BUILD DIVERS ASTRAY   作:ヌオー来訪者

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 言い訳は出来ません。
 やらかしました。投稿遅れて申し訳ないです……

 他の作者さんたちのペース維持能力が羨ましいなぁと今回の一件で思いました。
 SNSで神絵師の腕を食べたい的なこと言ってるヒト(?)たちの気持ちもわかる気がしました(危険発言)


 ……なので初投稿です。


STAGE50  呪詛

 次はお前だ。そう言わんばかりにオルタナティブの双眸が鋭くサザビーの姿を射抜く。

 アランは恐怖する。まさかあのGサイファーを倒したというのか。そして片手間に自分の仲間を撃墜した。

 

 そんな理不尽の塊がそこにいた。

 

「悪魔が……」

 

 アランは眼前で蠢く殺意(オルタナティブ)を悪魔と評した。

 こうして対峙するのは初めてだが、自分の想定以上におぞましい存在だった。

 肩部に搭載されていた大剣、ソードダンサーは自立稼働しその名の通り舞いながらアランのサザビーを襲う。

 Gサイファーが動けなくなった現状こちらの味方機は減り完全に不利に傾いている。あのソードマンを野放しにすれば全てが消し飛ぶ。

 

 いつだって弱い人間は無視される。

 あのソードマンとて強者の論理を振りかざす化け物でしかない。それはエゴなのだ。

 あのビルドダイバーズも。

 

 元から気に入らなかったのだ、奴らは。

 GBNの番人を気取って、こいつらは。

 

 ブレイクデカールは虐げられる者たちへの救いの手でもある。それをアランは知っている。

 故にリクもソードマンも認められない。負けてはならない。

 

 一度綻びかかったが今もう一度結束した絆は壊れることはないのだ。その絆の力をあのソードマンという化け物に見せてやる。

 

 イメージする。

 決して破られない強靭な装甲を。

 イメージする。

 何者もを打ち砕く強大な力を。

 

 その力がソードマンを八つ裂きにすることを、イメージする。

 その時、機体の動きがわずかに揺らいだ。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 オルタナティブとサザビーが交戦しているのを前にリクは思う。

 彼らを断じるのは恐らく簡単で、ソードマンのように自分もやって仕舞えばいい。

 

 そう、考えるだけなら簡単だ。今手に持ってる剣であのサザビーの頭を吹っ飛ばせばいい。逆襲のシャアを思い出せ、あそこにコックピットブロックがあるのだ。

 相手の動きはある程度読めた、今度は直撃出来る自信がある。相手の動きやパターンは見えている。

 

 

 こんな風にやるものだったのか、このゲームは。

 こんな風にお互い昏いものを抱えてやるようなものだったのか。

 その疑問に応える者はどこにもいない。

 

 

 オルタナティブ操る、空中で飛び回る大剣はあっという間にサザビーが全てビームサーベルで弾き飛ばしてしまう。

 

 ここで彼らの要求を応えるのならこのまま剣を下ろしてしまえばいい。

 でも、そんな事は周囲が、そして何よりもリク自身が許しはしない。そんなことをすればGBNが終わるだけなのだ。

 

 そして逆に、断じるのなら彼らに二重の意味でトドメを刺すことも意味する。絆を断ち切る行為に等しい。今回の戦いというものは。

 彼らの追い詰められようから、なんとなくそんな予感めいたものがあった。

 けれども両方を取る選択肢ははじめから存在しなかった。譲れないものがあるのだとしたら戦うしかない。

 

 

 ビームサーベルを振るうサザビーの攻撃を避けながら、GNダイバーソードで斬り付ける。ここまで冷静にマスダイバーと対峙していられたのは初めてだ。これまでは知人がマスダイバーだったり想定外なことばかりで対処に必死だった。だからこそ今回の戦いから見えるものがある。

 これはソードマンが、カタナが多分散々っぱらやって来たことだ。

 この行為に対して何を思っているのかは分からないままだ。

 不特定多数の言うように愉悦を感じているのか、苦しんでいるのか。それとも……

 

 今は考えている暇はない。

 この瞬間、GBNはバグに侵食されている。

 迷うな、討て。それだけを言い聞かせながら。

 

 レンジ外から後退するサザビーを前にオルタナティブが前に出て斬りかかる。

 

「ソードマン! これ以上弱者を斬り捨てるんじゃない!」

 

 アランが吠える。

 しかしカタナはまともに取り合おうともせず、カウンター気味に一蹴してみせる。戦術、反応、経験、鋭さ、そして速さの差が決定的に出ている。

 

「どの口が言う……!」

 

 カタナが吐き捨てるように返して蹴り飛ばされたサザビーを追うように千子村正を振るい行く。

 そうはさせまいと腹部から土砂降りのようなメガ粒子砲を閃かせると、オルタナティブは瞬時に千子村正を守りの構えに変えて降り頻るビームを弾いてみせる。

 

 この様相から誰が勝つのかは明白だった。

 一瞬にしてサザビーの攻撃を全て無力化した上に的確に一撃一撃を加えていく。

 

 弱者ってなんだ。

 疑問がリクの脳裏を走る。

 このままGBNを滅ぼす者は果たして弱者なのか。

 

 強者ってなんだ。

 いつのまにかGBNを滅ぼされている側は真に強者なのか。

 

 字面にしてしまえばまるで訳がわからない話だった。誰が真の強者であり真の弱者なのか。

 袋小路の中、ブレイクデカールの是非を問う。

 

 いや、考えるまでもないか。

 

 壊れゆく世界、ステアの想いを思い出す。

 だからこそ。

 

 やはり──ブレイクデカールは認められなかった。

 

 オルタナティブの的確な斬撃にサザビーは破損と再生を繰り返す。

 このままならオルタナティブの勝利だろう、しかし腐ってもブレイクデカールユーザー。ただで倒れる相手などではなかった。

 虚空が、捻れる。まるで例えるなら昔の特撮のタイトルが出てくる画面のようだった。

 

 ──ファンネル!? 

 

 無からファンネルを精製したのか。

 サザビーのものが次々と精製されていく。それに気づかないままオルタナティブは攻撃を繰り出していく。

 

「させるか!」

 

 形が完全になるより早く、GNダイバーソードで破壊する。

 

「ダブルオー!? また邪魔を!」

 

「アランさん。オレは、いや、オレもここが好きなんです。ステアさんも、マギーさんも、この試合を見てくれている皆も。それを壊される訳にはいかない」

 

 彼らは言っていた。自分以外は取り返しがつく、と。

 そんなこと誰が決めたんだ。知らない間にGBNを壊されて、繋がりが断ち切られる者がどれだけいる。

 弱者ってなんだ。

 彼らからGBNを取り上げる人間が弱者なのか。

 

「その為に弱者を踏みつけてもか!」

 

 吠えるアラン。その一方でリクのダブルオーダイバーは周囲で飛び回るファンネルを縦に切り裂く。

 そんな中でカタナの声が割り込む。

 

「弱者じゃねェよ。お前はもう──ッ!」

 

 弾けるノイズが割り込んだカタナの声を遮り飲み込んでいく。大破したサザビーが墜落しつつ再生しながら腹部から拡散ビームを放つ。

 

 駄目だ。あの武器はビームライフルとは違って腕が吹っ飛ぼうが、視界の中に居れば命中する代物だ。

 即座にリクはオルタナティブの前に機体を飛ばし、GNダイバーソードの刀身でサザビーの攻撃をカットする。機体の重心をちゃんとすれば吹っ飛ばない。

 ポジションをしっかり据えた上で一閃、その閃きがビームを弾く。

 

「お前……!」

 

「戦います。オレはオレなりに」

 

 ソードマンの味方としてではなく、一人のガンプラファイターとして。そして一人のGBNユーザーとして。今は。

 少なくともこれが最良だと自分に言い聞かせるその一方、頭の奥で響くアランの叫びが木霊する。

 

 少年はそれでも前に進む。

 今この瞬間がそれが正しいって信じるしかない。このまま自分が倒れたら自分たちの後ろにいる皆は、マギーは、ステアは、ゴーシュはどうなるんだ。

 

 それだけじゃない自分の知らない所でGBNをやっている人たちは。

 当然眼前の彼らを倒して何の咎も受けないことはない。

 大義があっても眼前の願いを踏みにじっているのは同じなのだから。

 

 オルタナティブとダブルオーダイバーが並び立つ。

 ここまで近くにいて、倒そうとしている相手も同じなのに何かが違う者たちが剣の切っ先を同じ「敵」に向ける。

 

 対するサザビーはV2のものと思われる光の翼を生み出しながら高速で突撃をかける。

 

「避けろ──ッ!」

 

 と、カタナは叫ぶ。

 何処へ? 

 左右は論外、上も危険。ならば──下だ! 

 

 

 リクは機体を下に急降下させてサザビーの突貫をやり過ごす。そして真後ろにいたオルタナティブはサザビーの攻撃を千子村正で受け止める。

 

「カタナさん!?」

 

「ぐぅっ!?」

 

 光の翼の推進力がたかたがモビルスーツ1機が止められるほど生易しいものではない。

 だが速度は光の翼で走り出した時よりは落ちている。

 

「終わりだっ! そのまま崖にぶつけて消えろッ!」

 

 このまま押されれば背後には崖が待ち構えている。ぶつければそのまま崩落した土石流に流されてバラバラ、一方のサザビーはブレイクデカールの再生力で乗り切るつもりだ。

 

 しかしカタナは不敵にも言い返した。

 

「終わるのは……てめぇだ」

 

 そこからは咄嗟の判断だった。

 ダブルオーダイバーエースとはストライクの換装システムであるストライカーパックの一つ、エールストライカーを発展させたもの。

 だからこそ──

 

 機体のスラスターとウイングを展開し、アームを高速で動かしつつ脚部を上げる。オーバーヘッドキックか鉄棒の逆上がりでもするかのように方向転換、逆さのままバックパックの出力を全開にして突撃をかける。

 

 Active

 Mass

 Balance

 Auto

 Control

 

 略してAMBAC。

 能動的質量移動による自動姿勢制御は本来宇宙空間内でやることだ。

 機体の四肢を高速で動かして無理やり姿勢制御をする芸当は大気圏内でやるものではない。重力とはそれほどに枷となる。

 だがしかし、ダブルオーダイバーには太陽炉とエールストライカーをモデルとしたバックパックを搭載している。

 この程度の無茶は出来ない訳じゃなかった。

 

 三半規管が悲鳴を上げるという代償さえ払えば。

 

 

 全速前進で持っていた二刀を、光の翼で突き進むサザビーに投げつける。

 勢いが乗った質量にもかかわらず突き刺さりはしなかったものの、怯ませるには充分だったようだ。ダメージを受け光の翼が消えた瞬間、オルタナティブは蹴りを放ちその勢いのまま後退、千子村正の白刃を光らせる。

 

 前門のオルタナティブ、後門のダブルオーダイバー。

 前後の機体を的確に振り切ることができるほどアランには冷静さはなかった。

 

 得物をロストしたダブルオーダイバーは両腰部のサイドアーマーにマウントされたスーパーGNソードⅡを抜刀し斬りかかる。

 

 双方己が身を弾丸と変え、すれ違いざまの一閃。

 その結果サザビーの上半身と下半身が別れるのは言うまでもなかった。

 

「お前たちの……せいだ。お前たちさえいなければ」

 

 恨み言を溢すアランには憎悪が目に見えるようだった。装甲から滲み出る黒い焔は禍々しさを増している。

 そんな中で千子村正を納刀させたカタナは吐き捨てる。

 

「テメェがブレイクデカールに手を出した結果がこの地獄絵図だ。テメェがアレを使う限り俺はテメェを斬り続ける」

 

「お前はGBNを守ることを名目に俺たちのような被害者を狩ることで悦に……!」

 

「すげーな名探偵」

 

 たった7文字だけの一言。明らかにカタナの声には色が、感情という感情が乗っていない。端的に言えば、虚無。

 

 まるで突き放すかのような物言いとは裏腹にオルタナティブのアームはサザビーの頭部を上から掴んだ。

 脱出を封じてそのまま握り潰すつもりだ。

 アームごと下半身を葬られたサザビーには最早抵抗の手段は残されていない。

 ひどく、合理的なやり口だった。

 

「大外れだ」

 

 みしり、と音を立て頭部がメキメキとひしゃげていく。

 グシオンリベイクフルシティの殺人ペンチに潰されるパイロットのような悲鳴を上げるアランに、リクは歯を噛み締める。

 オレの選んだ結果なんだ、これは。

 もう止める権利はありはしない。

 

「う、あぁ……お前……お前、お前、お前、お前はぁぁぁぁぁ!!」

 

 アランの呪詛を一身に受ける。まるで心臓を掴まれるような気分だった。

 これはもうガンプラバトルの皮を被った戦争だ。こんなことを俺たちはやりたかったのか、違うだろう。

 かつて思い描いた光景は理不尽な現実の前では空虚な幻と化す。そして空虚な幻はリクを容赦なく苛み続ける。

 オルタナティブの指サザビーの装甲に深くめり込んだ所でその呪詛はパタリと止んだ。

 

 潰れてしまった? 

 違う。

 

 サザビーの切り裂かれた断面からチューブのような触手が伸びてオルタナティブのアームに絡みついていた。

 

「何ッ!?」

 

 デビルガンダムじみたその触手はたちまちオルタナティブの全身に絡みつき、余ったものはまた別のものの方に向かう。

 その行先は月夜の7人の僚機か。

 

 ──いったい何が始まるって言うんだ。

 

 破壊された彼の味方機の残骸と未だビルドダイバーズのメンバーと刃を交わしているモビルスーツたちが触手に絡めとられていく。

 嫌な予感しかしなかった。

 

「させるかぁ!」

 

 このままでは咄嗟にカタナのオルタナティブに絡みつく触手をスーパーGNソードⅡで切り裂き、切り離す。

 バッサリ斬られた触手の残りを、オルタナティブは強引に剥がして脱出。

 その一方で残骸とモビルスーツたちがさっきまでサザビーの上半身だったナニカと集まり組み合わさっていく。

 まるでキメラかフランケンシュタインか。いや、もっとおぞましい何かだ。

 

 気付けば月夜の7人のモビルスーツはGサイファーとグシオンの残骸を残して不格好にツギハギされた50mクラスの体躯が二人を見下ろしていた。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 壊れ続ける世界の中、仕留め損ねた怪物は味方をも喰らい巻き込み縛りつける。

 今度は合体能力か。

 

 カタナは舌打ちする。

 何が弱者だ。

 何が被害者だ。

 あの悍しい姿を晒し、無作為に破壊しても叫び続けるのか。

 

 

 人類全てが弱者とは言えるほど、ヒイロ・ユイのような人生は歩んじゃいない。けれどもこれだけははっきり言える。

 殴った奴は殴られるのだと。それはカタナ自身とて例外ではない。

 

 狂った人形のようにモビルスーツとケーブル類が組み合わさった「腕」を振り回す化け物に、カタナは静かに操縦桿を押した。

 

「もう……黙れよ!」

 

 腕から伸びる無数の触手はオルタナティブを襲う。

 無造作に切り落としながら距離を詰める。

 最早あの化け物についた四肢は有効レンジを測る物差しにはなり得ない。あの腕も脚も伸ばそうと思えばいくらでも伸びる。

 そして無からダガービットを呼び出すことだって。

 

「!?」

 

 ダガービット。

 それはオルタナティブが使った大剣を操作し飛ばすソードダンサー同様に直接ぶつけるオールレンジ攻撃の一種。

 それがソードダンサー以上、ガンダムタイプ以上の耐久性とガンダム00に出てくる特攻兵器のガガ並の質量で襲いかかるとなれば……

 

 ブォン、とオルタナティブの眼前を巨大なそれが横切った。

 少し速度を上げていれば文字通り「弾かれていた」。

 

 冷や汗がカタナの背筋を伝う。

 ダガービットは7機。縦横無尽に飛び回るそれはオルタナティブだけではなく敵を失ったビルドダイバーズの面々にも襲いかかってきていた。

 

「これが俺たちの絆の力だ! お前たちには奪わせない……お前たち強者の理論を振りかざす奴らには!」

 

「いい加減にしろよこのタコ助が……!」

 

 カタナは毒づきながら飛びかかるダガービットを千子村正の刀身を滑らせることで直撃を免れるが一撃ごとに腕を持って行かれそうなくらいの負荷が機体にかかる。

 

 ユッキーのジムⅢビームマスター、ならびにモモカプルの砲撃が遠方から飛来するも決定打にはならず。

 焼き切れた装甲は瞬時にして再生された。

 

 色とりどりのモビルスーツたちが組み合わさって出来上がったサイケデリックな化け物は、着弾地点から2機が当ててきたビームをそっくりそのまま吐き出す。しかも出力は受けた分より明らかに上がっているときた。

 飛び散るように避けたものの流れ弾は森を吹き飛ばし、岩をも抉る。

 衝撃波が2機を押し流す。

 

「うわぁっ!?」

「ひゃぁっ!!」

 

 ユッキーとモモの悲鳴がこだまする。

 なんてバカみたいな出力だ。掠っただけでもジェネレーターが焼けて爆発しそうな勢いだ。

 

 おまけだと言わんばかりに手を、ダブルオーダイバーとオルタナティブに向ける。

 指の先端は戦艦級の口径を持ったメガ粒子砲──

 

 合計五発のビームが、戦場を裂いた。

 

 

 あんなもの悠長に両断していたら千子村正共々消し炭だ。危うく灰にされるところだった2機は、蜘蛛の子を散らすように散開を始める。

 

 幸いビームがホーミングしなかったお陰で難を逃れた。だが恐らくは次はそうはいかないだろう。

 今のは練習、デモンストレーションに過ぎないのだから。

 

「お前らさっさと逃げろ。こんなクソ試合……放棄してしまえ。言うだけ言われてムカつくだろうが」

 

「貴方は!」

 

「あぁ? 大物狩り(ジャイアントキリング)は男の子の浪漫だ。上手くやる」

 

「震え声なんですけどそれは」

 

 見栄を切っておいてなんだが台無しである。

 リクのツッコミを他所に、事実肥大化した化け物に対する勝ち筋を失いかけていた。

 先のデストロイ戦ならまだしもこの敵は不定形の化け物。デビルガンダムが可愛く見えるほどだ。

 

「今から俺は八つ当たり込みで殴ることにする。だからこの八つ当たりに付き合う必要なるものは存在しないって理屈だ」

 

 人斬りをやっている時点で最早、被害者であると言う選択肢は捨てた身だ。

 GBNを守るという純粋な願いから来るものじゃない、これは過去の亡霊を守るための戦いである。そこに正当性はない。形は違えど繋がりに囚われているのは連中と同じだ。

 それでいて口のない死人を都合よく解釈して剣を振るっているに過ぎないのだから。

 

 化け物は化け物同士闘って朽ち果てて仕舞えばいい。

 

 それに──

 

「消えてしまえ、偽善者ども!」

 

 吠える化け物は通常のモビルスーツより太い腕を振り上げる。

 カタナはどの口が言うと盛大に力強く舌打ちしたその時だった。

 

 

「言いたいことはそれだけなの……?」

 

 横殴りに化け物目掛けて2筋のビームが飛来した。当然装甲を汚すだけだったがカタナにとって彼の攻撃を遮った人間が意外な人物だった。

 

 ──ガイアか! 

 

 恐らく先の戦闘で半壊したのであろうガイアが、ビームを撃ちながら化け物に迫っていたのだ。

 

「あたしは厭だ……! 下手っぴでも皆とGBNがやれなくなることは! あたしは厭だ……! 自分がブレイクデカールを使って誰かが泣くのは! あたしもブレイクデカールを使ってひどく後悔した、だから!」

 

「なら俺たちはどうする! 弱者は! 偽善者め……!」

 

「弱かったら何やってもいいって言うの⁉︎ 誰かの居場所を壊して! いいわけ……あるもんかぁぁぁぁぁ!」

 

 ステアから吐き出される叫びはどれだけの想いが込められていたのだろう、カタナは知らない。

 けれども化け物のパイロットは気炎を上げる。

 

「なら黙って壊れろというのか! 俺たちの絆は!」

 

 片手間にステアのガイアを虫を跳ね除けるように吹っ飛ばす。

 今度こそ再起不能だろう。地面を転がりながら外れたパーツを四方に巻き散らす。そんな中でゼータが受け止めて見せる。

 彼女について気に留める必要は今はなさそうだ、ゼータに任せよう。

 そう冷静に分析しながらも、カタナの中では度重なる発言に対して既に何かが切れていた。

 

「……その程度で壊れるようなら一度壊れちまえよ」

 

 カタナの内には月夜の7人に対する黒い苛立ちを持つ自分と、自身が吐き出した言葉を恐ろしく感じる自分がいた。

 その言葉を生んだ原動力が酷く黒々としたものだったのだ、多少は引きもするというものだ。

 

 夏祭り、シバと対峙したあの日がリフレインする。かつての絆が呪いとなり始めている。

 その事実が自傷代わりのこのらしからぬ攻撃的な思考と発言ときた。

 

「お前、何を……!」

 

 アランの声が明らかに困惑しているのが手に取るようにわかる。けれどもここで止められるほどカタナも冷静ではなかった。

 

「……そんな呪い同然のものいっそ壊れちまった方がいいだろ。なぁ? 絆なんて綺麗な言葉使うなよ」

 

 絆なんて綺麗な言葉で自身を無理やり正当化するからそうなる。もうそれは祈りなんかじゃない、呪いなんだそれは。

 自分自身を取り巻く状況をひたすら自己嫌悪で固めた拳で殴りつけながらカタナは機体を前進させる。

 

「お前に俺たちの何が分かるって言うんだ!」

 

「分かるかよ。分かってたまるものかよ……!」

 

 分かれば自分の呪いを直視しなければならなくなる。だからこそ、カタナは吠えた。

 伸びる巨人の腕は再びカタナのオルタナティブを襲う。腕の先端は無数に枝分かれし左右の逃げ道を奪うように拡散、本命の数本はコックピット目掛けて飛んでいく。

 

「カタナさん!」

 

 リクの呼ぶ声がこだまする。

 このままいけば直撃コースだ。どうカウンターしたものかと、千子村正を構え直した矢先のことだった。

 

 横殴りでどこからか飛んできたナニカがオルタナティブに迫る無数の腕を断ち切った。

 

「……っ!」

 

 誰だ、と飛来したナニカのいく先を見やるとそこには地面に突き刺さったままの白銀の剣が雷鳴を照り返している。

 

 次に根本的に飛んできた方向に視点を持っていく。そこは足場も不安定な崖の上。

 天辺には剣と同じ白銀の輝きを放つ鎧を纏うSDガンダムが崖の上で化け物を見下ろしている。

 騎士ガンダム? 否。

 

「バーサル……騎士ガンダム」

 

 

 

 

 STAGE50  

 

 




 祈りが呪いに変わる前に。





 アランについて
 実は名前のベースはビルドファイターズに出てきた彼ではないのです。ガイア・ギアに登場したアフランシ・シャアがベース。
 投稿して数週間後気紛れにみたビルドファイターズで思い出したのです。メイジンの相方の兄ちゃんの名前と同じやんけぇ! と。
 それから白目剥きながら作者は続きを書いてたんだとさ(小声)
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