海上の冒険者   作:ナレコ

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鋼が一人で生きることが出来る説明回
まだ艦娘は出てきません


ダイイングデイズ

 勝利を感じる暇もなく、吹っ飛ばされた地点で即効で海に沈んだ。

 いや、沈んだというか十手が落ちていったので焦って潜ったというのが正しいのだろう。

 『メテオハンマー』は強力だが、手に持っている訳じゃないので、武器を落としてしまう危険性があることを失念していた。

 

 ついでに無呼吸状態のまま潜ったせいで浮き上がるとき目の前が真っ暗になり掛けて別の意味で死にそうになった。

 黒い主は俺の死神だったのだろうか。死んでもなお俺を殺そうとするとはなかなか見上げた根性だと思った。

 それでも死にはしないが。

 

「結局泳ぐはめになるのか」

 

 あのとき足が着いたのに、なぜまた思い出したように沈むのか。

 足が着いても不思議だが、着いた後に沈んでも謎だ。

 

 それにしても無駄に体力を使ってしまったことが問題だ。足が着くからと言って、その場で戦ってしまったのがいけなかったかもしれない。怪我こそしてないのでそれほど問題ないように見えるが実際は疲労感やら脱力感で結構問題だらけだ。

 

 俺の身体は脂肪よりも筋肉が多いせいで浮力がない。そのため、余計に身体を浮かせるよう動かなきゃならない。その上、鉄バットみたいに中が真空とかじゃなくぎっしりと詰まっている十手も背中に背負っているのだ。余計に沈む。

 

「鮫とかに追いかけられないだけマシか……」

 

 奴等は血の臭いに敏感だ。遠くに離れていようが察知してくる。それを考えれば怪我せずに勝利できたことは良かったと言えるだろう。

 

 とは言え、これいつになったら島に着くのだろうか。

 黒い主は倒したら一気に沈んでいったから使えないし。なんかこう、丸太の1つや2つはドロップしてけれればビート板みたいにして楽に泳げたのだが…。

 

「なんかねぇかな…」

 

 気を抜けば沈む身体では、どうにもならないような気がするのだが……。

 海の中を見てみる。凄く目が染みる。

 実は海って場所によっては汚いんだよなぁ。ここは目の染み具合からそれなりに汚いところなんだと思う。

 そんなところを見て何が見付かると言うのだろうか。

 

 魚も見えない。鮫もいない。クジラもいないし、イルカもシャチも魔物も何もいない。ただ暗く先を見通せない深海だけが広がっている。

 

 現実はクソゲーである。異世界もクソゲーだった。そしてこの世界ですらクソゲー臭しかしない。

 いや、クソゲー臭というかイソゲー臭だろうか。

 磯で島に急げーでイソゲー。

 

 …くだらんこと考えてないで、泳ごう。

 疲労で重い身体を動かしながら俺は必死に泳いで泳いで泳ぎ抜いた。

 海を走れるチャンスがもう一回巡ってこないか周りを見てたらサメっぽい魚影しか見えなかった。

 

 サメを血祭りに上げても、浮かばねぇし鮫肌のせいで怪我するし、余計にサメが集まる可能性があるからデメリットしかないんだよなぁ…。

 

 

 

 

 時は深夜。浜辺で行き倒れる俺が一人。今が干潮か満潮か区別が着かないので、とりあえず木の根本まで這って歩いた。

 マジで死ぬかと思った。

 これ、吹雪で凍死を我慢するよりキツい。ずっと動かなきゃならないからすっげぇスタミナが切れる。しかも息継ぎのタイミングがばらついてるから息を整えるのも辛い。

 

 敵より地形の方が危険とかよく聞く話ではあるが、洒落になんねぇぞおい!

 

 喉が凄く乾く。海水は浸かってるだけでも体内の水分が削られた。それでなくても運動したせいで汗をかく。

 これはマジでヤバイ。明日俺起きたら水分不足で死んでるかもしれん。それでもこの疲労は見過ごせない。

 

 凄く、凄く眠いが、身体をある程度休めたら、とにかく水を飲まなきゃいけない。今着てる服を脱いで、絞って火を付けて乾かしたら、草でも何でも蒸して布に水を集めるか胸のポケットに納めてあるナイフで適当な木か植物を切り裂いて毒かどうかも分からないまま飲んでみるか。

 果実にも毒があるタイプの植物もあるからな…。

 いくら俺が悪食とは言え、食中毒に当てられて余計にスタミナを減らしても困る。

 仕方ないが、やるだけやってみるしかなさそうだ…。

 

 

 

 少し休むつもりが気がつけば早朝だった。疲労が抜けきっておらず水分不足による頭痛、めまいに気分を悪くさせながら森に入った。

 ヤバイ…全然周りが見えん。

 こりゃ水集めてる暇ねぇわ。

 ナイフで適当な植物ぶっ刺して蜜でも何でも吸った方がいいわ。

 予想以上に限界が来ていた身体にヤバさしか感じない。

 食中毒を起こすのを覚悟して食べれるのかどうかもわからないその辺の植物を手当たり次第口に含んで水分を吸った。

 

 苦い、不味い、酸い…気持ち悪い…。

 むしゃむしゃ草を食み、水気がなくなったら捨てる作業を幾度かしてたら酔ったような気持ち悪さも少しだけ良くなり代わりに不味さから来る気持ち悪さが吐き気を催した。

 

 俺はいつまで生死をさまよえばいいのだろうか。

 雨でも降ってくれれば飲むのに苦労しなかった。しかし、あいにくどうやら晴天だった。

 草の不味さで腹の減りも忘れたので、俺は昨日出来なかった探索をすることにした。

 

 一時間歩き回っていたらなんか焼けば喰えそうな虫がいたので、殺して枝にぶっ刺した。

 見た目は蜘蛛と芋虫だ。蜘蛛は毒がある可能性があるが、基本陸の上の毒虫とか毒蛇は毒がたんぱく質で出来ていたりして、焼けば無毒に出来るものが多い。

 フグは焼いても無毒に出来ないがな。

 

 はっきり言えば虫より動物の方が食いでがあるし、基本うまい。虫より蛇なのはそこにあるのではないかという気さえした。

 今は虫を捕獲しているが、小動物がいたらそっちに切り替える予定だ。

 俺はさらに歩き通して、うさぎ、猪を捕獲することに成功した。

 

「とりあえずこれであと3日は動けるな」

 

 動物の生き血を飲み干し、肉を焼き喰らった俺に待っていたのは何とか生き残れたという生の実感だった。

 というより、海に飛び降りてから生きた余裕がここまで全くなかったことに己の不幸を嘆かざるおえない。

 嘆く暇もなかったけどな。

 

 腹痛も吐いてスッキリしたし、血を飲んだお陰で頭痛も目眩も治まった。個人的にはうさぎより猪が殺れたことが大きい。何故ならうさぎより猪の方が美味しいからだ。

 それに一撃で殺れたことでそんなにスタミナも使わなかった。これも日々の修業の賜物だろう。

 

「さて、頭が多少スッキリしたところでこれからどうするか考えるか」

 

 日を見れば既に夕方。思った以上に時間が掛かっていたことと思った以上に生きていたことに俺の生のしぶとさを感じた。

 

 サバイバル状態のまま暮らせるだけの技術はあるつもりだ。だがしかし、こんなちんけな島で一生を終えるつもりはない。というか異世界に迷い込んで何も分からないまま死ぬとか嫌すぎる。

 

 だからどうにかして今度は人のいる…いや、言葉の通じる…とりあえずある程度文化の発達したところに行きたい。

 よく考えたら俺と同じような人がいるかどうかも分からん。それに言葉が通じるかも不明だった。異世界とはかくも怖いものだ。簡単に人を蛮族へと落としてしまうこともある。

 

「方法としては主に3つか」

 

 1つは火を焚いてSOSを送る。近くに船やヘリに相当するものがあればそれで気付いてくれるだろう。

 ただ、海賊船とか奴隷船とかだったら最悪だ。大陸に行くのにほぼすべてを失った状態で渡らなきゃならんことになる。その前に不法潜入を試みるか、見付かっても最悪泳いで逃亡するけどな。

 

 もうひとつは船を作ること。つっても作れるのはいかだくらいだけどな。

 ただ、いかだを作るにしても時間がかかるんだよな。

 それに大陸のある方角が分からんからそっちも時間が掛かる。

 

 最後は戦闘中に起きた謎の水上歩行状態への解明だろうか。あれが分かればいかだを作らなくてもいいし、いかだより速く移動できる。ただやっぱり方角が分からないから無茶は出来ないだろうがな。

 

「とりあえず、3だな。あれがあれば奴隷船でも逃げ切れるし、いかだが崩壊して丸太だけになっても移動できる」

 

 それじゃあ、明日から頑張るとするか。




次回、ついに艦娘が登場します
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