BUILD DIVERS ASTRAY   作:ヌオー来訪者

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 意味合いは軌道から外れる。を意味する(と思われる)
 本来ならtriple zeroが入るんですが割愛。

 ビルドダイバーズから見た人斬り、ソードマンについての話なので1話でわかる総集編(ソードマン編)だったりする。
 勿論総集編だけじゃないよ!


 因みに作者のイチオシはAlbireo-アルビレオ-と夢幻の弧光(隙あらば自分語り)


STAGE33 Out Of Orbit(総集編)

 ビルドダイバーズの拠点(フォースネスト)にて、今後の方針について皆で集まって色々話していた。

 その拠点がまるでガンダムでよく出てくる戦艦のブリーフィングルームにそっくりだとコーイチは語るが何せ重度のガノタなユッキーのチョイスだ、こうもなるというものだ。

 

 それはそうと、こうして集まったのは他でもないブレイクデカールという倒すべき敵がはっきりし始めているということをはじめ、自分たちが知るダイバーの偽者が暴れているということとなれば何かしらの情報共有やら、意思疎通はしておかないとフォースとして動き辛くなる。

 と、コーイチとゴーシュのインテリ風2名が判断した。

 

「ソードマンの偽者が出てきた、か。そういえば、あのベアッガイランドの件でしか彼を見ていないけど、彼は一体何者なんだい?」

 

 粗方話終えた矢先、ブリーフィングテーブルの席に腰掛けたコーイチがふと口を開いた。

 彼は元々GBNを始めてから期間が経っていないお陰であのベアッガイランドの件もわりと置いてけぼりを食らっているのが実情だ。

 チームメイトとして知っておきたいのも道理というものだ。

 

 コーイチの手にはPDA。画面に表示されているのはリクがかつて連戦ミッションでソードマンと共に戦ったあの戦闘ログだ。

 擬装状態のオルタナティブがソードメイスでデスアーミーを殴り潰している。その動きはぱっと見大雑把だが、デスアーミーの立ち回りから適切なマニューバを弾き出しているように見えた。

 流水の如く

 ビームを刀身で弾き、勢いを付けるために刀身を振り上げるまでの動きの途中でもデスアーミーが放つビームを弾いている。

 

 無意識的にではあるが、ファイターの性で彼をどうすれば突破出来るかを考えてしまっていた。あの動きをどうすれば受け流し、反撃に転じて勝利をもぎ取れるか。

 無理ゲーなことはないだろうが少し骨がいりそうだ。

 

 コーイチがソードマン攻略法を思考しているとビルドダイバーズの集まりからやや離れた所で壁にもたれて黄昏ていたゴーシュが口を開いた。

 

「ソードマンなら、何度かこの目で奴の戦いを見たことがある。最初チュートリアルミッションのことだった」

 

 

 

 STAGE33  Out Of Orbit

 

 

 

 

 

 ソードマンについて語るにはまず、彼が付け狙うマスダイバーについて語らねばならない。

 マスダイバーとはブレイクデカールというICチップを練り込んだデカール型パーツを利用して、ゲームシステムを欺き強化させたガンプラバトルネクサスオンラインGBNのダイバー(プレイヤー)である。

 

 その強化の内容は多種多様で、単純な数値上限を無視した強化だけではなく、乱入不可能なはずのミッションのプロテクトを破壊して乱入。後付のアビリティでも先んじて作り上げたガンプラのギミックにない変形機構……極端な例だと生物学的な意味での変態にまで至る。

 マスダイバーとの交戦ログは破壊されているか、通常の戦闘と同じように欺かれているお陰で証拠なるものが一切存在しない。

 よって通報も出来なければソードマンの目的も分からないわけだ。

 

 ソードマンが人斬りと言われる所以は、そこにある。

 

「確か突然仕様外の乱入をしてきたマスダイバーの前に現れ技量差で圧殺した、と言っていましたね」

 

 リクの振りにゴーシュは頷く。

 

「あぁ、初心者だった俺はレンタルしたZガンダムでチュートリアルミッションをやっていた。が、違法強化(ブレイクブースト)したグシオンなるモビルスーツによる乱入を受け応戦。……恥ずかしながらあのままでは撃墜されていた」

 

 チュートリアルミッションは本来撃墜されないように調整されていた。だが、グシオンの乱入によりそのシステムは破壊されゴーシュ操るZガンダムの兵器は尽く無効化されてしまった。

 

 が、その一見無敵なはずのグシオンの天下は数分で終わることとなる。

 

 ソードマン。

 突如現れてはPK(プレイヤーキル)を繰り返す、いわば人斬りと噂されるアストレイタイプを操るダイバーが現れたのだ。

 

 ガンダムアストレイ・オルタナティブ。

 

 MBF-P02ガンダムアストレイ・レッドフレームをベースとした改造機だ。

 本来オリジナルには装備されていないはずの陣羽織型の追加装甲『ジンバージャケット』と大剣状の鈍器ことソードメイス、サムライブレードの『千子村正』を装備した近距離型特化機。

 今思えば頭おかしい装備のラインナップな気がしてならない。飛び道具らしきものが頭のバルカンと掌のワイヤーくらいだ。

 

 で、それが的確に処理してみせ、ゴーシュが乗る大破した借り物のZガンダムを見事にスルーして離脱していったのは今でも印象に残っている。

 それから何度も何度も遭遇することになるがこれまで一度も矛を交えたことはなかった。

 

「それから僕らは連戦ミッションとペリシアで遭遇した」

 

 リクがゴーシュに続き語る。

 長期戦になり報酬と引き換えに相応の負担がかかる連戦ミッションでは、ブレイクデカールの力で仕様にない乱入行為で報酬を横取りしようとしたマスダイバーを欺き、いとも容易く一蹴。

 

 居合わせたランキング1位のクジョウ・キョウヤと共に、ついでの如くバグで現れたステージにそぐわない高難易度のデビルガンダムを撃破してみせた。

 その時はジンバージャケットをパージし、発泡金属ならではの機動力と立ち回りをしてみせている。

 

 

 ここでようやくソードマンのダイバーとしての顔を見ることができた。

 紺色の作務衣を纏い、癖のある髪の……なんだか辺境の職人めいた風貌をした青年だったのはリクも憶えている。

 アカウント名はカタナ。なるほどソードマンと呼ばれるだけあって得物じみた名前だなとリクは感心したものだ。

 

 

 そしてしばらく後のペリシアでも当時正体不明だったカリスマビルダー、シャフリヤールを騙る偽ダイバーの強引な勧誘に対しソードマンは現れ、スパナをステレオタイプな石油王みたいな風貌の偽シャフリヤールに突きつけながらぶりっ子を演じて牽制行為を取った。

 その後、またしてもザムドラーグのガンダムフォームとかいう規格外のモビルスーツにソードメイスで太鼓の達人(フルボッコだドン!)をした挙句、反撃回避を封じシャブリヤールにトドメを譲りどさくさに紛れて姿をくらました。

 

 

 

 

 それからは河童事件。

 

 

 マスダイバーの増加に呼応するかのごとく現れた、ダイバーのデータを喰らう謎の怪物。通称河童。

 海から現れてはダイバーたちを襲撃。そのデータをムシャムシャかっ喰らっていた。

 そしてそこでビルドダイバーズのメンバーであるサラが拐われた。

 

 それを危険視したカドマツらは有志を募り討伐部隊を結成。その中にしれっとソードマンは紛れ込み河童を釣り出した。

 

 その時のオルタナティブの装備はスケイルジャケット。

 水中戦特化のそれで河童をおびき寄せる餌を載せた状態で地上までチェイスを繰り広げ、その過程でリクらはサラを救出に向かった。

 

 リクたちに救出されサラは()()()()()()五体満足。一切のデータ損傷は認められなかった。

 

 それからソードマンは河童を地上まで釣り上げ、討伐部隊が河童を攻撃し始めた。

 その一方でソードマンは謎のモビルスーツの襲撃を貰い中破しながらも撃退。

 謎のモビルスーツが何なのかは分からないが、ソードマンと言葉のやり取りをしたというマギーはアストレイタイプのモビルスーツだったと語る。

 戦闘ログは確認出来ない。河童の出現の影響かは不明だが、データが破損しており修復すらも叶わなかったという。

 

 ソードマンが一体何と戦っているのか。

 ただ単にブレイクデカールユーザーたるマスダイバーと戦っているだけのようには見えなかった。

 

「余計に謎が増える中、起こったベアッガイランド事件でなんとなく奴の人となりというものが判ったがな」

 

 ゴーシュは遠いものを見るかのように語る。

 そして、ステアの処遇を巡りソードマンとリクは対立した。

 ソードマンは問答無用でマスダイバーのステアを狩ろうとした。リクはステアを止めようとした。

 

 ステアは自分のフォースが自分の弱さで足を引っ張りランクを落としていくことを良しとはせず、ただ皆の支えになりたくてブレイクデカールに手を出したのだという。

 

 そんな彼女の真摯な想いを耳にしては問答無用で撃墜しようとすることが正しいとはリクには思えなかったのだ。

 

 その時のソードマンはオルタナティブにメテオジャケットというまた別の追加装甲を装備させていた。

 パージさせると独立稼働する戦闘機として運用することも出来、装備した状態でも一線を画す機動力でステアに襲い掛かかり、リクが立ちはだかったのだ。

 

 が、リクとソードマン。その対立の果てに結局ステアが救われたのか。それは分からない。

 結果として互いにダメージを負う羽目となった。

 リクの瞳に陰が差す。

 結局何が正しかったのか。

 GBNを遺すために犠牲を強いるのか、一人の苦しみに寄り添いGBNを窮地に近づけるのか。

 

 リクは自身の選択肢に疑問と、ソードマンの選択肢に抵抗めいたものを覚える。

 自分のやったことが正しかったのか、それは胸を張って言えはしない。けれどもソードマンのやろうとしたことを全肯定出来るほど割り切れやしない。

 それにソードマンのやることの果てにあるものは人のいない空虚な箱だ。全肯定は……できない。

 

「真面目なんだろうね、彼は」

 

 コーイチの指摘通りだ。

 あのソードマンは妙なところで真面目だ。

 何が彼を駆り立てるのか。何故あの男は独りで戦おうとするのか。

 その答えは出ていないままだ。

 ただの正義の味方ごっこならば、途中で心が折れてしまっていることだろう。

 GBNのBBSにおいてソードマンに対する罵詈雑言と怨嗟の声で溢れている。

 人斬り、人でなし、害悪。ありとあらゆる憎悪を一身に受けながら何故戦い続けるのか。

 

「…………」

 

 リクの疑問を他所に、コーイチはひたすらソードマンの貴重な戦闘ログを穴が開く程見ていた。

 

「どうかしたのか?」

 

 ゴーシュが問いかけるがコーイチは応えず、見れば見るほど深刻な顔持ちとなっていく。

 そんな顔色の変わりように、ゴーシュは首を傾げずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

「いやまさか、ね……」

 

 彼が溢した言葉に気付かないまま。

 

 ビルドダイバーズがマスダイバーを見つけ次第全力で当たることと、ソードマンについては見分けがつかないのでブレイクデカールを発動次第撃墜にあたる。

 そう、フォースとしての行動方針は一応の結論がついた。

 

 

 仲間たち其々が内側に抱えたものを秘めながら。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 GBN。この広大な仮想空間(ディメンション)にて、過疎化したエリアというものは多々ある。

 擬似的なオープンワールドという性質上、サービス開始からろくすっぽ運営にもユーザーにも使われないようなエリアだ。

 

 人里離れた荒野、谷の底を抜けた所で大きくひらけた大地に工場が立ち並んでいる。

 モビルスーツを隠すにも持ってこいだが、この辺にはイベントも無くNPDすらろくにいないようなゲーマーとして価値をロクに見いだせない。

 一角の廃倉庫の外には大破したガンダムアストレイ・オルタナティブが立っている。

 倉庫の中を覗いてみればまともに機能していないベルトコンベア型のオブジェクト。

 乱雑に積まれた一斗缶。

 かつて人々が慌しく働いていたのであろう跡が鉄屑の山という形で表れていた。

 ……最早倉庫がかつて有していたであろうありとあらゆる機能が止まり、埃を被り、屋根には穴が開き。

 肉が削げ落ち風化し始めた死体のような工場だった。

 

 

 そんな倉庫の中、男が一人柱を勢いよく殴りつけた。

 

「なんなんだよアイツは!」

 

 乾いた音がこの空洞じみた倉庫の中でよく響いた。

 そこに短髪でユニオンの軍服を着たやや細身の男が悪態をついていた。

 何しろ狩りを始めようとした矢先でSDガンダムとダブルオーの改造機にに邪魔をされたのだから当然だ。

 

 しかも上手く誘い出された挙句、土石流でダメージを負わされ炎の剣で致命傷を叩き込まれたのだ。冷静でいられるわけがない。

 根幹にあるものはプライド、ではない。

 あの圧倒的性能で蹂躙し、勝利すること前提で動いていた男を怒らせるには騎士ガンダムたちの動きは十分過ぎるものだった。

 

「まったく使えないわね。あれだけ派手にブレイクブーストしておいて返り討ちに遭うなんて」

 

 怒りの炎に油を注ぐが如く、女の苛立つような声が乱反射する。

 声の主はローブを目深に被っているおかげでその素顔は側からみれば分からないものであったが、男は知っていた。

 

「違う。俺は負けちゃいない。あんな初心者どもに、あいつらが姑息な手を使うから!」

 

 男の主張はこうだ。ブレイクデカールが喪失するのはダメージアウトしてしまった時のみ。今回の場合はダメージアウトする前に緊急離脱したので負けのうちに入らない、と。

 そしてガンプラの完成度と技量で勝負せずに土砂崩れで深傷を負わせに来ると言う邪道を使ったことに大変不愉快さを覚えていた。

 

 いや、もう完全に負けてるだろ何もかも。

 とローブの女は心の中でツッコミを入れる。

 チートで強化しておいて、見え透いた罠に嵌められた挙句とどめを刺されかけて逃げ果したなんて話から敗北を否定する要素は一体どこにあろうか、いやない。

 

「まぁいいわ。今度下手を打つようなら……」

 

「分かっている! いちいち指図するな」

 

 遮るように男は吠えた。

 確かにあの時は下手を打った。初心者を叩きのめせそうな所で人斬りが現れ弱点をピンポイントで突かれてその時に操っていたマシンを破壊された。

 だが、今度は違う。

 

 あの人斬り操るアストレイをコピーし、強化された新型ブレイクデカールを作らせた。

 負けるはずがない。

 

「貴方は暴れてくれればいいの。ただひたすらに、滅茶苦茶にして」

 

 淡々と告げてからローブの女は踵を返して、倉庫の出口に向かって歩を進めていく。

 こんな屑など叩きのめしてしまえばどれだけ気持ちがいいか。男は夢想する。

 

 だが今それをやればせっかく手に入れた力が無駄になってしまう。

 それだけは絶対に避けたかった。

 そのかわりに、あのローブの女の素顔を脳裏に過らせながら懐にしまっていたハンドガンを取り出して、誰もいない壁目掛けてトリガーを引いた。

 

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