三船美優が隣にいる日常   作:グリーンやまこう

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買い物

 アイドルの皆さんと一緒にお酒を飲むという、ある意味衝撃なイベントから約一か月後。その間も俺と三船さんの間でちょくちょくとやり取りがあったのだがこの日、三船さんからとあるお誘いを受けたのだ。

 

 

「えっ、ショッピングモールにですか?」

「はい。実は少し買いたいものがあって」

 

 

 俺がタッパーを返しに三船さんの部屋に伺ったところ、ショッピングモールに行きたいと言われたのである。一方、提案された俺は少しだけ戸惑う。

 

 

「で、でもショッピングモールなんかに行ったら流石にばれてしまうんじゃ? 飲み会の時はお店が有名じゃなくてよかったですけど、今回は不特定多数の人がたくさんいますし」

「それについてはきっと大丈夫ですよ。これまで何度かショッピングモールへ行っていますけど、一度もバレたことはありませんし、何よりアイドルが男の人と歩いているなんて普通思いませんから」

 

 

 これまでの経験から自信たっぷりな様子の三船さん。

 

 

「それに、今回笹島さんに頼んだのは私一人ではちょっと運べなさそうな買い物をしたいからなんです」

「あっ、そうなんですか?」

「はい。だからこそ笹島さんにお願いしたんですけど……ダメですかね?」

 

 

 何度も言っているように、三船さんの上目遣いは反則です。そろそろ禁止にして使えないようにしないと……。

 

 

「……分かりました。今日は暇なんでお付き合いします」

「っ! ありがとうございます」

 

 

 ぱぁあっと花が咲いたような笑みを浮かべる三船さん。なにがそんなに嬉しいのか分からないけど、取り敢えずついていくと言って喜んでくれたみたいなので良しとしよう。

 

 

「それじゃあ30分後に部屋の前に集合でいいですか?」

「分かりました」

 

 

 一度部屋に戻り、出かける準備を済ませる。そして時間になったので俺は改めて外に出る。すると美優さんは既に部屋の前で待っていた。

 

 

「すいません、お待たせいたしました」

「いえ、気にしないで下さい。元々、こちらがお誘いした事ですから。それでは行きましょうか」

 

 

 以前、居酒屋に行った時のように並んで歩き始める俺達。ショッピングモールは電車に乗って4駅ほどの場所にある。

 基本的に何でも揃っているので、俺も欲しいものがある時はよく利用していた。改札をくぐり、ちょうどきた電車に乗り込む。

 

 

「アイドルの方でも電車を利用することってあるんですか?」

「それはもちろんですよ。ロケならともかく、私たちだって普段は一般人なわけですから」

「なんか芸能人は、勝手にタクシー移動ばかりしてるものだと思ってました」

「ふふっ、そんなことができるのは売れている一部の方たちだけですよ」

 

 

 三船さんも十分活躍している方だと思うんだけど、という言葉は飲み込んでおいた。ほんと、三船さんはアイドルとしてテレビに出ている時も、今日みたいに一緒に居る時も謙虚でいい人すぎる。ファンになってよかった。

 感動している間に電車が目的の駅に到着し、俺と美優さんは降りてショッピングモールへと向かう。

 

 

「ところで、今日は何を買う予定なんですか?」

「……ま、まぁいいじゃないですか。今日買うものは後々お教えしまうので、最初は色々なお店をゆっくり回りましょう!」

 

 

 わざとらしく目を逸らす三船さん。この人は素直すぎて嘘をつくのがとんでもなく下手くそだな。教えたくないほど、変な物でも買う予定なのだろうか? まぁ、取り敢えずここで必要以上に詮索するのはやめておこう。

 そんな事よりも、今日は三船さんと出かけることができていることに感謝しないと。

 

 

「じゃあのんびり回りますか。幸い、このショッピングモールにはいろいろなお店があるわけですしね」

「そ、そうですよ! 一つの買い物だけじゃ、ショッピングモールに来た意味が薄くなっちゃいますから!」

 

 

 俺がそれ以上追及しないとみるや、三船さんはあからさまに安心したような表情を浮かべる。だから分かりやすすぎるって。可愛いから問題ないけどさ。ほんと、この人26歳なのにどうしてこんなに可愛いんだろう。

 ……さっきから可愛いしか言ってなくて気持ち悪いな俺。

 自己嫌悪に陥りつつ、俺たちはショッピングモールに到着し、中に入る。

 

 

「さて、それじゃあどこから回りましょうか?」

「あっ、それならまずは洋服を見てもいいですか? 私が一人で行くと、店員さんに勧められるがままになってしまうことが多いので……」

 

 

 そう言えば、三船さんって流されやすい性格の人だったっけ。確かにそれだと、グイグイ来る店員さんの餌食になること間違いなしだ。

 俺は一人でのんびり選びたいタイプなので適当にあしらっているが、人のいい三船さんは断れずに色々と買ってしまうのだろう。

 

 

「分かりました。まずは洋服を見に行くってことで」

「はい!」

 

 

 嬉しそうな三船さんにほっこりしつつ、俺たちは洋服が売られているお店に向かう。

 そして到着したお店は落ち付いた雰囲気のところで、若者向けというよりは大人の女性向け、ちょうど美優さんくらいの女性が求める様な服が多く置かれていた。

 

 

「実はここのお店、テレビで取材が入っていて一度来てみたかったんです」

 

 

 そう言いながら気になった服を手に取る三船さん。どうやら今日は夏服を見に来たようだ。

 

 

「もう夏服なんて売ってるんですね」

「むしろ、夏服は今チェックしておかないと無くなっちゃうんです」

「そういうものなんですね」

「……もしかして笹島さんって、服にあまりお金を使わないタイプですか?」

「もしかしてどころか、ほとんど使いませんね。流石に全く使わないってことはないですけど」

 

 

 外に出て恥ずかしくない程度の服は持ってるけど、種類はほとんど持っていない。冬なんて大体ジーンズにパーカーである。

 仕事もほとんどスーツなので、気にしなくなってしまったのだ。

 

 

「決めました。私の買い物が終わったら笹島さんの洋服を見に行きましょう」

「えっ! 別に俺の服なんて選ばなくても――」

「見に行くんです!」

「は、はい!」

 

 

 有無を言わさない口調。これは断れない。俺が頷いたのを見て、再び三船さんは服選びに戻る。

 取っては戻し、取っては戻しを繰り返す。正直に言うと、三船さんはスタイルもいいのでなに着ても似合うと思うんだよね。ただ、やはりそこは女性ならではのこだわりがあるのだろう。目も真剣そのものだ。

 

 

「お客様~、何かお探しですか?」

「えっ?」

 

 

 しかし、店員さんが声をかけてきた事によってあっさりとその集中力がそがれることになる。

 

 

「実はこの夏、○○がおすすめで、あっ、こちらの柄も今大注目なんですよ」

「そ、そうなんですね。実は私も気になっていて……」

「ほんとですか! お客様はスタイルもいいのでこちらの服なんて――」

「あー、すいません。良い服が見つかったらまた聞きますから、今は大丈夫です」

 

 

 このままだと三船さんが、色々買わされてしまいそうだったので俺が助け舟を出す。

 

 

「あっ、すいません。彼氏さんとのんびり選びたいですもんね。それじゃあ失礼します。また何かありましたらお声かけください」

 

 

 聞き分けのいい店員さんで助かった。……一部、とんでもない誤解が含まれてたけど気にしないことにしよう。

 

 

「か、かか、彼氏!?」

 

 

 駄目だ、三船さんが気にしちゃってる。まぁ、店員さんが間違えるのも無理はないと思うけど。男女で服を選んでたら彼氏彼女だって、ほとんどの人からそう見えるはずだ。

 俺も勘違いしないよう必死だし。

 

 

「三船さん、落ち着いてください。店員さんもいなくなりましたし、またゆっくり洋服を選びましょう」

「そ、そうですね。それじゃあ改めて……笹島さんだって少しは動揺してもいいのに」

 

 

 後半部分は小声だったので聞こえなかったけど、三船さんは改めて服を選び直す。そして、その中から気になったものを手に取り、

 

 

「じゃあ、ちょっと試着してみますね」

 

 

 試着室の中に入って行く三船さん。俺は試着室の前で待つ。これで店内が女性ばかりだったら完全に怪しい人になってしまうのだが、幸いにもカップルの姿がちらほらと見え俺は浮かずに済んだ。そのまま待つこと2,3分。

 

 

「ど、どうですか?」

「…………」

 

 

 俺の目の前に女神が現れた。……って違う違う。試着室から現れたのはもちろん三船さんである。しかし、あまりの美しさに女神と見間違ってしまったのだ。

 三船さんは薄紫色の涼し気なワンピース姿で、少しだけ頬を染めつつ俺の感想を待っている。

 ワンピースは三船さんの雰囲気とよく合っているし、その、ボディラインが結構出ているので男性からしてみれば『ありがとうございます』と、言わざるを得ない格好になっていた。

 控えめに言っても可愛い。控えめに言わなくても可愛い。どっちにしろ可愛い。

 

 

「え、え、えっと、すごく似合ってますよ!」

 

 

 しかし、動揺しすぎて当たり前の事しか言えなかった。俺は頭の中だけで肩を落とす。

 似合ってるは、小学生でも言える感想だ。そもそも似合ってるなんて普段の撮影で聞き慣れているだろう。

 せめて、「はい、美優さんの雰囲気とピッタリです」と言えたらカッコよかったのに。

 

 

「そ、そうですか。似合ってるんですね……」

 

 

 しかし、俺の感想を聞いた三船さんは服の袖を摘んで恥ずかしそうに身をよじる。そんな事をすればボディラインがより強調されるわけで……けしからんのでほどほどにしてほしい。

 

 

『…………』

 

 

 そして始まる無言の時間。三船さんはともかく、俺は完全にコミュ障そのものだ。26歳にもなって恥ずかしい。

 ファンであることを差し引いてもこの反応はよろしくないだろう。

 

 

「じゃ、じゃあ、元の服に着がえちゃいますね」

 

 

 三船さんがカーテンを閉じて試着室に戻っていく。そこでようやく俺の心拍数も元通りになりはじめていた。

 うーん、俺が動揺を隠せなかったせいで三船さんを困らせてしまったのは大いに反省しなければならない。もうちょっと気持ちを強く持たないと。

 しばらくして、元の服に着替えた三船さんが好意室の中から出てきた。頬は少しだけ赤い。

 

 

「じゃ、じゃあもう少しだけ色々見てみますね。また感想をよろしくお願いします」

「わ、分かりました!」

 

 

 俺なんかの感想でいいのだろうかと思いつつ、再び洋服を見始める三船さんだった。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

「本当に俺の意見なんかで買っちゃってよかったんですか?」

「むしろ、笹島さんの意見だからこそですよ。一般の方の意見は結構重要なんですから」

 

 

 お店を出た三船さんの右手には、一番初めに試着したワンピースの入った袋が握られている。結局俺の意見で買うことを決めてくれたみたいなのだが、俺は服のセンスがあるわけではないので正直恐れ多い。

 でも、三船さんは気に入った様子だったのでそれ以上は何も言わなかった。

 

 

「それじゃあ次は、笹島さんの服選びですね!」

「あっ、やっぱりそれは決定事項だったんですか」

「もちろんですよ。むしろ私の服よりも重要な問題です!」

 

 

 俺からしてみれば大した問題でも何でもないんだけど、三船さんが言うと重要な問題に思えてくるから不思議だ。

 

 

「分かりました。そこまで言われたら買わないわけにはいきません。自分はセンスがないので三船さん、よろしくお願いします」

「はい、任されました。ふふっ、やる気になってくれてよかったです」

 

 

 ちなみに俺の服選びの様子はばっさりカットさせてもらいます。男が服を選んでいる姿を流してもしょうがないからね。

 一応、三船さんの意見を参考にしつつ二パターンくらいの服をまとめ買いしました。これで夏場の服装に困ることはないだろう。

 

 

「ふぅ、美味しかったですね」

「はい、初めて入ったお店でしたけど良かったです」

 

 

 そして、今は少しだけ遅いお昼ご飯を食べ終えたところである。値段の割には美味しかったので入って正解だった。三船さんも満足そうな表情を浮かべている。

 

 

「さて、この後はどうしましょうか?」

「実は服の他にもう一つ行きたいお店があるので、そこに行ってもいいですか?」

「いいですよ。俺は買いたいものも特にないので」

「それでは」

 

 

 というわけで、次は三船さんが行きたいというお店に向かう事に。お会計を済ませ、三船さんが行きたいというお店に向かう。

 

 

「実はこのお店なんです」

「へぇ、観葉植物の専門店ですか」

 

 

 三船さんが指差したお店は、観葉植物を専門に取り扱っているお店だった。このようなお店はあまり見かけたことがないので少しだけ新鮮に映る。

 

 

「ずっと入ってみたいなと思っていたんですけど、自分一人だと勧められるがままになったり、視線がどうしても気になってしまうので」

 

 

 確かに店員さんは見た感じ二人くらいしかおらず、中に人の姿もほとんど見えない。つまりこのお店に入ってしまえば、三船さんは勧められるがままに買ってしまうかもしれないだろう。その様子が目に浮かぶ。

 

 

「それじゃあ入ってみましょうか」

 

 

 二人揃ってお店の中へ。中にはよくテレビなどで見るものから、なんだこれというものまでさまざまな観葉植物が陳列されていた。

 

 

「色々な種類の観葉植物があるんですね。あっ、このサボテン可愛いかも……」

 

 

 三船さんは気になった観葉植物を手に取ったり眺めたりして楽しんでいる。その姿は観葉植物専門の雑誌の表紙を飾れるくらいに似合っている。

 仮に三船さんが表紙を飾るようなことがあれば、間違いなく俺は購入するだろう。もちろん、中身もちゃんと読むけどね。

 

 

「どんなのを買おうと思ってるんですか?」

「リビングに飾る用のものを買おうと持っているんですけど、色々あり過ぎて迷っちゃいますね」

「確かに、観葉植物なんてどれも一緒だと思ってましたけど、こうしてみると本当にいろんな種類がありますし」

 

 

 部屋の大きさや内装によって最適なものもあるだろうから、選ぶのは結構大変だろう。組み合わせによってはまた色々な良さも出るだろうし。

 そんなわけで俺たちはのんびりと観葉植物を選んでいくのだった。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

 そしてショッピングモールから帰り道。

 既に俺たちの最寄り駅に到着し、マンションまでの道を歩いているところだった。

 

 観葉植物を注文し終えた後は、本屋に寄ったりちょっとした雑貨屋を見てみたりと、結構楽しかった。

 

 

「気に入ったものが見つかってよかったですね」

「はい。届いたらどこに置きましょうか……ふふ、模様替えの楽しみが増えました」

「思わず俺も何か一つ買ってみようかなって思っちゃいましたよ」

「確かに、少し頭を悩ませていた様子でしたからね」

 

 

 観葉植物専門店での話をしながら俺たちは買い物の思い出に浸る。

 

 

「だけど、三船さんって流されやすいって本当だったんですね。今日の服屋の時もそうでしたし、観葉植物のお店でも店員さんの説明にタジタジでしたし……ふふっ」

「笑いごとでは……。通販の「こちらの商品もご一緒にいかが?」すら逆らいづらくて……もう、そんなに笑わないでください……も、もうっ!」

 

 

 俺が思い出し笑いをしていると三船さんが困ったように眉を顰める。流石に店員さんの説明なしに選ぶのもと思って説明を求めたのだが、三船さんは説明だけでなく別の商品も勧められていて終始アワアワしていた。

 そんな顔も、もちろん可愛い。むしろ、意外な表情が見れたということで感謝したいくらいだ。

 

 しかし、俺には一つ気になっていることがある。

 

 

「あの、三船さん。ちょっといいですか?」

「はい、なんですか?」

「今日は一人では運べないような買い物があるって言ってたんですけど……結局それって何だったんですか?」

 

 

 お店を色々回ったのだが、俺がいないと運べないようなものは一つも買わなかった。唯一観葉植物は一人で運べなかったと思うけど、あれはお店が送ってくれるらしいので別に一人でも問題はない。

 すると、三船さんは少しだけ申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 

 

「……すいません、笹島さん。私、1つだけ嘘をついてました」

「えっ、嘘って?」

「今日は別に、一人で運べないようなものを買うつもりはなかったんです」

 

 

 三船さんの言葉に俺は首を傾げる。一人で運べないようなものを買わないつもりだったのに、どうして俺を呼び出したりしたんだ?

 

 

「それって一体どういうことなんですか?」

「……もう、ここまで言っても分かりませんか」

 

 

 拗ねたような表情を浮かべる三船さん。顔も心なしか赤いような……。

 

 も、もしかして今日は俺と買い物に行きたかったから誘ったんじゃないのか? それなら今の言葉にも納得ができる。

 

 

(い、いや、勘違いするなよ俺。仮にそうだっとしても三船さんの事だから他の人とも買い物に行っているはずだ)

 

 

 しかし、そんな俺の心の中は見事に読まれていたらしい。

 

「……私は、誰とでも買い物に行ったりはしません」

「……えっ」

 

 

 間抜けな声が俺の口から漏れた。更に三船さんは畳みかける。

 

 

「あなたを信頼しているからこそ、今日は一緒に行こうと思ったんです」

 

 

 今度はもう声も漏れなかった。もちろん、感激して。

 ただの一般人である俺を、芸能人の三船さんがここまで信用してくれたのが嬉しかったのである。

 

 

「だからですね、その……もう、いいと思いますよ。私だって断りませんから」

「…………」

 

 

 三船さんの言葉に俺は俯き瞑目する。

 

 確かに、もういいよな。俺だってここまでの間、ずっと我慢してきたんだから。自分自身に言い聞かせる。

 今日だって買い物に行ったし、以前は一緒にお酒も飲んだ。それに、俺は他のファンの人より成り行きはともかくとして、三船さんと仲良くなったという自負がある。だからもう、我慢ができなかった。

 

 そして、俺は口を開く。

 

 

 

 

 

「三船さん…………サインをください!」

 

 

 

 

 

「分かりました。サインですね……えっ?」

 

 

 

 無事にサインをもらえた俺は部屋に戻った後、額縁に三船さんのサイン色紙を飾って眺めたのだった。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

「もうっ! あそこはどう考えても連絡先を教えてもらう流れだったはずです!! あわよくば告白だって……。結構期待してたんですよ!? なのに……なのに笹島さんは『サインをください』って!! 嬉しいですけど、嬉しかったですけど!! 私が求めてたのはそれじゃないんです!!」

「うんうん、わかったから。お願いだからもう少しペース落として飲んで、美優ちゃん」

「だってぇ、私だって勇気をもって誘ったんですよ!? 買い物中もいい雰囲気で、楽しくて……なのに、笹島さんったら!!」

 

 

 呂律も怪しくなってきた美優をみて、一緒に飲んでいた川島瑞樹は頭を抱える。今日は珍しく誘ってきてくれたのだが、それ相応の理由があったみたいだ。

 一緒に出掛けることはLINEで聞いていたので別に驚かない。ただ、今日こそ連絡先を貰えるだろうと思っていたのに、結局貰えなかったということは意外だった。というか、あそこまで言って付き合わないのもどうかと思うんだけど。美優の言葉なんてほとんど告白のようなものだし……。

 

 まぁ、彼はファンとして勘違いしないよう、必死に理性を保っていたと考えれば理解はできる。本当にファンの鏡たるような人と言わざるを得ない。……ただ普通、立場は逆なんだろうけど。

 いろんな意味で徹底(我慢)している笹島健一を評価するとともに、連絡先くらい貰っても罰は当たらないと言ってやりたい。あと、できれば酔いつぶれた美優を連れて帰ってほしい。連絡先を知らないから呼び出しようがないんだけど。

 

 

「珍しく美優さんの方から誘ってきたので少し不思議に思ったんですが、やっぱりそれなりの理由があったんですね! あっ、すいませーん。ビールをお願いします♪」

「楓ちゃんも今日は抑えめでお願い」

「みじゅきしゃーーん、きいてるんですかぁ? うぅ、しゃしゃじましゃんったらひどいんでしゅよ~」

「あー、はいはい。聞いてるわよ。……はぁとちゃんか早苗ちゃんに助けを求めないと」

 

 

 こんな風にデートに行った次の日。居酒屋しんでれらにて、不満をぶちまける美優さんがいたとかいなかったとか。

 ちなみに一番苦労したのは川島さんな模様。




美優さんのコミュを見た感想
「仁奈ちゃん、グッジョブ」

MVを見た感想
「足をぴょんとさせるところが可愛い。背中でハートを作るのはずるい。時計の針のダンスが斬新」

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