ぼっちの彼が生きる理由は   作:ミリライ

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午後

 

 

 

野球の練習を終え、家に帰ると家族が死んでいた。

 

 

 

誰がやったのかはすぐにわかった。

 

 

 

ソイツは妹に馬乗りして顔を殴り続けていた。

 

 

 

ふと、ソイツが俺に気づいて首を締めてきた。

 

 

 

俺は必至にもがいてソイツの顔面を爪でえぐった。

 

 

 

首から手が離れてなんとか助かった。

 

 

 

しかしソイツは怒り狂った表情でまた襲ってきた。

 

 

 

殺される、と思った。

 

 

 

だから俺は金属バットで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っはぁ」

 

 

 

 

周りを見渡すと少し雲がかかった空とボロボロの床と錆びた鉄柵が見えた。

俺がいつも昼飯を食べている場所。

 

旧校舎の屋上で寝てしまっていたと気づくのに数秒かかってしまった。

 

 

嫌な夢だ。頭が痛い。

 

 

朝のニュースとか体育の授業とか今の夢とか、なんだか今日は災難続きだ。

 

 

「‥‥‥さっむ」

 

空を覆っていた雲が少し晴れて日が差し込んでいたがやはり寒い。

 

ふと、腕時計で時間を確認すると昼休み終了五分前。

 

「‥‥‥戻るか」

 

膝に乗っけている本を閉じる。

そしてメロンパンの入ってた袋と空の牛乳パックをビニール袋に突っ込んでから俺は立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最近‥ですか?」

 

「はい、あまり元気がなさそうなので‥」

 

 

放課後、俺は担任に呼ばれて進路指導室に来ていた。成績のことで呼ばれたのかと思っていたがどうやら違うらしい。

 

 

「その‥友達‥とか」

 

「‥‥‥はぁ」

 

元気がないとかの話は建前で本命はコッチか。

やれやれ、面倒くさいな。

 

「前にも言いましたよね?虐められてるとかハブられている訳じゃないって。ただ俺は一人で居たいだけです」

 

「‥でも学生時代に友達を作るのはとても大切なことで」

 

「何がどう大切なんですか?大体作る作らないも俺の自由じゃないですかね?」

 

「それ‥は‥」

 

俺の言葉で担任は押し黙ってしまう。

 

「‥でも‥その‥あなたには‥」

 

「何ですか?」

 

担任は本当に心配するような表情で、

 

 

 

 

 

 

 

「家族が」

 

 

 

 

 

 

 

ドンッと、机を叩く音が部屋に響いた。

 

 

 

 

 

ふざけんな

 

 

「アンタに何が分かるって言うんだ?」

 

 

自分でもビックリするぐらい低い声だった。

 

「わ、私は‥あなたのために」

 

「俺のためだったら逆に放って置け‥いや放って置いて下さい。ありがた迷惑とかお節介って言葉知ってますか?」

 

敬語を使うのを忘れるぐらい頭に血が上っていた。

何回目だろうか?こう言う話をされるのは。もううんざりだ。

 

「‥‥‥」

 

「図書館に行って本を返さないといけないのでこれで」

 

 

黙って俯くソイツを尻目に俺は進路指導室を去る。

 

 

 

 

 

誰が助けを求めた?

 

 

俺は望んでいないのに。

 

 

自分の理想を押し付けやがって。

 

 

 

 

これだから教師は嫌いなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校帰り。

 

夕日が半分落ち、街灯がちらほらつき始めている道を歩く。きっと明日も同じ景色を見るだろう。

 

 

 

三年生になったら適当に就職先を決めて、

 

会社に入ったら適当に働いて、

 

ジジイになったら死ぬまで適当に時間を潰す。

 

 

 

そうやって適当に生きていくのだ。

 

 

 

「今日のご飯は何がいい?」

 

「ハンバーグ!」

 

「おいおい、昨日ハンバーグだったじゃないか?またか?」

 

「あたし肉じゃがが食べたいなー」

 

 

 

ふとそんな会話が聞こえ顔を上げる。

いつのまにか自分の目の前を4人家族が歩いていた。

 

 

 

「じゃあ今日は肉じゃがにしようかしら」

 

「えーハンバーグがいい!」

 

「こら、ワガママ言ったらダメだって父さんいつも言ってるだろう?」

 

「むー、ふーんだ」

 

「走ったら危ないよーお兄ちゃん」

 

 

不貞腐れたその少年は家族と数メートル間を取って歩き始めた。

少年の家族はその姿を見てまったく仕方がないな、と笑う。

 

 

 

別に羨ましくなんかはない。

俺だって死ねば向こうで家族に会えるのだから。

 

 

 

ただ思い出してしまった。

 

家族で手を繋いで歩いた記憶を。

 

そして想像した。

 

もし家族全員生きていたら今の俺はどうなっていただろうか?

 

 

 

 

 

くだらねぇ

 

 

 

 

 

俺はその考えを一蹴した。

一瞬でもバカな想像をした自分に苛立った。

 

 

 

「‥‥‥」

 

無言で少年の家族の横を通り過ぎる。

家族のことを考えないように家に帰って何をするか考えた。まあいつも通りメシ食って風呂入ってクソして寝るだけだが。

 

そのまま少年の横も通り過ぎて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「危ない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その声で俺はソレに気づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

隣の少年を力強く押す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は仰向けに寝ていた。

 

 

何が起きた?

 

 

確かあの少年を押して‥

 

 

‥なんで押したんだっけ?

 

 

ってか手足が動かない。右手なら動かせるみたいだけど何でだ?

 

 

何故か頭痛もするし。

 

 

俺は状況を確認しようと首を左に向けた。

 

 

そこに左手があった。

 

 

 

 

 

明らかに関節とは逆の方向に曲がっている。

 

 

 

 

 

もしかして

 

 

右手を動かして頭を触ってみる。

 

 

 

 

 

ぐちゃり

 

 

 

 

 

変な感触。

 

 

右手を顔の前に持ってくると赤黒い血がべっとり付いていた。

 

 

そこで思い出した。

 

 

車が歩道に突っ込んで来る光景を。

 

 

そして理解した。

 

 

 

 

 

自分はこれから死ぬ、と言うことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は笑った

 

 

心の底から

 

 

やっと死ねる

 

 

家族に会える

 

 

会えるんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつのまにか雪が降ってきていた。

 

 

雪が頰に落ちてきたが冷たいと言う感覚が無い。

 

 

 

 

 

不意に、体が落ちるような感覚。

 

 

雪が綺麗に降る夜空に向かって右手を伸ばす。

 

 

 

 

 

いまいくよ

 

 

 

 

 

俺は世界一幸せな表情で

 

 

 

 

 

落ちて

 

 

 

 

 

 

落ちて

 

 

 

 

 

 

 

落ちて

 

 

 

 

 

 

 

 

落ちて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落ちて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おちて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は死んだ。

 




ハッピーエンド
彼は幸せ者です

しかし少年は?
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