Q.エクシーズ次元って?   作:オッ酢

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ギャグです。深く考えてはいけない。
主人公は割とポンコツ。


Q.エクシーズ次元って?

「日直、楠……っと、出来た」

 

我ながら綺麗に書けたんじゃないか、なんて思いながら日誌を閉じる。

 

「終わったの?」

 

それに気が付いたのか、窓を閉めていた少女ーー幼馴染が振り向き問いかけてくるので、筆記用具を片付けながら返事をする。

 

「ああ、ありがとう。それじゃあ帰ろうか」

 

これでもう施錠して職員室に返却するだけだ。日直ではないのに手伝ってくれた彼女と共に教室を後にする。

 

「これからカードショップに行くんだったよな?」

「そうよ。…でも、兄さんはもう待ってるかもね」

「あいつはいつも学校が終わったらすぐに来るからな。だが今日は私達が遅いのがわかっているんだ。ゆっくり来るんじゃないか?」

 

兄さん、とは文字通り目の前の彼女の兄であり、私の幼馴染でもある男のことだ。

中学生である私達と違い彼は高校生なのだが、何だかんだ理由付けてこの学園まで迎えに来る。……まあ、端的に言うと過保護なのだ。

 

 

 

 

「それでね、この前なんかーーー」

「はは、あいつらしいな」

「もう、笑い事じゃないのよ」

 

女三人寄れば姦しいなんて言うが、2人だけでも話は盛り上がるもので職員室に寄った後も沈黙なんてなかった。とはいえ、私達の仲が良いのが一番の理由であると思うが。

わざとらしく頬を膨らませる彼女に軽く謝れば、何となく視線を感じる。さりげなく周りを見渡すと、まだ校舎に残っていた生徒ーー男子生徒たちの視線だったようで、『ああ、幼馴染に見惚れていたのか』と、一人納得した。

彼女はそれくらい可愛いのだ。性格だっていいし、幼馴染兼親友である私も胸を張って自慢できるほどだ。…えっ?張るような胸があるのかって?……それは精神的にダメージを負うので聞かないで欲しい。

とにかく、彼女はモテる。…まあ告白なんてする猛者はほぼいないのだが。理由は簡単、あのシスコンに猛禽類のような鋭い目つきで睨まれれば大抵の奴は諦めるからだ。ちなみに稀にいる強メンタル男子は、『今はまだ彼氏とか欲しいと思わないの』という言葉に玉砕している。

 

「やはり恋人は欲しいと思わないのか?」

 

まだチラチラと視線を感じるので、奴等が聞いて欲しいだろう質問を投げかける。

 

「あら、またその話なの?」

 

ぱちくりと瞬きをして首を傾げる。…また視線が集まったぞ。

 

「私はね、貴女や兄さんと一緒にいるのが好きなの。彼氏なんていたら時間が減っちゃうじゃない」

 

調子に乗るだろうから兄さんには内緒よ、なんて微笑む姿はとても愛らしい。が、今の発言は嬉しいが結構恥ずかしいぞ…。

照れ臭くてそっと顔を逸らすがすぐに覗き込まれる。

 

「そっちはどうなの?」

 

キラキラとした目でジーっと見られる。兄さんはどう?なんて聞かれるがそれこそ『またその話?』だ。

あいつのことは大切な幼馴染だと思っているが、そこに恋愛感情なんてない。向こうだってそう思っているだろう。

 

「好きだがそういう好きじゃない。君のことだってあいつと同じように好きだ」

「だよね、知ってた」

 

なら聞かないでくれ、と言いたいところだがこれはお互い様だ。

彼女は少し間を開けてから、

 

「他にいないの?この人カッコいい!みたいな人」

 

と問いかけてくる。

格好良い人か。

 

「私は格好良さよりも…」

「優しくて、自分よりデュエルが強くって、心の底からデュエルを楽しんでて、見ているこっちまでワクワクするデュエリスト、でしょ?そういう人がいないの?って聞きたかったの」

 

こう言うのはわかっているぞ!と言わんばかりに被せて言われる。まあ、聞かれる度にそう答えているから覚えていてもおかしくはない。

 

そういう人、か。デュエルを楽しんでいる人間は沢山いるが、印象に残るほどではない。と、いうと何だか上から目線のようで駄目だな。良い表現が思いつかないのだが、一般のデュエリストなのだから見ている人たちまで楽しませよう、なんて人はそういない、といったところか?

 

そんな風に悩んでいる私を見ていた彼女はいないのね、とぼそっとつぶやくとちらりと何処かへ視線を送る。何を見ているのか気になってそちらを見るが何もなかった。気のせいか。

 

「でも、本当に貴女ってばデュエルに恋してるって感じね」

「まあ、否定はしないさ」

 

デュエルに恋をしている。なかなかにセンスがあるし、言い得て妙だ。これからそう自称しようかな。

しかし、何処かで聞いたことがあるような、ないような……?

 

ところで話は変わるのだが、彼女とその兄はあまり似ていない。髪の色も、顔のパーツも、雰囲気も全然違う。幼馴染である私から見れば、ふとした時の仕草はちょっと似てるな、なんて思うが本当にその程度だ。何なら私の方が妹と勘違いされることが多かったりする。彼女と姉妹だと思われることも多いな。ごく稀に弟だと思われることもあるが、それについては遺憾の意を表明したい。

何が言いたいのかというと、幼馴染の兄の方はデュエルは強いし身内には優しいし、割とさっきの条件を満たしている。だが、それほどこの兄妹に馴染むくらいずっと一緒にいるのだから、今更異性として意識しろ、だなんて難しいのだ。

 

私から始めた訳ではあるがようやく色恋沙汰の話題から、これからの話に移り変わる。これから、といってもカードショップでどんなカードが欲しいか、とかそういうのだ。

私にデュエル云々などと言っていたが何だかんだこの幼馴染もデュエルが大好きなのだ。

 

他愛もない会話をしていれば、校門の前にいた噂のあいつを見つける。

 

「あっ、兄さーん!」

「やっと来たか。遅かったな」

 

彼は随分と待っていたようで、うんざりとした表情をしている。

今日は日直なのだから遅くなるって……言ってなかったか?

 

「すまない、今日は私が日直だったんだ」

「もしかして言ってなかった?」

 

2人で顔を見合わせる。……うん、言ってなかったな。

 

「いや、何かあった訳じゃないならいい。行くぞ」

 

そう言って歩いて行くが私達の歩く速さでも問題なく追い付けるくらいだ。

隣の彼女と目が合う。どちらからともなく頷き、その後を追った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「ーーねえ、そういえば最近何か悩んでない?」

「ッそうなのか!?何故俺たちに相談しない!!」

「えっいや、大袈裟だな」

 

ぐりんっ!!なんて音がしそうな程の勢いで振り向かれ苦笑する。

さっきまでずっと2人でいたんだから私に訊ねるのはいつだってよかったはずだが……わざとこの男の前で聞いたな。こいつにそんなことを聞かれれば、どこまでも追及されるに決まっている。

うらめしげに見つめれば、目を逸らされる。

それでも、私のことを思ってのことだとわかっているので渋々、大したことないんだが、と念を押しつつも話すことにした。

 

 

「ーーおかしな夢?」

「ああ、起きたら忘れているんだが、何か引っかかるんだ。何日も何日も、ずっと続いてるからちょっと、な」

 

1週間くらいだろうか。

何かこう、思い出せそうな、思い出せないような、すっきりしない気分が続いている。

それが気になって何も手につかないわけでも、夢を見たくなくて寝不足なわけでもない。少し気になるだけだ。

 

「内容は全然思い出せないの?」

「嫌なことだったような気もするが、全く思い出せないな。毎回同じ夢、というか続いている、と思う。多分」

 

憶えてもいないのに続いているだなんて、とは変なことを言っている自覚はある。

 

「でも、気にするほどじゃないさ」

「……だが夢とはいえ、悩んでいるんだろう。心配にもなる」

 

彼女もそれに同意するように何度も頷く。

こんなくだらないことでも親身になって聞いてくれるのは正直ありがたい。普通なら軽く聞き流されるんじゃないだろうか。

 

「君たちのような親友がいるなんて私は幸せ者だな、ありがとう」

「……もう、そうやって格好良いこと言っちゃうんだから」

 

 

照れ臭そうにそう彼女ーーー瑠璃は呟き、

今度は彼ーーー隼が頷く。

 

 

 

 

うん?

 

 

「瑠璃に、隼……?」

「どうしたの?」

 

 

 

「黒咲、隼。黒咲瑠璃……」

「ああ。…どうしたんだ?」

 

 

 

「ここって、ハートランドだな」

「ほ、本当にどうしたの、大丈夫?」

 

 

 

ハートランド、黒咲隼、黒咲瑠璃。

そして私はーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、()()()。しっかりしろ。やはり寝不足か?」

 

 

ーー楠遊都。性別は違うが、黒遊矢だのナスだのと呼ばれるユートそのものだ。

 

 

今まで思い出せなかった夢と夢(誰かの記憶)が繋がっていく。

もしかしてここは、この世界は、

 

 

 

「デュエルで笑顔を………?」

「瑠璃!!これ本当にヤバいやつじゃないか!?」

 

彼女は瑠璃では……瑠璃だ!!(無言の混乱)

 

2人ともが大慌てで私を近くの公園のベンチに座らせ額に手を当て熱を測ったり、例の夢が原因じゃないか、なんて話し合ったりしている。

だが、私も正直それどころではない。脳内の処理が全く追いつかないのだ。

 

 

 

 

「しかしそこでは黒咲が大活躍をしていた!」

「してないぞ!?…そもそもどっちの黒咲だ!?」

「ユート、しっかりして!」

「うう…この融合の手先め……」

 

ーーもう迷言botみたいになっている。

そんな私を見て更に動揺する黒咲兄妹。普通は気でも狂ったかと引くはずだが、この2人はそんなことはない。何故か私に甘いし。

しかし、こんなに仲が良いのに隼はいずれあんな気持ち悪……粘着シスコン発言するのか。世も末だな。

 

 

って、違う!!そうじゃない!!

この世界はARC−Vの世界なのか!?

エクシーズ次元なのか!?とんだ絶望空間じゃないか……

 

「ど、どうしよう……」

「落ち着くんだ。何か不安にでもなったのか?…俺と瑠璃がついている、大丈夫だ」

 

幼い子どもでも慰めるように、隼は私に語りかける。

目つきは悪いし、他人にはドライで、でも根は優しい親友。なのにどうしてあんな目にあってしまうんだろうか。あと短パン。

 

 

「隼がひとりぼっちになってしまう……」

「兄さんに友達はいないけど、私たちがいるじゃない、大丈夫よ」

「瑠璃…お前、俺のことそんな風に思ってたのか…?」

 

そんなかなり失礼なことを言いながらも瑠璃は私の手を両手でそっと握り、優しく微笑みかけてくれる。私達しかいないからこそ問題なのだが、取り敢えずそれは置いておく。

ひとりぼっちではないか。色々と詰んでるけど。

 

平常心、平常心。この優しい2人の為にも冷静になるんだ。一旦、もう大丈夫なのだと伝えーーー

 

「私はナストラルに、隼は戦場に果てる隼に、瑠璃は柚子になるんだ」

「えっ俺死ぬのか?ってそこじゃない!本当に落ち着いてくれ…」

 

やはり私はとんでもなく混乱している。




前世の記憶を取り戻したらユート(♀)だった人。
これから原作に巻き込まれつつ幼馴染2人と過ごす話。尚、原作(ヒント:タグ)
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