はて、これは一体どういった状況かの?
ダイ君たちの仲間が到着したというので来てみれば、ダイ君の膝の上に同年代の女の子が乗っておる。
他の一行メンバーはお茶の支度をしているが
「エイミ殿、料理人殿が来たと聞いていたのじゃがな。」
エイミ同様マトリフの洞穴でダイたちのお相伴を預かっていたので是非当人にお礼をと思っていたのだが。
「その・・・あの少女が料理人のようなのです。」
この状況に困っているのか、料理人の子が想像と違って若いのに戸惑っているのかエイミの歯切れが大変悪い。
状況に困っているのはエイミも同様なのだ。
ヒュンケルがティファを抱きしめ暫くして降ろされたのを見計らったようにダイが入ってきた。
「おはようティファ!みんなときちんと挨拶した?」
朝早くなのに物凄くさわやかな笑顔で。
「ふぁ!えっと!!メルルさんとチウ君まだです!!!」
その笑顔にティファは完全にビビった。
あれは心底自分に怒っている時の顔で、二人っきりになってたら何されるか分かんない顔だ!
不味い不味いよ!!私の執行猶予は皆に挨拶してる間だけだ!
・・・・観念しよう。・・短い自由だった・・
「メルルさんチウ君おはようございます。昨日はお疲れさまでした。」
内心のしくしくは表に一切出さずにティファは二人を労りながらお茶の準備をてきぱきと進めてリングから茶葉と茶器人数分と、はちみつ瓶とレモンと小刀出したところでダイに捕獲されて強制的にお膝にだっこの状況の完成と相成った。
あまりにもダイの気配が怖いので、一行全員ティファには悪いけれど勇者宥めての無言のお願いにティファは引き受けるほかなく大人しくされるがまま。
マァムとしてもティファが入れてくれたお茶を飲みたいところだが空気を読んで断念した。
「・・・・ダイ君ってティファさんにはおっかないんですか?」
パーティー新参者のチウが、聞きやすそうなメルルに小声で尋ねてみる。
「ダイさんはティファさんの事をとても大切にされて心配しているだけなんです。」
チウの不安をメルルが吹き飛ばす。
ダイは兄として妹を案じ、無茶しそうなティファにヤキモキして強く行動に出てしまうのだと。
「あの二人兄妹なんですか。」
ならば身内の事は他人がどうこう言ってはいけないとチウは大人しく引き下がることにしたのだった。
「えっとバダックさんとお見受けします。ってダイ兄降ろして!挨拶位は!!」
「挨拶終わったらきちんと膝に帰ってくる?」
「う・・」
「くる?」
「・・・戻るから!自分で兄の膝戻るから!でもせめて全員分のお茶は淹れさせてね!!」
「分かった、戻るんならいいよ。」
鬼畜兄!過保護!!はずい!・・・でも約束しないとずっと降ろしてくれないの目に浮かぶ・・
何の罰ゲームだと内心で泣きながら無事にバダックさんに挨拶できたので良しとしよう!
二人は深々と挨拶をかわし、ティファはバダックもお茶に誘っていそいそと入れ始める。
「レモンいる人・はちみついる人どなたです~・」
「クッキー・マフィン、お好きなジャム付けてどうぞ。」
「ヒュンケル、アメはほどほどに~」
ティファは支度を終えて、出来たのは宮廷にも劣らない豪華なお茶会だった。
お茶は全員にいきわたり、テーブルの上はお茶の他にもバタークッキー・マフィン・プレーンスコーンが並び、添えられるジャムが数種類
「ジャムはイチゴにオレンジ・オレンの実です。」付けてもそのままで食べてもおいしいです。
食べ物のみならず並べられている茶器・食器・スプーン一式全てティファが用意をしたもの。
大勢でいつでも使えるようにと、ベンガーナのデパートで買い求めたものを常にリングに入れて持ち歩いており、時折磨き粉で磨いているので銀食器に曇り一つない。
様々な説明をダイの膝の上でニコニコとしているのを除けば真っ当なお茶会・・だと思っていたのだが。
「ティファ、お茶はストレートでいい?」
「クッキーにジャムたっぷりでしょ。」
「ほらこぼさないで。」
なんとダイ手ずからティファにお茶を飲ませたり食べさせたりしている!
「ふんむ・・兄・・自分で・・」
「他に何か欲しい?」
「・・・スコーンにオレンの実ジャムたっぷりで・・」
「うん、たくさん食べてねティファ。」
食べさせているダイはご満悦で、ティファの口端にかすが付けばすぐさま指でふき取り食べてしまう。
「いっぱい食べてふくふくになるんだよ。」
スコーンやお茶をティファが飲み込むたびに、ダイはティファのお腹を両手でそろりと撫でる。
テーブルで見えないからいいようなものの、一行の誰かに見られでもしたら様々な意味でアウトだ。
「もう!ダイ兄は私の事太らせたいんですか?」
「違うよ、ティファが痩せすぎて心配なんだよ。」
確かにダイの言う通りティファは少々細すぎる。腰も肩も折れてしまいそうで、手も他の年代の子に比べると少しばかり小さく頼りない感じがする。
何で中身と外見比例しないのかもっかティファの悩みなのをダイがドストライクで突いてきたので反論せずにむしゃむしゃ食べる。
その様子にダイの表情が少しずつ和らぎ、そろそろ許してもいいかなと思いながらお茶を楽しんでいる。
二人っきりならこんな甘いお仕置きじゃないんだけど
ティファの柔らかそうな耳を肩を背中を、服で隠れる二の腕に噛み後を付けるほどお仕置きしたいが今は出来そうにない。
「あの・・ダイ兄・・どうぞ・・」
恥じらいながらもオレンの実のジャムをたっぷりと付けてくれたスコーンで許してあげるか。
「いただくねティファ。」
オレンの実はこの世界ではデルムリン島にしか存在していない唯一の果実。
近くの島にもなく当然流通もしていない。
さっぱりとして甘すぎないこの果実のジャムが一番好きで、ティファが作って俺に食べさせてくれるかのが嬉しいんだ。
ダイに食べさせてもらい満腹になったティファは、自分もダイに食べさせてみる。
兄の好物など知り尽くしているのでオレンの実のジャムをたっぷりと付けて。
甘くなった二人の雰囲気に、周りは心底ほっとしたのであった。
仲直りの回でした