Build Divers ASTRAY   作:バレルソン

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アストレイ系Vtuberが出たと聞いて初投稿です。
サブタイはBFTより。格闘機、Z系、SDのトリオでお送り致します。


ではでは大変お待たせしました!


STAGE17 トライバトル

 GPD筐体の発進台にガンプラたちを乗せると、液晶画面にプラネットコーティング付着率が表示。滞り無く上昇していた。

 

 しかし相対するチームが持つ機体を見て、カナタとコウイチは唖然とした。

 1つはパーフェクトガンダム。まぁこれはいい。昔にキット化されているのだから。とはいえプロポーションも改善されており旧キットとは比べ物にならない出来栄えだ。

 

 尤も問題は残り2つ。

 トルネードガンダムとザンスパインだ。こいつらはキットにすらなっていない。

 恐らくは一から作ったか既存のガンプラを大幅に改造したものだ。

 パッと見だけでも相当な作り込みで、高性能は約束されたも同然。

 

 

 

 ガンプラを動かすために必要なプラネットコーティング付着が終わったところでガンプラが動き始めた。

 

「俺はジャンク・ストライカーで行く」

 

 ふわりと浮遊したジャンクストライクはゆっくりと前進。戦闘領域にその身を投げ入れた。

 プラスチックから鉄の塊へ。

 プラネットコーティングの力で力を得た鉄の巨人はフェイズシフト装甲をアクティブにし、灰色の装甲をトリコロールカラーに変質させた。

 手には高エネルギービームライフルを携え、降り立った基地を歩く。同じく出撃したガルバルディβとSDF91がすぐ横に、地面と埃を巻き上げ着地した。

 

 恐らく既にあちらも展開は済んでいるはず。

 

「皆、気を付けて」

 

 コウイチの声に言わずもがなと言わんばかりに、ジャンクストライクとSDF91はゆっくりと前進する。

 

「……来た!」

 

 センサーに感あり。上空に1機。

 ザンスパインが超高速で突撃をかけて来る。ミノフスキードライブを搭載しているお陰か。

 

「速いッ!」

 

 アヤが叫ぶ。カナタは舌打ちしながら高エネルギービームライフルの銃口をザンスパインに向けた。画面越しのスコープから照準を合わせている中、空を切り裂き前進するザンスパインが――忽然として消えた。

 

「消えた……! いや!」

 

 カナタ操るジャンクストライクは咄嗟に照準をやめて横方向に頭部を向ける。そこには更に加速したザンスパインが迫っている。

 その様は獲物を見つけた猛禽類のようにカナタには見えた。

 

 そしてバックパックとリアアーマーからYの字に赤い炎が噴き出した。その炎は翼のような形を作り……

 

「光の翼だ! 皆散開するんだ!」

 

 眼に見えた危険信号だった。今ここで迂闊に接近すればあの光の翼に焼かれかねない。悟った3人は咄嗟に蜘蛛の子を散らすように散開した。

 

 ザンスパイン。……型式番号はZMT-S37S

 宇宙世紀153年ザンスカール帝国が裏工作でV2を保有する敵対勢力であるリガ・ミリティアから技術を盗用。ミノフスキードライブをV2は2基搭載に対して、こちらはYの字に展開していることから察せられるだろうが3基搭載しており、出力はオリジナル以上に高い。

 加えてサイコミュも搭載しており、カタログスペックだけなら素のV2を凌ぐ。ツインアイがザンスカール帝国側のモビルスーツらしく猫目となっており、その紫色のボディが妖しく光の翼を照り返していた。

 

 血のように赤い翼を広げたその禍々しい姿は猛禽類のようにも蝶のようにも見える。

 Yの字に光を放つそれはバレルロールを始め、扇風機のフィンの如く円状の残光を左右の逃げ道を塞ごうとしていた。

 

 迫る先はジャンクストライク。先に謎の機体から潰そうという魂胆か。カナタは咄嗟にコンソールを操作しジャンクブースターのリミッターを一時的に切った。

 

「ジャンクブースター点火ッ――間に合えッ!」

 

 バックパックの1対のブースターが点火そのまま真上に上昇しバレルロールしながら迫るザンスパインの突撃を紙一重で回避。下で回転するザンスパインを見下ろしながら、高エネルギービームライフルを構えた矢先だった。

 

「ッ!?」

 

 背後から迫るナニカを感じた。

 即座に左に機体をスライドさせるように動かすとビームの奔流がすぐ横を通り過ぎた。

 

「っぶね……」

 

 ビームの飛んできた方向を見るとそこには基地外の荒地をホバーで走行するパーフェクトガンダムがそこにいた。先ほどのビームはショルダーキャノンだ。

 

 パーフェクトガンダム。型式番号PF-78-1。数多く存在するファースト・ガンダムの重装タイプの一つだ。

 各部に追加装甲を取り付けているお陰で、シルエットはガンダムと比べて肥大化している。右肩部にはショルダーキャノン、ライトアームには2連ビームガンを装備。レフトアームにはシールドを装備、裏側に機雷とビームサーベルを仕込んでいる。

 相当の重装備なので回避性能は低下しているものの、全身武器庫でかつ防御力も向上しているせいでプラマイゼロ……むしろプラスだ。

 

 近寄るならそれ相応の対価を求められる危険なモビルスーツだ。

 

 下方で飛ぶザンスパインがバレルロールを止め、光の翼を仕舞い旋回、空中で隙の出来たジャンクストライクにビームライフルを向ける。

 

「チィッ!」

 

 前門のザンスパイン、後門のパーフェクトガンダム。同時に対応するのは困難を極める。

 今置かれた状況にカナタは舌打ちしていると、横殴りにSDF91がザンスパインを蹴り飛ばした。

 

「イズミ君! ザンスパインはわたしが! 100年以降の機体なら――ッ!」

 

 体格の面で劣れども、SDサイズは的が小さく小回りが利く。スピードも勝るとも劣らなければ、切り札を持っている。ザンスパインと対等にやり合える機体としては持って来いだ。

 そしてパーフェクトガンダムは、突進力で勝るジャンクストライクでケリをつける。

 

 だが――まだ敵はいる。

 

 紺色のボディのガンダムタイプ――トルネードガンダムだ。パーフェクトガンダムを追い越す形で飛行するそれはビームサーベルを抜き放つ。

 ザンスパインやパーフェクトガンダムと比べて棘こそないが、汎用性の高さとアームに仕込まれたガトリングガンに腹部メガ粒子砲、2本のビームサーベル、携行しているビームライフル。とソツのない武装ラインナップだ。

 

 ――こいつもこいつで近寄れば死か……!

 

 腹部を狙えば速攻で腹部のメガ粒子に蜂の巣にされるのは目に見えている。

 

 コウイチ操るガルバルディβがそのトルネードガンダムの行く手を阻み、肩部アーマーから抜き放ったビームサーベルで鍔迫り合いに持ち込んだ。

 

「それ以上は行かせないよ……!」

 

「――ナナセさん!?」

 

「君はあのパーフェクトガンダムをやるんだ! その機体の突進力なら――!」

 

「……了解ッ!」

 

 トルネードはコウイチに任せたカナタは機体を着地させ、前方へ前進するパーフェクトガンダムを見据えた。引き続きショルダーキャノンを構えており、いつでも撃てる体勢にある。

 機体のスラスターに火を入れようとした矢先、その砲口が火を噴いた。

 

「こいつ、実弾も撃てるのかッ!?」

 

 今度飛んできたのは実体弾だ。弾はすぐ後ろの地面に着弾し、爆風が機体の背後を襲った。機体が前のめりによろける。直撃を貰えばいくらフェイズシフト装甲だろうとダメージは免れない。

 

 次に取るべき行動は決まっていた。

 

 

 高エネルギービームライフルをリアアーマーにマウントすると、バックパックの追加ブースターがスライドし、ストライクの両アームに取り付く。肘に相当する部位に噴射口が付いており、それを点火。

 

「ブーストッ!!」

 

 殺人的な加速で遠方で射撃するパーフェクトガンダムに迫る。アームのブーストはある程度加速がかかった所でカットし、そのまま慣性を利用して前進。

 慣性にその身を任せて地上を走る、走る、走る。

 

「行かせるか!」

 

 パーフェクトガンダムの操縦者(ビルダー)が吠え、ライトアームの2連ビームガンを発砲する。

 出力は高く、掠りでもすればかのビームマグナムを掠めたギラ・ズールのようになるのは確実だ。そんな中でジャンクストライクは()()()()()()()

 

 次の瞬間、敵操縦者(ビルダー)の表情が驚愕に染まった。

 連続で放たれる2つの光芒たちは遠く離れた荒野で虚しく空中で減衰、消滅していく。何故ならば一つたりとてジャンクストライクには命中していないのだから。

 

 ジグザグに動いて行くそれは傍から見れば気持ち悪いと言わざるを得なかった。慣性を無視した無茶なマニューバは相手の常識を逸脱していたのだ。予測もままならず、ランダムに動くそれは気持ち悪いと言わずして何と言う。ビームマシンガンや常軌を逸脱した運動性能でもあればダメージを与えられるだろうが、生憎パーフェクトガンダムはそれを持たなかった。

 

「打ち抜くッ!」

 

 接近し切った所でその自慢の拳を振り上げる。勢いの乗り切ったパンチは流石のフルアーマーでもただでは済むまい。対してパーフェクトガンダムもビームサーベルを引き抜き、コックピット目掛けて突きを放つ。

 

 ――ッ!

 

 その動きに気付いたカナタは即座にレバーを横に動かした。

 ジャンクストライクの上体が――逸れる。ビームの刃はストライクの脇腹を焼き、軌道が逸れたストライクの拳がパーフェクトガンダムの肩を横から炸裂させた。

 

 ゴウッ、と音を立て吹っ飛ぶパーフェクトガンダムの巨体と、姿勢制御が出来ず派手に転ぶストライク。

 流石にあの一発を貰えばタダでは済むまい。カナタは機体のコンディションを確認しつつ起こしていると、思わず目を見開いた。

 

「……反応装甲(リアクティブ・アーマー)!」

 

 粉塵が巻き上がり、様子はしばらく見えなかった光景。時間と共に晴れて行くと中には1体のモビルスーツが立っていた。――RX-78ガンダム。

 おそらく装甲に爆薬を仕込んで衝撃を緩和、わざと派手に吹っ飛ぶことでダメージを相殺させた。

 

「まだだッ!」

 

 もう一発叩き込めば勝ちだ。ジャンクストライカーのブーストを再び点火させ――られなかった。

 

――オーバーヒート……!

 

 ジャンクストライカーは赤熱していた。ブースターは焼け黒い煙を出している。一方で敵のガンダムのライトアームに装備されたビームガンは保持しておりいつでも射撃が出来る状態だ。

 

 お互い十全とは言えない状態で使えない装備を棄てていく。ストライクは両アームのジャンクストライカーを脱ぎ捨て、ガンダムもまたビームガンだけ残してパーフェクトのパーツを全て破棄。

 高エネルギービームライフルと二連ビームガンを向け合いそのまま睨み合った。

 

「ハッ! 楽しいなぁ、ジャンクストライク!」

 

 男は笑う。それを見たカナタもまた、口の端を持ち上げた。

 

「クククッ……久々だよこうして面白くやれンのはパーフェクトさんよ!」

 

 互いに機体のフレームは悲鳴を上げ予断を許さない状況だというのに逃げるという選択肢はなかった。カナタにとってはマスダイバー抜きで自分と互角以上にやり合える人間と後腐れなく戦える事実が嬉しくて仕方が無かった。あの無銘との戦いで得られなかったものだ。

 

 再びストライクとガンダムが砂煙を巻き上げ、機体を走らせビームを撃ちあう。ある時は岩を盾にし、ある時はスラスターで砂煙を派手に巻き上げる。

 

「チッ、攻撃用のエネルギーが……!」

 

 高エネルギービームライフルの引き金を引くと、カチリと渇いた音が鳴り響くだけ。――ビームを吐き出すハズの銃口は沈黙していた。

 高エネルギービームライフルを投げ捨て、腰の両サイドアーマーから高周波ナイフ《アーマーシュナイダー》を2本とも引き抜く。

 

 一方でガンダムもまた、弾切れのビームガンを棄て、シールドに仕込まれたビームサーベルを引き抜き、シールドも棄てて最低限の装備で構えた。

 それから――数秒の睨み合いが始まった。

 先に動こうが動かなかろうが勝つ方が勝つのだ。しかし心情的には互いに相手の出方を見ておきたかった。先に動いたのは――両方だった。

 

 地面を抉るように蹴り抜き、走る。

 

 リーチはガンダムのビームサーベルの方が上だ。とはいえ、そんなことカナタは重々承知の上であった。

 コックピット目掛けて放たれた突きを前にストライクは上半身を逸らす。勿論この強引なマニューバは機体のバランスを崩すが、ここでスラスターを使って転倒を防ぎ、隙だらけのガンダムの横側からアーマーシュナイダーの先端を――

 

「遅いなッ!」

 

「何ッ!?」

 

 突き出したそのレフトアームが宙を舞い――地面に落下した。

 あのガンダムは一瞬であの隙をリカバリーしてカウンターを叩き込んだというのだ。とはいえ、ライトアームが持ったアーマーシュナイダーは生きている。それをガンダムのサーベルを持つライトアームに突き刺した。

 

 夥しい火花を散らしながらその刃をめり込ませ機能停止しビームサーベルを落とした所を逃さず、ストライクは突き立てたアーマーシュナイダーを手放しそのまま相手にパンチを叩き込む。

 

 負けじとライトアームをロストしたガンダムが返しのパンチを放つ。受けたストライクは大きくよろめき再びバーニアを吹かせて勢いの乗ったパンチを叩き込む。

 最早武器はバルカンしかない。互いにバルカンをまき散らし、拳を叩き込む。

 

 互いに機体をぶつけ、ブレードアンテナの破損度外視で頭突きを放つ。

 

「決着を付けようか」

 

 ガンダムの操縦者(ビルダー)はそう言って、ガンダムにライトアームに刺さったアーマーシュナイダーを引き抜かせる、カナタ操るストライクもまた、地面に落ちたビームサーベルを拾う。もうエネルギーは残りわずか、フェイズシフト装甲を維持するくらいならビームサーベルの維持にそのエネルギーを回した方がいいだろう、とカナタは無造作にフェイズシフト装甲をディアクティブモードに切り替え、ストライクの鮮やかな青と赤の装甲は鈍い灰色に染まった。

 得物のリーチこそビームサーベルの方が上だが、アーマーシュナイダーの有効射程にまで詰められればビームサーベルも役に立たなくなってしまう。

 

 

 次の一撃こそが勝敗を決するのは明白だった。

 二人の操縦者は固唾を呑み、操縦桿を引いた。

 

 

 ◆◆◆

 

 ガルバルディβとトルネードガンダムの戦闘はビームサーベル同士の鍔迫り合いから始まり、互いに距離を取ってから中距離を主体にして繰り広げられた。

 飛行能力ではトルネードガンダムの方に利があり蒼穹を自在に舞う一方で、ガルバルディβは周囲の建造物を盾に隙を見てはビームライフルで応戦していた。

 

 爆撃する要領で腕部のガトリングガンをばら撒き、倉庫の天井やコンクリートに穴を開ける。

 

 飛行力にモノを言わせたそのマニューバは確かに脅威だ。しかしコウイチにはこの手の相手は多少の心得はあった。トルネードガンダムの空爆をしのぎながら、マップの確認をしていく。

 基地内には火薬庫など爆発物が転がっている。となれば、これをどうするのかはコウイチの中で答えは出ていた。まずはその火薬庫にトルネードガンダムの火線を誘導し、そのまま――

 

 爆発、炎上。

 狙い通り火薬庫は派手に大爆発を起こし、連鎖的に基地の施設が爆発を起こし、地を砕き、建物を倒す。屋根、瓦礫、格納されたモビルスーツのパーツが爆風で舞い上がる。

 たとえモビルスーツの装甲だろうとこの爆心地に立つガルバルディβは無事には済まされない。が――この巻き添えでのダメージは覚悟の上だ。

 

 こうなることを織り込み済みだったコウイチはシールド防御でダメージを最低限に抑え、完全に爆発をしのいだ所でそのまま爆煙の中に身を投じた。

 

「爆煙に紛れたのかっ!?」

 

 このような状態では上空からの爆撃は弾の無駄だ。爆煙はトルネードガンダムの居る上空にまで上り、操縦者(ビルダー)は歯噛みした。

 これでは討てないではないか。しかしこのまま爆煙が晴れるまで待つことが出来るのか。相手操縦者は味方の様子を見た次の瞬間、決断した。

 

「――突っ込む!」

 

 このまま待てば味方が討たれる。遠方の荒野を見ると互いに装備をパージしたストライクとガンダムが互角の殴り合いを繰り広げ、空ではSDF91がその小柄な体躯でザンスパインをかく乱している。

 このままガルバルディβと悠長に撃ちあっていればいずれジリ貧になる。そう判断した。

 

「――来た」

 

 それに対し、向こう側のコウイチは誰にも気づかれないようにほくそ笑んだ。

 トルネードの操縦者がとった選択はミスだ。仮にあの状況で撃ち合いでカナタが敗北してもあれだけ武器を奪われたパーフェクトガンダムが出来ることはたかが知れている。加えて距離もそこそこあるので追いつくのにも時間が掛かる。

 アヤのSDF91もまた、ノーダメージでザンスパインの攻撃を回避しており、そうそう墜ちる様子はない。

 

 それで慌てたのだろうが、それで爆煙の中に突っ込む行為は飛んで火にいる夏の虫だ。

 モビルスーツが立てる独特の音を探し、ビームライフルのトリガーを引く。

 

 だがしかし、トルネードも間抜けではなかった。

 爆煙を切り裂き飛び交う2つのビームは片方はガルバルディβの左肩部を僅かに掠め、もう片方はトルネードの左肩部を貫いた。そして次にトルネードは返す刀で接近、回し蹴りを放つ!

 

「墜ちろぉ!」

 

 蹴りを叩き込まれ、大きくよろめいたガルバルディβに腹部の拡散メガ粒子砲を放つ。これを受けてしまえば終わりだ。

 

 

 

 

 

 

 そう、終わりなのだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ビームコーティングだと!?」

 

「GPDには必須スキルだよ……! 散弾なんて使うから――!」

 

 装甲のあちこちをメガ粒子で焼かれ、周囲の爆発で煤にまみれたガルバルディβがビームサーベルを抜き放ち、コックピットを貫く。

 ここで相手がビームライフルを撃てども、一撃で墜ちる心配は無かった。無論、一発でも貰えばビームコーティングが融解する程度には脆いが、一撃を叩き込むチャンスを得るのには充分過ぎた。

 

「馬鹿な……」

 

 トルネードが地面に膝を突き沈黙する。聴こえるのはビームサーベルが消える音と、基地が焼ける音――そして離れた場所から聴こえる銃声だけだった。

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

 緊張の糸が切れて、息も絶え絶えになる。

 この極限の緊張感と、駆け引き。これがGPDだという実感を思い出させる。けれども、最早祭りのあと。この実感を味わう事は恐らくもう無いのだろう。

 

 

 焼ける基地の中、ガルバルディβは沈黙したトルネードを背に歩く。彼の行く先は――

 

 

 ◆◆◆

 

 アヤが操る(駄洒落ではない)SDF91はザンスパインの猛攻を潜り抜けていた。

 

「この機体を傷付けるわけには――っ」

 

 カナタに借りた機体を。

 壊れても直すとは言っても、自分から壊して良い理由にはならないのだ。ザンスパインとのビームライフル同士の撃ち合いは泥試合と化していた。

 

「そんなやる気のない射撃に当たらないわよ……!」

 

 完全に対戦相手に見抜かれている。対戦相手の紅一点の女が突いてくる。

 とはいえ、回避に重点を置いているお陰でザンスパインの射撃は全て躱し切れている。SDの的の小ささもあるが、元々追従性の高さもあった。

 元々10年以上前の古いキットをベースにしているが脆いパーツを補強し、可動部を増やしている。その上元のパッケージにはなかった機構機能を織り込んでいる。最早いちから作ったに等しいそれはアヤの要求する操縦に完全について行けていた。

 

 それにしてもこの操作感――GBNに比べて重い。機体のせいじゃない。ゲームが違うからか。

 実際にガンプラが動いているから伝わる感覚も違う。GBNの雛型となったゲームだが、何か根本的な所で違う気がした。

 

「鬼ごっこもこの辺にするわよ――お嬢さん。行きなさい、ティンクルビット!」

 

 しゃらん、と鈴の音がアヤの耳朶を打った。

 惑わされるな。音に、ビットの動きに。

 

 耳障りな鈴の音を意識からシャットアウトし、両肩部から全部で4基射出されるビットの動きを捉えた。ザンスパイン本体からも当然射撃は飛んでくる。

 合計5方向から飛んでくるそれを見切るのは困難を極める。

 

 このままでは被弾どころか、蜂の巣だ。

 

 ――駄目だ、このままじゃ

 

 覚悟を決めなければならないか。

 逃げの戦いで勝てるような相手ではないのは分かっている。

 とはいえ、躊躇いが踏み込みを浅くさせる。

 

 これでは子供の間合ですらない。

 

 SDF91のスピードなら懐に飛び込んでビームサーベルを叩き込めるハズなのに。ヴェスバーという高火力兵装も持っているというのに。

 5方から飛び交うビームは徐々に激しさを増していく。

 

「――ッ!」

 

 左腰にマウントされたビームサーベルを1本抜刀し、持ったその手首を回転させる。サーベルの軌跡が円を描きバリアのカタチを成す。左右から襲い来るビームをシャットアウトし、今を凌ぐ。

 その時――

 

「なーに躊躇ってんだ」

 

 隣で操縦しているカナタが言った。どうやら戦いながら戦況を確認していたようでこちらの戦闘も確認していたらしい。否定できない事実を指摘しているもののしかしながらその声どこか優し気だった。

 

「さっき言ったろ? 壊れたら直すって。だから――見せてくれ、フジサワさんの戦いを」

「よそ見している場合かぁッ!」

「うぉぶねぇぇぇぇぇぇぇッ!?」

 

 対戦相手のパーフェクトガンダムと戦闘している。カナタの操るストライクは各部に傷跡が見られ、ボロボロだ。それでもカナタは先ほどの穏やかな声が嘘のように楽しそうな声をしていた。同じくコウイチもまた緊張下にいながらもどこか楽しそうだった。

 トルネードガンダムを戦術で打ち破っているのであろう声が聴こえる。

 

「――行こう、F91」

 

 「行って来い」、カナタがそう言ったような気がした。

 ビームサーベルでの防御を切り上げ、入れ替わりに右サイドアーマーからビームシールド発生装置を取り出し、ティンクルビットの密集した所を狙って、投げた。

 

 自棄になったか。ザンスパインの搭乗者(ビルダー)は疑うも、手元から離れた所でビームシールドを低出力で展開しSDF91が持つビームライフルの銃口をその投げられたビームシールドに向けた瞬間、アヤの目論見を察した。

 

「ビームコンフューズッ!」

 

 高出力のビームシールドならばビームライフル程度、シャットアウトは容易だが低出力で受けると弾丸は貫通、四散してしまう。その減衰四散した弾丸をアヤは利用した。

 元々ビットはスラスターと小型ジェネレーターやバッテリー、伝達装置であるサイコミュの兼ね合いもあって頑丈に作られていない。

 

 ――つまるところ攻撃が当たりさえすればビットは墜ちる。

 

 それが喩え減衰、拡散したビームであろうとも。

 ビームのシャワーはたちまち飛び回るティンクルビットを焼き、火の玉にした。

 

「小賢しい真似を!」

 

 流星となって墜ちていくビットを前にザンスパインはビームライフルの銃口をSDF91に向け直し、同じくこちらもビームライフルを向ける。条件はほぼ同じ、敵には光の翼というアドバンテージがあるが小うるさいビットはもう既に全て落とした。

 同時に惹かれた引き金は、互いに一条の光芒を吐き出させ、その光と光は衝突する。

 

 空気を焼きながら対消滅すると、両者は衝撃波にその機体を流されコントロールを失う。アヤは即座にレバーを動かすものの吹っ飛んだ機体が体勢を取り戻すには時間が掛かった。

 前方のザンスパインは間もなくして復帰してビームライフルの引き金に再び指をかけている。

 

「墜ちなさいッ!」

「まだ――」

 

「させるかよッ!」

 

 その時、SDF91の前に灰色の戦闘機が割り込んだ。――否、これは戦闘機などではない。この機影は初めて見るが同時に見覚えもあった。

 

「ジャンク……ストライカー」

 

 初めて見るけども見覚えもある。それは矛盾するような物言いだが、事実として装備された状態こそ見た事はあれど、こうして自律稼働するジャンクストライカーは初めて見るのだから。

 ジャンクストライカーはバックパック部分を中心にして両サイドにジャンクナックルを装備していた。ナックルにビームが着弾するタイミングを見計らってSDF91の眼前を横切り、防ぎ切ったのだ。

 

 着弾した部分は対ビーム処理――ガンダムSEED的に言えばラミネート装甲を施していたため黒く焦げている程度でダメージは軽微。

 

――本体は一体何処に。

 

 ふと、ストライクとガンダムの戦闘のあった場所を見るとそこには大破した両機が向き合ったまま沈黙していた。相討ち――アヤの脳裏にそんな言葉が過った。

 

「イズミ君、どうして!」

 

「ストライクはもう動かないが、生憎まだジャンクストライカーのドラグーンは生きていてよ……!」

 

 ドラグーンシステム。平たく言えばファンネルのようなものだ。

 遠隔操作されたジャンクストライカーは縦横無尽に空を飛び回り、ザンスパインに突撃を繰り返す。更に基地からもビームが飛んでくる。コウイチの中破したガルバルディβがライフルを撃っているのだ。

 

「光の翼ッ!!」

 

 しかし、このままやられて終わる相手でもなかった。

 展開された紅い光の翼は忽ち、ジャンクストライカーのスラスターを焼き落とし、地上のガルバルディβは上空からビームライフルで吹き飛ばした。

 

「これが最後にしてやれることだ……!」

 

 黒煙を上げて落ちていくジャンクストライカー。しかし、次の瞬間両サイドにあるナックルを射出した。射出されたそれはそのまま真っ直ぐザンスパインに飛んで行き、そのまま直撃した。

 

 

「しまッ――!」

 

 墜落していくジャンクストライカーを他所に大きくその身をよろめかせるザンスパイン。――勝機が見えたアヤはコンソールを操作しSPウェポンを起動させる。

 このSDF91には切り札があった。それは最大稼働による限界性能の突破だ。

 SDF91の両肩部装甲から3枚ずつフィンが展開され尋常ならざる熱を放つ。そして次に機体を動かした時にはすでにザンスパインの眼前にまで迫っていた。

 

 だが、ザンスパインは即座に背中を向けて光の翼を展開。SDF91は咄嗟に後退することで翼に焼かれるのを防いだが、超高速でその距離を離した。

 通常のモビルスーツでは追いつけない。しかしこのカナタが創り上げたSDF91ならば追いつく、そんな確信がアヤにはあった。

 

 機体のスラスターを吹かせると、これまでの機動が嘘のように動いた。最大稼働の副産物である質量を持った残像を作り出しながら飛び回るザンスパインに追いすがる。

 

「なんて速さ!?」

 

 背後で追うそれに驚愕したザンスパインの操縦者(ビルダー)は歯噛みしつつ機体の速度を落としバレルロールさせる。円形に光の環を発生させて、接近するSDF91を焼き払う腹だ。

 そんな目論見はとうにアヤは気付いていた。急ブレーキしビームライフルを棄て、バックパック両サイドに1門ずつセットされた可変速ビーム・ライフル、ヴェスバーの左側を手に取り、敵の背中目掛けて発砲した。

 

 ビーム弾は通常のビームライフルを凌ぐ弾速を持つ。回転している状態で防御することは不可能だった。

 直撃を受けたザンスパインは光の翼の片翼を散らし、黒い煙を上げて落ちていく。

 

 トドメを刺さんと接近するSDF91に即座に生きている光の翼を外し、手に持ったそれをビームサーベルのように振るった。

 

「しまッ――!」

 

 掠っても小柄なSDタイプには致命傷だ。レフトアームをヴェスバーごと吹っ飛ばされる。

 互いに墜落していくそれをアヤは茫然としていた。このままでは追撃しようにも光の翼で焼かれてしまうSDの体格では掠っても直撃レベルのダメージを受け得るだろう。

 

 

 ふと、隣のカナタとコウイチを見る。

 

 信じている。そう言わんばかりの目をしていた。

 アヤの中で何かが吹っ切れた。躊躇っている場合じゃない。

 

 ライトアームに持っていたビームサーベルを起動させ、光の翼を持ったアーム目掛けて投げつけた。投擲武器自体はGBNで使い慣れているのも、最大稼働で一連の挙動が高速化されているのもあって見事に突き刺さり、脅威だった反撃の手を封じる。

 そして最後に残ったヴェスバーを展開させ、ザンスパインのコックピットに突きつけ――

 

「わたしの――いや、わたし達の勝ちよっ!」

 

 銃口から勢いよく吐き出されたビームがザンスパインの上半身を吹き飛ばした。次の瞬間隣のカナタがサムズアップした。

 




前書きで斗和キセキ氏の話しておきながら今回の話でアストレイが出ない不具合


現実世界でのカナタの機体はストライクなんや……現実世界でアストレイオルタ使ったら即バレやし……(震え声)
現実とネットで顔を使い分けているタイプなんです……

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