ぼっちの彼が生きる理由は   作:ミリライ

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午前

 

 

 

聞き慣れた電子音で俺は目を覚ました。

 

 

目を開けると見慣れた寝室の天井が当然の如くそこにあった。

 

 

身体を起こしてピピピピと控えめに鳴る目覚まし時計を叩く。

 

 

「‥‥‥はぁ」

 

 

また今日という一日が始まってしまった。憂鬱だ。

 

 

12月の凍えるような寒さの中に俺は立ち上がった。

 

 

 

 

理由(ワケ)もなく無意味に生きるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『昨日、○市△町の一軒家で□さん家族らが遺体で発見されました。警察によると現場には「私達は幸せでした」などと書かれた遺書があり外傷がない事から一家心中を図ったのでは無いかとーーー」

 

制服を着ている時にそんなニュースが流れて思わずボタンを止める手を止めた。

 

 

一家心中?羨ましいこった。

 

もしあの時、家族と一緒に死んでいれば俺はどんなに幸せだっただろうか。

 

 

「くそが」

 

 

そう吐き捨てて高校に行く準備を再開した。

 

 

俺は制服のネクタイで首をつろうとしたり風呂場でリストカットしようとしたことが何回もある。家族と同じ所に逝くために。

 

だが死ぬことは出来なかった。

死のうとすると思い出してしまうのだ。

 

 

 

 

 

死んだ父、母、妹の苦悶の表情を。

 

 

 

 

 

死にたいのに死ぬのが怖い。

 

俺は自分の生存本能を呪った。お前さえいなければ俺は死ねるのに。ふざけやがって。

 

 

「いってきます」

 

登校中に通り魔に出会って殺してくれないかな?と、淡い期待をしながら俺は家の鍵を閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ざわざわと騒がしい教室の右側中間辺りの机で俺は本を読んでいた。

 

残念ながら通り魔に出会うことなく無事に学校についてしまった。本当に残念である。

 

まぁいい、今日も今日とて適当に授業を受けて飯食ってオワリだ。

 

 

 

と、思っていたのだが、

 

 

「おい、ちょっといいか」

 

 

一限目の体育の授業。

なんで朝から体動かさなきゃならねーんだよクッソ寒いし、と心の中で愚痴りながら壁に向かって永遠とラリーしてると体育教師に話しかけられた。

 

「なんすか?」

 

明らかに『めんどくせーな話しかけるんじゃねーよ』と言いたげに素っ気なく俺は言葉を返す。

 

「授業開始から君は壁当てばっかりしてるじゃないか。ちゃんと人と打ち合いをしないと上達しないぞ」

 

はぁ、なんだ、そんなことで話しかけてきたのか。

 

「友人いないんで」

 

その言葉に特に驚くこともなく、

「それじゃ向こう側でみんなと」

と、提案してくるがそれを言い終える前に俺は口を開いた。

 

「てか先生、今日は自由に楽しくやれって授業の始めに言ってましたよね?壁当て無限ラリー結構楽しいですよ」

 

「いや、まあ、確かに言ったが‥」

 

「‥もういいすか?続きしたいんで」

 

「‥‥‥」

 

ぽりぽりと体育教師は頭をかいてから、

 

「‥邪魔して悪かったな」

 

そう言い残して去って行った。

 

俺はラケットを強く握って再び壁当てを始めた。

 

 

さっきの『友人いないんで』は本当だ。

入学当初から友人を作らないように俺は塞ぎ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

人殺しの俺に友人を作る権利など無い。

 

作れたとしてもどうせまた拒絶される。

 

それなら作らないほうがマシだ。

 

 

 

 

 

 

 

四年前の丁度この時期だっただろうか?

 

自分を守る為に人を殺した。

 

俺は生きた。しかし他人の中の俺は死んだ。

 

 

 

友人

 

親戚

 

祖父母

 

 

 

様々な人間から拒絶された。

 

怖かった。恐ろしかった。

 

友人から友人、友人から知り合い、と情報は巡り巡って、

 

 

俺はぼっちになった。

 

 

引っ越しは何回もした。

 

しかし、周囲の人間はやがて俺のソレに気づいて拒絶する。

 

 

 

 

 

 

その時悟った

 

 

俺は人殺しの罪を背負って無意味に生きていくしか無いんだ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バコッ

 

 

 

「‥‥‥あ」

 

 

 

ボールがラケットのフレームに当たってあらぬ方向へ飛んで行った。

 

 

 

「‥‥‥はぁ」

 

 

 

白い息を吐いて曇り空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嗚呼、早く死にたい。

 

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