「ティファはもしかしたら大魔王バーンにまで目を付けられたかもしれねぇ。」
昨日王城でティファを待ち、今後ティファをどうするべきか一行会議をしている時にポップは真剣な面持ちでダイ達に最悪の可能性を告げた。
-お嬢ちゃんを僕たちのお城に招待したからね-
キルバーンの言った僕たちのお城とはどう考えても敵の本拠地であり、自分達を監視するように動いていた魔王軍ならば、尚の事御膝下での監視などわけなくできるだろう。
ティファの強さや言動が、もしかしたらハドラーを惹きつけてしまったように大魔王バーンの目に留まったとしてもおかしくはない。
誰に対しても分け隔てなく、それこそ敵にだとて平気で口をきいてしまうティファ。
時折笑顔までも向けてしまい種族・敵味方関係なく魅了してしまい思ってもみない、常識では考えられないような事態を引き起こしてしまうティファをデルムリン島に帰すわけにはいかない。
ティファと何故か会いたがるハドラー、主の命なくば出してはいけない力を使おうとしてまでティファを殺そうとしたミストバーン、ティファを変態的な理由で追い回しているキルバーン、そしてもしかしたら最大のラスボスまでもが目を掛けたかもしれない状況下ではとてもではないが帰せるわけがない。
ティファの安全はもうこの一行の中にしかない。
自分達の目の届く所にいてもらわないと守り切れず、大戦が終わるその日まで激戦を共に潜り抜けてもらわなければいけない。
しんとなってしまった会議室で、自分で言っていてなんだがとポップは泣きたくなる。
たった十二歳の少女の唯一の安全な場所が戦場のど真ん中にしかないなんてそんな馬鹿な話があっていい訳がない。
それでもこれは変えようもない事実であり、最早誰にもどうにもできることではなく、運命の神がいたら何故ティファだけに辛い道を行かせるのだと顔面に一発ぶちかましてやるのに!!!
理由を聞いた王達から血の気が引いている。
無理もない。今までは話にしか出て来ていない敵の総大将に目を付けられているなどと聞かされればこんなもんだ。
昨日の鬼岩城の恐怖で、より大魔王の底知れない強さが膨れ上がった後ならばなおさらだろう。
その大魔王を討たない限り、ティファ自身の平穏は訪れない。
世界を救う事がティファを守る事
それが昨日の一行会議で出た結論であり今後勇者ダイ一行の目標となった。
「分かった。そなた達の言う通り、料理人は一行の中に留めておくのが最善のようだ。」
アーデルハイドは苦い顔でポップの言を認めた。これは最善策というよりも唯一の方法で、選択肢など他にはないのだと思うと遣る瀬無い気持ちがこみ上げる。
ポップの推測が当たっているのならば、如何に屈強な者達が島に護衛でいたとしても何の意味もなさないだろう。昨日の鬼岩城の如くになってしまうのが目に浮かぶ。
戦いの激化に、あの少女の心が果たして持つのか。
憂慮しつつも、早くティファの下に行きたい気持ちを察した王達はダイ達に退出許可を出して下がらせる。
「・・彼らの全面的な支援を・・」
「分かっているパプニカの王女よ。我らに出来ることはすべてしよう。」
年若き彼らが今までほぼ独力で頑張り抜いてきたのだ。
今後は自分達の持てる力を最大限に使い、この大戦を乗り切る話がダイ達の退出した会議室で真剣に議論をされた。
「ティファ起きないね・・」
「眠れるだけ寝かしてやろうぜダイ。」
「うん・・」
ソファーで丸まり眠っているティファの手をそっと握っているダイの頭をポップがぐしゃぐしゃとかき回す。
普段は強いのに、妹がかかると途端に変わる弟を心配して。
部屋も会議室も重い空気がのしかかる。誰もがティファの事を案じて‥ただ一人を除いては
あのお方ならば王の病も治せるのではなかろうか
主君レオール王の為にも、料理人の知恵を使っていただきたい。
以上がティファがティファであり続けたせいで一行を抜けられなくなってしまった理由の全てでした。