勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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主人公戦います


王城決戦⁉①

アポロのティファの伝言により王族たちが騒ぎになったように、断りを入れたティファのいる部屋でも大騒ぎになった。

 

なんとなれば自分達よりも立場が上の雲の上にも等しい各国の王達の謁見許可をティファがにべもなく断ったからだ。

 

マァム・メルル・ポップなど庶民出身は青褪め、ダイやチウといった身分にかかわりなく生きてきた二人も不味い事だと分かり、ヒュンケルとクロコダインなどは折角自分達を受け入れてくれかつ今の勇者一行の面倒を全面的にバックアップしてくれているレオナ姫の面子をつぶさないかと泡を吹きたくなる。

 

だが二人も伊達に軍団長はしてきていない。

ティファが断った理由もきちんと筋が通っているのだ。

 

「断るとは⁉」

アポロもまるで予期していないない答えに泡くった。

「もしや畏れ多いと?」アポロもレオナと同じことを祈るように聞いてみた。

「まったく違います。」

その祈りにも似たアポロの質問をティファはいとも簡単に粉々に砕く。

 

しかし断った理由の方がアポロはさらに衝撃を受けた。

 

何故と聞いた自分を、年下の少女は呆れたような目で見てきた。

 

「何故といいたいのはこちらの方です。なぜ勇者ダイはともかくとして何の功績もない料理人の私が呼ばれたのですか。

いいですか、この度敵を粉砕したのは確かにダイの一撃でしたが、魔法使いポップが作戦及び住民の避難対策を立てて速やかに一般人を逃がせたことで武闘家マァム・戦士ヒュンケル・戦士クロコダインが十全の力を発揮し、敵の強大な力を足止めをしたおかげで勇者ダイは間に合えたのです。

そもそも一行がパプニカの異変に駆け付けられたのも占い師メルルの力によるところであり、一般人の他にも逃げ遅れたモンスター達をパニックを起こさせる事無く逃がせたのは戦士見習のチウのおかげです。

だというのにまるで戦場に貢献をしなかった私が呼ばれて一行のメンバーが呼ばれないということは異なことです。

よって会うのならば一行全員で御前にまかりこしたい儀を、王達にお伝えくださりますようにお願いいたします。

不敬罪の罪も、後程料理人のティファが受けることも含めて。」

 

自分の手柄はなく一行の手柄をきちんと激する事無く伝え、その上で今自分がしている事が罪になることもきちんと判断をし、最後の一言は一行には聞こえないように自分だけにそっと伝えてきた少女の見識に驚愕をし、レオナ姫の待つ会議室に向かったのだ。

王族たちが激高するのを予想しても。

 

返事に行ったアポロが納得しても、一行の方が納得をしなかった。

ティファに詰め寄ろうとしたのを止めたのはこの場で一番の年長者のバダックだった。

 

「料理人殿、何故お断りを?先程アポロに言ったよりも深い事情がおありかな?」

自分の主の面子を潰されたのを承知したうえで、それでも優しく周りも落ち着かせるように。

一行もだがレオナ姫を敬愛しているエイミも落ち着かせるべく。

「二人でお会いするのは駄目ですかの?」

「私と勇者ダイだけでは駄目なのです。」

ティファもバダックの思いが分かり、思惑に乗っからせてもらう。手柄云々のような小さなことよりも

 

「今後の戦いの為にも、各国の王達と今の一行全員とあっていただく必要があるからです。」

より大きなことの為にもだ。

 

「王達は何故一行全員と会いたいと言わないのか分かりますか?もっと言えば、-誰-と会いたくないと言っていると思いますか?」

「ティファ!!それは・・・」

 

ティファの言葉に聡いポップが青褪め、心当たりの者達も愕然とする。

 

「ティファ・・」

「それはつまり我らの事が・・」

 

ヒュンケルとクロコダイン達が苦しそうに答える。

 

「はい、もっと言えば-今の貴方達-を知らずに会いたくないと言う方か方達がいるからです。

それではいけないのです。

これから話すことは皆さん、特に一行の魔法使いのポップは覚えてほしい事です。」

ティファの表情はこれまで見た事もないような鬼気迫るものがあり、戦い以上の圧を覚えたポップは生唾を飲み込みながら頷き、無言でティファの続きを促す。

ティファも意を得たように頷き続きに入る。

 

「自軍の致死率が上がる要因の一つに味方の情報不足があると私は考えています。

ポップ兄は一行全員の特性と能力を、弱点も含んで把握している自信は?」

「ある!」

ティファの問いに、ポップは即答をする。

 

自分は足りないところだらけで、半人前を少し超えられたところにいると思っている。

それでも、勇者ダイの一行の事をだれよりも、それこそ師である大魔導士であるマトリフよりも把握しているとの自負が、ティファの圧をはねのけて答えられる。

 

その答えにティファの顔が綻ぶ。満点を取った生徒に微笑むように。

「だから昨日の作戦できたんだ。」

その微笑みにポップは赤くなりながら頬を掻いて続きをこたえた。

「その通りです。」

続きの答えにもティファは笑ってくれた。

 

「ポップ兄のように、各国全体の事を王達が把握していただけねばならないのです。

これからは魔王軍の一軍と勇者一行の戦いのみならず、昨日のような大規模な混戦部隊で見知らない他国同士の兵たちが手を携えてで戦うことがこれからはますます増えてくれるはずです。

その為にもそのトップである王達が、きちんと今の勇者一行を把握していただかなければならないのです。

個人の好き嫌いを言っている時でも、裏切り者が云々などの倫理をを言っている時ではもうありません。

最前で戦うのは間違いなくこの一行であり、この地上世界の盾となり剣となる者達を、それでも王の個人の感情で会いたいかどうかなどといっているようでは大変困るのです。

王がそのように考えているのだから我々もと、兵や騎士達にもうつりいざ戦いの時にそのことが影響をしてしまっては戦では間違いなく敗れます。」

 

古今東西、内側が弱い軍が勝った試しはない。

ティファの苛烈ともいえる話に聞いていた一同は青褪めたが、次のティファの言葉に肝が冷えた。

 

「昨日死の大地にてハドラーと、彼の親衛隊の一人である者に会いました。」

爆弾発言を自ら落とす。あの後の事を兄に知られれば監禁間違いなさそうであっても言っておかなければならない事があるからだ。

 

「その者は名前をポーン・ヒムと名乗り、オリハルコン製の金属生命体でハドラーが生み出した禁呪生命体です。

そのポーン・ヒムからの伝言です。近日中にハドラーからのふるいがあると。

場所もどのようなことも言いませんでしたが、間違いなく本気でこちらの力量を試してくることが伺われる言葉でした。

そして禁呪生命体はとても優れた戦士でした。ご存知のように禁呪生命体は生み出すものの力量を表しており、かの者の力量の高さはすなわちハドラーの現在の力量が私たちが知るよりも段違いに上がっているほかありません。

また彼は自らをポーンを名乗りました。察するに他にもクィーン・ビショップ・ナイト・ルークと少なくとも四つの駒もいるでしょう。ヒムと同じかそれ以上の力量を有した者たちが、本気で向かってくると堂々と宣告をしてきたのです。

魔軍司令官とその親衛隊の後ろにもまだ大幹部達と大魔王が控えているのです。それは間違いなくハドラー達以上の強さを秘めた者達が。

それこそ勇者ダイの一行とだけでは勝てず、バラバラの国々の混戦部隊が束になっても勝てないだろうと容易に想像がついてしまうほど相手との差があるを現状を王達には理解をしていただかなければいけない事態なのです。今のままでは負けるのが容易に浮かびます。」

勝つ見込みがどこにもない。

 

ある意味において大魔王の方が公平なんだよね。力・能力があり利害が一致すればば種族・性別関係なく、人間であるヒュンケルでも、天界の生み出せし竜の騎士バランであっても重用して軍団長にしてしまうんだから畏れ入る。

そんな懐のでかい相手と世界大戦とかって本当勘弁してほしい。

でも始まってしまったからには仕方がない、そもそも私は起こること自体知っていたんだから泣き言を言う資格がない。だからこそここらでこちら側の結束も固めておきたい。

 

「どんなに個人が気にくわずとも、戦においては能力もさることながら、他国の者であっても手を携え、如何なる場合においても背中を合わせる団結力が必要なのです。

危機に陥っても心折れず仲間を見捨てず自分達の判断しかなくとも命を預けあい戦い抜くほどの強さが。」

死なないために、味方だけでなくその人自身も死なないためにも。

 

「仲間同士で力を合わせ、魔王軍とは違い心も結束をしていかなければならないのです!」

 

こちらの方は悪魔の目玉でほぼ知られているのに、こちらには敵の情報が全くないような状況の中で味方同士の好き嫌いを言っている場合じゃない。

 

「ですから一行全員と各国の王達が会うのを第一歩として王達の認識を改めていただき、ひいては各国の兵たちにも知れ渡っているヒュンケルとクロコダインの-裏切り者-という事を払しょくしていただきたいのです。」

 

先のハドラー大戦で各国連携が取れなかったから痛い目に合ったのに、たったの十数年で忘れてしまって教訓生かせないだなんて本気で困る。

あっちは数千年単位で地上を狙っているんだから、こっちは百倍の動きで結束力を固めてもらわないといけない。・・それでもぎりぎり向こうに届くかどうかだ。

 

「王達が-まぁいつか会えばいいだろう-では間に合いません。会える時にすぐに会う、出来ることは一秒も無駄にせずいなければならないでしょう。

出来ること考えうる限りのことを倍以上の速さでやって、ようやく魔王軍に通じると思っておかないと敗れると思ってください。敗れるという事はすなわち死に直結しているのだと。」

 

以上-錬金術師の某氷の女王様の受け売り-。

確か自軍の致死率上がるのは-差別-しあって団結力にひびが入るのが一番上がるって言ってたよね・・・間違ってないよね。

私なりのアレンジで不安だけど後一点言っとかないと。

 

「それからヒュンケルとクロコダイン、誰に会っても何かを言われても堂々としていてください。

威張ってほしい訳ではありませんが、昨日ヒュンケルがミストバーン相手に光の道を行くと言い切ったように顔を上げて前を向いてほしいのです。」

「・・分かった。」

「努力しようティファよ。」

「はい、二人はもう勇者ダイ一行の大切で心強い仲間なのですから。」

 

寸前の厳しい話の時とは違うティファの愛情あふれた笑顔を向けられた二人の心が温かくなるのが分かる。

裏切り者と、自分達こそが己の罪を知って潰されそうなのをティファが打ち消そうとしてくれる。

 

そして

 

「そうだよ!二人はもう大事な仲間なんだよ。」

「そうだぜ、おっさんもヒュンケルも俺達の仲間だ。」

「無理しないで頼ってほしいの。」

「そうです、抱え込まないでください。」

「・・・僕も、お二人の事好きです・・僕なんかに思われても・・」

 

付き合いの長いダイ達のみならず、日の浅いメルルも昨日会ったばかりのチウまでもが自分達を労わってくれている。大切な仲間だと何度も言いながら。

チウの自信なさげな告白に、クロコダインはチウの頭を撫でて感謝を伝える。

ヒュンケルとクロコダインは、皆の温かさに涙があふれそうになる。

 

この良き一行を守りたい。その為にも、ティファの言った他の者達とも団結をしていかなけらば恐らくはティファの言う通りこちらが敗れる。

魔王軍の強大さと時折感じられた大魔王の強さは、軍団長をしていた自分達がこそが骨身に沁みているからだ。

 

「この世界のみなさんと一行全員が勝ち伸びて大戦の終わった平和な世を謳歌するためにもここから始めましょう!」

 

ティファの力強い言葉に、一行全員の承知した声が日で温かくなった部屋に響き渡った。




・・難産でした

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