天才の全力   作:あしがかり

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周囲の反応

【月島】

 

 いよいよ最終試験が始まった。僕らコーチは全員を公平に評価しなくちゃいけないんだけど、僕はどうしても小林君に注目してしまっていた。

 

 彼のプレーをよく観察すると、一つ一つのプレーのレベルが中学生とは思えないほど洗練されていた。

 

 彼のドリブルに関しては、誰もが子どものころに憧れるトッププロのように、足からボールが離れない。あれだけのスピードで走れるのに、ボールコントロールが完璧だなんて、正直信じられないね。

 

 中学3年生にして、すでに190cm近い身長の彼が、日本記録に近いスピードでドリブルしてくるんだから、ユース生とはいえ荷が重すぎるよね。

 

 服を着ていてもわかる鍛えられた体も素晴らしい!ディフェンスに行ったユース生が逆に倒されてしまっているよ。

 

 パスの精度は評価が分かれそうかな。セレクション生がしっかりと受け取れるようなパスを出しているけど、もっと走らせるようなパスを出してもいいのかもしれないね。

 

 今より上のステージにいる選手には物足りないパスになってしまうかもしれない。…彼が手加減しているだけかもしれないけどね。

 

 

 

 

 

 これだけオフェンス面の能力が素晴らしいのに、彼はディフェンスをしていた。なんだかもったいないポジションに感じるけど、セレクション生にとっては救いだったろうね。

 

 彼のおかげで危ないところを何度も回避できている。

 

 よく走って、スペースを塞ぎ、相手との距離の取り方も完璧だ。

 

 

 

 …なんだろう。欠点が全く見当たらないな。すぐにでもプロになれる逸材だと僕は感じたよ。

 

 他県からの受験生とはいえ、今までスカウトされなかったのが不思議なくらいだね。

 

 本当にエスぺリオンを受験してくれてよかったよ。これから高校生になって成長していくことになると考えると、彼がどこまで行ってしまうか怖いくらいだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、考えていたら、ユース生のボールを奪ってミニゲームの時のようにスルスルと相手を抜いてゴールを決めてしまった。

 

 見ていてため息が出てしまうようなきれいなフェイントで、何度も鳥肌が立ってしまったよ。

 

 彼が抜いた選手はユース生の中でも注目を集める選手だったり、阿久津君だったりでかなりレベルの高い選手ばかりだった。

 

 そのことが彼のレベルの証明になっているね。

 

 ユース生がようやくポジションコンバートになれて、セレクション生の手が出なくなってきたところでのプレーだから、かなり目立ったよね。

 

 …でも、今まで静かなプレーだったのに、急にあんなプレーをしたのはどうしてなんだろう。もしかして、彼は目立てるタイミングを選んでプレーをしているのかな?

 

 そうだとすると、かなり頭もいいみたいだ。彼は本当にエスぺリオンに合っているね。

 

 福田監督もかなり良い顔をして彼のことを見ていた。ユース生をしっかり育てて地盤を固めたい福田監督からしたら、最高の選手だろうね。

 

 でも、その顔を普段からするのはやめたほうがいいだろうね。観客の人が少し怖がっていたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後半、ポジションコンバートの話を福田監督がして、セレクション生の士気が落ちたとき、彼のドリブルが始まった。

 

 僕はこのときに、彼はタイミングを見計らって目立とうとしていることを確信したよ。

 

 ここでの彼のすごいところは、自陣後半から一気にドリブルで進んで、そのままゴールを決めきってしまったことだ。

 

 普通だったらスタンドプレーだと文句を言われても仕方のないプレーだけど、あんなものを見せられてしまったら文句を言うことは出来ないね。

 

 トップスピードの阿久津君から完璧にボールを奪い去り、半端ないスピードでドリブルをして相手を抜かしていく。

 

 とはいえ、ドリブルだから阿久津君に追いつかれてしまったけど、後ろからのスライディングを飛んで躱したんだ。

 

 あのスピードでボールを浮かすなんて、正気とは思えなかったよ。

 

 少し考えればわかることだけど、スピードを出せば出すほどボールコントロールは難しくなる。ボールは身体から離れるし、足を全力で動かしているから急には動かせない。

 

 そんな中で、死角であるはずの後ろからのスライディングがくるんだ。普通は倒されて終わりだね。

 

 小林君のファンになりかけていた僕は、日本の至宝になるかもしれない彼になんてプレーをするんだって、阿久津君に憤慨してしまったよ。

 

 阿久津君も熱くなってしまっていたみたいだから、これからは気を付けるように注意しないといけないね。

 

 …僕も熱くなってしまっていたから気を付けないと。これは最終試験ということを忘れそうになるよ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後のゴールも少し距離があったのに危なげなく決めていたね。何度も練習してきたんだろうと感じさせるようなきれいなゴールだったよ。

 

 ゴールを決めた後は、みんな唖然としてしまって、すぐには歓声を上げることも出来なかったよ。

 

 プロの試合だったら観客が総立ちで拍手するレベルのゴールだったからね。セレクションレベルを見に来た観客は度肝を抜かれただろうね。

 

 

 

 

 

 

 今後、彼はBチームに入って、エスぺリオンでのサッカーを学んだあと、Aチーム、プロとすぐに進んでいくのだろうけど、どれだけの人を驚かせるのかな。

 

 レベルが高すぎるプレーは、けがに繋がることもあるから、僕たちでサポートしていかないとね。

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