静まり返った会議室は異様に重い空気で覆われた。
先程までの和やかな雰囲気は霧散し、怖れと怒りと戸惑いが含まれた視線がダイ達に突き刺さる。
考えてみるとこの一行ってやたら魔王軍関係者が多いんだよね、ヒュンケルとクロコダインと私たちの父親が元魔王軍軍団長・・・普通考えたらないわな~とか、現実逃避してる場合でもなしか。
「あのアキームさん、ちょっと失礼します。」
フォルケン王の放った衝撃の事実に固まってしまったアキームに一言入れてティファは泣きそうなメルルの下へと急いだ。
「メルルさんのせいではありませんよ。」
側により優しい声を掛けてくれるティファに、メルルは申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
竜の騎士バランとダイとの親子関係を真っ先にフォルケン王に報告したのは自分と祖母のナバラだからだ。
先程まで築けた各国の王達との信頼関係にひびを入れたのは自分達の報告のせいだとメルルは悟り打ちのめされのをティファは見逃さなかった。
そして慰めの言葉をかけてくれるティファの足を引っ張ったことがさらに罪悪感が増して涙が出る。
そんな自分に、ティファは大丈夫だと何度も言ってくれるのが本当に申し訳なくなる。
だがファルケン王の追及はバランだけにとどまらなかった。
先の戦いの前哨戦ともいえる平原でのティファと超竜軍団とのやり取りにまで及ばれた。
平原には勇者一行のみならず、超竜軍団とティファと奇妙な縁が出来たリュート村の若者が成長をして衛兵となり、偶々あの場にて援護する気で待機していたのだ。
「成程、カイがあの場にいましたか。」
五年前には十三だった一番年長の彼が成長していればもうそんな歳だろう。
驚いただろうな~カイの方が。五年前にガルダンディ―の歯ブラシづくりでハリネズミ捕りを一番に張り切って捕まえたの彼で、二年前のボラホーンさんのおかげで開催できた氷像祭りで一等になったボラホーンさん氷像作ったのカイだし。
ミーナの次にあの三人の事好きなのは間違いなくカイで、その三人が攻めてきた時どんな思いだったんだろう。
それも迎え撃った一行の中に私がいたんだから。
複雑に絡み合いすぎた私と超竜軍団の関係を明らかにしたいフォルケン王の意図が読めない。
父さんとの関係だけだったら私たちは世界を救う勇者一行を続けると表明すれば終われるのに、何の考えで複雑化させる?
穏健で戦嫌いで調和を貴ぶフォルケン王が不協和音を生み出した理由に流石のティファもフォルケン王の意図が読めずに困惑をする。
「ダイ兄、皆さん、その・・
それは自分達の出生を、複雑に絡み合った糸の全てを意味する。
ここで父さんの素性を明かすのも悪い手ではないかもしれない。
この場には超竜軍団に攻められたリンガイアの王様もいる。
魔王軍に入るまでの地上を守った功績で罪一等減じてくれれば幸いだ。
リンガイア王あまり怒ってないみたいだしな。
ティファの読みどおり、アーデルハイドは超竜軍団の被害が自国に出ていないので個人的にはバランに対してさほど怒りは抱いていない。
ファルケンも伊達に王はしておらず、その辺の情報もきちんと掴んだ上で今回の一件を目論んだ。
敵の情報戦や思わぬところで勇者の父の素性が明かされるよりも、信頼関係ができそうな今が一番いいタイミングだろうと。
クルテマッカの様な猜疑心の強いものは情報を秘匿されるのを何よりも嫌う。
傷は浅いうちのほうがいい、今ならば、ダイ達の人柄を知った今ならば受け入れてくれるだろうと考えて。
父の正体と、料理人が超竜軍団と繋がっていたのは人類を裏切っての事ではないのだと。
まさかティファと件の三人の絆が、ティファの魂にまで根を張っていたとは露知らずに。
聞く方は深く考えを張り巡らし光をもたらすと信じ、聞かれた者の心は暗く闇が覆う