Build Divers ASTRAY   作:バレルソン

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 お ま た せ

 Gガン観ていたお陰で筆がちょっと捗りました。
 ……1クール目が重すぎるッピ!


STAGE18 Good Bye Yesterday

 地方の大会で世話になったゲーセンの閉店ということもあって久々に集まらないかとコウイチから突然呼びかけてきたのがそもそものキッカケだった。

 カナタはその時偶然暇だったので応えたが、コウイチの別の仲間は呼んでも仕事やら勉学やらで来られなかったようだ。……今更、終わったものの思い出話に付き合ってはいられないのが本音なのだろう。

 

 

 GPDが終わり暫くゲームをしてからゲーセンを出たころには既に日が暮れていた。

 ドアを開けて、差し掛かる夕暮れに目を細める。

「シバさん、来ませんでしたね」

 

 ふと、その名前を溢した。すると後追いで外に出たコウイチは苦笑いした。

 

「分かっていたさ。あいつはこんな事に付き合う筈がないって」

 

 案の定というべきか。

 そんな事だろうとは思っていたが。

 

 シバさん。カナタが言ったその名は、コウイチが誘ったかつての仲間の名前だった。

 シバ・ツカサ。

 ……数年前GPDがまだ下火になっていなかった頃の話だ。シバという男は最もナナセ・コウイチと親しく、共に戦ったガンプラビルダーだった。当時こそ卓越した技量で暴れ回っていたが、彼はGBNの登場からGPDの終焉を悟り、自ら突然と姿を消した。カナタも彼と交友はあるがここ数年近く顔を見ていない。

 

 唯一知ることができた近況は一応、電話には応えられるぐらいには生きているということくらい。コウイチ曰く誘う電話したら突っぱねられたという。「しみったれたモンはごめんだ」とそう短い言葉で切り捨てて。

 

「イズミ君。シバさんってどんな人だったの?」

 

 蚊帳の外だったアヤが問う。この場に来たからには知る権利はあるはずだ。そう思ったカナタは口を開いた。

 

「んー、まぁ……平たく言うとアレだ……兄貴の――不倶戴天の敵(ライバル)

 

 

 

 

 STAGE18 Good Bye Yesterday

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 数年前、コウイチが高校生、カナタが小、中学生だった頃のことだ。

 同じガンプラ好きが集まって部活動とまでは言わなかったがプレハブ小屋を拠点として、ガンプラを作りGPDで戦わせていた。幼い当時のカナタは兄の後ろを付いて行ってプレハブ小屋を訪れていた。

 

 小屋に入るとまず塗料とプラスチックの臭いが鼻を突いた。

 臭いのする方向には自分より年上のガンプラビルダーたちがあーではないこーではないとガンプラを弄っている姿が日常のように繰り広げられている。制作難易度の高いマスターグレードを平然とくみ上げ、比較的簡単なハイグレードのクオリティを異次元の域のまで上げていくその姿はまるで彼らが宇宙人か超能力者のように見えた。

 

 そんな彼らに殴り込みを掛けたのが兄だった。

 兄はシバという男に対抗意識を燃やしていたのを覚えている。

 

「兄ちゃん。なんであのプレハブ小屋のシバって人に凄いキレてるの?」

「キレてないよ我が弟よ。僕はね、あのプレハブ小屋でアストレイを一番巧く使えるのは俺だって証明したいんだ。……ポン刀(ガーベラストレート)振り回している彼を完膚なきまで叩きのめしたいんだ」

「え、えぇ……?」

 

 カナタはそんなぶつかり合うアストレイ同士のファイトを見てきた。壊して壊され、マシン同士がぶつかり合い、互いの得物をぶつけ合うその姿にカナタは圧倒された。

 自分もこんな風に出来るのだろうか。

 

 

 互いに笑みを浮かべてGPDで争い合うシバと兄の姿を見て自分もこんな風に笑えるのだろうか。だなんて、自宅に飾ったガンプラたちが動くのを脳裏に思い浮かべながら思った。

 

 

 

 

 元々GPDをする同級生はそれほどいなかった。……というのはこのゲームの性質上コストがどうしてもかかるという事実に他ならない。折角手塩にかけて作り上げたガンプラをジャンクにされるのを嫌がる人間がいた。直そうにも新しいパーツを調達するのにお金がかかる。ならばバトルなんてしない、と。

 コストを抑える為の技術もあるがそれを知るにはカナタたちの世代はまだ――幼過ぎた。

 だからGPDの世界に飛び込んだカナタが相対するのは自動的にシバや兄、コウイチたちプレハブ小屋のビルダーぐらいで、彼らに戦闘技術やコストを抑えた制作技術とかを教えて貰ったりしていた。

 

 それは代えがたい思い出だったと胸を張って言える。こうして先人たちに教えてもらわなければ今こうしてGBNをやってはいないだろう。

 

 

 シバと兄はそこまで仲が悪いというわけではなかったが、お互いアストレイを扱うということでどっちが一番強いかを譲る気は一切なかった。片方が強いと自分を語ればもう片方がふざけるな、俺が強いんだと言う。

 それを続け、GPDでは互いに勝率50%という様相を呈していた。延々と丁々発止を繰り広げ互いを壊し合い、ついには対決は100回目にまで至った。

 

 そんな中、GPDの町内大会である話が上がった。

 

 お互い世界大会にまで上がってケリを付けないか、と。

 自分が一番アストレイを巧く使えることを世界に証明するべくシバと兄という二人の修羅(バカ)は次々と日本中の強豪を叩きのめし、シバはコウイチと、兄は当時の相方と世界にまで上り詰めた。アメリカで開催された世界大会にその舞台を移しても尚もアストレイ使い2名のチームは世界中のビルダーを切り伏せ、海外のアストレイ使いは眼中にないと無造作に斬り伏せ――ついにシバと兄のチームが。日本同士のチームが衝突するにまで至った。

 101回目の真剣勝負。ついにどちらかが一番巧くアストレイを使えるという証明がついに――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 されることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 その頃、カナタは風邪をひいており古鉄やを経営する祖母預かりで日本から世界大会の様子を見て、兄と共にアメリカに飛び立った母と父――家族の帰りを待っていた。

 風邪でふらつく身体をひきずりながらダイニングの冷蔵庫を物色していた矢先、茶の間から物をしたたかに落とした音が鳴り響いた。何事だろう、とカナタが茶の間に入ると足元に受話器を落とし茫然と立ち尽くした祖母の姿があった。

 

 ふと、点けっぱなしのテレビを見るとそこには地獄絵図が拡がっていた。

 最早車としての原型をとどめていない車が黒煙を上げ、泣き啜る外国人、割れたショーガラス、折れた電柱に潰された車。

 

 

 《米国○○市街にて無差別テロ 邦人6名重体》

 

 そんなテロップが流れていたことは覚えている。

 祖母の様子から6人の中に自分の家族がいたことを理解するには少し時間を要した。

 

 

 程なくして重体の邦人は誰も助からなかったということが公にされた。

 

 結果的にシバのチームは不戦勝となった。

 しかし、シバの心は満たされることはなく抜け殻のようになりシバとコウイチのチームは世界大会総合8位という結果に終わることとなった。下手すれば自分以上にショックを受けていたのではないかと思ってしまうほどだ。

 

 50勝50敗。それが、兄とシバの戦いはあれからずっと止まったままだ。

 

 ◆◆◆

 

 コウイチと別れ、カナタとアヤは夕暮れの街並みを歩く。壊れたストライクとSDF91はカナタの手元にあり、それを見ていたカナタは何処か嬉し気だった。それがアヤには不可解に思えた。

 

「……どうしたの?」

 

「なんかさ。楽しかったんだよ。GPDが。ずっとやってなかったからさ……昔のこと、色々思い出したって言うか」

 

 GBDで遊んでいたからこその言葉だった。アヤが知らない思い出をカナタは持っている。いつもは目付きが悪く、気怠げな印象があるが今この瞬間年相応の笑みを浮かべていた。

 どんな、思い出だったのだろう?

 

 こんな笑顔、見た事がなかった。そんな顔をさせるGPDとシバ、コウイチ、カナタの兄は一体何なのだろうか。正直羨ましかった。自分じゃきっとカナタをこんな表情には出来ないだろうから。

 

これ(SDF91)、直すの手伝ってもいいかな?」

 

 不意に口から出てしまった言葉を抑え込もうとしてももう遅かった。吐き出された言葉は隣で壊れたガンプラを握るカナタの耳に届く。カナタは鳩が豆鉄砲を食ったような顔でアヤの顔を見つめていた。目をぱちくりさせ数秒の沈黙からようやく反応が出た。

 

「……や、そんな無理すんなっての。俺が貸したんだから」

 

 毒を食らわば皿まで――そう先人は言った。既に引き返せない所まで来ていると本能が悟ったか、遠慮するカナタにアヤは食らい付いた。

 

「違うよ。これはわたしの我儘だから。……もっと知りたいの、イズミ君のこと」

 

 カナタの顔が今度は鳩がスラッグ弾をぶち込まれたようになった。

 わたしは一体何を言っているんだ。自分で言ってて後悔しそうだ。君の事が知りたいとか一昔前の漫画の台詞か何かか。ドン引きされるんじゃないのかこれは。

 頭の中がぐちゃぐちゃになったアヤの眼が泳ぎ始めた所で返事が出た。

 

「…………知っても面白くねェんだがなー。分かった、負い目抜きでそうしたいなら一緒に直すか。――でも今日は遅いし一旦解散な」

 

「ん。ありがと」

 

「礼を言うのはこっちの方だ。ロートルの思い出話に付き合ってくれて――ありがとう」

 

 ちょっとこそばゆかった。

 なんだか居たたまれなくなってお互い、視線を逸らし真っ直ぐ自分の家に向かって歩き続け、次に出た言葉が「また明日」だった。

 

 

 ◆◆◆

 

「帰ってきたか。坊主」

 

「――カドマツさん」

 

 古鉄やの暖簾をくぐると店内でカドマツが買い取りようデスクの椅子に座って待っていた。カドマツがここに来るときは決まって何かがある。カナタは神妙な顔で要件を訊くために空いた椅子に腰かけた。

 

「河童事件の件で報告があってな」

 

「後処理終わったんすか」

 

 あの河童事件の後、カドマツとはしばらくの間音信不通となっていた。後処理に相当追われていたらしく、ギガフロート周辺やサラが拐われた海域は封鎖状態にあった。あれからしばらく経ったがついにひと段落ついたようだ。

 

「あの河童、跡地や破片を何度か調べたがジャンクデータとジャンクデータで繋がり合った余剰データ集合体で解析、再現しようにも元が複雑で滅茶苦茶だから出来なかった。下手にやろうならサーバーやメモリを破損させてしまうおまけ付きだ。しかもこいつ……自身で分裂、増殖を繰り返している」

 

「プラナリアか最近のゴジラですか。ヤシオリ作戦でもやれって言うんすか」

 

「ゴジラか。違いないな、事実凍結した瞬間動きを止めた、下手に消去しようなら増殖してしまうからな」

 

「うげぇ……」

 

 心底、実に心底気色悪い事実を目の当たりにして目眩を覚えた。

 要するにあの河童は正式なデータではなかったということだ。断末魔が人間的なもので生物的なフォルム、それでいてまるで上着のようにモビルスーツを纏ったそのおかしな姿である理由がなんとなく分かった気がした。あのカドマツの表情はいつも以上に真剣で、相当の事態なのだとカナタは無言で読み取った。

 

「それと――あのサラってダイバーが閉じ込められた場所なんだが……無数のジャンクデータが散らばっている酷いありさまだった。一部データ欠損もされていて今や一部海域は閉鎖状態だ。あんまり考えたくはないがアレがマスダイバー発生によるもので、何処かに破片が残っているのだとしたら河童事件は――」

 

「――まだ、終わっていない」

 

 噛み締めるように、カドマツの言葉にカナタが付け足した。

 その可能性に背筋が凍るような感覚を覚えた。あの悍ましい化け物がまだあのGBNに潜んでいる可能性がある、もしくは新たに発生しうるということだ。このままマスダイバーを野放しには出来ない。カナタは固唾を呑み、掌に爪が食い込みそうなほどに拳を強く固めた。これ以上、連日の被害者やサラのようなダイバーを増やさせるわけにはいかない。

 そして――

 

「俺が交戦したあのアストレイタイプの件……どうでした」

 

 まだ謎だらけだ。戦闘ログすらも破壊して逃亡したのアストレイタイプとそれの撤退の幇助をした黒い鳥のようなモビルアーマー。連中のこともまだ分かっていない。しかしカドマツは黙して首を横に振った。

 

「駄目だ。あれもあれでログが無かったし復旧も出来なかった。あのエリアに坊主以外のアストレイタイプが侵入したログは一切なければMAのログもなかった」

 

「……アフターケアは完璧って事か」

 

「そう言う事だ。どうやら相手は俺たちの思っている以上に力のある愉快犯だろうな」

 

 愉快犯? と一瞬カナタの脳裏に疑問符が浮かぶが、実際問題あのマスダイバーの性質を考えると納得のいくものだった。

 事実、マスダイバーの大半は初心者や元々腕に自信のない人間ばかりだ。加えてチートとはいえ上級者が倒せる程度の力しかなく、まるでゲームバランスが破綻しかけているゲームに挑まされているようなものだ。単純にGBNを破綻させたいならさっさと上級者とかに無差別にばら撒けばいいのだ。

 それをしないということと、もし――もしも、だ。

 あれだけの隠ぺい工作をしたあの無銘とMAがもし、黒幕だとしてもGBNに怨嗟の声を出しておいてこのような悠長なことをするのだろうか。まるでゆっくりと首を絞められているような感覚を覚えた。

 

 既に――こうした憎むべきGBNがあたふたしているという事実が出来た時点で最低限の目的は達成している。後は偽者の世界が自壊して消えていくのをにやけ顔で待つだけ。

 ゴチャゴチャと奔走して後手に回り切っている自分たちを嘲笑っているに違いない。

 

 そう思えばあの性格が悪いというカドマツの評もあながち間違ってはいないのだろう。……飽くまで想像の域にしかないが。

 

 

「挙句マスダイバーの増加の勢いも止まらない状態だ。最近確認されたのはこいつだ」

 

 カドマツはデバイスを差し出し、それを受け取ったカナタはデバイスを操作して画面に表示されたものを一瞥して呟いた。

 

「今度のターゲットはこのダイバー……」

 

 ダイバーネームはステア。

 所属フォースはアークエンジェルス。主な使用機体はガイアガンダム。

 

「メッセージログを見るに明日のフォースフェスに出るらしい。……行けるか」

 

 愚問だ、とカナタは間髪入れずに縦に頷いた。

 

 

 

 

「マスダイバーなら放置は出来ない。それは分かっていますから」

 

 あまり残された時間はない。そんな焦りが胸の内で渦巻いていた。




10行で大体分かる18話(大嘘)

カナタ「バイトしたいな」
カドマツ「良い仕事紹介したげようか?」
カナタ「わーい!やるやる!」
カドマツ「よし、コイツは前金だ」
カナタ「イェーイ!」
カドマツ「このリストだ」
カナタ「何が?」
カドマツ「やれ」
カナタ「何を!?」
カドマツ「(マスダイバーを)殺れ」





 それはそうとソードマンが通り魔の如く武力介入してくる殺し屋みたいになってきましたね……(棒読み)

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