天才の全力   作:あしがかり

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青井

【青井】

 

 50mを走ったんやが、化け物みたいに早いやつがおった。大友が言うには小林っていうみたいやけど、身長も高いし、なんかおっかないやつやなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミニゲームはおっかない小林と一緒のチームだった。あいつは緊張してる大友に勝ち負けに関係なく目立てばいいんだから、相手なんて関係ないってはげましとった。おっかないけど、いいやつやなあと思った。

 

 

 

 それでもちょっとおっかなくて、話さないまま試合が始まった。あいつのパスは欲しいところにきれいに飛んできた。セレクションを受ける奴にはこんなすげー奴もいるんかと、正直驚いた。

 

 

 

 でも、あんなもんはあいつのすごさの一部でもなかったんや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 相手チームに気おされて、チームの脚が止まってきたときのことやった。

 

 

 

 すごいテクニックをもっている橘がゴール前まで攻めてきて、やばいとおもっとった時、小林があっけないほど簡単にボールを奪った。

 

 

 

 橘はトップスピードで、見てるだけの俺ですら引っかかりそうなフェイントをしていたのに、なんにも関係ないように奪ったんや。

 

 

 

 そのあとは50mで見せた化け物みたいな速さでコートを縦に走って、軌道上の敵を全て目にもとまらぬフェイントで抜いていった。

 

 

 

 あまりにもあっさりと一点を取ってきた小林に俺らは声をかけることが出来なかった。正直圧倒されとった…。

 

 

 

 いや、俺は圧倒されたどころでは済まなかった。憧れてしまったんや。同じセレクション生である小林に…。

 

 

 

 

 

 

 

 もっとあいつのプレーを見たいと思ったが、あいつは一点決めた後サポートに回った。

 

 

 

 少し残念やったが、俺はあいつからパスをもらえるということに喜びを感じていた。例えるなら、大好きなプロサッカー選手に練習を見てもらう小学生みたいな感じや。

 

 

 

 あいつとなら最高のサッカーが出来る。そう思った。

 

 

 

 相手チームにも小林にも圧倒されたほかのチームメイトは足が止まってきていたが、俺はあいつに見てほしい、認められたいという気持ちでプレーした。この試験に通ればあいつといつもサッカーが出来るんや。それを想像するだけでどんどんやる気が出る。

 

 

 

 兄ちゃん、母ちゃん。俺はあいつとプレーが出来たらどんどん自分が高まる気がする。

 

 

 

 こんな機会をくれて本当にありがとな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 口には出せないような恥ずかしいことを考えていたらアイデアが湧いてきた。大友が気づいてくれたおかげで、そのアイデアを生かして、一点をもぎ取ることが出来た。

 

 

 

 絶対に合格したい。あいつとサッカーしたい。

 

 

 

 わずかな残り時間も、そんなことを考えて全力でプレーした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 無事に最終試験に残ることが出来て良かった。

 

 

 

 周りのレベルより自分が優れているとは感じていたが、最初の脅しで合格者がいない可能性もあるという話をされていたので少し不安だった。でも、ちゃんとやれば受かりそうだな。

 

 

 

 最終試験の相手はユース生らしい。さっきまでのびのびとプレーしていたセレクション生たちが急に怖気づいている。彼らは入団してからどんなサッカーをするつもりだったのだろうか。

 

 

 

 今日何度目かの失望をしてたが、青井君のワクワクした顔を見て気持ちが変わった。

 

 

 

 何がきっかけだったのかはわからないが、青井君は面白くなった。サポートしてでも彼と一緒に入団してみたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最終試験が始まった。あっけないほどパスが通り、つまらない試合展開が続いた。ユース生がこの程度のはずがないから、何かを企んでいるのだろうか?やけに真剣な顔をしているのも気にかかる。

 

 

 

 

 全員が目立てる状況で目立とうとしても埋もれてしまうから、もうちょっと良い試合になってから目立とうかな。

 

 

 

 青井君が目立とうと頑張っているが、あれでは粗さばかりが目立ってしまうだろうな。彼がミニゲームの最後に見せたプレーは偶然だったのか?偶然ではできないプレーだったと思うんだがな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようやく試合が動き出した。動きの変わったユース生にセレクション生はついていけないようだ。ユース生たちが普段と違う動きに慣れ始めたような印象を受けた。さては、ポジションコンバートでもしていたな?

 

 

 

 セレクション生たちが全く動きについていけない中、点を決められそうになったので、防ぐと同時にドリブルで一点を取っておいた。ガタイのいい坊主頭やツンツン頭君、糸目君達をテクニックを見せつけながら抜いて一点。スタンドプレーになるといけないので、前半はこのくらいにしておこう。

 

 

 

 

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