「分かりました。ロムス、辛い報告をありがとう。」
「そんな姫様・・」
「私ね、薄々知ってたのよ。お父様の命が長くないことを。」
毎日欠かさずに父の下に言っていたから分かる。あの偉大で騎士のように屈強な父が日々やせ衰えていくのを見ているのだから。
見舞いに行くたびに安堵する。今日も生きていてくださったと。
日によって多い時には誤解は父のもとを訪れては人払いをして甘えている。
病床の父には重いかもしれないが、それでもベッドに身を起こしている時の父の膝に上に頭を乗せて撫でてもらっては安心をする。
「レオナはなかなか大人にならないものだな。」
苦笑しているような、どこか困ったような物言いをする父は、それでもいつも甘えさせてくれる。
父が助かるのならば大人に等ならなくてもいい。母は自分の出産と共に命を落とし、母を心の底から愛していた父は再婚をしなかったので自分は母というものを知れずに育ってきた。
家族はこの父だけで失うなんて耐えられない。
だからこそアポロの独断専行ともいうべき越権行為を咎めることなく自分も便乗をしたのだ。
フレイザードの時の自分を、バランの時のポップを死の淵から救い出してくれた奇跡をティファが起こしてくれるのではないかと。
「万能薬は確かに効きます。しかしそれは-傷-に対して有効であり、残念ながら病に効くものは今のところないのです。」
ティファはなまじな希望を持たせないために、現在の万能薬の限界をきちんとロムスに伝えた上で痛みの緩和剤を処方した。
痛みが和らげば満足な睡眠と僅かながらも食欲が出て寿命を少しでも伸ばせるのではないかと祈りにも似た気持ちを込めて。
ティファ・・ごめんなさい
ティファ自身も辛い事ばかりなのに、そのティファに縋りつこうとしたなんて。
愚かな行為、ティファの負担を無視してしまった。
敵やその周辺事情で疲れているというのに、味方である自分達までもが重しになるだなんてどうかしていた。
少し時間が経ち、冷静になったレオナは己のとってしまった行動を悔やむ。
この件の責任は端を発したアポロよりも、見逃して便乗をした自分にこそある。アポロともども、自分達のいる地位とそれに伴う責任を今一度認識しなければならない。
レオナは反省をしたが、もう片方のアポロは納得がいかなかった。
あれ程の薬の知識があるのならば、王の病状を診てその上でのことならば納得もいくのだが。
大戦が始まる前からレオナ姫は国王の病気の事で心を痛め、明るく振舞っていてもふとした拍子に悲しみの気配が漏れ出ていた。
大戦最中であるとはいえ、ダイの達のおかげで本当の意味での明るさを取り戻し、城内も活気づいてきた。
そこに薬学の知識を持つ料理人ならばと望みを持ったのだが。
自分は大それた事をしようとした訳ではない。国王と姫君の笑顔を守りたかっただけなのにエイミにまで常識を忘れたのかと叱られたのが解せない。
主君たちを守りたかった・・ただそれだけなのに。
レオナ達が様々な思いに駆られている時、ティファは何をしているかというとソファーに丸まってひたすら爆睡をしている。
それもなんと大ネズミのチウをひっしりと胸元に抱きしめて。
ロムスと快く話せた上に、精神的に苦痛になったアポロも一緒に引き連れられて去ったことでティファの精神が安堵したことで緩み、疲労がどっと押し寄せてきたのを察知したのは兄達ではなくクロコダインだった。
長年戦いに身を置く武人は少しの気配からも相手の様々なことを読めなければ死に直結をする。
この場合いもティファの疲労感が徐々に上がってきたのを察知して、疲労感からくる眩暈で椅子から転げ落ちる前に側によりあっさりとティファを抱き留め、ティファにもう少し眠るように忠告をした。
幸い王達も一行がどれほど滞在をしても良いと許可を出してくれたので、ここは遠慮する事無く有り難く言葉に甘えた方がいい。
「クロコダイン・・チウ君のとこ・・」
眠りに堕ちそうになりながらも、もごもごとチウの所に行きたいとの要望に何故も何も聞かずにティファをチウの側に連れて行き、目線が合うようににかがんでやれば、なんとティファは素早くチウを抱きしめてそのまま眠りの世界へと直行あそばしたのだった。
疲れきっているとは思えないその素早さにクロコダインも抱き上げられたチウ本人もいらた全員が目をぱちくりとした。
しかもだ、抱きしめる力は程よくとも、チウの服を握っているティファの指先には尋常ではない力が込められており梃子でも離さないというティファの底知れない意思まで感じられる。
そういえば謁見前のチウのブラッシングをティファも手伝っている時に言っていた。
チウ君の毛は見た目よりもぽわぽわしてますね
大ネズミモンスターとはいえチウは武の師匠ブロキーナに拾われて以来、礼儀の一環として身だしなみの事も教え込まれたので可能な限り水浴びをしていたので野生のモンスターよりも毛が柔らかくなっている。
その毛の触り心地が気持ちいいとティファがうっとりしていたのをチウも思い出し、このままでいいから自分ごとティファを寝かせて欲しいとチウは小声でクロコダインに申し入れをした結果、可愛い構図の出来上がり。
眠りながらもティファは時折チウの毛をさわさわして口元を緩め、クンカクンカと匂いを嗅いではニヘラとし、チウの頭に頬ずりをしているのに爆睡しているという器用なことをしている。
これにはダイも文句は言えない。言えないどころか妹が可愛いと悶え苦しんでいる。
ポップやヒュンケルも年相応のティファにやられてしまい、マァムとメルルの提案でお茶や残ったお菓子を食べながらティファの目が自然と開くのを待つこととなったのだった。
シリアスだけの話なんて書いていられません。
書いてる筆者にも和み成分が必要なのです。