バカとテストと僕たちの楽園   作:ウォーズ -IKUSA-

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あけましておめでとうございます、エクシリオンです。
と言っても既に2週間も経っていますが……(汗)

相変わらずの文才なしですが、今年も楽しんで頂けると嬉しいです。今回から清涼祭編です。初めての方もそうでない方も、是非覗いてみてください。

第17話です、どうぞ!


清涼祭編
第17話 清涼祭準備と学園長からの依頼


明久side

 

 

桜色の花びらが姿を消して、新緑へと変わっていく季節がきた。

 

ここ文月学園では、学年度最初の行事である『清涼祭』の準備が始まっている。

僕たちFクラスはAクラスとの同盟もあり、今年は2クラス合同での出展となった。

 

雄二「Fクラス代表の坂本雄二だ。今回の合同出展に応じてくれて、感謝する」

 

雄二がAクラスの教卓の前で挨拶をする。合同出展自体は珍しいことではないが、事情を知らないクラスからしたら、AクラスとFクラスでやると言うと不思議に思うだろう。

 

リオ「ねぇ、話を進める前にひとついい?」

 

雄二「なんだ、金子?」

 

リオ「出展の内容を決めるこの場に、Fクラスの人数が少ないのはなぜかしらね?」

 

リオちゃんの言う通り、ここにいるFクラスの生徒はいつものメンバーだけ。これを聞いた僕たちは、苦い顔をしていた。

 

省太「……リオ、みんなも外を見てくれ」

 

リオ「外を? ……わかったわ」

 

省太がそう促して、真夏ちゃんも含めたノイン・マイスターズのメンバーが窓から外を覗くと、

 

 

須川「行くぜ、横溝ッ!」

 

横溝「かかってこい、須川ッ!」

 

須川くんを筆頭に、野球をしているクラスメイト(僕たち以外)の姿があった。

 

優子「な、なんなのコレ……」

 

リオ「ウソでしょ……」

 

奈子「ありえない……」

 

真・こ・愛「「「あははは……」」」

 

翔・久・美「「「………」」」

 

これを見た優子さんとリオちゃん、奈子ちゃんは呆れ、真夏ちゃんとこのみちゃんと工藤さんは苦笑してるし、霧島さんと久保くん、佐藤さんに至ってはノーコメントだ。

 

雄二「あー……。なんかウチのクラスの者がすまん……」

 

翔子「……謝らなくていい。雄二は悪くない」

 

雄二「ありがとう翔子。だがこれじゃ話が進まないな。どうするか……」

 

明久「西村先生を呼んでくる?」

 

渚「その必要はないよ☆」

 

クラスメイトをどう連れてくるか考えていると、渚が名乗りをあげる。

 

雄二「渚、どうするつもりだ?」

 

渚「ぼくにかかれば大丈夫。まぁ、見てて♪」

 

連中をどうやって連れ出すのか、みんなが渚に注目する。

 

渚「スゥ……。……おーいみんなー、清涼祭に参加したくないのー?」

 

呼びかけるが、無視して野球を続けている。でも渚は全く動じることなく、

 

渚「そうかぁ、やりたくないんだぁ……。まぁ、やる気が大事だから君たちが気乗りしないなら、無理には勧めないよ。……でも残念だなぁ……」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

渚「清涼祭は年に一度の大イベントだよ? 普段女の子に縁のない君たちが輝ける(かもしれない)チャンスなのに、自分たちでそれをドブに捨てるんだね。あーあ、残念だなぁ。もしかしたら『○○くん素敵ッ(はぁと)』って恋に発展する可能性だってあるのになぁ……。で、卒業の時にみんなこう思うよ。『はぁ……。清涼祭、ちゃんと参加すればよかった……』ってね♪」

 

“ドドドド……!!”

 

渚が言い終わると共に、Aクラスへ向かう足音が響く。

 

「「「「ごめんなさい、僕たちが間違ってました! 清涼祭に僕たちも参加させてください、お願いします!!!」」」」

 

渚「はい、よくできました☆」

 

『『『『…………』』』』

 

さっきまで外にいたクラスメイトが一斉に集合するのを見て、僕たちは呆気に取られていた。

 

明久「相変わらず扱うのが上手いね……」

 

康太「……一種の才能」

 

渚「みんなが単純なだけだよ。でも、だからこそ扱いやすい。それとAクラスのみんなごめんね、ダシに使っちゃって……」

 

奈子「大丈夫だよ渚くん。私たちも、(明久くんたち以外の)Fクラスの男子たちがどういう人なのかわかってるから」

 

真夏「ホンマはアカンけど、しゃーない。合同出展の出し物決めるためや、コレばかりは許すで。な、みんなもええやろ?」

 

AクラスD「そうね……。神谷さんがそう言うなら、私は大丈夫かな?」

 

AクラスM「賛成。男手が増えるのは、私たちとしても助かるし」

 

Aクラスの生徒たちも次々と賛成の意思を挙げると、漸く本題に移った。

 

真夏「で、出展する内容やけど……、メイド喫茶にしようと思うんや。どうやろか?」

 

渚「ねぇねぇ、ひとつ提案していい?」

 

真夏「はい渚くん、どうぞ」

 

渚「2クラス合同で出展するから、只のメイド喫茶じゃつまらないと思うんだ。だからAクラスが和風メイドで、Fクラスが中華風メイドって感じにしたいけど、どうかな?」

 

真夏「ええやん、それ。候補に上げといてーな♪ 他に意見のある人ー?」

 

この後も色々な意見があったけど、最終的に和風メイドと中華風メイドが採用されることになった。

 

渚「あと、衣装をぼくたちで作って来たんだけど、サヨちゃんとこのみちゃん、モデルとして着てくれないかな?」

 

このみ「私たちが?」

 

サヨ「いいよ、なんか楽しそうだし♪ このみちゃん行こ?」

 

このみ「うんッ♪」

 

衣装が入ったかばんを持って、2人とも着替えに行った。

それからしばらくして、

 

サヨ「おまたせッ♪」

 

このみ「えっと、こんな感じだけどどうかな?」

 

それぞれサヨちゃんが中華風のメイド服、このみちゃんが和風メイド服を着けて戻ってきた。

 

男子生徒たち『『『『おぉ……』』』』

 

女子生徒たち『『『『かわいい……』』』』

 

サヨちゃんのメイド服はパステルカラーで、キュートにまとめられている。このみちゃんの方は抹茶をイメージした色で落ち着きが感じられた。

 

渚「これはサンプルだから、全員分作るとなると後日以降になるんだけど……、どうかな?」

 

全員『『『『いいと思います!!』』』』

 

こうして出し物と衣装も決まった。

 

 

 

 

 

時間が流れて放課後。Fクラス教室に戻って帰る準備をしているときだった。

 

“♪ピンポンパンポーン♪”

 

『2年Fクラス吉井明久くん、反田省太くん、上運天渚くん。学園長が呼んでいます。至急、学園長室に来てください』

 

渚「学園長が? 一体どうしたんだろう?」

 

明久「よくわからないけど、迷惑でもかけられたんじゃないかな? 一先ずは行ってみようか」

 

省・渚「「おう(うん)ッ」」

 

予想しても仕方ない。とりあえず僕たちは学園長室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

そして学園長室の前に着くと、中から学園長と誰かが言い争っている声が聞こえる。

 

 

省太「先客がいるらしいけど、どうする?」

 

明久「でも僕たちも呼ばれてきたわけだから、入ろうよ」

 

渚「(コクッ)」

 

“コンコン”

 

学園長「入りな」

 

明・省・渚「「「失礼します」」」

 

竹原「困りますねぇ、取り込み中だというのに。これでは、話を続けることもできない……。あなたの差し金ですか?」

 

そう言ったのは、教頭の竹原先生だ。一部の女子生徒には人気があるらしいが、下級クラスの生徒を露骨に見下すので、正直嫌いなタイプの人物である。

 

学園長「何を言ってるんだい。この子らはアタシが用があるから呼んだんだよ。そもそも勝手に乗り込んできたのは、アンタの方じゃないか」

 

竹原「ふむ。……ところで吉井くん、反田くん、上運天くん。あなたたちはFクラスの教室を改修したそうですねぇ。いったいどういう手を使ったんですか?」

 

明久「なぜそれを竹原先生がご存知なのか気になりますが、答える義務は僕たちにありません」

 

竹原「……わかりました。そこまで言われるなら、私もこれ以上は追求しませんよ」

 

竹原先生は部屋の隅の観葉植物に視線を送り、

 

竹原「それでは、この場は失礼させていただきます」

 

と言って学園長室を出て行った。

 

渚「(ねぇ2人とも)」

 

省太「(あの観葉植物だろ)」

 

明久「(だいたい予想はついてるよ)」

 

僕たちは、竹原先生が見た観葉植物に何かあるのを勘付いていた。

 

学園長「さて、待たせてすまないね3人とも。アンタたちに頼みたいことがあってね……」

 

省太「待ってください、学園長」

 

学園長「どうしたんさね?」

 

明久「まだ喋らないでくださいね? ……渚」

 

渚「OK、明久。失礼します」

 

渚がさっきの観葉植物の前に立って、土の中を掘り起こす。

 

学園長「何をするんだい、上運天!」

 

渚「申し訳ありません学園長。でも、コレを見つけるためだったんです」

 

そう言って中から取り出したのは、黒い電子機器だった。

 

学園長「そ、それは一体何だい?」

 

明久「盗聴器ですよ。おそらく、仕掛けたのは竹原先生だと思います」

 

そう考えた理由は、Fクラス教室のことを聞かれたときだ。改修の話は学園長と一部の先生方にしか話してないため、竹原先生が知っているはずがない。ならば予め盗聴器を仕掛けて内容を知った……、という結論になる。

 

学園長「竹原が? 最近妙な行動が目立っていたが……、そういうことだったのかい……」

 

明久「やっぱり間違ってなかったんですね。それ壊していいよ、渚」

 

渚「わかった。……えいッ!!」

 

“バキィッ!”

 

地面に置いた盗聴器を、原型をとどめない程粉々に砕いた。

 

明久「省太、他に盗聴器が仕掛けられてたりしてない?」

 

省太「今取り出した以外ではないな。とりあえず、 大丈夫だ」

 

周囲の確認をし、改めて学園長と向き合った。

 

学園長「では本題に入るよ。アンタたちの内2人には試験召喚大会に出てもらいたい」

 

明久「試験召喚大会に? ……僕たちがですか?」

 

学園長「その通りだよ」

 

それからこう続ける。

 

学園長「アンタたちは、試験召喚大会の優勝賞品について知っているかい?」

 

渚「いえ、ぼくは知りません。明久と省太は?」

 

省太「俺は優勝賞状とトロフィーがあることはわかるけど……」

 

明久「あとは副賞として、『白金の腕輪』と 『如月グランドパーク プレオープンプレミアムペアチケット』も送られてくる……。ですよね、学園長?」

 

学園長「なんだい、知ってたのかい?」

 

明久「ええ。噂で、ですけどね。ひょっとして、副賞の賞品を回収してほしいってことですか?」

 

学園長「(コクッ) プレミアムペアチケットの方だが、ちょっと変な噂を聞いてね。アンタたちにはソレの回収を頼みたいんだよ」

 

渚「そうですかぁ……。でもぼくたちにお願いしなくても、出さなければ大丈夫だと思いますけど……」

 

渚の発言は尤もだ。最初から出さなければ、こんな面倒なことをする必要はない。

 

学園長「できればそうしたかったがねぇ……、この話は教頭が進めたとは言え文月学園として如月グループと行った正式な契約だ。今更覆すわけにはいかないのさ」

 

省太「よりにもよって、なんで竹原先生に任せたんですか? 学園長が直接やった方が確実なハズですよ」

 

学園長「白銀の腕輪に手一杯で、そこまで手が回らなかったんだよ。それに変な噂を聞いたのは、最近になってからさ」

 

省太の指摘に、学園長も苦い表情を見せる。やはり責任を感じていたようだ。

 

明久「……では『変な噂』って、どういうことですか?」

 

学園長「それなんだけどね、如月グループは如月グランドパークに『ここを訪れたカップルは幸せになれる』っていうジンクスを作ろうとしているのさ」

 

これだけを聞いたら何もおかしなことはない。『ジンクスを作る』という点が気になるが、幸せになれるなら寧ろ良いことだと思う。でも次に学園長の言った言葉が、僕たちの考えを否定する。

 

学園長「ただ、そのジンクスを作るためにプレミアムチケットを使ってやって来たカップルを結婚までコーディネイトするつもりらしいんだよ。企業として、多少強引な手段を用いてもね」

 

明・省・渚「「「ええ(はあ)ッ?!!」」」

 

学園長「そのカップルを出す候補が、我が文月学園ってわけさ」

 

思わず声を上げる。顧客を増やしたいのは企業として当然だろうが、いくらなんでもこれはないと思った。

 

省太「随分と面白いこと考えるじゃねぇか……(ニヤリ)」

 

明久「手段としては分からなくはないけど、他にもやり方はあるでしょ……(クスリ)」

 

学園長「そうさね……。アタシとしては、本人の意思を無視して、うちの可愛い生徒の将来を決定しようって魂胆が気に入らないのさ。だからアンタたちにチケットの回収を頼みたいんだよ。頼まれてくれるかい?」

 

明久「そういうことなら受けます!是非やらせてください!!」

 

省太「誰かに将来を決められるってのは、嫌だからな。俺もやりますよ!!」

 

渚「2人ともやる気だね。なら、ぼくはサポートさせてもらうよッ☆」

 

ここまで知ったからにはやらない訳にはいかない。学園の、そして僕たち自身の為でもあるから。

 

学園長「頼んだよ、3人とも」

 

明・省・渚「「「はい、任せてください!!」」」

 

 

僕たちは学園長室を後にした。

 

 

 

 

 

 

帰宅して現在。僕の自宅に3人で集まって学園長の依頼について話し合っている。

 

省太「明久、渚。あの依頼なんだけどよ、ちょっと変だと思わないか?」

 

渚「どうして?」

 

明久「言われてみれば……、そうだね」

 

省太「多分だけど、学園長が回収したいのは別のものなんじゃないかって思うんだ」

 

渚「じゃあ、プレミアムペアチケットは違うのかな?」

 

省太「そうじゃない。たしかにプレミアムペアチケットも回収するべきだけど、それ以上に優先されるものがあるハズだ」

 

プレミアムペアチケットよりも優先して回収したいもの……。ひょっとして、

 

明久「白銀の腕輪?」

 

省太「そう、それなんだよ。学園長はこれについてはスルーしてたけどさ」

 

渚「もしかして、一番ヤバイのは腕輪の方ってこと?」

 

明久「でもこれは予想でしかないよね? 今すぐ決めつけるのは、早いんじゃないかな?」

 

省太「ああ、そうだな……。とりあえずこの話はここで切ろうか」

 

長引かせても仕方ないので、依頼の話については一旦終了となった。

 

明久「いい省太、渚。僕たちのやるべきことはふたつだ。ひとつはメイド喫茶の成功、もうひとつは依頼の完遂だよ」

 

省・渚「「(コクッ)」」

 

明久「だから省太。試験召喚大会、絶対に優勝しよう……!!」

 

省太「おう。やってやろうじゃないか……!!」

 

明久「渚。清涼祭の期間中、もしかしたら何か妨害があったりすると思う。そんなときは雄二や秀吉、康太の力も借りてみんなを引っ張って欲しい!」

 

渚「りょーかい! 任されて!!」

 

気合充分だね。それは僕も同じか。

 

 

明久「じゃあ2人とも(スッ)」

 

“グッ”

 

明・省・渚「「「ファイトだぜッ!!」」」

 

清涼祭も依頼も、両方成功させてみせる……!

 

 

to be continued……




いかがだったでしょうか。

今年もゆっくりの更新となりそうですが、なるべく更新できるように心掛けたいと思います。

では、次回にお会いしましょう!

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