「・・ファはまだ・・」
「そこを何とか!」
「ちょっと・・アポロ!いい加減に・・」
「離せエイミ!!」
うう・・・うっさい!!
「なんですか!!!」
うん・・なんか目がしパしパする。泣きながら寝たのが拙かったのかな。
それにしてもダイ兄の声とエイミさんと・・
「何か御用ですか、三賢者筆頭のアポロさん?」
人の眠り妨げたのこの人か。
ティファにはいくつか悪癖がある。敵味方の立場をスカンと忘れて話し込んだり口が悪かったりがあるが、兄妹を十二年しているダイからすればそんなものは序の口だ。
ティファをよく知るデルムリン島ご一同様と海の荒くれ集団ウォーリア船長一同が絶対に順守していることがある。
ティファの眠りを妨げるな
ティファはあまり寝起きが良くない。普段は早起きをして体の目を覚まさせているので一行の前で襤褸を出さずに済んできた。
人から起こされること、特に午睡を邪魔する奴は滅べばいいとさえ思う時すらあるほど寝起きがよろしくない。
それも精神状態がズタボロの今は許してやる余裕すらがない。
そんな跳ね起きるようにして目覚めたティファに睨まれたアポロは、蛇に睨まれたカエルという可愛い例えでは効かない程のプレッシャーを受けて碌に口がきけなくなっている。
・・・人を叩き起こしておいて返事もなしだなんて、この人は・・
「もう一度聞きますよ、何の用ですか?」
「あ・・その・・」
アポロもここに来るまでの間は意気揚々と部屋に向かっていた。
ティファの知識があれば、今宮廷侍医達でも治療できていない病を治してくれるはずだと。
その知恵を借りるべく会議最中の部屋を出てきたのをエイミに見咎められたが、エイミだとて話せばわかってくれるはずだ。
「貴方それでティファさんのところに?」
アポロの言ったことがエイミには信じられなかった。王達やダイ達の話を全く聞いていなかったのだろうか?
今のティファさんは身も心も疲れきっているからこそリンガイア王が早めの退出を促したのは自分でも分かったのに。
アポロは自分が正しいと思い込むと時に無鉄砲で周りを疎かにするときがある。
今は王の病のためにとティファさんの状態を慮ってはいない。
ティファとティファを大切にしている者達の怒りを招かないためにも、それだけではなくティファを休ませてあげたいとエイミは必死にアポロを止めようとしたのだが押し切られて部屋に入られてしまったが、あの時の勢いが今のアポロにはなくしどろもどろにソファーから動かない少女に言い訳をするように要件を伝えている。
マジですか
この人馬鹿か?
「一介の素人に国王陛下の診察をさせてそれを治療しろと?」馬鹿だろ本当の話。
「はい!ダイ君達に用いている万能薬を・・」素人め。
ティファは心底ため息をついてアポロの言葉を遮った。いろいろと言う事あるが、その前に確認をしよう。
「これはパプニカの王女・レオナ姫からのご依頼でしょうか?」
「いえ!姫様は何もご存知ではありません。」
「では宮廷侍医長の方から?」
「違います。」・・・百歩譲って
「三賢者で話し合った結果の合意の下での依頼でしょうか?」
「これは私の判断で料理人殿のお力を是非お貸しいただこうと参りました。」
つまり全部の段取りすっ飛ばして、いろんな人たちの頭越しでここに来たっての?
駄目だこの人
「アポロさん、私に会ったことは言わないで今すぐにレオナ姫に-一行の料理人の薬学知識-を借りるかどうかのお伺いたてて来てください。
くれぐれにも私に会ったことは言わないようにお願いします。」
独断で王の治療頼みに来るなんてどんだけ馬鹿なのよ。
パプニカのような大国の王様なんて通常一般人が会う事すらできない、まして王の病だなんて国家一級の極秘情報でしょ!そんなことも分からずに情報をホイホイと漏らすこいつは無能かな。そもそもそこまでの権限が自分にあると思っているところがホント馬鹿。
怪訝そうな顔で私の言ったこと一応聞いるけど大丈夫なのあの人?
「エイミさんとマリンさんの三賢者の合意で-どうでしょか?-位で聞いてくださいね。」
「・・分かりました。」
「では・・」さっさと行ってよね。
「ティファ・・王様の事診てあげないの?」
「ティファ、父さんの時のように何かアドバイスしてあげれば・・」
一行の皆は本当に良い子だ。ダイ兄達も王様の病の事は知って心配してるようだけど、やっていい事と悪い事はきちんとある。
「あのねダイ兄、お城にもお医者さんはいるんだよ。王様の事をきちんと診ている人が。
その人達の事をすっ飛ばして私のところに来たってことは、その人達が役に立ってないって言っているようなもんなんだよ?
そもそも勇者一行だからって王族にホイホイと近づけるわけでなし、まして国王の傷病なんて国政を左右するかもしれない事なんだから、尚更近づいていいはずないんだからね。」
ロカさんの時とは全く違うんだからね。
城勤めの常識無視してきたあいつは・・温室育ちか。
本当の意味で苦労したことがないのか分からんが、もっぺん出直してこい阿呆が。
珍しくティファは悪口を言った、たとえ心の中であったとしても。あんな未熟者には初めて会った。
これはティファの生活環境が大きく影響しており、大抵の人間ではティファからの合格は貰えないだろう。
自分を育ててくれたブラス・ウォーリアはきちんとした大人であり、日々見守り助言をしてくれた三神達もまた然り。
その他にも-おじさん-だったり-おじ様-だったりと、ティファの周りには-大人-が沢山いて育った。
坊々育ちのアポロとティファは最初の出会いからして躓いているの事も尾を引いている。
それも加算され、アポロは一人レオナ姫にのところにお伺いをたてに行ったのだった。
ティファは横になっていたソファーから降りて自分のお茶を淹れて腰を掛け、ゆっくりとカップを回して休んでいる。
その顔は眉間にシワがよって恐ろしい。ティファの寝起きの取り扱いは全員で対処しよう。
「ティファさん、その寝ていた方が・・」
そんな怒れるティファに、チウは恥ずかしそうにしながらティファに休息を勧める。
自分はまだあったのはほんの少しだけれども、それでもティファに仲間意識が芽生え始めて休息をとった方がいいと促す。
「ありがとうチウ君、心配してくれるんだね。」
あんな坊のこと忘れてチウ君をモフリたい。
そんで愛でたら気持ちいいだろうな~。
「そしたらチウ君、一つ約束を・・」
「ティファさん!!」
・・人がまったりしようとしたところいきなりに入り込んできた!人を一人連れてきて
それも着ている衣服から判断するに、この城の侍医長来た!!
「料理人のティファとはどなたかな?レオナ姫より早急に会って王の体調をどうしていくべきなのか話し合えと言われましたぞ。」
うっわ思いっきり睨まれた。無理もない、こんな小娘と一緒に見ろだなんて私なら断るんだけど仕方がない。
「アポロ殿に王の体調の事を姫様に聞いてこいとか言われたらしいですな。全く余計なことを。」
ですよね~、段階すっとばした小娘なんて邪魔ですよね〜、それが本当の話なら!
あの坊なんて言ってレオナ姫に説明したの!?
こんな状況を作ったのは私じゃない。
一体誰の差し金だ・アポロのせいだ畜生!
もうふざけるなと言いたくなる。
今夜はここまで。