もうしばらく主人公不在です。
ロモス王の次にはテラン王のもとへと訪ねたがフォルケン王は旅の疲れで眠っており、代わりに対応したメルルにダイ達、特にポップがでれでれして大喜び。
マァムとチウの紹介と今回の件を話してみたら、
「私にお手伝いをさせてください!」
メルルが張り切った。
普段はとても内気なメルルだがダイ達の手助けを、ひいてポップの助けになりたいと、乙女心がさく裂したのだ。
占い結果-ランカークス-の文字を見てポップが青褪めた。
俺の旅はここまでか・・短い人生か!!
行きたくはない!怖い!!しかしだ・・ランカークスを知っているのはどうやら自分だけらしい。
どこの事だと話しているダイ達に教えることにした。
すなわち「そこ俺の実家だわ。」
「あ~・・最後にティファの笑顔が見たかった・・」
「ちょっとポップ!実家に帰るだけでしょう!!」
「ポップさん、大丈夫ですか。ご無理はなさらずに。」
「ポップ・・お父さんお母さんに会えるんだよ?」
「昨日の君はどこに行った!情けない!!」
たかだか実家に帰るだけなのに、ポップはランカークスの手前でルーラしてしゃがみこんだまま動かず、マァムとチウに呆れて怒られ、ダイとメルルに優しく慰めらるという何とも情けない恰好をしている。
皆あの頑固おやじの怖さ知らねえから気楽に言うんだ。
マァムの父も雷親父のようだが娘にゲンコツはしまい。
ブラスさんもダイとティファにそんなことはしないだろうし、つまるところ幼少期の親の怖さを体験したのは自分だけ。
しかしだ!ダイの武器探しには世界の命運がかかっているといっても過言ではない!
「うっしゃいくぞ!!」
意を決して立ち上がった視線の先には「・・母さん・・」
自分の記憶の中よりも少し年を取った母スティーヌが、重い武器屋の看板を上げようとしていた。
武器屋の看板は重い。女の細腕で上げるのは大変だと思っていたら、急に軽くなった。
驚いて後ろを振り向けば「・・ただいま母さん・・」
自分より背の高い、それでもまごうことなき愛息子の「ポップ!!!」
母さん少し老けたな、俺が家を出たせいか。
泣きながら自分を抱きしめてくれる母、家出前は少しは母のほうが背が高かったが今では自分の方が大きい。
抱きしめ返せば細くて頼りない。
アバン先生に付いて行った事は後悔しないが、母にこれほど心配をかけたことだけは悔やまれ始める。
どれほど身勝手なことをしたのかと。
「・・ポップ、今父さんを呼んでくるからね。待ってて頂戴!」
まるで自分がすぐに消えかねないような勢いで母は父を呼びに行き、ダイ達に説明をする前に
「あん⁉」出た!!
自分と同じくせっ毛の、長年鍛冶屋をしていて焼けた紅い鼻の父ジャンクが!!
「よう・・親父・・」
母の時と違ってがひきつるのが分かる、腰がもう及び腰!単騎でバランと対峙した方がなんぼもましだ!こええよ。
家には入れてもらえた、俺ボロボロでダイ達にはきっちりと茶を出して。
「こいつが勇者一行の魔法使いねぇ~。」あり得んと半信半疑の目を向けられて。
「うっせえ・・たく馬鹿力親父が。」すぐに腕力に訴えるのが嫌いだ。
「ちょっとポップ。受け身とればよかったのに。」
ポップ達の一部始終を見ていたマァムがこっそりと話しかける。
ジャンクによって担がれ地面に投げられ叩きつけられても、ポップは無抵抗どころか受け身すら取らなかった。
自分と組み手をしてせっかく覚えたのだから使って親に成長を見せるべきだったのでは。
少なくとも家出した価値はあったのだと。
「俺の自業自得だからさ。」
いくら今強くなりましたといっても、だからと言って両親の心情を思えば得意げになる気はしない。
よく見ればジャンクの髪にもスティーヌの髪にも白いものが混ざっている。
そんな両親をほったらかした罰は受けるべきだ。
「そう、ならいいわ。」両親を思っての事ならと、マァムはにっこりと笑いダイの武器探しを手伝いに行き、代わりにメルルが隣に座る。
「ポップさん、せめて軽傷用の薬を。」
「あ・・ん・・ありがと。」
若い恋を咲かせている二人をよそに、ダイはチウとマァムで武器の品定めをする。
そこらの武器よりはいいかやはり「あれ?」
ツボに無造作にさしてあった武器を手に取り抜いてみれば、今まで感じた事のない凄味があった。
「ダイ、そいつはいけそうか?」
メルルと話しつつも、きちんとダイの様子をうかがっていたポップがすぐに声をかけた。
「ううん、でもこれだけなんか凄いんだよ。」
「どれどれ、あらホントね、オーラがある。」
「マァムさんの言う通り、何か生きてるみたいだ。」
マァムとチウも興味津々となった。
「それ親父の作か?」
「違う、知り合いの魔族が作った。」
はい⁉このご時世に魔族の知り合いだ!とか普通は思うのだろうが。
「そうなんだ。」
「そうか。」
「そうですか。」
「どんな方でしょう。」
チウを除いたダイ達はあっさりと返事をして終わりである。
「何だお前達、驚かねえのかよ。」
もっと反応があると思っていたジャンクの方がたまげるくらいあっさりとしすぎている。
こいつら魔王軍と戦っている勇者一行だよな?
「んと・・まあ・・」
「いいんじゃね・・」
「その・・ね・・」「はい・・」
今更自分たちは魔族くらいでは驚かない。
魔族とか種族以前にもっと無茶苦茶でとんでもない娘がお側にいるのだから、大概の事ではびくともしないメンタルゲットを果たしているのだ。
拍子抜けしたジャンクから、魔族の名前を聞いた時にはさすがにポップは驚いた。
何故ならヒュンケルと、今は亡き陸戦騎ラーハルトの魔装を作った男と同じ名前-ロン・ベルク―だったからだ。
一行はジャンクの案内でロン・ベルクの小屋へと向かう。
世間は狭い、まさか魔装シリーズを作った鍛冶屋が自分の父と飲み仲間とは。
「親父はおっかなくないのかよ。」
自分達の事は棚上げにして、このご時世に魔族と飲み仲間をしている父に尋ねてみれば
「あん、話が通じてウマが合えばなんだっていいだろう。」
あっさりと凄いことを言われた。
わが父ながら器の大きさを初めて知り驚かされる。種族で相手を見ないところはティファと同じだ。
自分は父の何を見てきたのだろうか、只おっかないだけではなかったのだと知れて嬉しくなる。
「いいお父さんだねポップ。」
親友の太鼓判が更にうれしさ倍増だ。
迷いの森とはいえこちらには天才占い少女メルルがいる!サクサクと進み、ジャンクが迷っても適切な道を指し示してついに小屋にたどり着けた。
「あいつ留守か?」
ノックをしてジャンクがぼやいたその時、茂みからゆらりと出てきたものがいた。
それは一目で魔族と分かる青い肌に尖った耳の男だった。
「ジャンクなんの用だ、こんなに大勢を引き連れて。」
話をしながらも碌に挨拶をせずに右手に持っていた酒瓶をぐびりと仰ぎながらも不遜に言い放つ。
「ここはひよこ共の遊び場じゃねえ、帰れ。」
・・ランカークスにて鍛冶屋を発見できた・・ただし超俺様系の奴だった!
やっと出てきたロン・ベルクさんでした。