第2話です、どうぞ!
省太side
明久「じゃあ決まりだね。さぁ、行こう。ここからが新たなスタートだよ!」
明久がそう言って扉を開けると、
明・省・渚「「「おはようございます、遅くなりました!!」」」
第一印象を考えて、俺たちなりに元気よく挨拶した。
雄二「遅かったな、“3バカ”」
教室に入って早々、俺より背の高い赤毛の男がそう言った。
まぁ確かに観察処分者らしく振舞う為にバカやってたのは事実だが、開口一番がそれかよ。
明久「えっと、君は……坂本雄二くんだね? 君の学力ならAクラスは確実に行けたハズだけど、どうしたの?」
雄二「ああ。やりたいことがあったから、点数調整してFクラスに来たのさ」
省太「へぇ……、なるほどね。ところで、席はどこに座った方がいいんだ?」
雄二「んー。特に決まってないようだから、空いているところに座っていいらしいぞ」
明久「ありがとう、坂本くん」
そして俺たちは教室の窓際の席が空いていたので、その周囲に座った。
すると、近くにいた1人の生徒が近づいて来た。
秀吉「おお、お主らもFクラスじゃったのか」
明久「おはよう、秀吉」
その生徒は俺たちの友人である、木下秀吉だった。
省・渚「「おはよう、秀吉!」」
秀吉「おはようなのじゃ。省太、渚」
こうしてみると、秀吉は姉の木下優子さんと瓜二つだということがよくわかる。それ程可愛い容姿だが……、本人の前では言わないでおこう。
明久「秀吉もFクラスなんだね」
秀吉「うむ……。演劇に熱中するあまり、勉学が疎かになったのじゃ……」
渚「その熱意をもう少し勉強に注いでいたらまた違ったかもねー☆」
秀吉「そうじゃな。……じゃが、Fクラスなのはわしだけではないぞ」
秀吉がそう言って目線を移した先にはムッツリーニ……、土屋康太がいた。
渚「康太もいるのかー。まぁ、だいたい予想通りだけどね☆」
康太「……途中で試験放棄したヤツに、言われたくない」
渚「むぅ……。言ってくれるじゃない。否定はしないけどさッ☆」
こんなやり取りをしてる内に、HRの時間になった。
福原「えー、おはようございます。2年Fクラス担任の……、福原慎です。よろしくお願いします」
福原先生が黒板に名前を書こうとして……、やめた。おい、チョークすらないのかよここは!
福原「みなさんに設備が支給されているか確認します。何か不備があれば申し出てください」
FクラスA「せんせー、俺の座布団に綿が入ってないです」
福原「はい、我慢してください」
FクラスD「先生、俺の卓袱台の脚が折れてます」
福原「木工ボンドを支給しますので、あとで自分で直してください」
FクラスG「先生、窓が割れていて隙間風が寒いんですけど……」
福原「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」
この現状を見て、俺たちが感じていた予感は気のせいではないことがよくわかった。教室全体を見渡すと、隅には蜘蛛の巣が張ってあるし、壁はひび割れや落書きされている部分が殆どで、ハッキリ言って汚い。おまけに、床の畳は長い間交換していなかったのかカビ臭い匂いが教室全体を覆っている。絶対勉強させる気ないだろ……。
福原「では、自己紹介を始めましょうか。廊下側の人からお願いします」
福原先生の指名を受け、廊下側から順に自己紹介が始まっていった。
秀吉「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。最初に言っておくが、わしは男じゃ」
すると一部を除いた殆どの男子が騒ぎ出し、口々に勝手なことを言い出している。
省太「(何をどうしたら、そんな思考回路になるんだ……?)」
渚「(秀吉は男だよ。それ以上でもそれ以下でもない)」
明久「(同感。秀吉も大変だよね……)」
秀吉に同情しつつ、俺たちは頭を抱えた。
康太「……土屋康太」
通称
美波「島田美波です。ドイツ育ちなので、日本語の読み書きと英語が苦手です。趣味は気に入らない男子をシメることです☆」
さり気なく危ない趣味を公言したこの女子生徒は、島田美波。俺と親しい女子の中では、リオに似ているだろうか。俺たちは基本的に良い子だと思っているので、その趣味は是非ともやめてほしいところだ。
美波「はろはろー♪」
どうやら俺たちに気づいたらしく、笑顔で手を振っている。
明・省・渚「「「やぁ、美波」」」
美波「今年もよろしくね。アキ、省太、渚」
FクラスM「ーです。よろしく」
よし、次は俺の番か。ここは無難に行こう。
省太「反田省太。大切なものは友達、嫌いなものは友達を傷つけようとするヤツだ。よろしく」
何人か進んで、今度は渚の番になった。
渚「上運天渚です。苗字で呼ばれるのは好きじゃないので、名前で呼んでください。あと、明久と省太の悪口言ったり危害加えようとした人は……、死ぬよ☆」
顔は笑っているが、最後の一言が物騒だと親友ながら思う。
渚「長生きしたいなら、今言ったことちゃんと覚えてね。……返事は?」
『『『『はぃぃぃぃッ!!!!』』』』
渚「よろしいっ!」
それを聞いて満足したのか、渚は席へ戻って行く。
次は明久の番だ。
明久「吉井明久です。これから1年間よろしく。省太と渚と似たようなこと言うけど、友達を侮辱する人はたとえ同じクラスの人であっても、許さないからね……」
また教室内が静かになった。まぁ、これだけ釘を刺しておけば多分大丈夫だろう。
その後も1人、また1人と自己紹介が続いていき、終わりも近づいたそのときだった。ガラガラと教室の扉が開き、2人の女子生徒が現れた。あの振り分け試験の際、俺と明久と共に退出となった姫路さんとサヨである。
瑞・サ「「あの、すいません……。遅く、なりました……」」
Fクラス全体が驚きの声を上げる。無理もないだろう。普通ならこのFクラスに不相応な女子生徒が2人も来たのだから。尤も、俺たちはここに来ることを知っていたが。
福原「丁度いいところに来ました。今自己紹介をしている最中なので、姫路さんと池端さんもお願いします」
瑞希「は、はい! あの、姫路瑞希といいます。よろしくお願いします……」
サヨ「池端早代です。これからよろしくね!」
FクラスH「あの、質問いいですか?」
既に自己紹介を終えたする男子生徒の1人が右手を挙げる。
瑞・サ「「はいっ。なんですか(なぁに)?」」
FクラスH「2人はなんで、このクラスに来たんですか?」
乱暴な聞き方ではあるが、ヤツの疑問は俺たち以外全員が抱くことだ。
2人共学園内でも上位レベルの容姿を持ち、姫路さんは成績上位一桁以内に常に名を残す才女だ。サヨも姫路さんに匹敵する程、成績は優秀な部類に入る。故に本来ならFクラスではなく、Aクラスにいるべきだと考えるのが自然だろう。
瑞希「えっと……、振り分け試験の最中、高熱を出してしまいまして……」
サヨ「サヨも同じだよー」
その言葉を聴き、クラスのみんなは納得したようだ。
試験途中での退出は、如何なる理由であろうとも無得点扱いになる。決まりとはいえ、納得できなかった俺と明久は、2人だけでも再試験できないか学園長に掛け合ってみたが認められなかったので、正直悔しかった。
FクラスN「そういえば、俺も熱が出たからFクラスになったんだよな」
FクラスK「俺は弟が事故に遭ったと聞いて集中できなかったよ」
FクラスP「お前一人っ子だよな?」
FクラスB「前の晩、彼女が……」
FクラスT「はい、嘘だな」
明・省・渚「「「……………」」」
あえて何も言うまい。これは想像以上だ、悪い意味で。
連中が騒いでいる内に、2人を招いて席に座らせた。サヨが俺の隣、姫路さんは明久の隣である。
福原「はいはい。みなさん静かにしてくださいね」
福原先生が教卓を叩いて注意した。
福原「あ、すいませーーー」
バキィッ バラバラバラ………。
教卓が一瞬でゴミ屑と化した。
福原「え〜……。替えを用意してきます。少し待っていてください」
そう告げて、先生は教室から出て行った。
明久「……坂本くん、ちょっといいかな?」
明久が坂本に声をかける。
雄二「ん? なんだ?」
明久「ここじゃ何だから、廊下で。省太と渚も来て」
省・渚「「わかった(よ)」」
雄二「ああ、いいぜ」
サヨと姫路さんに一声かけて廊下に出る。
明久「話す前に、これから共にする仲間だし、名前で呼ぶから僕たちのことも名前で呼んで欲しいな」
雄二「……いいだろう。よろしくな明久、省太、渚」
明・省・渚「「「よろしく、雄二」」」
雄二「んで、話ってなんだ?」
明久「うん、Fクラスのことだけどさ……」
雄二「言わなくてもわかる。想像以上に酷いな」
明久「雄二も見たよね? Aクラスの設備」
雄二「ああ、すごいもんだよな」
一方はチョークすらないひび割れた黒板のある教室で、もう一方は相当高額なプラズマディスプレイがある教室。格差は一目瞭然だ。
渚「そこでぼくたちからの提案。2年生になったから、『試召戦争』をやってみない?」
雄二「戦争、か?」
渚「そう。それもAクラス相手に、だよ」
雄二「ほう……。何が目的だ?」
雄二が興味深そうな笑みを浮かべる。
省太「決まってんだろ……。サヨと姫路さんの為だ」
雄二「……きっとそう言うと思っていたぜ」
明・省・渚「「「??」」」
雄二「実は俺もAクラスに戦争を仕掛けようと思ってな……。それがこのクラスに来た理由だ。そして……」
少し間を置いて、雄二はこう続けた。
雄二「待っていたんだよ……、お前たちをな」
明久「……僕たちを?」
雄二「そうだ。お前たち3人は間違いなく、Fクラスの主力になり得るからな」
渚「ってことは、ぼくたちが観察処分者だって知ってるんだよね? でも召喚獣の扱いが学園トップクラスでも、大したことないと思うけど?」
雄二「隠さなくてもいい。表向きはFクラス相応だが、お前たちの本来の学力はずっと上だ。違うか?」
省太「随分と核心を突いてくるな。どこまで知っているんだ?」
雄二「とりあえず、お前たちの振舞いが演技だってことまではな」
見抜かれてたのかよ。結構自信あったんだけどな。
雄二「勝つ要素は揃った。あとは作戦次第だ」
省太「……雄二、最終目的について一度話がしたい。放課後、時間をくれないか?」
雄二「ああ、良いぜ。先生が戻ってきたから、とりあえず教室に入るぞ」
明・省・渚「「「わかった」」」
雄二に促されて、俺たちは教室に戻った。
福原「それでは、自己紹介の続きをお願いします」
須川「須川亮です。趣味は………」
特に何も起こらないまま、淡々と自己紹介が進んでいった。
福原「坂本くん、君が自己紹介最後の1人ですよ」
雄二「了解」
先生に呼ばれて雄二が席を立つ。
教壇に歩み寄るその姿は、クラスの代表として相応しく感じられた。
雄二「Fクラス代表の坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも、好きなように呼んでくれ」
明久「(まぁ、代表と言えば聞こえはいいよね)」
渚「(でも最底辺のクラスだもんね……)」
省太「(自慢にもならないだろ……)」
雄二の自信に満ちた顔を見て、俺たちはそう思った。
雄二「さて、みんなにひとつ聞きたい」
雄二がゆっくりと、全員の目を見るように告げる。
すると、みんなの視線はすぐに雄二に向けられた。
それを確認した後、教室内の各備品を眺めてこう告げた。
「Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが………、不満はないか?」
『『『『『大ありじゃぁぁっ!!!!!』』』』』
Fクラス生徒たち(一部を除く)の魂の叫び。
雄二「だろう? 俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として問題意識を抱いている」
FクラスU「そうだそうだ!」
FクラスE「いくら学費が安いからって、この設備はあんまりだ! 改善を要求する!」
FクラスX「そもそもAクラスだって同じ学費だろ? 成績でこの差は酷すぎるぞ!」
堰を切ったように次々とあがる不満の声。口に出さないだけで、相当溜まっていたのだろう。
雄二「みんなの意見はもっともだ。そこで俺たちFクラスは………、『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う」
雄二は不敵な笑みを浮かべて、みんなを焚きつける。
その言葉に一瞬士気が上がったが、すぐ現実に戻ったのか、
FクラスC「勝てるわけがない」
FクラスY「現実を見ろよ」
FクラスZ「姫路さんがいたら何もいらない」
FクラスQ「池端さん大好きだ」
そんな悲鳴が教室中から上がる。
普通に考えれば、落ちこぼれのFクラスとAクラスでは、戦力の差は歴然である。……ってかサヨにラブコールしたヤツ誰だ! シメるぞ!!
……とにかく、その声があがるのも想定済みだったようで、雄二はまた笑みを浮かべてこう言った。
雄二「確かに、普通ならFクラスに勝ち目はないだろう。だが、今回は違う。このクラスには試召戦争で勝つことのできる要素が揃っている」
雄二はそう言って壇上を見下ろす。
雄二「おい、康太。畳に顔をつけて姫路のスカートを覗いていないで前に来い」
康太「…………!!(ブンブン)」
瑞希「は、はわっ!?」
必死になって顔と手を左右に振り否定のポーズをとる康太。
姫路さんがスカートの裾を抑えて遠ざかると、ヤツは顔についた畳の跡を隠しながら壇上へと歩き出した。
雄二「土屋康太。コイツがあの有名なムッツリーニだ」
康太「…………!!(ブンブン)」
FクラスY「ムッツリーニだと……?」
FクラスS「バカな、ヤツがそうだというのか……?」
FクラスJ「だが見ろ。あそこまで明らかな覗きの証拠を未だに隠そうとしているぞ……」
FクラスD「ああ。ムッツリの名に恥じない姿だ……」
寧ろ恥じるべきだと思うが……。
姫路さんは頭に疑問符を浮かべているし、それはサヨも同じだ。
サヨ「省太くん。どういうことかな?」
省太「知らない方がいい……」
サヨの純情を守る為に、俺はこう言った。
雄二「姫路と池端については説明不要だ。ウチの主戦力と言っても過言ではないだろう」
これにはみんな首を縦に振る。本来ならAクラスである2人がいるのだ、これ程心強いことはない。
雄二「木下秀吉も古典なら、Aクラスにも劣らない実力だ」
FクラスA「おお……!」
FクラスO「ああ、アイツは確か、木下優子の……」
雄二「当然、俺も全力を尽くす」
FクラスG「確かになんだかやってくれそうだ」
FクラスV「坂本は小学生の頃、神童って呼ばれていたよな?」
FクラスX「実力はAクラス上位レベルが3人もいるってことか!」
FクラスQ「これはいける気がするぞ!!」
気がつけば、クラスの士気は最高潮に達していた。
雄二「それに吉井明久、反田省太、上運天渚だっている!!」
…………シン――――
そして一気に下がった。まぁ、当然の反応だよな。
FクラスM「誰だ、そいつら?」
FクラスI「『御三家』って呼ばれてるヤツらのことだろ?」
FクラスE「あー、要は役立たずって訳か」
予想通りとはいえ、言ってくれるなコイツら……。
雄二「まぁ待て。確かにコイツらは“観察処分者”という肩書きを与えられたが、裏を返せば召喚獣の操作は学園中でも一歩抜きん出ているということになる。それだけでも大きな強みだ!!」
ナイスフォロー、雄二。この発言のおかげで、下がった士気も元に戻った。
FクラスW「なるほど!」
FクラスB「つまり操作技術を駆使して戦うんだよな?」
FクラスS「期待してるぞ、お前ら!」
あっさり掌返しやがった。まぁ、士気は高いに越したことはないからそれでいいが。
雄二「これだけの戦力が揃えば、どんなクラスにも負けはしない! 目指すは打倒、Aクラスだ!!」
この言葉にFクラス男子たちは雄叫びをあげる。実力はともかく、気合と闘志は十分だ。
雄二「まず手始めにDクラスに攻めようと思う。誰か宣戦布告の使者になってくれないか?」
雄二はそう言ったが誰も行こうとしない。当然だ。下位クラスから上位クラスへ試験召喚戦争を仕掛ける場合、相手は拒否することができない。それは下位クラスにとってはメリットだが、上位クラスにしてみれば迷惑である。使者として向かえばリンチは避けられない為、そんな自殺行為はしたくないのが普通だ。……1人を除いては。
渚「はーい、誰も行かないならぼくが行くよー☆」
そう、良くも悪くも怖いもの知らずな俺たちの親友、上運天渚である。
雄二「お、おい渚。使者の役割、お前わかってるのか?」
誰に言われる訳でもなく、立候補してきた渚に雄二も……。いや、俺たち以外の全員が戸惑っている。
渚「知ってるよー。ケンカ売って無傷で帰ってこればいいんだよね?」
雄二「それはそうだが……」
渚「大丈夫だよー。ぼくを信じて♪」
明久「……雄二、行かせてあげて。こうなったら、渚は絶対に曲げないから」
雄二「わかった。じゃあ渚、必ず無傷で帰ってこい」
渚「うん! 約束は必ず守るよー☆」
省太「渚! あまりやり過ぎるなよ?」
明久「程々にね」
渚「おっけー☆」
そう言って渚はDクラスに向かっていった。
雄二「本当に大丈夫なのか? ってか明久、お前よく行かせたな」
雄二の不安は、Fクラス全員の不安でもある。
明久「いや、渚は絶対大丈夫だよ」
省太「寧ろ、Dクラスの連中が心配だな」
俺たちはそう断言する。なぜなら……。
渚『どこ狙ってるのー? そんなんじゃ当たんないよ、あははははー♪』
Dクラスで渚の笑い声が聞こえてきたからだ。
何にせよ、引き金は引いた。ここから戦争の幕が上がる。
to be continued……
士気高揚までを書きました。……長い。
感想、誤字脱字・修正点・アドバイスなどがございましたら、是非お願いいたします。
次回は漸くDクラス戦です。
それでは、また。