ。船員は修繕箇所を探すと並行してマスターの消息をくまなく捜索し、そして修繕が終わるに合わせマシュに船外の探索を命じたのだ。

 

「絶景、と言うべきでなのでしょうか……先輩と一緒だったら」

 

 肉眼に映る果てしない樹林と湖に対し、吐露する様に述べ、バイザーを装着する。ボーダーから数百メートル先にいるマシュは更に奥を遠視機能で、把握を図る。

 マシュの此処まで歩いて見た結果を表すならば、多少の曲がり道はあるが大雑把に見て道のりは真っ直ぐに近い。地質も岩石質、ではなく砂浜であり、もう少し行った先に流木と何やら()()()()()が点在している。

 

「映像、ボーダーに投影記録します。記録(ログ)を別個に保存しますので後でこっちも見てもらいましょう」

 

これにより、ボーダー内の立体地図とペーパームーンに微量ではあるが情報が行く。

マシュは砂浜の道に沿い、先程の流木がある地帯へと足を踏み入れる。

 

「よいしょっと、流木のある地帯ーー仮称、漂流物エリアに突入。……やはり骨、ですね」

 

骨、と一口に言っても様々なものがある。現代なら蜥蜴の様なものや哺乳類のもの。しかし、マシュの目の前に鎮座する()()()はおよそ現代、ひいてはこの地球の歴史に反する様なものであった。

 

 

鋭い牙とボーダーの高さよりも一回り大きい角の生えた頭蓋骨

 

 

指し示す言葉があるなら、それは巨人。

 

 

或いはーー

 

 

ーー悪魔(デーモン)と。

 

 

「目算、約50メートル弱。この世界に生息する幻想種の遺骸と思われます。引き続き、探索を継続。どう判断しますかダ・ヴィンチちゃん」

 

記録に継続の意思を載せ、通信機の電源を入れる。本来ならば快活な声音と共にダ・ヴィンチが出る筈だが今回はもう一人のサーヴァント、シャーロック・ホームズが応答する

 

『戻ってきて構わないミス・キリエライト。できる事ならサンプルが欲しいが生憎、研究用の設備が未だ誤差修正中だ。ーーああ、それとダ・ヴィンチなら工房に籠って用事を済ましている最中だ。故に私が出させて貰ったよ』

 

「了解です。これより帰還します記録(ログ)の閲覧準備をお願いします」

 

『手配しておこう。あと全船員に伝えたい事もあるので、急かす様で悪いが速やかな帰還を頼む』

 

その、言葉を最後に通信は切れた。伝えたい事とはなんなのだろうかと思いながらマシュは帰路へと足を向ける。

 

「凶報で無ければ良いのですがーーん? これは……?」

 

悪い予感を胸に秘めながら砂を踏む。

ザクリ、と砂浜を踏みしめる音に違和感を覚えたマシュはバイザーを外し、足元に注意を向ける。

 

「これは、鱗……?」

 

鈍い鉛色と淡い藍色を放つ一見、大きめの貝殻のようだが貝殻の特有の蓋跡が無い。故にマシュは鱗と判断する。

 

「綺麗ですね……サンプルとして持ち帰りたいところですが、またの機会にーーー」

 

 

 

____aaaaa……____

 

 

 

「ーーっ……?」

 

突如、襲う目眩と山彦の様な声らしき音にマシュは身を揺らす。

 

「今の、は……?」

 

身を立て直すと共に辺りを見遣る。しかし、変化は無く。未だ踏み込んでいないバイザーで目視できない最奥があるばかりだ。

 

「………帰らなくちゃ……」

 

バイザーと大盾を持ち直し、再び帰路へと歩みを進める。

 

 

ーー()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー湖の最奥にて、世界樹(ユグドラシル)が如く大樹の下で()()()()が星見どもを観察()る。

 

()()()()は、何をするでもなく唯、観察()るのみであった。

 

 

 

 

 

まるで……()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

火が陰るが如く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダ・ヴィンチ……これは……やはり」

 

「うん。間違いない、ここはーー」

 

 

 

 

 

 

特異点だ」




感想、批評カモン(高啓蒙)

いや〜難産でした。こんなにかかるとは(白目)

それにキャラの口調が微妙な感じに……アドバイス欲しいです(泣)

ではまた次回 且ノ

……糞団子って食用なのでしょうか?(狂気)
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