天才の全力   作:あしがかり

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セレクション開始

 フィジカルテストでは、自分の力をいかんなく発揮できたと思う。周りと比べても平均以上だったこともあり、自信をもつことが出来た。

 

 

 

 

 次に行われたミニゲームでは、まさかの大友君ともじゃもじゃ君と同じチームだった。大友君の話では、相手のチームがかなりの強敵らしい。勝つことが目的ではないし、大友君みたいに悲観的になる必要はないと思った。ただ、同じチームなので適当に声をかけておいた。

 

 もじゃもじゃ君にも話してみたが、やはり少し軽い。このセレクションに何かをかけているという感じがしなかった。これが部活であれば適当にパスを出してあげたが、セレクションなのでパスを出す気になれない。俺と同じで他県から来たのだから、もう少し何かあると思っていた。

 

 それはそうと、俺はミニゲームにかなり期待していた。部活とは比べ物にならない個人レベルの高さである。これならサッカーを楽しめるんじゃないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 試合が始まり、期待していたほどの楽しいサッカーが出来ないことが分かった。チームメイトはやる前から怖気づいていて、敵チームも聞いていたほどのうまさを感じなかった。もっとスリルを感じて、達成感のある試合をしたかった。

 

 適当に目立っておこうと、なるべくわかりやすくテクニックを見せ、何人か抜いてゴールを決めた。わがままなプレイヤーと思われて落とされたくないので、あとはサポートもできることを見せつけよう。そうすれば、最終試験には進めると周りを見て感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくすると、もじゃもじゃ君の脚が止まった。もうあきらめてしまったのかと、正直つまらなく感じてしまった。

 

 しかし、彼の本領が発揮されたのはここからだった。

 

 俺がなるべく避けていたスタンドプレーを続け、敵がボールを奪ってしまおうと思った隙をついて綺麗にパスを出したのだ。

 

 あれは良かった。俺だったらあの方法で点を取るのを思いつかなかっただろう。勝手に興味を無くして、勝手に興味を持ちなおすのは申し訳ないが、彼にもいろいろと話を聞いてみたくなった。

 

 とりあえず、ミニゲームは4-0で勝つことが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【月島コーチ】

 

 小林龍くんという名前を僕たちは聞いたことがなかった。だから誰も注目していなかったんだ。

 

 だけど、試験が始まってからの彼はとても素晴らしかった。まずは、50m走ダッシュ×3での出来事だ。彼のタイムは5秒91、5秒85、5秒76。

 

 これはもう中学生の記録ではなかった。彼が高校でも努力練習を続けたら日本記録を軽々超えるのだろうと期待せてしまうようなタイムだったんだ。他の受験生たちはどよめいていたが、コーチ陣は反対に静まり返っちゃったんだよね。

 

 彼の俊足だけでも使い道はいくらでも考えられたし、この時点で合格させようって全員考えていたと思うよ。

 

 

 けれど、やっぱり一番は7×7のミニゲームかな。学生たちにばれないように注意しながら、コーチ陣全員が彼に注目してたんだけど、期待をいい方に裏切ってくれたんだ。

 

 最初は仕事をそつなくこなす感じだった。けれど、一つ一つのプレーが丁寧で、パスが相手に引っ張られていくようだった。ドリブルをした時も、まさしく足とボールが磁石でくっついているようだったんだ。自然といろいろなプロ選手を想像したよ。

 

 でも、彼の本領はここからだった。小林君のチームの脚が少し止まってきたときに、DFにいた彼が橘君からきれいにボールを奪ったんだ。まるでプロ選手が小学生からボールを奪ったみたいにあっさりとね。

 

 奪った後はドリブルが始まった。さっきまで見せていた吸いつくようなドリブルのまま、50mでみせたスピードを出したんだ。それだけでもセレクションを受けた子たちはボールを奪えなっただろうけど、彼はフェイントも加えた。

 

 まさにあれは芸術的だと感じたね。栗林君たちを見てきた僕に鳥肌をたてたんだ。半端ないよね。

 

 そのプレーで一点を取った後は、アピールは終えたとばかりにおとなしいプレーをするようになったんだ。そのプレーすらも洗練されていたんだけどね。

 

 そのあとは青井君目立って終わったんだけど、青井君のプレーを見て彼の目が輝いた気がしたなあ。彼はどんなサッカーがしたいんだろうね。

 

 最終試験もとても楽しみだな。

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