BUILD DIVERS ASTRAY   作:ヌオー来訪者

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シバ「おい、GPデュエルしろよ」

 冗談は置いておいて、大変お待たせしました。
 ストックはあったんですけど、話の捻じ込みで実質新規で話書いていました。


 にしてもいつの間にかビルドダイバーズが完結していたでござる……


STAGE05 ジャンクを漁る

 今日は秋葉原に訪れた。

 単純に何かしらの目的があった訳ではない。単純にガンプラに使えそうなパーツがあるんじゃないかとかかなりふわっとした目的でここに来た。

 秋葉原特有の混沌とした街並みを歩き、道行く人々とすれ違う。

 この中にどれだけのGBNプレイヤーが、ガンプラビルダーがいるのだろうか。

 道行く人を誘う怪しげなキャッチを素通りしつつイズミ・カナタは独り、そんな事を考える。

 

 けれどもお互い話しかけることも、そして確かめる為のキッカケもないからただすれ違うだけだ。

 まぁ、ただすれ違った人間相手にGBNしてますかーなんて事を突拍子もなく聞ける人間の方が稀だろうが。

 

「いらっしゃいませ」

 

 適当なジャンクショップに入り、店員の挨拶を背に無造作に雑にジャンク品が詰め込まれた箱を物色。良さげなものを見つけたりして新しいガンプラのパーツや得物の作成のヒントを見つける。

 勿論なんの収穫もないまま家に帰る事も多々あるが、単純に物色するという行為の楽しさもあったので、時間を無駄にしたと反省すれど後悔は特にない。

 

 今日もカナタはジャンクを漁る。

 

「カナタ君。カナタ君? おーい」

 箱の中は玉石混交。一見無関係に見える代物がパーツになる時がある。例えば人が身に付けるアクセサリーもそうだ。他には文房具やら雑貨、機械の部品すら使う。

 数多くのジャンク品やガンプラの余りパーツを削って取り付けてを繰り返して完成にこぎ着ける。

 

 最初こそ醜悪なシロモノが出来上がるが回数を重ねる事に形状は洗練されていく。

 プラ板を1から100まで削り倒すのも勿論乙なものであるので、その辺は自由だともいう。

 

「ありがとうございましたー」

 

 一通り見てから店員のやる気のない声を背にジャンクショップを出ると見覚えのある顔と出くわした。

 

「フジサワさん?」

 

「イズミ君?」

 

 どうしたものかと反応に困ったカナタは顔を引きつらせて「よっ」と会釈し、アヤもつられ軽く手を上げ会釈する。

 

「……なんだァ、フジサワさんもジャンク漁りか?」

 

「別に目的は無いよ。単に散歩に来ただけ。まさかイズミ君に会うとは思わなかったけど」

 

「世の中ってここまで狭かったかよ……」

 

 この膨大な店舗数のある秋葉原でばったり出くわす事なんてそうそうないだろうに。まぁなんかの縁だという事で。

 

「んー、なんなら一緒に廻るか?」

 

「うん。いいよ」

 

「えっ」

 

「えっ?」

 

 割と冗談で言ったつもりだった。やんわりと拒否されると思っていた。

 意外な返答に驚愕のあまり目を見開き疑問符を浮かべるような言葉を吐く。アヤもその行動の意図は当然分からず首をかしげ、妙な間が空いた。

 ラジオなら放送事故待った無しである。

 

「断るものかと思ってたんですが」

 

「断る理由も特にないし……」

 

「せやな」

 

 言われてみればそうである。

 別に嫌われているわけではないらしいのだ。一応。仮に嫌われてるならとうに嫌いな奴が高確率でいるあの店に訪れやしない。

 

「どこ行くの?」

 

「わり、考えてない」

 

 女の子を連れて無骨なジャンク屋巡りなんてするほどカナタも腐っちゃいない。

 街中を歩きながら、藁にもすがる思いで丁度良さそうな所を探し回っているとアヤが口を開いた。

 

「別に気を使わなくていいよ。それにお互い考えてないみたいだし一緒に考えよう」

 

 

 

 

 結局、スマホのマップを駆使してお互いチェックした模型店やらゲームセンターを渡り歩いたりパーツを買ったりするハメになった。

 

  積まれたガンプラの箱を物色する為に店内を歩き回っていると、展示されたディスプレーに目が入った。周囲には軽い人だかりが出来ており、何事かと思ってアヤ共々画面を覗きこんでみると、肩に2枚ずつ計4枚のブレードウイングを持つガンダムAGE-Ⅱを思わせるガンダムが、次々とNPDリーオーを撃墜して行く様子が映っていた。

 浅めの黒と白を基調にしたカラーリングで、空を飛び回り手に持ったライフル型兵装《ハイパードッズライフルマグナム》で無造作に狙い撃ち、NPDリーオーの装甲に風穴を開けて行く。

 

 背後を取ったと言わんばかりに対戦相手操るモビルスーツが、ビームサーベルを振り上げて迫る。が、振り向きざまに左腕のブレード付きシールド《シグルシールド》でそれを両断。

 呆気なく襲撃者は墜落していった。

 

 勿論これだけでは終わりでは無い。襲撃者の仲間らしきモビルスーツが取り囲み、多勢に無勢を絵にかいたような光景を創り上げていく。

 中には如何にも手強そうなガンダムタイプが混ざっており、GNドライヴを積んだ個体すらもいる。

 

 これだけの相手をたった一人で相手どるという狂気的な光景だが、この画面を見る者たちもカナタも知っている。

 こいつを――ガンダムAGE-Ⅱマグナム止めるにはまだ足りない。

 

 4枚羽がAGE-Ⅱマグナムから離れ、次々と取り囲んで来たモビルスーツを斬り裂き、戦況が混乱を始める。そのどさくさに紛れて、行動を開始。手始めに羽の餌食にならずに済んだガンダムタイプのモビルスーツをシールドバッシュで打ち抜く。

 そして人型形態から戦闘機形態《フェニックスモード》へと変形。驚異的な加速力で包囲から離脱。一度は慣れてUターンした後機首に搭載されたハイパードッズライフルマグナムで混乱した戦況を突っ切りながら無造作に数機ビームの餌食にして、炎の塊となって地に落ちていく。

 

 粗方ビットのように縦横無尽に飛び回る羽に切り裂かれ、難を逃れた機体はドッズライフル特有の螺旋状に回転したビームが、装甲を抉り貫く。

 出力が他の機体とは一線を画していた。

 操縦技術も然り。この戦闘で一発も貰っていない。

 

「――クジョウ・キョウヤ」

 

 これを見ていた誰かが呟いた。GBNプレイヤーでその名を知らない者はいない。カナタもアヤもその名前を知って板。

 クジョウ・キョウヤとはGBN現チャンピオン。

 第14回ガンプラフォースバトルトーナメント優勝フォース、AVALONのリーダーだ。

 

 昨年のGBNの個人勝率獲得撃墜ポイントナンバーワン。ワールドチャンピオンシップトーナメント個人戦優勝。使用機体はガンダムAGE-Ⅱマグナム……

 他の追随を許さぬ技量を持つカリスマダイバーだ。

 

「ほんっとバケモンだなこの人」

 

 カナタは溢す。

 あの路傍の石の如く撃墜されたモビルスーツたちの乗り手も多少の腕前を持っていた。戦いは数だよとどっかの誰かさんは言っていたがアレはあの男は嘘にしてしまう。

 

「そうだね……私も勝てる自信がないな……」

 

 というか勝てる自信のあるダイバーが居るなら教えて欲しい所だ。名乗り出てどしどし挑戦して欲しい。それだけ自信のある得物(ガンプラ)でチャンピオンとやり合う姿を是非見てみたい。

 ついでにソイツともやり合ってみたいと息巻く己がカナタの内にあった。

 

 

「にしても、フジサワさんもリアルタイプも買うんだな」

 

 アヤの手元には積まれた3つのガンプラの箱があった。うち2つは彼女らしくSDタイプだが1体だけリアルタイプのものだ。HGユニコーンガンダム。SDオンリーの人間だと思っていたので少し意外に見えた。

 

「イズミ君の所だとSDばかり買ってたからね。でもたまには私だってリアルタイプと組む時はあるよ。そういうイズミ君はパーツばっかりだね。箱はストライクだけ……」

 

「今日は別に本体要るって訳じゃなかったし、どっちかというと得物というか追加装備とかバックパックが作りたかったから今日はこんだけ」

 

 ストライクに対応するバックパックが作ってみたかった。というのは、元々カナタが初めて作ったガンプラがストライクだったという事が大きい。箱を物色していた所でHGストライクガンダムの旧キットを見かけて何だか懐かしい気分になったので少し初心に還ってみようと思った。

 

「そう言えばさフジサワさん、初めて作ったリアルタイプのガンプラってなんだ?」

 

「ん? わたしは確か……」

 

 下唇に人差し指を当てて少し考え込む。数秒程度の短い思考の果てに口を開いた。

 

「HGF91」

 

「意外。ストライクから入ったものだと思ってた。俺はストライクから入ったよ。兄貴に教えられてな。初心者にオススメだし色々入ってるからって」

 

「えっお兄さん、居たの?」

 

「そういや、話したことなかったな」

 

 そもそも他人に兄の――ナユタの話を自分からするというのも我ながら珍しいモノだ。けれども少しだけ、今は昔の話がしたかった。

 

「俺にガンプラ教えたのは兄貴なんだ。ジャンクパーツを使って新しく組むなんて芸当を教えたのも」

 

 ナユタが居なければ今のカナタは居ないと言っても過言では無い。GBNで遊んでいたりもしないだろう。ナユタにとってそれだけ兄の存在は大きかった。

 

「今は元気なの?」

 

「どうだろうなァ……」

 

 どうだろうって自分の家族のことじゃないのか。アヤは不可解に思ったのか首を傾げる。

 けれどももうカナタには知る方法はもうないのだ。あの世のことなんてこの世の人間には知る由も無いのだから。

 

「ガンプラは滅茶苦茶強かったよ。GBNが始まる前、アストレイ素体にした奴を昔のガンプラゲーで動かしまくって千切っては投げ千切っては投げの大活躍って奴だったよ……」

 

 きっとGBNに居たら相当の脅威になっていたに違いない。かのクジョウ・キョウヤとの試合も見られただろうにと思うと少しばかりの寂寥感がカナタを襲う。

 けれども覆水盆に返らず。人は――時間を支配できやしないのだ。GBNが始まる前の数年前、ナユタが大会帰りに両親共々交通事故でこの世を去る前のあの頃にはもう。

 

「ごめん。身内の自慢話なんざ聴かせて」

 

「ううん。訊いたの私だから」

 

 今は今と受け入れて生きていくしかないのだ。

 一応、過去には多少の踏ん切りは付いたと、そう思いたいから。

 

 

 

 

 模型店やらジャンクショップを回り切った時にはもう陽は沈みかけていて外灯が薄暗い道を照らしていた。秋葉原のごった煮した街中でいつも通り世間話をしたりガンプラの改造について色々話してみたり。時には黙々と目的のパーツを漁ったり。

 

「もう夜か。長い事物色してたな」

 

 カナタは店の自動ドアから出た所で自分の髪をくしゃっとする。模型店に入った時はまだ昼真っただ中だったはずなのに。

 これ以上の長居は帰ると怒られそうなので今日はここまでだ。

 ここで解散だ、と言おうとして向き直ったところでアヤの方が先に口を開いた。

 

「カナタ君」

 

「どした?」

 

「いつかまた一緒にジャンク屋回ろうよ。カナタ君が良かったら……だけど」

 

「おう。お互い時間が合えばだけど、またな。でも今日はシメーだ。これ以上長居してたらばーさんにドヤされる」

 

 予定こそ狂ったものの、何やかんやで楽しかった。また一緒に廻れるのならそれは願ってもないことだ。けれども今回、イレギュラーなこともあったのでグダついていたのも事実で、いずれまた一緒に廻る日が来るなら前もって移動ルートの把握もしておかなければとカナタは思う。

 この秋葉原は別にパーツ漁りだけが能じゃない。GBNの前身であるGPDの小規模な大会も行っているのだ。

 

 そしてカナタは背を向けじゃぁなと手を上げる。それにアヤも応えるように手を振ってお互い帰途についた。

 




 アキバズトリップ2ってゲームをやった後に秋葉原行くと再現度の高さに驚いたものです。
 龍が如くとか428とか実在の街をベースにしたゲームをやった後にロケ地巡りするのは結構楽しいのでお勧めです。


 それはそうと私が初めて作ったガンプラは奴らみたいにHGですらなく肘すら動かないストライクでした(隙あらば自分語り)。
 100、HG、60、BB戦士も全部ストライクから組んでいるし子供の頃の自分の思考回路がよくわからないです……
 運命終了から暫くのブランクがあってから、00のゲームのおまけにあったエクシアを組んで可動範囲に「HGですらないのに肘まで動くのこいつ!?」ってぶったまげた思い出。



 次回はまた本題に戻ってマスダイバー狩り回。

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