Build Divers ASTRAY   作:バレルソン

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大変、大変お待たせ致しました。
次話も残るは推敲なので少々お待ちを(´・ω・`)


STAGE13 ギガ・フロート前篇

 こうして水中戦に向けて本腰を入れて準備するのは初めてだ。

 河童が水中で活動する以上ちゃんとした装備を作り、対抗するのが道理というものだ。

 

 ここで改めて何のためにジャケットシステムを開発したのか。もう一度思い出す必要がある。

 

 ストライカーシステムやシルエットシステム、ウィザードシステムといったC.E.系列の換装システムとはまた異なる、第四の換装システム『アームズジャケットシステム』。これを活かさない手はない。

 

 

 ……という訳で。

 

 今日、カナタは秋葉原でジャンクを漁る事にした。

 

 水中戦に耐え得るように水中用スキルを整えておくのは当然として、実際に水中適性のある機体構築をしておくのも重要だ。

 ジャンク屋の無造作に放り込まれたジャンクを掻き漁りながら脳内で構想を組んでいく。ここで肝心なのが迷うことを極力しないこと。迷えば一日中ジャンク屋を彷徨う羽目になる。

 これが特に目的が無いなら別にいいのだが、今回は早めに完成させておきたい。

 

 使えるジャンクを掻き集めて籠にぶち込みカウンターに叩きつけるように購入。この手のガラクタは基本的に安上がりで学生にもとても優しいお値段だ。

 少し重い紙袋を持って雑多な街並みを歩く。人混みを掻き分けていると、シュウゴの姿があった。このような所に訪れるイメージは無かったので少し新鮮に感じ、思わず声をかけてしまった。

 

「よう、シュウゴじゃねェか」

 

「な、何だ。お前かっ」

 

 声を掛けられてようやく気付いたシュウゴはカナタを見るや否や「げっ」と言わんばかりの顔をした。余程見られたくなかったらしい。

 

「何だ、こんな所に何しに来たんだ」

 

 つっけんどんな質問にカナタは意趣返しと言わんばかりに気色悪い顔芸を始めた。

 

「デュフフ……拙者ァ、新しいフィギュアを買いに来たでござるよ……観賞用、保存用、実用と」

 

 気色悪い笑みを浮かべ、目を泳がせ考え得る限りのステレオタイプの気持ち悪いタイプのオタクを演じてみる。それを見たシュウゴは「気色悪いぞどうした」と切って捨てた。

 

「それに実用って何だ実用って。一体なにに使うつもりだ貴様は」

 

「知らね。つーかそもそも同じフィギュア3体も買うかい。それなら1体買ってから以降同じものは自前の部品で作らァ」

 

「……それも大概普通じゃないだろう……普通の人は作るって発想しないぞ」

 

「うるせぇ。単にジャンクパーツ買いに来ただけだっての」

 

 見せつけるように手に持った紙袋を持ち上げる。中には大量のジャンク品が詰め込まれていた。それを覗きこんだシュウゴは拍子抜けしたように肩を落とした。

 一体何を期待したのかこの男は、とカナタは若干拗ねた。

 

「何だ、エロフィギュアでも買いに来たんじゃないのか」

 

「違うわたーけ。そういうお前だってなんでこんな所に来てんだ。何だ、ヲタ趣味にでも目覚めたか?」

 

「んな訳あるか。単に散歩に来ただけだ」

 

 散歩で態々秋葉原に来るものなのか。シュウゴの家からはそこそこ離れているハズだ。疑問は尽きないが、シュウゴにもシュウゴの事情があるというものだ。これ以上弄るのは止めにしよう。冷静になって口を噤んでいた所でシュウゴが口を開いた。

 

「聞きたいことがある」

 

「ん? どした?」

 

「お前は一体何を目指してガンプラを創ってるんだ? 一体行き着く先は何なんだ?」

 

「あ?」

 

 態々秋葉原にまで出向いて説教でもするのかと眉間に思わず皺が寄る。この手の趣味に将来性など問うような奴が。大人とか大人とか大人とか。そんな姿を思い出してしまう。

 シュウゴはあまりその辺の干渉はしない記憶があったのだが。

 

「言葉が足りなかった。何を理想としてガンプラを作ろうとしているのか、という事だ」

 

「……何を理想として、か?」

 

 ガンプラを作るうえで理想――というよりコンセプトをはっきりとさせるのは大事なことだ。

色んな「やりたい事」を詰め込み過ぎて、その「やりたい事」同士が喧嘩しあって途中でモチベーションを萎えさせてしまったり、とっちらかったシロモノにしてしまうよりは、「やりたい事」を一つに絞って特化させた方が割とよく出来る。

 

「まぁ、そうだな……ゲームで使う奴も居れば使わない奴もいるし、人によっちゃァ原作再現をしたいって奴も居れば、何かオリジナルのモン出したいってのも居るし、はたまた別の世界のテクノロジーを合体させたいとかいうクロスオーバー脳も居るが、俺の場合はだなァ……」

 

 ちょっと、考え込む。

オルタナティブ自体幾度もの改修改造を重ねている。その度にもっと強く、負けないようと考えのもとで創り上げている。

 同時に独自のシステムであるアームズジャケットシステムを乗せたのは自分自身の酔狂もある。重装甲からパージ、高機動戦に持ち込むのは自分なりの浪漫というものだ。

 

「俺は俺の酔狂とそのゲームでの実用性両方を取りたいと思ってる。陳腐な物言いになるけれど要は強くてカッコいいようにしたいのさ。それとプラスで原典で理論上再現可能な程度に留めているって所かねぇ」

 

「成程、わからん」

 

「だろうな。俺も大概欲張りでとっ散らかってるし。なら何に満足できるかを突き詰める必要がある。それが分かれば兎に角突き詰めてみると良いかもだ。で、こんな質問をするって事はGBN始めたのか?」

 

 GBNじゃなくてもガンプラを作るだけでもいい。

 ただその両方に興味が無い人間がする質問ではないように思えた。こんなジャンクの街に現れるのであれば、何となく分かってはくる。

 

「いや、少しばかりお前がそこまで執着するゲームについて情報が欲しかっただけだ」

 

「ったく言うねぇ。まぁいいや。以前よか窮屈そうには見えないし悪かない傾向だ」

 

「窮屈?」

 

 カナタの放った言葉の意図が分からず、眉間に皺を寄せて疑問符を浮かべる。

 シュウゴという男は初めて見た時から面白味の無い男だった。何かに押さえつけられているようにも思えるほどに。

 彼と会ったのは小学生の頃からだ。どういう訳かずっと同じクラスだったのだから、感性の合う合わない勘定に含めても厭でも互いの顔を知るし、話もするようになった。

 何時の間にか腐れ縁と化しており、暇あればアホな話に時々混ざるようになりツッコミ役として動くようにもなった。

 

 そんな中彼の言動からそう言った抑圧されたものを感じ取ることは出来た。

 ゲームをしない性格のように見えたが、ゲームプレイヤーにしか知り得ない言葉を発したり、周囲の視線を気にしながら書店で模型誌を読んでいたりしていたのを見た事がある。

 それが自身に見つかってやたら焦っていたのは印象に残っている。それは尋常じゃない焦り様に逆にカナタが困惑してしまったほどに。

 

 

 授業参観でカナタはシュウゴの母親を見た瞬間得も言われぬ不快感というものを感じた。

 彼女は侮蔑するような視線をシュウゴ以外の者たちに向けていた。それが彼を苦しめている。それが彼を生き辛くさせているのは明白だった。

 

「いや、そんな風に見えた」

 

 シュウゴの質問をはぐらかした。こんな話をわざわざぶちまける必要もない。シュウゴは少し間を置いてから口を開いた。

 

「それは気の所為だ。心配は――要らん」

 

「そうかい。じゃあな……巧くやれよ」

 

 カナタは荷物を持ち直してそのまま会釈してシュウゴの横を通り過ぎる。これ以上問答しても何か意味がある訳でも無いし、シュウゴもそれを望んではいなかった。何の形であれ彼の窮屈さがマシになっているのであればお節介の甲斐があったというものだ。

 

◆◆◆

 

 

 出来上がったガンプラはどこまで動くのか。

 これは実際にGBNで動かしてみなければ分からない。完成した外装(ジャケット)を纏ったオルタナティブがGBNの世界の湖の前に立っていた。

 正式名称アストレイ・オルタナティブ・スケイルジャケット。

 

 言わずもがな水中戦に特化した形態だ。形状としてはブルーフレーム・スケイルシステムをベースに制作。バックパックに大型のスクリュー付きの潜航装置を装備。

 四肢の鱗状に構築されたアーマーは振動を起こす事で推力を生み出す。

 

 右腰には高周波ナイフこと《アーマーシュナイダー》、計2本。左腰には何時ものサムライブレードの千子村正。

 そして手には超音速魚雷を搭載したスーパーキャビテーティング魚雷発射専用銃。

 四肢に取り付けられた無数の鱗状のパーツで形成されたアーマーの内側に捕縛用のブーストアンカーが仕込まれている。

 

 

 そんな物々しいスケイルジャケットを前に、対峙するように球体に手足を生やしたような水色で丸いモビルスーツが立っていた。名はモモカプル。

 こちらは最初から水陸両用モビルスーツ《カプル》をベースに創られており、オルタナティブのような後付けではない。しかしそのカプルとは違い妙に可愛らしく作られていた。

 頭部のモノアイは2つのつぶらな瞳に変わっており、両手の鋼鉄をも切り裂きそうな銀色のアイアンネイルは丸くなって黄色く塗装されたコミカルな仕上がりだ。

 

 それにしても水色なのにモモカプル。

 ……というのは搭乗者の名前にちなんでいるのだから当然だ。搭乗者はあのペリシアに同行していたモモが搭乗している。

 

 

 どうしてこのような事になったのかというと、スケイルジャケットのテスト序でに、手合わせをすることになったのだ。リクとモモ、サラに出くわしたのは偶然で彼らもまたネイビーハロ目当てにここを訪れたらしい。

 因みにここでフリーバトルをすると勝者にネイビーハロが貰えるという。このネイビーハロは水中適性が上がり、機体の水中での反応速度が上がるという優れたオプションパーツだ。

 間に立ったリクは両者を交互に見てからスターターピストルの銃口を空高く翳した。

 

「えっと、今回はフリーバトルでDポイントの奪い合いは無しの模擬戦形式。二人とも、準備はいい?」

「二人とも頑張って!」

 

 リクの横で模擬戦の始まりを待つサラが応援している。

 カタナは気合いを入れ直すように深呼吸してから、機体の状態を確認してからいつでも動かせるように操縦桿を握りしめた。

 

『いつでもいいよ!』

「おう。やってみろやぁ! んじゃ、撃ってくれ」

 

 返答を受けたリクはスターターピストルの引き金を引くと、耳に残る程の大音量での破裂音が鳴り響いた。

 その音のデータを受けたモモカプルが真っ先に動き始めた。曲げた両腕を上げ、腹部のビーム砲口から黄色の閃光が放たれた。

 

『先手必勝! お腹ビィィィィィム!』

 

「なにぃッ!?」

 

『ネイビーハロは渡さないよっ!』

 

 初心者と聞いていたが、のっけから殺意の高い初動にカタナは両目を見開きギョッとする。このままではビームの餌食になってオルタナティブは黒焦げだ。

 即座に左腰の千子村正を引き抜き、そのビームを白刃で――裂いた。

 裂かれたビームはオルタナティブを避けるように左右に分かれ、森林を焼き払い爆発。

 

 一撃を免れたオルタナティブは魚雷発射専用銃と千子村正を携え、第二波に備える。先ほどのビームの出力は下手なビームライフルを大きく凌ぐ。これに当たる訳にはいかない。

 

『……び、ビームを斬った』

 

 驚愕の色を隠せないモモの声が聴こえる。ビームを斬るなんて芸当を想像出来なかったのだろう。

 それが普通の反応だ。現来ビームというものは本来シールドか、最悪装甲で受けるものなのだ。

 

『でも、まだまだッ!』

 

 再び腹部のビーム砲を放つべく構えを取る。その予備動作が出た瞬間、白刃を閃かせた。再び放たれた閃光は二つに分かれ、見当違いの場所で爆ぜた。

 真正面からのビームが無駄だと察したモモカプルの動きが変わり、じりじりと横へと足を動かし始める。

 

――駄目だ、これじゃぁいつも通りだ!

 

 カタナは自身の変わり映えしない防御方法に舌打ちし千子村正を鞘に納め、湖に向かってこちらも足を動かした。

 

『なら! 指ビィィィィィム!』

 

「指のビーム!?」

 

 次は両手を突き出し両の指先に小さな穴が開いている事に気が付いた。――これはビームの発射口だ!

 ランダムに放たれるビーム弾の雨の中、咄嗟に機体をジャンプさせて湖に飛び込ませた。大きな水飛沫を立ち上げ、機体は重量のままに底に沈んでいく。

 

 それを追うようにモモカプルも湖に飛び込んでいた。水中で加速し、逃げたこちらを肉迫していく。魚雷発射専用銃を構えて、迫るモモカプルに向け照準を合わせる。

 残弾数は6発。あまり無駄には使えない。

 

「行けっ」

 

 操縦桿のトリガーをカタナが引くと、それに合わせてオルタナティブが魚雷発射専用銃の引き金を引いた。2発の魚雷が湖の中を泳ぐ。

 モモカプルは2発の魚雷を腹ビームで全て撃ち落とした。

 

 水中ゆえに減衰しているとはいえミサイルを破壊するだけのパワーはあるらしい。

 

――残り4発。

 

 接近するモモカプルが振りかざすクローに即座にアーマーシュナイダーを抜刀して対抗、鍔迫り合いに持ち込んだ。

 機体が水に捉われ過ぎて思うように動かせない。対するモモカプルは水中を自由自在に動けているように見えた。最初から水陸両用に創られたものと、無理矢理水中戦仕様にしたモビルスーツの差ということか。

 

『こっちの方が早いわね!』

 

「どうだろうなッ!」

 

 一旦蹴り剥がして、距離を取る。

 次にモモカプルは真正面から突撃を始めた。水中戦仕様のアドバンテージを理解したがゆえの行動だろう。両手のクローを突き立てるように接近をかけ、カタナは自機のオルタナティブにそのクローが接触する数秒前を待った。

 そしてその次の瞬間右半身のスケイルアーマーを振動させた。

 

『避けたッ!?』

 

 左方向にスライド移動するように攻撃を避けがら空きの背中目掛けて残り4発の魚雷発射専用銃の引き金を引いた。

 

――勝った。

 

 その時、勝利を確信した。確かな手ごたえと共に水に押さえつけられたような爆音と白い泡が噴き出す。

 

『やーらーれーたー!』

 

 モモの芝居がかった悲鳴と共にモモカプルが沈んでいく。

 全身から力を抜き、機体を浮上させようとした矢先――ふとセンサーを見た。

 

「――あれっ」

 

 沈んでいくモモカプルが一つ。そしてオルタナティブそのもの。最後に一つ。そのオルタナティブの背後に回り込もうとしている熱源反応がもう一つ。

 そんな馬鹿な、この戦闘では1対1のはずだ。

 

 なのに――これは

 

『モモ、キィィィィィック!!』

 

「え゛」

 

 背後を向く。そこには一回り小さいカプルをデフォルメ化させたような緑の丸いメカが背後に回り込んでいた。そしてライダーキックめいた姿勢で背中のスラスターを吹かせている。

 

「げぇっ!?」

 

 カナタは口をあんぐりと開けた。

 あのマシンにあんな仕掛けがあったと言うのか。そんな馬鹿なことがあるのか。

――マトリョーシカかよォ!

 

 想定外な展開にテンパったカタナは慌てて操縦桿をガチャガチャと動かすものの、モモカプルの中身の方が行動が速かった。

 

 げしっ。

 

 そんな気の抜けたキックの炸裂音が、カタナがこの戦闘で一番印象に残った炸裂音だった。

 

 

 

 

 

 結論から率直に言おう。……カタナは負けた。

 背中のスクリューを破壊され、挙句復帰したモモカプルに水中でボコボコにされた。あんまりだ。あまりにもあんまりだ。

 しかもあの4連魚雷の炸裂する寸前にモモカプルは減衰したビームを撃って魚雷を破壊しており、ダメージを最低限に抑えていたというのだ。あんまりだ。まさかの初心者にボコボコにされてしまった。

 ネイビーハロを奪われたカタナはここ暫く、木陰で膝を抱えていたという。

 一方勝ったモモはサラと手を合わせて喜び合っており、サラにあのハロをプレゼントしようという話を耳にした。

 

「サラにあげちゃうね!」

「いいの!?」

 

 サラが花が咲いたような笑顔を見せ、リクは片隅でシクシク泣いているカタナを横目に苦笑いする。

 

「元気カ? 元気カ?」

 

 ネイビーハロは「ねぇねぇどんな気持ち?」と言わんばかりに敗北者(カタナ)の周囲で飛び跳ねまわっていたという……

 

◆◆◆

 

 

 数日後、古鉄やにカドマツがその戸を潜り、カウンターでいつものようにぼんやりとしているカナタに「よっ」と会釈をした。彼がここに来るときは大体何かあるときだ。

 察したカナタは覇気のない瞳と姿勢を正した。

 

「元気か?」

 

「まぁそれなりに」

 

 カドマツは無造作に棚に置かれたSDガンダムのキットの箱を手に取り眺めながら口を開く。

 

「既に何名か犠牲者が出ている例の河童だが――犠牲者に共通項が浮かび上がった」

 

 河童事件の調査に進展があったようだ。この共通項が浮かび上がれば燻り出しが出来る可能性が出来たというもの。カナタは食い気味に返した。

 

「何です?」

 

「事件はいずれも夜に発生していたこと。そして犠牲者は数日前あるイベントに参加していた。――ハロハロ一本釣りにな」

 

「あーそれ、俺も参加し損ねたんですよね……色んなハロが貰えるって言う奴っすよね」

 

 ハロハロ一本釣りとは昨月、シーサイドエリアで開催されていたイベントだ。数多くのダイバーたちが、ある者は色とりどりのハロ欲しさに、ある者はハロの持つアビリティ欲しさにこぞって参加したものである。

 

「確か釣れるのがグリーンハロとかゴッドハロとか、ネイビーハロとかでしたっけ。機体にセットしたら性能が上がる奴で……」

 

 ネイビーハロという単語を口にした途端、初心者のモモに水中でボコボコにされた苦い思い出が甦る。スケイルジャケットが不完全だったというのもあるが、ツメの甘さはスケイルジャケットとは無関係であり半分カナタの落ち度だ。

 なお、このハロハロ一本釣りイベント自体は定員制でカナタは参加し損ねている。

 後日局所での戦闘の報酬で貰えるようにはなっており、先ほどの湖での戦闘もその一つだ。

 

「そう。それに犠牲者がいずれも参加していたということだ。それで特定のデータに反応しているらしく、ネイビーハロをいずれも共通して食われているそうだ」

 

「……ネイビーハロを?」

 

 それまたピンポイントなターゲットだ。カナタは要領を得ず冴えない返答をした。

 

「恐らく海に居ることと水中適性上昇アビリティに何かしらの因果関係があるんじゃないかと踏んでいる。坊主、アレ持ってるか?」

 

「えぇ……一応取りはしてるんですが……」

 

 あの惨事の後、カタナはモモにリベンジし、水中戦に持ち込まれる前に速攻でモモに逆襲し勝利を収めた。

ネイビーハロの力で水中適性を上げて、モモカプル戦での反省を活かしスケイルジャケットの改良も行っているので水中戦ではそこそこ戦えるようになったと自信を持てたというのに、結局は河童の恰好の餌だったという事実を前に徒労を感じた。

 

 ……しかしちょっとまって欲しい。

 逆に考えればこれは、河童を地上におびき寄せるチャンスにもなるということじゃないか? そう思い付くや否やカナタは口を開いた。

 

「じゃぁ、河童釣りかましましょうか」

 

「河童釣り……ね」

 

 意図を理解したカドマツが軽薄な笑みを浮かべる。この作戦が決行されるとき、河童の年貢の納め時だと、そう思いカナタはほくそ笑む。

 ……が、それと同時に嫌な予感が寒気という形で背筋を襲った。

 

 ダイバーギアのメール着信音が鳴り響いた。話が終わって会話が途切れていたのでカドマツに断ってからダイバーギアを立ち上げメールを確認すると心臓が掴まれるような感覚を覚えた。

 

『サラを見ませんでしたか? ログインはしているみたいだけど、メールしてもぜんぜん返事もなくて』

 

 嫌な予感は往々にして的中するものらしい。カナタは眩暈のようなものを感じた。


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