BUILD DIVERS ASTRAY   作:ヌオー来訪者

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 あけましておめでとうございます。
 クロスレイズが終わったしiPhoneも11に替えたので初投稿です。


 えー、完走した感想は……デストレイ以降のシナリオDLCにも無いんすかね……


STAGE30 交錯する魂

 STAGE30 交錯する

 

 

 ユニコーンのようなモビルスーツの動きは俊敏でこちらの……カタナのオルタナティブの動きには的確に反応していた。

 

 こいつとこれまで交戦した覚えはない。なのに何故ここまで読まれている? 

 理屈はわからない。

 ボイスチェンジャー越しだが先ほど聞こえたのは女の声だ。そこになにかヒントがあるはずだ。

 そんな思索に耽っていると、ユニコーンに蹴り飛ばされていた。

 

「チッ!」

 

 蹴られた勢いのまま後ろ向きに地を滑り、砂埃を巻き上げる。

 巻き上げる目潰しにすらならないそれをGBNガーディアンズのリーオーが突っ切り小さくジャンプした。

 手にはビームサーベルが牙を剥いており、落下の勢いのままコックピット目掛けてその灼熱の先端を突き立てる一歩手前。このまま動かなければ仮にジンバージャケットのラミネート装甲でも溶解してジ・エンド。ミンチより酷いことになること間違いなしだ。

 

「よっと」

 

 突きを最低限の動きで回避。その勢いのまま、再び逃げるマスダイバーを追い始めた。

 

「躱した⁉︎ この距離で⁉ 何なんだよお前!」

 

「その辺に転がってるダイバーだよったく。というかマスダイバー逃げてンぞお前らッ!」

 

 このままではマスダイバーの逃亡を許す羽目になる。一度の遭遇が難しい以上、ここで逃げられるのは面倒だ。

 それを考えたら明らかに戦う相手を間違っている。……のだが相手がこっちの事情を鑑みてくれるわけがなかった。

 

「お前もマスダイバーだろうが! 仲間に擦りつけて、それでも貴様は人間かッ」

 

「え、何言ってんだお前……」

 

 カタナは目を丸くさせた。

 え? 仲間じゃないよ? 

 というか、こっちの動き見てそんなこと言えるのかとカタナは少しばかり驚いた。

 だが、元より評価は地の底だ。そんな奴が何してもおかしくないと思うのは善悪は置いておいて自然な判断だ。

 

「とぼけても無駄だ! 実際に被害が出ているんだよ!」

 

 だれかが吼える。

 どういう理屈かは分からないが身に覚えのない罪を更に被せられていて変な笑いが出かけていた。

 ネネコの件だろう。しかし待て、奴を斬りかかった覚えは一切ない。

 

 楽天カードのポイントの如く増えていく罪状にカタナは苦笑いした。

 あっ、(罪状が)また増えた。

 

「これ以上罪を重ねるなッ!」

 

「あぁもう!」

 

 GBNガーディアンズは数で攻めているので個々の戦闘力はさしたる脅威ではない。ただ、集団で陣形を組まれた場合は話が別。

 そして単独で驚異的なマニューバをかますユニコーンの改造機がカタナにとっては脅威だった。

 

 その1番の問題であるユニコーンは即座に第二波として先端にビーム刃を発振させたクナイを投げつける。

 

「ち……ッ」

 

 逆手持ちのソードメイスを一振り。

 砲弾ならまだいざ知らず、忍者の使うクナイを弾き飛ばすのは容易だった。単純なパワーだけならばオルタナティブの今の装備はこれまでのものと比べると最強なのだから。

 

 

 ガンダムアストレイオルタナティブ・ワイルドジャケット。

 流星(メテオジャケット)と似た規格で作り上げた野性(ワイルドジャケット)

 ジンバージャケット時よりパワーを偏らせたもので、稼働時間を犠牲に尋常ならざる出力を獲得する。

 

 その辺のモビルスーツが真正面から押し勝つことは不可能に近い。

 例えこのユニコーンの改造機だろうが。

 

 尾骶骨にあたる部分に尻尾の代わりに剣が生えている。

 

 

 剣の尻尾はまるで別の生き物のように、でたらめに動き出し、ユニコーン改造機の改造機の動きを阻害。そのままけん制を始めた。

 

 とはいえ、ユニコーン改造機の動きを封じたところで根本的な解決には至れない訳だが。

 

 隊長機のグレイズが剣を振り上げ、サイドスカートに装備されたブースターを噴かして最大速度で迫る。その鬼気迫る勢いにカタナは舌打ちした。

 

 是が非でもここで叩き落とすつもりか。そうすれば自分たちが抑止力となると信じているのか。

 

 普通なら自警団の存在は邪魔でしかないので、余程の酔狂な人間でなければ嫌がらせなどに萎えて諦めていることだろう。

 そう、それこそが自警団の存在意義。彼らの存在は一つの抑止力となる。……というのが理想なのだろう。

 

 とはいえ、カタナの場合は彼らの仮想敵とは理屈が違うのだ。

 自警団がガタガタ邪魔して、よしんばカタナを撃墜したとしてもからと言って、敗北を理由に引き下がることはありえない。

 こちらからすれば単に邪魔が増えただけのこと。それだけで折れるほどヤワなハートは持ち合わせちゃいない。

 

 

 つまるところGBNガーディアンズがカタナに対してやっていることはほぼ無意味である。

 たかだか邪魔されただけではカタナという名の人斬りは止まらない、止められない。

 

 彼の何がそうさせるのか? 

 カタナの、イズミ・カナタの奥底へ杭で深く深く打ち込まれた意志がそうさせるのだ。

 それゆえに第三者がとやかく言ったところでこの人斬りは走り続ける。

 

「GBNはお前の存在を許さない」

 

「そうか」

 

「お前が動き続ける限り、俺たちはお前を追い詰めて追い詰めて、追い詰める」

 

「そうか」

 

 熱の篭った宣言に対して何処までも冷え切った声。肯定も否定もせず。

 ただただ聞いているだけ。

 振るわれる剣をソードメイスで受け止め鍔迫り合いに入る。パワーは一見拮抗しているように見えるがいつでも押し返す準備はできている。

 カタナは深呼吸した。

 

「……警告する」

 

「なにッ」

 

「これ以上邪魔をするなら多少機体にダメージを負ってもらう」

 

「邪魔だと……? もとよりそのつもりだ!」

 

「……そうか。じゃァ、恨むんじゃねェぞ」

 

 ──まぁ、恨むんだろうが。

 警告はした。ここで邪魔するのなら正当防衛で散らす。機体出力を最大(マキシマム)にまで上げ、グレイズを文字通り押しのけた。

 

「馬鹿なッ!? パワーがッ」

 

 驚愕するグレイズのパイロットをよそにオルタナティブはソードメイスをバトンのようにクルクルと回し、逆手持ちの状態で止め、構えを取る。

 そして横から迫るリーオーが放つドーバーガンの弾丸を上半身を逸らして回避。ギロリと迫るリーオーを睨むと相手は一瞬動きに逡巡を見せた。

 

 そしてオルタナティブは眼前でサーベルを振るうリーオーが一撃を決めるより速く手に持った得物を一閃した。

 

「は──ッ?」

 

 相手が声を上げた時には何十メートルも先へ機体(リーオー)は宙を舞っていた。次に緑色の装甲のジムのバリエーション機──ジム・ストライカーがスピア状のビーム兵器、ツインビームスピアを突きで放つ。

 

 しかし、死角から襲い掛かる剣の尻尾──テイルブレードが横からその携えていたハズの得物を吹き飛ばし、手ぶらになったジムストライカーはスラスターの勢いあまってオルタナティブ目掛けて突進をかける。

 が、そのままオルタナティブは巨大なレフトアームでその頭を路傍の石でも拾うかのように掴み、そのまま近くにいたグレイズに投げた。

 

「次──ッ!!」

 

 距離的に一番近い所にいるのはあのユニコーンの改造機だ。

 足止めのテイルブレードがいなくなったことで自由の身となったそれは俊敏な機動(マニューバ)で距離を詰める。

 一見無駄に見える動きもそれが揺さぶりをかけるためのフェイントと気付くとカタナは背中に嫌な汗を流す。

 

 ──こいつだけやたら動きが違う! 

 

 同時に倒さなければマスダイバーを満足に狩ることすら叶わないと結論が出た。

 とはいえ、ここで足止めしていれば相手の思うつぼというものだ。距離を離されないようにユニコーン改造機の動きに注意しつつもマスダイバーのモビルスーツを追う。

 

 両腕部の獣の爪を模した手甲に仕込まれた機関砲の銃口を向けると、ロックオンを待たず目安でそのまま発砲した。

 弾丸は相手の装甲に一直線に迫る。直撃コースではないが腕の一本はダウンさせるには充分だ。

 

「甘いッ!」

 

 が、それは彼女の言う通り甘い算段だったらしい。ビーム斬馬刀で弾丸はすべて弾かれ、速度を上げていく。その上、斬馬刀状の刃が消え、先端の発振装置をパージした途端、その銃口が露わになる。

 ビームライフル? 否、ユニコーンと言えばそれは──

 

「ッ!?」

 

 通常のビームより一回り大きな光芒がオルタナティブの装甲を掠めた。

 ビームマグナム。それはギラ・ズールと呼ばれる敵モビルスーツの装甲を掠めただけでも爆発を起こすような危険なビーム砲だ。

 それがオルタナティブの装甲に直撃し計器が異常を検知、アラートを掻き鳴らす。

 

「ラミネート装甲の限界値にギリギリかっ……!」

 

 

 本来ならオーバードライブ用に使われるはずの冷却装置(ラジエーター)が作動し、白い煙をワイルドジャケットの冷却フィンからまるで吐瀉物のように排出していた。

 ラミネート装甲というものはビーム兵器のエネルギーを熱変換。装甲全体に拡散させることでダメージを軽減させる対ビーム兵器の機体能力(アビリティ)だ。

 

 が、その拡散が間に合わず熱のキャパシティを超えてしまえばラジエーターは熱暴走を起こし、装甲は溶解。最悪破壊にまで至ってしまう弱点がある。

 これが本当のガンプラバトル熱殺オンラインという奴か。……いや、なんでもないです。

 

 これをモロに受ければまずワイルドジャケットだろうが熱で溶解。跡形も残らず蒸発していたに違いない。

 幸いワイルドジャケットはオーバードライブ前提の構造で冷却性能は高くラミネート装甲の質も高い方なのでギリギリセーフで済んでいる。

 無論、連続で直撃を貰おうならワイルドジャケットは大破。紙装甲の通常形態(ベーシックフォーム)であのバケモノとやり合わざるを得なくなる。

 

 つまりオワタ式マスダイバーハントとかいう苦難(クソゲー)を強いられるのだ。コワイ! 

 今更とはいえそんな身の毛もよだつような想像がカタナの脳裏をよぎり、回避に専念した。

 

 大振りな動きになったことに気付いたか、射線でオルタナティブを徐々に誘導していた。

 なんとしてもマスダイバーを逃がしたいのか。

 

「チィッ!」

 

 機関砲で応戦しても、元々けん制用の兵装だ。あのユニコーン相手にまともに命中するわけがない。

 加えてテイルブレードももう片方のアームに持ったクナイで事も無げに弾き返している。

 膠着した状況の軛を解くには次の手を打つ。伸ばされた両アームはそのままに手首の掌底に仕込まれたワイヤーランチャーが発射された。

 

 放たれるは2本のワイヤーと1本のテイルブレード。

 3発の質量を持った刃はユニコーンの改造機を怯ませるには充分すぎた。

 

「コイツッ!」

 

 テイルブレードこそクナイでいなしたが次に飛んできた2本のワイヤーは機体に絡みついた。

 複雑なまでに絡みついたそれは強引に引き千切らなければそうそう解けるようなシロモノではない。

 

 そう察知したユニコーンの改造機は咄嗟にクナイの刀身からビーム刃を発振させて無理矢理切断しようとしている。そうはいくかと、ワイルドジャケットでブーストしたパワーのままに全力全開で明後日の方向目掛けて

 

「悪りィがッ!」

 

「こいつッ! 私を投げるつもりッ⁉︎」

 

「しばらく転がっていろォォォッ!」

 

 全力全開で投げ飛ばされたユニコーンの改造機は派手に横転し、砂埃を巻き上げながらオルタナティブとは違う方向を転がっていく。

 邪魔者は消えた。遠方にジムスナイパーがスコープ越しにこっちを見ているが無視。このまま絶賛逃亡中のマスダイバー目掛けて機体をブーストさせるのみ。

 

 機体の速度が上がっていきGに自身の身を押さえつけられながらも、遠方に殺意を向けるユニコーンの改造機を一瞥した。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 度重なる失態は、アヤメを焦らせた。

 機体のコックピットから這い出ると、遠方で大爆発を起こし破壊されるマスダイバーのモビルスーツが見えた。

 ソードマンが勝ったのだ、また。

 

 事実、ソードマンは対マスダイバーの力を着実につけており、その力はリクやゴーシュなど初心者たちにも及ぼしている。

 そして、こちらが寄越した無人機をことごとく退け、果てはメテオジャケットという名のデコイを使い完封にまで至り始めている。

 

 想定以上の抵抗を見せるソードマンにあの男は既に痺れを切らしつつあった。

 ギガ・フロートでソードマンに辛酸を舐めさせられたのを皮切りにエピオンに乗った男を雇うなど徐々に本腰を入れ始めている。

 その一貫としてGBNガーディアンズに便乗し、ソードマンを叩くという作戦を開始。

 

 リーダーのロブ主導のオデッサの夜明け作戦を開始した。

 

 なお結果は知っての通り、メイン戦力のロブ操るグレイズはジムストライカーの下敷きにされ、リーオーはソードメイスで脇腹を思いっきりぶん殴られてコックピットが完全にへしゃげており、整備ロボット「カレル」による救出を待っている始末だ。

 ジムスナイパーに関しては気持ち悪いマニューバを追いすぎて途中で心が折れたらしい。

 

 

 アヤメから見るにソードマンという男はガンプラバトルを楽しんでいるというより、最早敵を殺すことをすべての優先事項として動いているようにしか見えない。

 殺人マシーンか、

 人ならざる獣か、

 それとも悪魔か。

 

 あくまで皆とGBNを楽しもうとするリクの正反対をいく姿は歪と言わずして何というのか。

 

 こんな化け物を相手せざるを得ないという現実。

 そしてアヤメを焦らせる原因は他にもあった。

 

「おやァ、随分と派手に転がされましたねェ」

 

 あのスーツを着たエピオン使いの男だ。まるで営業マンめいたその姿はこの些かファンタジックなアバターの多いGBNでは異彩を放っていた。

 口調そのものは丁寧ながら慇懃無礼と言わずにはいられないその喋りにアヤメは些か苦々しげな顔持ちとなる。

 

「エージェント……」

 

 機体の下から見上げるこの男は自分自身のことをエージェントと呼べと言っていた。ならば希望通りエージェントと呼ぶことにしよう。

 

「そろそろ本気を出さなければマズいのでは? それでは取り戻せるものも取り戻せませんよ?」

 

「……そんなこと分かっている」

 

「では、いいのですが。私は兎も角、あの傭兵どもはガンプラをプラスチックの塊としか思っていない。貴方の取り戻したいものも平気で壊しますよ?」

 

「……ッ」

 

 視線を動かすとそこにはニヤニヤと笑う3人の男たちの姿があった。

 確かこの連中はあの男が雇ったと言う腕利きのゲーマーだという。ガンプラに対する愛着もカケラも持ち合わせていない連中に壊すことなど容易。

 その結果、壊されていく「それ」を幻視して、アヤメは目眩を覚えた。

 

「オイオイ、しっかりしてくれよセンパイ。あのガンプラをぶっ壊されたくなければな」

 

 と、3人のうちの誰かが言う。

 あのGBNの崩壊を目の当たりにしても譲れないものがある。「あのガンプラ」だけは絶対に取り戻さなければならないのだ。どんな手を使ってでも。

 それがアヤメに残されたものであり、彼女にとっての居場所だった。




 喜べ少年、アヤメさんの触手プレイだ。なお


 流星、野性ときたらあとは……ね?
 メテオ、ワイルドもそうなんですが、C.E.で一応再現できなくもない機能だけ入ってます。つまるところワイルドジャケットにはエイハブリアクターやナノラミネートアーマーは搭載されてませんし、メテオジャケットにゼロシステムやガンダリウムは搭載されとらんのです……

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