渚「あれ? 32話後はスルーしてたけど、前回が後編じゃなかったっけ?」
明・省「「あっ……」」
エク「……そんなことよりも本編だ! ほら省太、活躍して来いッ!」
省太「上手く逃げたな」
明久「まぁ、言い訳はあとで聞くとして。まずは第34話……」
明・省・渚・エ「「「「始まるよー♪」」」」
明久side
明久「このみちゃん、真夏ちゃん、リオちゃん、鈴音ちゃん! 省太と一緒にサヨちゃんを捜しに行って、まだ園内にいるハズだから!」
こ・真・リ・鈴「「「「わかった(よ) (で) (わ)!」」」」
省太が会場を飛び出した直後に、僕はこのみちゃんたちにサヨちゃんを捜すように伝えた。
奈子ちゃんは渚のことがあるので残ってもらっている。
渚「ねぇ、どうして? どうして止めたのさ! あの
月影「落ち着け、渚」
渚がさっきのチャラ男を殴れなかったことに、やり場のない怒りを振り撒いていた。掛ける言葉も見当たらない中、月影はただ冷静に諭している。
渚「じゃあなに? あのまま放っておいた方が良かったわけ!? 月影だって、あんな態度見過ごせないハズでしょ!?」
月影「…………」
渚「黙ってないで何とか言ってよッ!!」
月影「渚。俺の言ったことを聞いてたか? 俺は落ち着けと言ったんだ」
今にも手を上げそうになった渚を、さっきと同じ言葉でもう一度諭す。
月影「本音を言えば、俺もお前と同じだ。アイツらが省太とサヨが積み重ねたものを否定したからな。正直、殴りたくて仕方なかった」
渚「だったら……!」
月影「だがそれをやったら、アイツらを殴ったせいで渚が悪者になったと、自分を責めるだろう。お前が2人を大事に思うように、2人もお前が大事だからな。尤も、ここにいる全員が同じ想いだが……」
一旦言葉を切ってこう続ける。
月影「それに省太は、自分のことは自分でカタをつける性分だ。ヤツが自分から助けを求めるなら別だが、そうでもないなら俺たちが手を下すべきではない。渚、お前もそれを良くわかっているハズだ」
渚「わかってる……、わかってるよ……。(ぐすっ) ……だけど、悔しいよ……。(ひっく) こんな……、こんな……」
“ギュッ”
渚「奈子ちゃん……?」
月影にこう言われて理解できていても、渚は悲しくて、悔しくて泣き出しそうになっていた。そんな彼を奈子ちゃんが抱きしめる。
奈子「渚くん、ウェディング体験を台無しにされて悔しかったんだね? みんな渚くんと同じ気持ちだよ。だから、思い切り泣いていいよ……」
渚「うっ……、(ぐすっ) うう……ぁぁッ、うう……うわぁぁああああああんッ!!!」
奈子「大丈夫。君の涙は、私が拭ってあげるから……」
誰よりも友達の幸せを願い、誰よりも友達を貶されることを良しとしない渚の泣き声が響き渡る。奈子ちゃんはそれを優しく受け止めて、周りのみんなも、その想いを共有していた。
明久「渚のことは僕たちに任せてその怒り、思い切りぶつけて来てね。……省太」
天を仰いで、僕はこう呟いた。
明久side out
省太side
明久と別れた俺は、例のバカップルを捜していた。ソイツらは意外にも早く見つかった。ホント助かったよ、逃げられたらどうしようかと思っていたからな。
チャラ男『うーん、アレはケッサクだったな!』
ギャル『ホントよね〜。……お嫁さんになる夢、叶っちゃった♪……、どう? 似てる? かわいいかな?』
チャラ男『ああ、似てるぜ。でも――キモいに決まってんじゃねーか!』
ギャル『言えてる〜!』
さて、落とし前を付けてやる。
覚悟しろよ、お前ら。
省太「よぉ。そこのニーサンとネーサン」
チャラ男『ああ? なんだよ?』
2人が俺の方を見る。会場にいたときは大人しくしていたが、あんな振る舞いをしたからには相応のお礼をしなきゃな。
ギャル『タカシ。この子、さっきの坊やじゃない?』
チャラ男『らしいな。で、その新郎サマがオレたちになんか用か? ああん?』
なんか威嚇してるっぽいけど、これで俺がビビると思っているのが滑稽に思える。
省太「別に大した用じゃないけどよ……、ちょっとそこまで来てもらうぞ」
バカップルは俺の後に続き、人気のないところまで誘導させた。
チャラ男『んで、用ってなんだ?』
“ガシッ!”
そう言ったところで、チャラ男のシャツの首を掴み上げる。
チャラ男『な、何しやがるテメェ!』
省太「何しやがる……だと? それは、お前らが1番わかってるんじゃないのか」
チャラ男『なんのことだ?』
ギャル『そうよ、ワタシたちが何したってワケ!』
省太「ほう……、どの口がほざくんだか。まぁいい、頭の悪いお前らでもわかるように教えてやるよ」
自分たちのしたことを理解してないバカップルに呆れながらも、俺はこう告げる。
省太「お前らさぁ、俺の未来の嫁を散々バカにしただろ?」
チャラ男『それがなんだ! 思ったこと言って何が悪い!!』
“ググッ!”
チャラ男『うぐぅぅぅ……ッ!!』
省太「口の利き方に気を付けろ……!!」
ギャル『タ、タカシ!』
省太「ネーサンも逃げるなよ」
ギャル『ひっ!』
チャラ男の首を絞め上げつつ、ギャルにも逃げないように釘を刺す。
省太「自分の立場を理解してから物を言え。 今の俺はすごく機嫌が悪いからな……!」
チャラ男とギャルは怯えたように頷く。それから俺はチャラ男の首を離した。
省太「一応聞くぞ。なぜあんなことをした」
チャラ男『お、お前たち2人が憎い』
省太「憎い? どういうことだ」
とりあえず俺は、チャラ男の話を聞くことにする。
聞けば、チャラ男は家庭環境が最悪だったらしい。親からはほったらかしにされて、学校ではいじめられて、親からの愛情も友達にも恵まれないまま今日まで生きて来たこと。理不尽な社会に翻弄される中、今の彼女(ギャル)と出会って自分なりの生き甲斐を得られたこと。自分たちは結婚式を挙げられないかもしれないから、せめてウエディング体験をさせてあげたかったことをぶちまけた。
チャラ男『それなのに親の愛情も、友達にも恵まれていそうなお前らがウエディング体験をすることが、どうしても納得できなかった。羨ましくて、恨めしくて仕方なかった……!!』
省太「それで俺たちの邪魔をした……という訳か」
チャラ男『そうだ……』
省太「……お前らが恵まれなかったこと、少しは同情するぜ。だがそれをあの娘の夢をバカにして良い理由にはならない。お前らの本心は知らないが、あの娘にとっては重要なことだ。人に迷惑掛けるものじゃない限りは、どんな夢でも貶すことはしちゃいけないんだよ。お前らのやったことで、どれだけの人たちに迷惑を掛けたかよく考えろ。そして今日のことを反省して、素直に生きられるようにするんだな。俺が望むのは……、それだけだ」
バカップルは返す言葉もなく、項垂れている。
俺の言葉で、自分たちがいかに大人気ないかを思い知らされたようだ。
省太「それと、どう心を入れ替えてもお前らのやったことを、俺は忘れないぜ。絶対に許さないし、顔も見たくない」
少し間を置いて、こう告げる。
省太「わかったらとっとと失せろ。次はないぞ……!!」
これを聞いたバカップルは、逃げるようにその場を立ち去って行った。
それから俺はサヨの捜索に移る。捜している最中にこのみちゃんとリオに出会った。
省太「このみちゃん、リオッ! サヨはいたか?」
このみ「省太くん! ダメ、見当たらないよ!」
リオ「ホント、どこに行ってしまったのかしら……」
2人から話を聞くと、真夏と鈴音も一緒に捜しているがやはり結果は同じだとのこと。若干諦めムードになっていたが、
省太「まだ捜してない場所がある。あとは俺に任せてくれ」
リオ「わかったわ。じゃあお願い、省太!」
このみ「サヨちゃんを見つけてあげてね!」
省太「ああ、任せな!」
待っててくれよ、サヨ! 必ず君の下に行くから!
省太side out
サヨside
会場を飛び出したサヨはホテルの屋上にいた。
サヨ「……うう……ぐすっ……(ひっく)……」
チャラ男とギャルのカップルに、サヨの夢を貶されたことに耐えられなくてここまで来たの……。
サヨの気持ちとは裏腹に、目の前の景色は夕焼けと月が広がって幻想的だ。
サヨ「神様ひどいよ……。(えぐっ) サヨは悲しいのに、見える景色は……こんなに、綺麗だなんて……。(ぐすっ) ……省太くん……」
悲しい気持ちになりながら、大好きな恋人の名前を呼ぶ。すると……、
省太「ここにいたのか、サヨ」
1番大好きで、今1番会いたいサヨの恋人、省太くんがそこにいた。
サヨ「省太くん……」
省太「おいで……、サヨ」
そう言った省太くんの側に寄ると、抱きしめてくれた。
省太「誰が何を言おうと、俺はサヨの味方だ。いや、俺だけじゃない。このみちゃんも真夏も奈子、リオ、鈴音、明久、渚。そしてみんながサヨの味方だから、安心して欲しい」
サヨ「……うん!」
やっぱり省太くんは、サヨのヒーローだ。改めてそう思ったよ。
サヨside out
省太side
省太「そろそろ戻るか。みんな待ってるだろうしな」
サヨにこう呼び掛ける。さっきまで泣いていたのが嘘のように、今では元気な笑顔だった。
サヨ「そうだね。……あ、ちょっと待って省太くん」
省太「なんだ?」
サヨ「目を瞑って欲しいの」
省太「? こうか?」
言われた通りに目を瞑る。その直後に……。
“チュッ”
サヨ「えへへ……。やっとあげられたよ、サヨのファーストキス♪」
省太「お、おう……。ありがとな、サヨ」
まさかキスしてくれるだなんて夢にも思わなかった。
よくよく考えたら、サヨとキスするのは初めてなんだよな。初めての相手が俺なんかで良かったのかと思ったけど、サヨが喜んでいるならそれも悪くないか。
省太「じゃあ、行こうぜ」
サヨ「うん!」
会場へ戻る道中、サヨがこんなことを聞いて来た。
サヨ「ねぇ、省太くん」
省太「どうした?」
サヨ「サヨの夢って、変なのかな……」
あのバカップルが言ってたことか。でも俺の答えは決まっている。
省太「そうだな。残念だけど、そんな風に考えている人が一定数いるのも事実だ。でもなサヨ、君がその夢を持ち続けるってのはそうそうできることじゃない。それができるのは素晴らしいことなんだ」
サヨ「……! それって……」
省太「だから俺は、サヨの夢を尊重するよ」
サヨ「省太くん……、ありがとう♪」
省太「礼には及ばないさ」
お礼を言った恋人は、今日1番の笑顔を見せてくれる。それはまるで、雨上がりの空のようだった……。
会場に戻ると、最高の
冷めてしまったが、サヨが作った弁当をみんなとお裾分けする。このことで茶化されたりしたけど、不思議と心地良かった。
最後に康太のカメラで、集合写真を撮った。本当に結婚するとき、全員が揃う保証がどこにもないからだとか。それでも俺はこう考える。できれば、本当の結婚式でもみんな揃ったら良いな……。
そして、俺とサヨの為に頑張ってくれたみんなに等しく、幸せが訪れるように……と。
省太side out
かむいside
かむい「あぁ……、良かったなぁ。省太くんとサヨちゃんのウエディング体験。邪魔が入ったのが少し残念だったけどね……」
楓「ホントね。でもあたしは、明久くんと渚くんの提案とはいえTear dropの演奏が観れてそこも良かったわよ」
集合写真を撮って解散したあと、私は楓姉様と一緒に歩いていた。話の内容はもちろん、今日のデート作戦のことだ。
楓「省太くんとサヨちゃんを見ていたら、思わず恋愛したくなるわね。……でも今はいいかな。かむいはどう?」
かむい「え? わ、私は……」
楓姉様にこう聞かれて一瞬、丈瑠くんの顔を思い浮かべた。でも、
かむい「私もいいです。それよりも姉様の側にいたいです」
楓「そう……。ありがとう、かむい」
こう答えると、楓姉様は嬉しそうに微笑んだ。
でもきっと私の為に我慢してるんだと思う。楓姉様には、恋愛をして欲しい。なら私は、どうしたらいいだろう……。
中々答えが出ないまま、私たちはそのまま家路へと急いで行った……。
かむいside out
???side
???「見つけたー、???様の玩具……」
あたしは???様の命令で玩具もとい、織幡叶夢を捜していて、ついに足取りを掴んだ。それを確認したあと、後ろに控えていた男たちにこう告げる。
???「ねえ。金ならいくらでも出すし、女も紹介してあげるから、あのサイドポニーの女……
あたしの命令を受けて男たちは、行動を開始した。
???「さぁ、かむいちゃん。アナタがどうあがいても、???様から逃げることは不可能よ。絶対に壊してあげる♪ キャハハハハハッ!!」
to be continued……
渚「さぁ、エクシリオンさん。前後編のハズだったのが、どういうことかな?」
エク「実は前回と今回はひとつの話(後編)のハズだったんだよ。で、文字数を確認したら、1万字を余裕でオーバーしてしまってね……。急遽、分けることにしたんだよ(汗)」
省太「配分考えろよ……。ただでさえ文字数安定しないんだから、この物語」
エク「ふん。そのおかげで君の活躍を長く書けたんだぞ、省太くん!」
明久「うわ、開き直ったよこの人!」
渚「ぼくの生みの親とはとても思えないね」
エク「ひ、ひどいッ!」
省太「そういえば最後のアレはなんだ? ものすごく不穏な幕切れだけど」
エク「それは今後の展開のお楽しみ……とだけ言っておこう」
渚「説明が下手だから逃げただけじゃあ……」
明久「と、とにかく! ストーリー的に次は強化合宿編だけど、次回はこれまでの振り返りとオリキャラ紹介をしたいそうだよ」
省太「例によってあくまで予定だから、その辺は読者の皆様は理解してあげて欲しい」
渚「次回も読んでくれると嬉しいな☆」
明久「それじゃあみんな!」
明・省・渚・エ「「「「また会おうねー♪」」」」