今回は長くなりそうな為、分けて書きます。
第4話です、どうぞ!
明久side
Dクラスとの戦争に勝利した翌日、僕たちFクラスは昨日の戦争で消耗した点数を回復する試験を受けていた。
Dクラスは油断した隙を突いた結果の勝利だったが、Bクラスは違う。僕たちの勝利を知って何かしら対策を立てて来るだろうし、僕たちを除いたFクラスの大半よりも実力は明らかに上だ。万全を期して、全教科を満遍なく補充することにした。
今日一日を回復試験で終えることになり、明日の午後1時に仕掛ける方向で纏まった。
雄二「よし、みんな! 今日補充できなかった分は、明日の午前中に補充する! 今日はこれまでだ、以上!」
この日はこれで解散となったが、僕たちはまだ共有するべきことがあるから残っている。
雄二「で、どうだ明久? ババァ長との交渉は上手くいったのか?」
明久「うん。この教室の現状を伝えたら、僕たちの提案を前向きに検討してくれるってさ」
渚「康太の証拠写真も、役に立ったしね☆」
康太「……(グッ)」
遡ること数時間前……。僕、省太、渚は雄二からの了承を得て、あのメンバーで話した内容を報告するべく、学園長室へ向かっていた。
“コンコン”
学園長「入りな」
明・省・渚「「「失礼します」」」
目の前にいるこの女性こそ、文月学園の学園長……藤堂 カヲルである。
学園長「来たね吉井、反田、上運天。アンタたちがここに来るということは、何か問題があったってことさね。それで、用件は何だい?」
明久「単刀直入に言います、Fクラスの設備についてです」
学園長「Fクラス?」
省太「はい。確認させて頂きますが、畳と座布団、卓袱台がFクラスの設備で間違いありませんね?」
学園長「その通りだよ。何か不備でもあったのかい?」
省太「では、これを見て頂けませんか?」
省太がFクラスの設備を収めた写真を渡す。
それを見て学園長は、驚きの表情を見せた。
学園長「な……、何だいこれは!?」
明久「今現在のFクラスの設備ですよ。最下クラスとはいえ、このような状態なのも学園の方針なんですか?」
学園長「変だね。クラスに応じて、設備は状態の良い物を支給するようにしているハズだがねぇ?」
渚「ですが、この写真は紛れもない事実です。相応の設備でも、学問に励める環境を提供するのは教師の義務だと思いますよ?」
明久「あの様な教室と呼べるか怪しい空間で、授業を受けるのは酷だと僕たちは思います。よって、設備の改善を要求します」
学園長「ふむ……、そうさねぇ……。……わかった、後で調査してからになるがアンタらの要求、受け入れてやろう」
不安ではあったのだが、意外にもあっさりと要求を受け入れたので僕たちはびっくりした。
明久「本当ですか?」
学園長「なぁに、これくらいはお安い御用さ。教師たる者、生徒たちのことを第一に考えてこそだからねぇ」
明・省・渚「「「あ……、ありがとうございます!」」」
設備の改善をAクラス終了後に行うこととして、交渉が成立した。
渚「……こんな感じに受け入れてくれたよー☆」
明久「後は今後の試召戦争に集中するだけだよ」
雄二「そうか……。礼を言うぜ、明久、省太、渚。……みんな、今日はもう遅いから今度こそ本当に解散な?」
こうして僕たちは、それぞれ家路についたのだった。
雄二「おはよう、みんな! 昨日も言った通り、今日は午後1時にBクラスに戦争を仕掛ける! 午前中は、昨日できなかった教科の補充をして開戦に備えてくれ!」
Fクラス生徒の大半は再び回復試験を受けている。
雄二「その間にBクラスに宣戦布告する訳だが……、誰が行く?」
渚「……今回もぼくが行くよ……」
Dクラス戦のことがあるからなのか、止めようとする人もいたが、僕と省太は渚のいつもと雰囲気が違うことに気づいた。
省太「どうした渚? 何かあったのか?」
渚「Bクラスに会いたい人がいる」
明久「それって、根本恭二くんのこと? でも根本くんがBクラスにいることは把握済みだから、態々確認するまでもないと思うよ?」
渚「違う。確かに根本くんも無視できないけど、実力の面で要注意人物だよ……」
一呼吸置いて、その人物の名前を告げた。
渚「そいつは……。神代……、遥祐」
省太「遥祐だって?」
明久「あー、そうか……。それは厄介なことになりそうだね……」
その名前を聞いてみんなが息を飲んだ。
神代遥祐……今回の振り分け試験において、Aクラスの霧島翔子さんと首席の座を争った男だ。
だが、彼はAクラスに振り分けられる身でありながら辞退している。
このことは教師陣も頭を悩ませたが、最終的にBクラス代表とすることで落ち着いたらしい。
渚「宣戦布告もそうだけど、Bクラスに行った理由を聞くも目的の一つなんだ」
明久「わかった。それなら、僕も一緒に行こう」
こうして渚と共に、僕はBクラスに向かった。
“ガラッ”
明久「失礼するよ。Bクラス代表はいるかな?」
遥祐「やあ、オレがこのクラスの代表だ。きっと来ると思っていたよ明久、渚」
ショートヘアと少し長めの後ろ髪を一本結びした少年……神代遥祐くんが迎えていた。近くに根本くんもいる。
遥祐「君たちの目的はわかっている。Bクラスに宣戦布告するってことで、いいのかな?」
明久「そうだよ、遥祐。僕たちFクラスは、Bクラスに試験召喚戦争を申し込みます!」
遥祐「面白い……。受けて立とう!」
渚「……ねぇ、遥祐。ひとつ教えて欲しいな」
遥祐「? 何のことかな?」
渚「Aクラスを辞退してまで、Bクラス代表になった理由。何を考えているの?」
渚が遥祐に疑問を投げ掛けた。
遥祐「あー……、やっぱり疑われてるかぁ……。安心して渚。オレは何も企んでいない、本当だ」
渚「それ本当?」
遥祐「(コクッ) 強いて言うなら根本くんを見張る為……かな?」
渚「そうなんだ……。ゴメンね、疑って。話してくれてありがとう」
遥祐がこう答えると、渚も納得した。
明久「開戦は、今日の午後1時からでいいかな?」
遥祐「もちろんだ」
根本「待て! 宣戦布告しといて、タダで済むとする思うな!!」
遥祐「やめろ、根本くん! オレの友人に手を出すことは許さないよ!!」
根本「け、けどよ代表……」
遥祐「そんなにやりたいなら、戦争中にやればいいんだ。違うか?」
根本「むう……」
根本くんが数名連れて襲い掛かろうとしたが、遥祐が止めた。
不服そうだったが、渋々納得したようだ。
遥祐「ゴメンね、無礼なことして……」
渚「大丈夫だよ。遥祐も大変だね」
遥祐「ふっ、君たち程じゃないさ。気遣いありがとう、省太にもよろしく言っておいてくれ」
明久「わかった。じゃあまた戦場でね」
遥祐「ああ。全力で戦おう」
互いにグータッチをして、僕たちはBクラスを後にした。
“♪キーンコーンカーンコーン♪ ”
昼休み終了のベルが鳴り響く。Bクラス戦の開幕だ。
雄二「さぁ、始まったぞ! お前ら全員突っ込め!!」
『『『『『突撃ぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!!!!』』』』』
雄二の号令と共に、みんな攻め込んで行く。
渚「明久! Bクラスの部隊が見えて来たよ! 」
明久「わかった! 渚が率いる第一部隊を左翼に、美波が率いる第二部隊は右翼にそれぞれ展開! サヨちゃんは中央を陣取って、接敵と同時にBクラスを迎撃するんだ!!」
渚・美・サ『『『了解(だよ)!!』』』
程なくしてBクラス部隊も到着し、各部隊が交戦を始めた。
英語
Fクラス
上運天 渚:413点
数学
Fクラス
島田 美波:336点
総合科目
Fクラス
池端 早代:4178点
「「「事前に代表から聞かされていたけど……、お前ら本当にFクラスか……?!」」」
わかっていたとはいえ、実際にその点数を目の当たりにしたBクラス陣営は驚きを隠せない。
Dクラス戦を経験したこともあり、3人は順調に敵を落としていくが、そこはやはり上位クラス。多くのFクラス生徒たちは、力及ばず1人また1人と、渚たちが落とすのを上回る速度で散っていく。
明久「くっ……。このままじゃ渚たちが厳しいか……」
次の一手を考えていた矢先に、姫路さんが息を切らしながら到着した。
瑞希「お、お待たせ、しました……ッ」
明久「姫路さん。来たばかりで悪いんだけど、美波のフォローをお願いできる?」
瑞希「は、はいッ。行って、来ますッ」
そのまま数学のフィールドへ進軍した。
同じくして、Bクラスも戦力を投入する。
岩下「Bクラス岩下律子です。Fクラス姫路瑞希さんに数学勝負を申し込みます!」
菊入「律子、私も手伝うよ!」
瑞希「あ、はい。よろしくお願いします」
岩・菊・瑞『『『
数学
姫路 瑞希:440点
岩下 律子:251点
菊入 真由美:237点
対峙する3人。ここで美波はあることに気づく。
美波「? 瑞希の召喚獣ってアクセサリーが付いてるのね?」
瑞希「はい。数学は結構できましたから……」
岩下「な、何よそれ……!!」
菊入「私たちじゃ勝てる訳ないよ!!」
瑞希「行きますよッ!」
狼狽えている岩下さんと菊入さんを見逃すことなく、姫路さんの召喚獣が左腕を2人の召喚獣に向けた。
岩下「わっ! こっちに来る!?」
菊入「律子! 避けるわよ!!」
2人の召喚獣は回避行動を取ろうとするが、間に合わない。
“キュボッ!”
岩下「きゃあぁぁーっ!!」
菊入「律子ーっ!!」
瑞希「終わりですッ……!!」
姫路さんの召喚獣から赤いビーム“熱線”が放たれて、1体を焼き尽くすと同時にもう1体に迫まり、斬り捨てて勝負がついた。
BクラスA「岩下と菊入がやられたぞ!!」
BクラスG「一先ず代表に報告しろッ!!」
主戦力2人を失い、Bクラス陣営が動揺する。
瑞希「みなさん、恐れずに進みましょう!!」
『『『『おぉぉぉぉぉぉーーーーッ!!!!!』』』』
対照的にFクラス陣営の士気は高まっていった。
明久「ありがとう姫路さん。とりあえず、サヨちゃんと一緒に後退してて。残っているメンバーは、渚と秀吉を中心にして残存部隊を追撃!」
僕はそう指示を送る。主力を喪失したBクラスの前線突破も時間の問題だろう。
しかし、遥祐がいるとはいえ“あの”根本くんのことだ。絶対何かを仕掛けて来る。そう思った僕は省太を呼び寄せた。
明久「省太。一度教室に戻ろう」
省太「わかってる。根本のことだろ」
明久「遥祐は許可しないと思うけど、それでも強行して来るだろうからね」
省太「ああ、既に仕掛けている可能性もある……。戻るぞ」
明久「うん。……渚、指揮権を渡すよ。秀吉は補佐をお願いね?」
渚「OK、明久!」
秀吉「了解なのじゃ」
僕と省太は不安になりながらも、サヨちゃんも連れてFクラスへと戻って行った。
明久「こ、これは……」
省太「予想はしてたけど、マジでここまでやるなんてな……」
サヨ「ひどいよ………」
教室に戻った僕たちが見たものは、ボロボロの卓袱台とバラバラにされたシャーペンと消しゴムだった。
省太「こんなこと、遥祐が指示する筈がないよな」
明久「うん。明らかに根本くんの独断だね」
雄二「よう明久、省太、池端。どうした?」
省太「雄二か。この状況だけどよ……」
雄二「ああ、大体想像はついていたぞ。確かに小さくない被害だが、これくらいなら立て直しは難しくない」
どうやら雄二も同じことを考えていたようだ。
明久「それで、雄二はどこに行ってたの?」
雄二「神代から申し出があってな。今日の午後4時までに決着がつかなかったら、続きは明日午前9時に再開。その間は試召戦争に関わる一切の行為を禁止する……という協定を結びにBクラスに行っていた」
省太「明日にする理由はサヨと姫路さんの体力を考慮して……、か?」
雄二「そうだ。それにBクラスに予想以上に粘られてな、本陣を陥落させるのは無理だと判断したからだ」
現在の時刻は、午後3時45分。雄二の言った通り、明日に持ち越すのが賢明だろう。
雄二「まぁ、シャーペンと消しゴムの補充はしておこう」
康太「……(トントン)」
雄二「お、康太か。どうした?」
康太「……(クイクイッ)」
雄二「何? Cクラスが?」
康太「………(コクリ)」
康太によると、Cクラスに動きがあるということらしい。
省太「……どうする?」
雄二「そうだな……。とりあえず、Cクラスと不可侵条約を結ぶか」
明久「用心しておくに越したことはないね」
サヨ「あ! サヨも行く!」
こうして僕、省太、雄二、康太、サヨちゃんというメンバーでCクラスに向かった。
雄二「Fクラス代表の坂本雄二だ。そちらの代表はいるか?」
友香「私が代表だけど……、何か用かしら?」
雄二が教室の扉を開けてこう告げると、Cクラス代表……小山友香さんが前に出て来た。
雄二「ああ。我々Fクラスと不可侵条約を結んで欲しい」
友香「不可侵条約? ……ええ、構わないわ」
雄二「よし、交渉成立だな」
根本「ダメじゃないかぁ、Fクラスの諸く〜ん。試召戦争に関する行為は一切禁止のハズだよなぁ〜?」
条約を締結しようとしたとき、身を潜めていた根本くんが取り巻きを連れて現れた。
根本「言っとくが、先に協定を破ったのはそっちだからな? お互い様……だろ?」
根本くんがそう告げると同時に襲い掛かろうとしたときだった。
遥祐「やめないか!!」
根本「だ、代表……」
遥祐「何をしている、根本くん?」
根本「こ、これは……」
遥祐「協定を結んでからの戦闘行為は禁止したハズだよ……?」
根本「でもFクラスが先に……」
遥祐「言い訳はいい、撤退するぞ。これ以上の独断行動は許さないよ……!!」
根本「……わ、わかった……。撤退する……」
Bクラス代表の遥祐が阻止し、根本くんたちを連れて引き揚げていく。あのタイミングで現れた彼に感謝しないとね。
Cクラスとの不可侵条約も締結し、今回はこれで終了となった。
雄二「今日はここまでだな。明日に備えて、ゆっくり休んでくれ。以上、解散!」
こうしてみんな帰宅の準備をし、終わった人から次々と帰宅していった。僕たち3人とサヨちゃんも一緒に帰ろうとしたとき、康太に呼ばれた。
明久「康太? どうしたの?」
康太「……話がある。省太も一緒に来い」
省太「俺もか?」
康太「……(コクリ)」
渚とサヨちゃんに待ってもらって、僕と省太は場所を変えた。
明久「それで、話って?」
康太「……根本がCクラスから去るとき、何かを呟いていた」
明久「具体的に何て言ってたの?」
康太「……確か、池端早代の交渉材料がどうとかって言ってたらしい」
省太「それは本当なのか?」
康太「……確証はない。だが、池端早代に何かしらの影響があるのは確かだ」
省太「……わかった。教えてくれてありがとう、康太。感謝するぜ」
康太「……これくらい、お安い御用(グッ)」
そう告げると、康太も帰って行った。
明久「さて……。僕たちも帰ろう?」
省太「……」
明久「省太?」
省太「ん? あ、ああ」
明久「康太が言ってたこと、気になる?」
省太「気にならないと言ったら、嘘になるけどな……」
明久「大丈夫だよ。サヨちゃんに何かあったのなら、僕も協力するからさ♪」
省太「……おう。そうだな」
不安を拭えない省太を元気づけた後、渚とサヨちゃんと合流した。
親友が困っているなら、力になってあげよう……。そんなことを考えながら、僕はみんなと帰って行ったのだった。
to be continued……
Bクラス前半戦はここまでとなります。
ここで一区切りしておいてよかった…。やはり、長い…(汗)
次回でBクラス決着を書けたらと思います。
それでは、また次回に。