BUILD DIVERS ASTRAY   作:ヌオー来訪者

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 UA50000逝ってたので初投稿です。


 クリスマスにはお返しになんかしたいわねぇ……


STAGE52 ダストウォーリア

 ガンプラやろうよ。

 その一言が全ての発端だった。

 

 月夜の7人が生まれる前までは6人は仲のいい友達でしかなかった。

 僕らが出遭ったのはとある街角にあるジャンクショップで店主の孫が開いたガンプラ教室だった。

 

 イズミ・ナユタ。悲劇のファイターとして一時期名を馳せ悲劇に浸りたい者たちの玩具にされ、忘れられた男。

 

 

 もちろんガンプラ教室に来るような人は素人ばかり。

 そこで偶然出遭った同年代の子供たち。もちろん、すぐに出来上がる訳じゃない。

 特にこれまでガンプラなんて画面の向こうのものとして見てきただけだ。HGの素組みでも一苦労だ。

 

 そんな皆をナユタという男は丁寧に教えていた。苦楽を共にした同年代の子供たちが親しくなるのは時間の問題だった。

 

 あれからナユタが亡くなるまでよくあの店を溜まり場にしていたのはアラン──もといアラトにとっては忘れがたい思い出だ。あの頃に戻りたい、とも思う。

 あの頃は勝ち負けなんて無くて

 

 共通の趣味があって、知り合って。

 

 

 

 ただ仲間のうちで楽しくガンプラを見せ合っていた。それだけだった。

 

 しかしながら一つを得られれば次を求めるのが人間の性というもの。

 GPDで動かしてみようよ! と誰かが言った。

 その言葉に反対する者は一人とていなかった。

 ガンプラを嗜む人間からすれば自分の作ったものが動くという魔力は抗い難いもので、アラトたちもその例には漏れなかった。

 

 

 さっそく近所のゲーセンに足を運び、筐体に各々が作り上げたガンプラで架空の大地を駆ける。まるでアニメのようだった。自分の思うようにガンプラが動き、あの日見たアニメと同じアクションができる。

 それだけでも自分たちにとって新鮮で──自分の世界が広がったような気がした。

 

 あらかたGPDの世界に慣れてきたところで、一人の見知らぬ少年が声を掛けて来た。……どうも勝負をしようと言うのだ。

 はじめこそ、勝負を申し込んできたのは初心者を名乗る者だった。見た感じちょっと年上で何処か優しそうな少年だ。

 

「はじめまして、あの僕とガンプラバトルをしませんか? 初心者だからあんまり強くないですけど……」

 

 同じ初心者同士だ。きっと楽しい戦いになるに違いない──とあの頃のは信じていた。

 思えば疑うべきだった。ゲーセンの他の筐体に不審な影があったのを。──それを警戒しなかったのが致命的だった。

 

 

 

 当時、GPDの加熱したブームは常軌を逸していた。

 

 リアルであるが故の強奪事件。

 GPDにおいてそう言った問題も孕んでいた。

 母数が多ければ多いほど、その手の事件は増えていく。それは理解していたのだけれども、理解したからなんだというのだ。簡単に回避できるのなら苦労はしない。

 

 あの頃のことはよく覚えている。

 

 ならず者にとって新しい蹂躙手段とみた瞬間、横暴なアンティルールを持ちかけるパターンが増え始めていた。

 GPDは戦闘ダメージが直にガンプラにフィードバックされる性質上、それ相応のコストを強いられる。それ故に力による支配に結びつくのも時間の問題でもあった。

 

 相手のガンプラは──PGガンダムエクシア。

 こちらのガンプラは赤いガンダム──もといHGキャスバル専用ガンダムだ。

 

 名前でも分かる通り、サイズ差は歴然だった。144分の1スケールのキャスバル専用ガンダムに対して、2倍近くの大きさを誇るガンダムエクシアは初陣にしてはあまりにもインパクトが大きかった。

 しかし機体のサイズ差は大きいがあの図体だ、バズーカだって当てられるはず。

 

 けれども──その見積もりは甘かった。

 気付くべきだったのだ。戦う前から。

 

 初手先手必勝とアラトはキャスバル専用ガンダムにハイパーバズーカを発射させる。

 

 ──命中! 

 

 吸い込まれるように飛んでいく弾頭はコックピットに直撃し、爆煙がポップコーンのように弾け立ち込める。

 次々と立て続けにバズーカ砲を浴びせながらアラトは勝利をひしひしと感じていた。

 

 ──相手にはちょっと悪いけど俺の勝ちかな……? 

 

 気が緩んだ。立ち込める爆煙の中がどうなっているのか確認もせずに。その結果が──

 

「何調子こいてんだ。シロート」

 

 腕が──伸びた。

 それはHG級の機体の腕の一本くらい握ることができるほどの巨大な腕。

 気付いた時にはもう機体を掴まれ、ハイパーバズーカも落としていた。そんな反撃よりも何よりも、アラトが一番驚いていたのは相手の豹変だった。

 

 先程の冴えない顔は何処へやら、邪悪に顔をぐにゃりと歪ませた男がいた。

 

「お前、俺たちのシマだってことを分かってて来たのかよ、えぇ?」

 

「シマ……?」

 

 アラトの脳内でシマが縄張りの意味としてのシマと変換されるのに幾許かの時間を要した。そして、言葉の意味に気付いた時相手が普通じゃないことに気付かされた。

 

「挨拶もなしに勝手に人の筐体を使いやがって筋が通らないんじゃねぇか?」

 

 ギリギリと掴まれたガンダムのレフトアームはたちまちと握りつぶされた。

 ことの異常性に気付いた仲間たちが、ゲーセンの出口に視線を向けるが既に相手の取り巻きに塞がれていた。連中はどいつもこいつも下卑た笑みを浮かべてこっちを見ている。

 自分が罠に嵌った事実がアラトの腕を操縦桿から離すのに然したる時間はかからなかった。

 

 ──なんだよそれ……

 

 事の不条理さにアラトは言葉も喪っていた。巨大な脚に踏みつけられ、手塩に掛けて作ったガンプラが無残に破壊されて行く。壊されて行く。

 悪夢のような光景が終わった後、さぁ次だと連中はアラトの仲間たちを無理矢理デュエルに参加させた。

 

 それをアラトが止められる程強くはなかった、なにせ相手は自分よりちょっと年上で明らかに腕っぷしが強そうな連中ばかりで、たかだかサッカーができる程度の運動神経では太刀打ちができないのは見るだけでも分かった。

 

「だっせぇガンプラ。ま、ガキのガンプラだしこんなモンか」

 

 皆で一生懸命作ったガンプラが足蹴にされるその様をアラトたちは見ていることしかできなかった。なにせ技量もガンプラの出来も圧倒的に違うのだ。

 試合にすらならなかった。

 

「雑魚ェ、こちとらお前みたいなのと戦わされて迷惑してんだ。時間の無駄だってんだからな。この勝負が終わったらこの屑ガンプラを全部こっちに寄越せ。それで許してやるよ」

 

「──ぇ」

 

 それはあまりにも理不尽で一方的な通告。とはいえここで逆らえば何をされるか分からなかった。

 助けてと声を上げて大人を呼ぶことも、近くの不良連中のお陰でままならない。下手な事をすればきっとひどい目に遭わされる。

 それに──ちらっと見ていた大人たちは見て見ぬふりだ。仮に声を上げた所で無駄なのは明白だった。

 

「クズみたいなガンプラもそれが本望だろうよ。お前らみたいなヘタクソに弄られているよか俺たちのパーツとして有効活用された方が幸せだってな!」

 

 嫌だ。

 そう拒否出来たらどれだけ楽だっただろう。中学生からすれば、高校生なんて雲の上の存在。

 時々噂は聞くのだ。ホラ吹き混じりだろうが、相手の骨を折るとかなんて話も。

 何されるか分からないという未知のものに対しての恐怖が支配し、パニック仕切った頭では抵抗も出来なかった。

 

 そして──トドメの一撃が最後に残ったアカツキに向けられた次の瞬間──

 

「はい、ちょっとまった」

 

 聞き覚えのある声が木霊した。

 何事だ、と巨大なエクシアの動きも止まる。その返事代わりと言わんばかりにずけずけとした足音がゲーセンに響く。そこには少し長めの栗色の髪を揺らし、ダークブルーのダウンジャケットを羽織った糸目の青年と、焦げ茶色の髪と同じ色のパーカーを羽織った三白眼の青年が並び、不良を押しのけながらアラトたちのもとへと闊歩する。

 

 後者は誰だか知らないが、前者は良く知っている。

 イズミ・ナユタ。アラトたちにガンプラを教えていた張本人だった。

 

「なんだお前?」

 

 突然の闖入者に威勢を張る者に、茶髪の青年がにこやかに返す。

 

「なんだチミはってか? そーですわたしが変な──」

「こんな状況でふざけている場合かお前」

 

 バシッ、と三白眼の青年に頭を軽くどつかれ「シバァ……ノリが悪いんだから」とボヤき、叩かれた頭を掻きながらナユタは続けた。

 

「この勝負、僕が預かる」

 

「はぁ? お前に関係あるかよ? 引っ込んでろモヤシ野郎」

 

 気炎を上げる不良たちだがナユタも隣の男も物怖じ一つしていなかった。

 

「なに。関係なら大アリだよ。なにせガンプラの楽しさを知り始めた彼ら保護者……はなんか違うなぁ。先生やってるんだ。この子たちの──理由はそれだけで充分じゃないか」

 

「つまりクズの飼い主ってか。礼儀も知らないクズをよくもまぁ……こちとら迷惑しているんだよ。こんなクズのようなデュエルをさせられたんだからな」

 

「さっきからクズクズクズ……気に入ったの? その言葉。良くないなぁ……そう言うの。うーん、良くないわ、うん」

 

 眉をひそめて顎に指を当て、心底困ったようなしぐさでうんうん頷く。明らかに煽っているようにしか見えないその言動は彼らを激昂させるには充分過ぎた。

 

「ブッ壊されてぇか! ってめぇ!!」

 

 ナユタの煽りが癇に障ったのだろう。口々に吼える不良だったが咄嗟にナユタは悪びれず腰に巻いたホルスターにナユタは手を伸ばし、自前のガンプラを取り出す。

 アラトたちが作ったガンプラとは程遠い完成度を誇る、アストレイ・ファンタズマが姿を見せ──たと思いきやすぐに引っ込めた。

 

「意味がないよな。これじゃ」

 

 意味がない。

 その意味が分からず、アラトは疑問符を浮かべた。一体何をするつもりなのか、その答えは間もなくして彼の口から答えがでた。

 

「提案がある。君たちとデュエルがしたい」

 

 そう言った途端ドッと男たちの笑い声が弾けた。

 

「PGエクシアに勝とうってのかよ! イカレてるぜお前!」

 

 後々アラトは知ることになるがGPDのシステムはそこまで精密には出来ていない。

 事実ガンプラ同士を戦わせるアニメ、ビルドファイターズのシステムのようにダメージシステムの概念もないし、PGは純粋にHG以上の性能を持っている。その大会ごとに組まれたリミットレギュレーションと読むべき空気が無ければ平気でPGやMGを使う者も少なくないのだ。

 

 そのエクシアを前にナユタは悪戯っぽい笑みを浮かべて、アラトたちの方に向く。

 

「証明がしたい。君たちの作ったガンプラは決してクズなんかじゃないってことを。だから一つ、我儘なことを承知の上で一つ頼みがあるんだ──

 

 

 

 

 

 ……君たちのパーツを、ガンプラを貸してほしい」

 

 耳を疑った。

 こういった戦いなら使い慣れたファンタズマの方が有利だろうに。あまりにも正気ではない発言に隣にいたシバなる人物もただでさえ悪い目付きをナイフのように尖らせる。

 

「正気か? あんな奴ならテメーのファンタズマでなんとかなっただろ」

 

「正気だよ。だからムカつくのさ。ガンプラを作ってる時、自分が思い描いたものが出来上がって行くものを見て来た彼らがこれまでを否定されて終わるのが我慢できない。だから──彼らのガンプラで戦う。……この勝負に勝ったら君たちが奪ったパーツを全て返して貰う。そして、家に帰させて貰う」

 

 糸目の穏やかな顔持ちはそのままに普段からは耳にしない乱暴な口調に少しアラトは気圧される。そんな彼の姿もあったが、それ以上に自分たちのガンプラがクズじゃない、そう証明しようと言う彼の口調に一寸の迷いもなかった。

 

「こっちになんのメリットもねえじゃねえかよ! じゃぁテメェが負けたらそのホルスターに仕舞ったガンプラを寄越しな」

 

 これで本当に良かったのか。不良連中の提案にアラトの脳裏に迷いが生じる。けれどもナユタは即答で──

 

「……いいよ、乗った」

 

 そのあまりにも一方的でかつ見え透いた敗北から出る提案に乗って見せた。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

「セッティングは終わった」

 

 そう言ったナユタの手元にはアラトとその仲間たちのガンプラのパーツ同士が組み合わさって出来た異形があった。

 統一性の欠片も無い凸凹の塊のようなそれをシバは呆れ気味に「ったく、バカ野郎が」とボヤく。事実、キャスバル専用ガンダムはさて置いて、パーツはアカツキやらジムスナイパーⅡやらクロスボーンガンダムやらバスターやらV2やら残ったパーツの在り合わせで出来上がっている。

 

 レフトアームはアカツキで肩はバスター。

 ライトアームはジムスナイパーⅡで肩は同じくバスター。

 バックパックはV2。

 脚部はクロスボーンガンダム。

 そしてボディから頭部まではキャスバル専用ガンダム。

 

 バランサーすら怪しい機体でこれからどうしようというのだ。

 自分たちの所為でこんなことになったことを心底後悔していると、それを察したナユタが「そーいうのやめてね」と手をヒラヒラさせた。

 

 しかしながら相手側は完全にそのガンプラの有様を嘲笑っていた。

 

「アーッハッハッハ! お前そんなもので戦おうってのか! コレクションシリーズのクズみたいなプラスチックとやり合っている方がまだマシだっての!」

 

「……まーたクズ。やずやですら2回だったのに」

 

 やずやってなんだ。

 アラトのツッコミを他所にナユタの作ったツギハギのモビルスーツに武器を持たせる。

 武装はロングレンジビームライフル、腰にはビームザンバーがマウントされている。あとは肩部のミサイルポッドくらいか。

 機体をリペアする前に、ナユタは筐体から必要なパーツを見繕って拾い集めていた。()()()()()()()()

 

 機体を発進台に置き、間髪入れず発進させたそれは一瞬フラつき、覚束ない飛び方が続いたがナユタはそれを何の臆面もなく安定させてみせ、無事大地に立たせる。

 そして眼前のPGエクシアを見上げていた。

 

 戦闘エリアは市街地で、真っ先にエクシアはGNソードをライフルモードに変えてその銃口を閃かせた。

 PG級のビームライフルは下手なビームマグナムを上回る威力だ。咄嗟にツギハギのモビルスーツは横に機体をスライドさせて、ビームを回避。ビルとビルの間を縫うように走り始めた。

 

 真正面からの戦闘じゃ勝てないことをナユタはもう気付いていた。

 手あたり次第にビームライフルを発砲するPGエクシアに、ツギハギはひょいひょいと避けながら、ビルの陰から頭部目掛けてビームライフルを狙い撃つ。

 

「効くかよッ! そんな豆鉄砲で!」

 

 それでもナユタの表情に揺らぎは見えなかった。ただ淡々とPGエクシアの頭部やボディ狙って狙撃を叩き込む。時に自ら撃った肩部のマイクロミサイルをバルカンで破壊し、爆煙を煙幕代わりにして立ち回る。ロングレンジビームライフルがリロード状態になれば落ちていた武器を拾い上げて立て続けに射撃を叩き込む。

 

 

 必要分だけ拾ったのはそういうことだ。戦場に残った武器を拾い上げることで自らの火力不足を補っている。

 地形を利用して撹乱しつつ各ポイントから下げにして走行を削り取る。

 ズシンズシンと攻撃の度に倒れていくビルと余計に酷くなっていく煙がアラトたちの視界を封じ、何が起こっているのか分からなくなってしまっていた。

 そんな中で隣でいっしょに観戦していたシバはその光景に軽く舌打ちしながらも何かを察したように口を開く。

 

「なるほど、大体わかった。まぁ、そうなるな」

 

「……そう……なる?」

 

 勝手に納得されてるのが納得できないアラトは疑問符を浮かべる。答えが返ってくるのはあまり期待しちゃいなかった。なんせシバの目つきは下手な不良より悪い。きっと不機嫌なんだろうと思っていたが意外にもシバは答えてくれた。

 

「分かるか? アイツはブラフを撃ちながら頭部をメインで狙っている」

 

「一体何のために」

 

「まぁ黙って見ていろ。言動はムカつくがアイツの腕は確かだ。それにパワー任せの()()()()()にやられるようでは困るがな。あんなもんエクシアとは言わねえ」

 

 この人ナユタの仲間じゃないのか?  と言いたくなるほどの口の悪さに驚きはしたものの、事実彼の言う通り頭部をよく狙っているように見えた。それでいて次々とビルが倒れ、PGエクシアの足元には無数の瓦礫や倒壊したビルが転がっていた。

 こんな市街地でPG動かすにしても身動きが取れないのが現状。その上に倒壊したビルを向かいのビルが支える形で行き止まりを作り身動きを取りづらくしている。それに気付かず悪戯に撃ち続けている。

 それにいち早く気付いてGNソードで無理にでも退路を切り開くべきだった。……というのがシバの分析だった。

 

「PGにはPGの戦闘の仕方がある、あの連中はそれが分かっちゃいねェ」

 

 そんなシバの指摘をよそにPGエクシアは攻撃を続ける。

 

「終わりだァ! ツギハギ!」

 

 迂闊にも爆煙から飛び出したツギハギにここぞとばかりにPGエクシアが狙いを定める。駄目だ、このままではビームをもらって消し炭だ。しかし──

 

「──それはどうかな」

 

 PGエクシアがロックオンするよりも先にロングレンジビームライフルを構えたツギハギが引き金を引いていた。

 

「何っ!?」

 

「どんなパーツも攻撃を受け破壊される。特に一点をなんども撃たれればいずれ壊れるというもの」

 

 語るナユタを他所に、PGエクシアの頭部に一条の光が貫く。そして追い討ちと言わんばかり両肩のミサイルポッドを完全解放しありったけを叩き込む。

 電送系が逝かれたか大爆発を起こし頭が吹っ飛んだ。まさか、あの巨人が中破するなんて。

 驚愕するアラトを他所に次の瞬間、ツギハギが腰にマウントしていたカットラス状のビームを発振するビームサーベルの一種であるビームザンバーを抜刀、バックパックのミノフスキードライブを全開にして一瞬で肉迫。勿論PGだって案山子ではない。咄嗟に機体を動かし回避……できなかった。

 

 何故ならばPGエクシアの足元には無造作に破壊されたビルの残骸。それらが動きを封じてしまっていたのだ。

 

「動けないッ⁉︎」

 

 逃げ場はほぼ奪われている。唯一許された空に逃げようにもそれが狙いだ。

 素人目でも分かった。この勝負、ナユタの勝ちだ。

 

「やっと気付いたかい!」

 

 今更気付いたってもう遅い。すでに勝利は約束された。迎撃のチャンスを逸したPGエクシアのもとにツギハギが肉薄する。急場しのぎゆえにV2特有のスピードに耐え切れず機体パーツが少しばかり悲鳴を上げているのが分かった。それでも壊れるより速く射程距離まで詰め切り、

 さっき吹っ飛んだ頭部のあった接続面にビームザンバーを突き立て、首なしPGエクシアのコックピットを上から焼いた。

 

「そ、そんな馬鹿なぁ! これまで攻撃は弾けていたんだぞ! なんで壊れてんだよ!」

 

 信じられない、とPGエクシア操る少年の顔の歪みが絶望に染まる。

 

「どんなPGだって撃たれれば壊れるんだ。同一箇所を撃ち込まれた部品は摩耗し、ダメージを受ける。無敵のガンプラなんて何処にもいない。そう、どこにも」

 

 紡がれた宣言通り、ツギハギの戦士が巨人を薙ぎ倒す。

 理不尽を跳ね除けるその姿に僕らはただ憧れた。この後不良たちは約束を守らずガンプラをナユタに大量投入。その結果何が起こったか。言葉にするのも憚られるような地獄絵図ができあがっていたのはまた別のお話である。

 

 仲間の一人はこう言った。

 

「さっきまでガンプラだった奴が3分後にプラスチック片になってその辺に散らばりまくっていた」とか、

「ガンダム・ザ・ガンダムのアレみたいな足場が出来ていた」なんて。

 なお余談だが、メンツを丸潰れにされた不良が次に取る行動は言わずもがな。シバとナユタにリアルファイトをもかけようとしたもののまたもう一人、シバの友人らしい眼鏡をかけた青年が警察を呼んだこともあり事なきを得た。

 

 

 

 

 

 アラトがツギハギの戦士をダストウォーリアと呼ぶようになったのはそれから間もなくしてのことだった。

 自らのダストと名乗ったのは不良連中への意趣返しもあった。お前が蔑んだゴミにお前は負けるんだ、と。流石に強度の問題もあって今では家の棚を守っている状態だが。思い入れのある機体なのには違いない。

 

 

 

 結局あの頃から根本的なものは変わらなかった。

 遊び場がGPDからGBNになったあの頃からも。形を変えた初心者狩りが横行している現状、割りを食うのは同じで。

 

 ナユタが生きていたらどう思っていただろう。

 数年経ってもろくすっぽ上達しない自分たちを見放していただろうか。最初こそドンマイで済んでいたが負け続けで面白い奴なんて限られている。特に月夜の7人はそこまでメンタルは強くなかった。

 どんどん誰のせいで負けたとか言い合い始めるのだ。その上心ないダイバーに暴言を吐かれる始末だ。

 

 

 ブレイクデカールはそれを打ち破るための力だったのだ。

 ナユタに頼らない力だった。

 

 

 ゆえに、ダブルオーで迫るリクが、エクシアもどきで迫るソードマンが鬱陶しくて仕方がなかった。どいつもこいつもブレイクデカールを否定するのだ。

 不愉快で仕方がなかった。挙句ソードマンはナユタのアストレイと同じ機体を使うときた。同じ電撃攻撃も使って。

 まるで自分たちへのあてつけのように。

 

 ポッと出の騎士ガンダムに一方的に蹂躙され、トドメにソードマンに何もかもを否定されて。

 

 

 

 壊れていく。

 

 何年も築いた仲間との絆が壊れていく。

 

 今、崩壊していく機体の中でアランはこの場を去ろうとするソードマンの後ろ姿に吠え立てる。

 ソードマン、お前を絶対に許しはしない、と。

 

 

 いつか必ず、お前を──地の果てまで追い詰める。

 

 

 

 STAGE52  ダストウォーリア

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 シバも彼らに見覚えがあった。

 機体構成が一部違うが、紛れもなくナユタがお節介でちょっかいを懸けた少年少女だ。

 あの戦いで不良連中が約束を守ることはなかった。それどころか十数体にわたるガンプラを追加で投入してきたのだ。流石にあのまま見ておくことも出来ずに仕方なく当時の機体で乱入2機でこれを殲滅してみせ、メンツを破壊した挙句、実力行使に出た所で遅れてやってきたコウイチが警察を呼びさっさと退散したが。

 

 

 エージェントがそれを知ってブレイクデカールを売ったのかは分からないがあまり気分のいいものではなかった。あのブレイクブーストの暴走で生まれた化け物もどこかダストウォーリアに似ていて。

 それを皮肉にも弟のカナタが討ったという形だ。

 

 ああ、気に入らないさ。

 何もかもが気に入らないんだ。

 

 このGBNもクソッタレな状況も、エージェント連中も。

 まぁあのエージェントは迂闊にも前に出てオカマ連中に月に代わってオシオキ(意味深)をされており、ブレイクブーストもほぼ無駄に嬲られている姿が見えたので多少は溜飲が下がったが。恐らく奴が倒されるのは時間の問題だろう。

 

「あ」

 

 というか今し方、ビーム刃の鎌で機体腰部のリアアーマーをブスリと刺されて戦闘不能になった挙句、自爆してリスポーンポイントまで強制転移(デスルーラ)して逃げたのがシバの視界に映った。

 あのエージェントはガンプラの出来こそいいが戦闘技術はまるでなっていない。大方他人にでも作らせたのだろう。

 

 一方で邪魔立てなく、ブレイクデカールを喪い慟哭するアランを他所にカナタのオルタナティブはもはや語るまいと全速力で離脱していく。頭上を飛んでいくその姿にシバは血が滲むほどに拳を固めた。

 

 まだGサイファー投入は前座に過ぎない。

 今回の戦闘でデータは粗方集まった。後は──

 

 

 

 奴らが、SSSが余計なことをするより先にあいつを、カナタを黙らせるだけだ。

 GBNガーディアンズの大規模ソードマン討伐作戦決行日に全てを終わらせてやる。




 知らん間に兄の教え子ボコってたとかいうそんなろくでもない話でした。
 エクシア(アストレイ)とダブルオーに邪魔されるのは、アランにはシャゲダン以上に許し難い行為だったのです。


 リクやカタナが知るわけもないのですが。




 ということでグシオン乗りと入れ替わりに準レギュ入りです。
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