買い物から帰ってきた洞窟は森にすむモンスター達と精霊たちと、ティファの来客で一杯だった。
「はりゃ~皆ただいま~。」
ちょっと待っててね~とティファはのんびりと挨拶しながら荷を解き、終えると洞窟の奥に備蓄してある木の実や肉を客達に振舞い始める。
ティファの式能力で作られたマジックリングは特別性であり、中に保管している生ものは全て時間が停止して腐ることはない。
能力は半年位と制限はあるが、その応用で薬草類もストックしておけるのだが何故か加工された食品や薬にはその能力が適用されずに、一番ストックしておきたい万能薬に使えないのが泣き所だが、不意に来る友人たちをすぐにもてなせるのでこれはこれでありだ。
ニコニコしてしゃがんでスライムやドクタケ等小型のモンスター達を撫でている姿を見て、バランの瞳にうっすらと涙が浮かぶ。
ティファは覚えていないだろう、昨夜の事を。
「いやぁああああ!!」
夜中に娘の叫び声で目が覚めた。
何事だと直ぐに体が跳ね起き隣にいるティファを見てみれば
「・・・めんなさい・・・いや!死なないで!!」
ベッドの上で自分同様上半身を起こし、何もない天井に両手を伸ばしながらひたすら謝り続けている。
それこそ必死に許しを請い、血を吐くがごとく呻き泣きながら。
瞳を覗き込んでみれば焦点があっておらず、錯乱をしているようだ。
殺したことを詫びる・・・きっとガルダンディ達の事を夢に見て・・
あの三人と娘は本当に心を通わせていた。会ったのがたった三度であろうとも。
その三人と娘を戦わせる事態を作ったのは自分なのだ。なんと罪深く酷いことをしてしまったのだ自分は。
バランは罪悪感に打ち据えられながらも錯乱を続けるティファを膝に乗せて胸に抱きしめる。
ティファは滅茶苦茶に泣き叫び、疲れて眠るまで一時間を要した。
それでもバランは一度としてラリホーを使おうとは思はなかった。泣きたいだけ泣かせ、悲しみは全て受け止めよう。
それでティファの心が救われるのならば、ティファの心が本当の元気を取り戻せるまで側に居続けると決めたから。
そんなティファが穏やかに笑っているのだ、心の底から嬉しく思う。
「-竜の騎士様⁉-」
穏やかで静かな時間を一人の精霊の言葉で蜂の巣をつついたような騒ぎが勃発。
来た大半の精霊たちはティファと半年ぶりに会えるとほかのことをうっちゃっていたので気が付かなかったが、警戒心が強く臆病だと周りの精霊達からからかわれているエルという精霊がいつも通り警戒していたので気が付いた。
精霊達からすれば竜の騎士は神と精霊王達と同じくらい敬わなければいけない対象であり、うっかりと見逃していましただなんてマジ不敬罪もんである。
「私の父さんだよ。」
しかも友人の女の子ティファから爆弾発言!
おまえは人間の子だろ!!
精霊達の全てがティファの正体を知っているわけではない。
神と精霊王達から特別任務を言い使っている精霊達のみが知っているシークレットであり、そこらにいる精霊たちはティファの素性を知らない。
いきなりの竜の騎士様の降臨と長年友情を築いてきたティファからのいきなり告白に精霊達はぶっ飛んだが、更にぶっ飛んだものがいた。
「ティファ!いま・・そなた私の事を・・」
ぶっ飛び絶句をしたバランだった。
よもやこんな罪人を友人たちに自分の父親だと言ってくれるとは夢にも思わなかったからだ。
「でも・・私の父さんでしょ?」
三人の大切な配下を倒した自分にそう言われるのは嫌かと泣きそうになるティファを、気が付けば胸に抱きしめていた。
嫌なわけがない!自分はティファとディーノの父であり、紛れもなく親子なのだ。
「ティファ、お前は嫌ではないのか?」
こんな自分が父親であることが嫌ではないのかと問えば無言で胸を叩かれた。
何度も何度も、自分の言った言葉を打ち消すように。
その様子を心配をした小さなスライム達はティファの肩に乗り頬を擦りつけ、他のモンスター達もキュイキュイと案じた声を出しながらティファの背や足を一生懸命にさすり始める。
泣かないでほしいと、そして泣かせたバランを責めるように見つめる。
我が子はどうやら沢山の良き友人たちがいる様だ。
我が子の友人たちに、バランは感謝の眼差しを一人一人に向けて頭を下げる。
こうしてバランは洞窟の客たちの信頼も勝ち得て娘との短くも濃い共同生活が始まった。
バランの思い書くのが難しいです